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三島議員(無)

(問)教育問題について

1."TeachLessLearnMore"について、所感を伺う。

2.教育現場への競争原理導入と、管理職の裁量権拡大について、所感を伺う。

3.懲罰のあり方と規範意識涵養について、所感を伺う。

4.コミュニケーション能力、表現力の育成について、所感を伺う。

5.国際化に対応した英語教育について、所感を伺う。

6.人口減少が進む中での本県教育の目指すべき姿と、厳しい財政状況下における教育について、所見を伺う。

 

(答)広沢教育長

1.まず"TeachLessLearnMore"についてであります。

 シンガポール教育の基本スタンスである"TeachLessLearnMore"を私なりに訳しますと「教え込むより自ら学べ」というふうになりました。これは日本の学習指導要領における「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」と相通ずるものであります。

 この「確かな学力」は、知識や技能はもちろん、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたものであり、変化の激しい社会に主体的に対応していくために生涯にわたって必要とされる力であります。

 本県でも、『しまね教育ビジョン21』において、体験的・問題解決的な学習を積極的に取り入れ、児童生徒が自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断し、よりよく問題を解決する力を身に付けることの大切さを明示しており、教員には「確かな学力」の必要性について、学校訪問指導や研修を通じて指導しているところです。

 また、各学校では、児童生徒がテーマを決め、インターネットや図書館を活用したり、調査活動を行ってテーマに迫る調べ学習や、地域を学習活動の場としたふるさと学習など、主体的な学習が行われています。

 こういったことを一言で言えば、知徳体の調和的発達をもとに、社会や人との関わりの中で、自分の生き方を考え、決定し、行動していく力や問題解決能力を身に付けることが本県のめざす教育ということであります。

2.次に、競争原理の導入と、管理職の裁量権の拡大についてであります。

 県教育委員会としましては、教育ビジョン21の前文に、「切磋琢磨の気概と向上心のもと、内在する能力を伸ばします。」と掲げ、子どもたちが日常の集団生活の中で互いのよさを認め合いながら、時には競い合い、たくましく育つことを願って、指導方法の改善や学習環境の整備に努めてきました。

 とりわけ、授業においては、話し合い活動やお互いの発表を評価し合う活動、中学校においてはディベートによる討論を取り入れるなど、互いが学び合う学習に積極的に取り組んできました。

 また、職場体験学習を通して、地域の方々から実社会における競争の厳しさなどを指導していただいているところです。

 管理職の裁量権の拡大につきましては、中央教育審議会でも、学校が主体的に教育活動を行うためには、人事、学級編制、予算、教育内容等に関して、学校・校長の裁量権を拡大することが不可欠であるとの答申が出されたところであり、学校の権限や責任を拡大する方向にあります。

 校長の裁量権の拡大に伴って、今管理職に求められていることは、急激な社会変化に対応して、どういう子どもたちを育てていきたいのか、そのために、学校をどう変えていこうとしているのか、というビジョンをしっかりと持ち、教職員の意識改革を進め、児童生徒、保護者、地域から信頼される学校にしていくことであります。

 そのため、積極的に学校評議員制度を導入したり、学校評価に外部評価を取り入れるなどの取組を進めているところであります。

 また、来年度から導入する教員の評価制度においては、特に管理職に対して、学校経営目標の具体的な成果をもとめ、教職員一人一人を生かした活力ある組織体としての取組を期待しているところであります。

3.次に、児童生徒への懲罰の在り方と規範意識の涵養についてであります。

 私は、本年度、小中学校の校長研修会に際し、児童生徒の規範意識の向上に関連して、児童生徒に関心や愛情を持ち、その児童生徒の将来のために、今何が必要なのか、しっかりとした考えのもと、自信をもって叱ることが必要だということを指導してまいりました。

 規範意識の低下が懸念されている今日、児童生徒が間違ったことをした場合、その行為を戒め、児童生徒自身が自らの行為を反省することができるよう、その場で厳しく叱ったり、個人的にしっかり対面して、児童生徒の心情を理解しながら諭すなど、その児童生徒に応じた適切な叱り方が大切であります。

 また、規範意識の涵養のためには、教育活動全体を通じて、一人一人の児童生徒が、自分はかけがえのない存在であるという自尊感情や、「こんなことができた、こんなことで役立った」といった自己有用感を獲得すること、地域における体験活動等、人との関わりを通して地域の一員であることを自覚することが大切です。

 県教育委員会といたしましては、県内の全ての学校の生徒指導担当者が参加する「規範意識の向上」をテーマにした研修会において、生徒会の自主的な取組、教員自らが手本を示す取組、地域と連携した取組など効果のあった学校の実践を発表し、指導方法などについて協議を行っております。

 規範意識の育成には、家庭や地域社会の関わりが不可欠であります。学校・家庭・地域社会それぞれが児童生徒を温かく見守り、時には厳しく指導することも大切であります。地域の子供は地域で守り育てるという気運の高まりの中、これからも地域の宝である子どもたちの健全育成に向け、家庭・地域との連携推進に努めてまいります。

4.次に、コミュニケーション能力、表現力の育成についてであります。

 いわゆるコミュニケーション能力とは、自分の思いを相手に伝え、相手の思いを正しく受け止めることができる能力であり、表現力とは、自分の思いを多様な方法で表す能力であります。

 これらの能力は、現在の変化の激しい社会に対応し、職業人として生きていく上で重要であります。

 また、国際化が進むなか、子どもたちが、異なる文化や言語を持つ世界の人たちと、共に生きることのできる国際人として成長する上でも強く求められております。

 各学校においては、総合的な学習の時間をはじめ、国語科でのディベート、読書活動といった、全教育活動を通じて、言葉によって多様な「人間関係を構築する力」や、目的と場に応じて「効果的に発表・提示する力」、「語学力の向上」などのコミュニケーション能力の育成に努めております。

 今後、ふるさと教育やキャリア教育を推進していく中においても、コミュニケーション能力や表現力を伸ばす取組を積極的に進めてまいります。

5.次に、国際化に対応した英語教育についてであります。

 今日、経済・社会・文化・政治など、あらゆる分野における国際化の進展に伴い、英語力を高めることがますます必要となってきていると認識しております。

 現在、本県の中学校においては、週1時間程度、ALT(外国語指導助手)と教員とのティームティーチングによる英語授業を実施しており、さらに、約3分の1の中学校で、その一時間の授業の半分以上の時間を英語だけで進めるなどの工夫により、実際に英語を聞いたり話したりする力を伸ばす学習活動を展開しております。

 また、小学校における英語活動の実施状況調査を行っておりますが、全小学校の96%、251校において、年間平均約15時間程度の英語活動が実施されているという結果が出ております。

このような状況ではありますが、県教育委員会としては、小学校で、総合的な学習の時間を中心に、楽しみながら英語に慣れ親しんでいく活動の拡充を主体的に検討してまいりました。

 そのねらいは、一つは、中学校で初めて教科としての英語が導入されることから生じる、とまどいや抵抗感を軽減して、中学校における英語学習に意欲的に取り組む素地をつくること、さらには、二つ目として積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、聞く・話すなどの基礎的な運用力を育成することであります。

 そのため、来年度から新たに、義務教育課に小学校英語教育担当指導主事を配置し、直接指導にあたる学級担任に対して、英語活動の進め方にかかわる研修を実施したり、学年段階に応じたカリキュラム案の提示、楽しんで取り組める教材の開発等を行い、目的や手法を明確にして小学校における充実した英語活動の促進を図っていくこととしております。

 

(答)知事

6.次に、本県の教育についてであります。

 明日の島根を担う人づくりは、最優先で取り組むべき政策の柱の一つであり、中でも、子どもの教育は特に重要であります。

 島根のめざす教育は「しまね教育ビジョン21」に示しておりますように、豊富なふるさと素材や地域の教育力の活用、少人数による個々に応じたきめ細かな指導という特色を生かし、生きる喜び、学ぶ楽しさを通して、一人一人の可能性を開花させ、社会の一員として自立して生きていくことができる知徳体の調和のとれた子どもを、学校・家庭・地域社会が連携して育むことであります。

 その具体的施策の一つとして本年度から全小中学校で開始した「ふるさと教育推進事業」では、学校・家庭・地域社会が一体となった各地域独自の取組が行われ、心の教育として成果を上げつつあります。

 この事業を含め本県の教育理念を具現化するために必要な事業については、厳しい財政状況下にあっても重点的に予算措置を講じてきたところであり、引き続き選択と集中に努めながら、人口減少等の社会情勢の変化やその時々の教育課題に的確に対応する施策については、積極的に推進していく考えであります。

 今後とも、本県の豊富な教育資源や価値ある素材を十分に生かし、子どもの教育を地域全体で支える気運の醸成と仕組みづくりを市町村と連携して推進するなど教育環境の充実を図りつつ、県民一体となって島根の教育を推進してまいりたいと考えております。

 

(答)中村教育委員長

6.三島議員のご質問にお答え致します。

 シンガポールは、私も何度も訪れましたが、笑顔の明るい多民族で形成された国家です。

島根県で例えれば、出雲市と斐川町を併せた面積とほぼ同じ、620平方キロメートル300万人の人口を有します。

 高層ビルがガーデンの中に林立する、ガーデンシティと呼ばれ、向学心の高い美しい国です。しかし、そのシンガポールにどうしても手に入れることのできないものが、日本の桜、紅葉そして雪の美しさです。

 さて、人口減少下でのわが県教育の目指すべき姿ということでありますが、議員のおっしゃるとおり、日本全体が少子化問題を抱え、その影響は本県においても切実なものがございます。

 このような状況において大切なことは、島根の子どもたちが、いかにふるさとを愛し、ふるさとへの想いを深め、その発展を担ってくれるかということが重要になってくると思われます。

 私は、将来島根の子どもたちは、幅広い視野、旺盛な探求心、優しさと力強さを併せ持った、創造性あふれる人材に育つと信じていますし、学校教職員にも、自らが人材づくりの最大のキーパーソンとしての熱意と自覚を持って、子どもを育てる必要性があると考えております。

 そのためには、学校はもとより、家庭や地域社会が一体となって子どもたちを見守っていくことが必要であり、本県の豊かな自然や伝統文化、歴史的遺産、地域に根付いた産業などを教材とした「ふるさと教育推進事業」を始めとする諸施策を実施していくことで、その実現に努めてまいります。

現在、厳しい財政状況にあり、目指すべき姿に向かって限られた予算を効率的に使うことはもちろんのことでありますが、家庭や地域社会の協力も得ながら、効果的な教育施策を実施していくことも必要であると考えます。

 

(問)学校の耐震化について

 義務教育学校・県立学校の耐震診断・耐震化率の状況と、来年度の取組方針について伺う。

 

(答)広沢教育長

 次に、本県の公立学校における耐震化についてであります。

 まず、耐震診断実施率は、昨年の四月一日現在で、公立小中学校が十八・二%、県立学校が六十一・九%であり、耐震化率は、公立小中学校が四十九・七%、県立学校が六十二・〇%であります。

 また、来年度の取り組み方針としては、市町村の財政状況が厳しい中でありますが、学校については、地震発生時の児童生徒の安全確保だけでなく、地域住民の応急避難場所の役割も担いますことから耐震化を進めることが必要であると考えております。このため、既存の建築物の耐震改修を緊急に促進する趣旨で、本年一月に改正施行された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づき、速やかな耐震診断の実施など学校施設の耐震化が図られるよう、市町村へ働きかけてまいります。

 さらに、文部科学省で来年度から新たに設けられます「安全・安心な学校づくり交付金」を活用して、耐震化が図られるよう、今後とも市町村に対して、技術面や手続き面などの指導助言を積極的に行っていく考えであります。

 県立学校につきましては、平成十四年度から今年度まで、三十一校で補強工事等を行ってきましたが、来年度から新たに四校で耐震診断を行った上で、必要な補強工事等を行うことにしております。

 なお、昭和四十六年以前に建築された、いわゆる老朽校舎については、これは計画的に改築を進めて行く考えであります。


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