ノロウイルスは毎年冬季を中心に猛威をふるい、国内で1年間に発生する食中毒事件の約半数近くを占めているほか、一度に数百人もの患者を発生させることもあり病因物質別に見た患者発生数では毎年第1位となっています。
ノロウイルス食中毒はカキなどの2枚貝を加熱不足のまま喫食することが原因となることもありますが、発生原因として最も多いのは調理従事者自身が食品をノロウイルスで汚染してしまうことによるものです。
ノロウイルス食中毒を防止するためには、十分な手洗いや加熱調理というこれまでの基本的な予防対策に加えて、調理従事者自らがノロウイルスに感染しない、ノロウイルスを調理環境に拡げないといった、ノロウイルス特有の感染症対策を1人1人が理解する必要があります。
ノロウイルスが施設に持ち込まれる経路は、(1)調理従事者などの「人」が持ち込む場合と、(2)ノロウイルスに汚染された「食品」とともに持ち込まれる場合の大きく2つに分けられます。
ノロウイルスは感染しても症状が出ないことがありますので、感染に気付かずに施設にウイルスを持ち込んでしまうことがあります。
また、食品自体がノロウイルスに汚染している場合もありますので、「持ち込まない」対策をとってもノロウイルスの持ち込みを完全に防ぐことは困難です。
多くのノロウイルス食中毒事例では事件の発生前に調理器具やトイレ・ドアノブなどがウイルスにより汚染されるなど、施設内でノロウイルスが広範囲に拡がっています。
ノロウイルスが施設に持ち込まれても、最終的に食品を汚染しなければ食中毒に至ることはありません。
よって、ノロウイルス対策で最も重要なのがウイルスを食品に「つけない」ことになります。
「つけない」を確実に実行するには、調理従事者自身が「自分はウイルスを保有しているかもしれない」ということを前提とした食品の取扱いをすることです。
引用元:厚生労働省ホームページ
調理従事者が「持ち込まない」や「拡げない」に注意しても防げないことがあります。
それは食品そのものがノロウイルスに汚染されている場合です。
食品中のノロウイルスを不活化させる唯一、確実な方法は加熱することです。
ノロウイルスの大流行が続いている理由については細かいところまで解明されていません。
しかし、最近の研究成果からノロウイルスの不活化に有用な新たな消毒剤や消毒方法など、新たな知見が示されています。
ノロウイルスの不活化に有用な消毒剤としては、次亜塩素酸ナトリウムが一般的に知られているところですが、国立医薬品食品衛生研究所が行った「平成27年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書」によれば、現在、各種市販されている塩素系消毒剤やエタノール系消毒剤の中には、ノロウイルスに対して不活化効果を期待できるものがあること等の知見が得られました。
同報告書から得られた知見等をもとに、大量調理施設衛生管理マニュアル(平成9年3月24日付け衛食第85号別添(最終改正:平成28年10月6日付け生食発1006第1号))が改訂されました。(主な改訂点は以下のとおり)
手洗いは、手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。
石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
なお、消毒用エタノールによる手指消毒については、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いることとされています。
参照:ノロウイルスに関するQ&A(Q16)(最終改訂:平成28年11月18日)