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地域医療の確保目指し医師を「呼ぶ」、「育てる」、「助ける」

島根県の医師確保対策島根県内には、医師が約900人いますが、その数は医療機関が必要とする医師数を260人程度下回っています。
また、松江や出雲と、県西部や雲南、隠岐とで医師数にばらつきがある「地域的な偏在」や、産科、小児科、外科など特定の診療科の医師が不足する「診療科による偏在」といった課題があります。
こうした状況に対し、県は、現役医師を『呼ぶ』、将来の地域医療を担う医師を『育てる』、県内で働く医師を『助ける』という3本柱を中心とした総合的な対策を実施しています。

呼ぶ


兵庫から隠岐に赴任
●五箇診療所の川崎利博所長


気持ちの触れ合いに充実
隠岐の島町の「国民健康保険五箇診療所」の川崎利博所長は昨年4月、兵庫県川西市の病院長を辞め、同町に赴任しました。
「患者に感謝されることが、なによりうれしい」と語る川崎所長は、離島の医師生活に大きな充実を感じています。
「歳を取ったら、地域医療に携わりたい」と考えていた川崎所長は、50歳を越えるころから、インターネットなどで地方の医師募集の情報に関心を持ってきました。
そんな時に目にしたのが隠岐の島町の観光名所「ローソク島」の写真を載せた島根県のホームページでした。
豊かな自然のイメージを膨らませ、県庁の医師確保チームに問い合わせたところ、翌週には担当者が兵庫県を訪ねるとの返答。
その迅速な対応に、医師確保にかける熱意を感じ、離島での単身生活を決意しました。
診療所では普段、高齢者を中心に30人程度を診察するほか、老人ホームや在宅の患者を往診します。
地元の中核病院の隠岐病院にも出掛け、診察を手助けします。予算や人員管理に追われていた院長時代と変わり、駆け出し時代のように診察に奔走する毎日。
川崎所長は「自分は根っからの医者だと再認識した。患者との気持ちの触れ合いに、何より充実を覚える」と改めて実感しています。
県は、離島などの公的医療機関の医師が、学会や研修で不在にする場合、県立病院などの医療機関から代診医を派遣する制度を設けています。
学会や研修への参加は医師のキャリア形成に欠かせないだけに、こうした制度は「心強い」と川崎医師は言います。
また、県は、島根での勤務を検討する医師の人材登録制度「赤ひげバンク」も設けています。
医療機関や生活に関する情報を提供したり、出張面談を行い、平成19年から3年間に34人の医師を招へいしました。

隠岐の島町赴任のきっかけとなったローソク島の写真
隠岐の島町赴任のきっかけとなったローソク島

患者との会話に思わず笑みがこぼれる川利博所長の写真
患者との会話に思わず笑みがこぼれる川崎利博所長
 

育てる


島根大学に医師養成の寄付講座開設

地域医療への関心膨らませる
島根大学医学部(出雲市)に4月、地域医療を志す医師の養成を目的にした「地域医療支援学講座」が開設されました。
県が運営費を寄附して設置した講座で、医学生が地域で活動する医師のもとで実習や意見交換を行い、地域医療への関心を引き出します。
また、県内の勤務を希望する医学生などを対象に、将来のキャリア計画について助言したり、実際の勤務先となる医療機関との調整にもあたります。
市町村などの関係者が医学生と直接顔を合わせ、それぞれの地域の事情を説明したり、情報交換する場となる「地域医療交流サロン」も医学部棟に開設しました。
谷口栄作教授は「学生が地域医療に興味を持ち、さらにその関心を膨らませる講座にしたい」と意気込みを語っています。

地域医療を志す学生の育成を目的に開講した地域医療支援学講座の谷口栄作教授(右)と意見を交わす医学生の写真
地域医療を志す学生の育成を目的に開講した地域医療支援学講座の谷口栄作教授(右)と意見を交わす医学生

助ける


医師確保へ益田市民立ち上がる

医師が働きやすい環境づくり
医療関係者が働きやすい環境を築き、医師の定着を図ろうと、益田市の市民グループ「益田の医療を守る市民の会」が発足し、草の根の活動を始めています。
益田市では、近年、初期臨床研修制度などの影響で医師不足が加速しました。
平成20年11月には、産科の常勤医が不足し、益田圏域で唯一お産を取り扱っていた益田赤十字病院が里帰り出産の受け入れ休止に踏み切りました。
こうした事態を受け、市民有志の呼びかけで、同会は昨年3月に設立されました。
これまでに、益田赤十字病院や益田保健所の関係者をパネリストに招いたシンポジウムを開催したり、市民を集めて地元の医師と語り合う会を企画してきました。
7月下旬、「ふれあいミーティング」と名付けて催した会合には、益田赤十字病院の小児科医4人と幼児をもつ地元の保護者など13人が参加し、
夜遅くまで熱心に意見が交わされました。
医師と市民がひざを突き合わせ、じっくり日ごろの悩みや疑問を語り合う機会は少なく、参加者はお互いに、新たな気付きを得ていたようでした。
同会は、「救急車は必要な時だけ呼ぶ」「診療時間外に受診する『コンビニ受診』は控える」「かかりつけ医を決める」といった、医師の負担軽減につながる目標を掲げ、
会報などで市民への周知も行っています。
同会の森田泰精(もりたやすあき)会長は「大勢の市民が危機感を共有し、地域医療を再生したい」とし、さらに多くの市民の参加を呼びかけています。

ふれあいミーティングに参加し、日常の悩みや疑問を語り合う医師と保護者たちの写真
ふれあいミーティングに参加し、日常の悩みや疑問を語り合う医師と保護者たち


「大勢の市民が危機感を持ち、地域医療を再生したい」と語る森田泰精会長の写真
「大勢の市民が危機感を持ち、地域医療を再生したい」と語る森田泰精会長

島根県の看護師確保対策

医師と並び、看護師の確保も重要な課題です。
県では看護学校卒業者の県内就業や看護師を目指す中高生の育成に力を入れています。

地域推薦入学制度


県内の養成施設を卒業し、看護職の道に進む学生は例年300人程度ですが、そのうち3〜4割の方が県外の医療機関に就職しています。
対策の一つとして県は、平成20年度に県立石見高等看護学院(益田市)で「地域推薦入学制度」を導入しました。
同制度は、卒業後に出身地域に就業することを確約した者のうち、市町村長からの推薦を受けた者を選抜して入学を認めるものです。
県立石見高等看護学院の地域推薦1期生の月森陽香(つきもりはるか)さんは、古里・大田市からの推薦を受けました。
小学生の時に、大切な家族をガンで亡くした月森さんは「自分が看護師になって世話をしたかった」との思いで、看護師になる決意をしました。
卒業後は古里の病院で働きたいと張り切る月森さんは「患者の気持ちに寄り添い、信頼してもらえる看護師になりたい」と、将来の看護師像を思い描いています。
「古里で信頼してもらえる看護師になりたい」と実習に励む月森陽香さんの写真
「古里で信頼してもらえる看護師になりたい」と実習に励む月森陽香さん

中高生の看護師体験談


県は県看護協会などと連携し、中高生対象の看護師体験会を開催しています。
実際の医療現場に立って仕事への理解を深めてもらい、地域で働く看護師を増やす狙いです。
平成21年度は県内の病院や看護師養成施設など32カ所で実施し、延べ約1000人が参加、本年度も37カ所で計画しています。
看護衣に身を包んだ参加者は、血圧測定や入浴介助、新生児のおむつ交換など、さまざまな仕事を体験します。
奥出雲町の町立奥出雲病院で7月にあった体験会では、看護師の指導のもと、中高生8人が血圧測定や足浴介助などを経験しました。
横田中学3年の吉川真衣(きっかわまい)さんは「家族が入院していた時、親身に接してくれた看護師の姿に憧れ、目指すことにした」と参加の動機を話していました。
中高生たちを前に、同病院の景山咲子・総看護師長は「看護師のやりがいを肌で感じてほしい」とアドバイスしていました。
患者の血圧測定を体験しながら、看護師の仕事に理解を深める中高生たち=奥出雲町、町立奥出雲病院
患者の血圧測定を体験しながら、看護師の仕事に理解を深める中高生たち
=奥出雲町、町立奥出雲病院

医学生と溝口知事が意見交換

医学生の生の声を県の医師確保対策に生かそうと、溝口善兵衛知事と島根大学医学部の学生7人との意見交換会が開催されました。
学生からは、医師としてキャリアを磨くために都会に出る必要性もあるといった声や、地域医療を目指す学生の抱負が披露され、溝口知事は熱心に耳を傾けました。
意見交換会の冒頭、溝口知事は「地域医療の確保は県政の重要課題」と述べ、医師の不足を解消することは「私の中でも大きな仕事の一つ」と学生に話しました。
さらに初期臨床研修制度の導入などで医師が都市に流れた結果、医局を中心とした人事システムが崩れ、各地の病院の医師不足を招いていることなど、県が置かれた現状を説明しました。
これに対し、数名の学生からは「単に都会に出たいという理由だけで、医師が地方から流出するわけではない。
多くの医師は、熱心で優秀な指導者の下で学ぶことができる環境を選んだ結果、都会を選択するのだと思う」という意見が出されました。
こうした学生の率直な思いに、溝口知事も「医師に働く地域を強制することはできない」と理解を示し、
「島根で働く医師が都会で勉強する機会を設けるなど、個人的なキャリア向上と地域勤務を両立できるような制度を整えたい。
教育体制を向上させるため、施設の整備やカリキュラムの工夫について大学とともに研究を進めたい」と県の考えを説明しました。
一方、地域医療に関心を持つ学生は「地域で活動する医師を見ていると、(総合医としての力量が問われる)地域医療ほど高いスキルが求められると痛感する。
だからこそ一生懸命に勉強しないといけない」と力説。さまざまな患者と打ち解け、コミュニケーションを図るためには「専門的な知識に加え、幅広い教養も身につけたい」と話しました。
ほかにも「将来は規模の小さな診療所で、時間をかけた診療がしたい」など、地域医療への思いが聞かれました。
地域で働く医師の確保、定着に向け、溝口知事は「我々も、医師が過重労働にならないよう、緊急でない場合は救急車を呼ばず、診療時間中に診療に行くなど心掛けるべき。
住民と医師とが対話する機会を設け、互いの思いを知ることも大切」と話しました。
医師確保をテーマに懇談した溝口善兵衛知事(中央)と島根大学の医学生の写真
医師確保をテーマに懇談した溝口善兵衛知事(中央)と島根大学の医学生

溝口善兵衛知事(右から3人目)と意見を交わす医学生の写真
溝口善兵衛知事(右から3人目)と意見を交わす医学生

知事が地域医療交流サロンを訪問


知事が地域医療交流サロンを訪問の写真

学生との懇談を終えた溝口知事は、島根大学医学部に今年6月に開設された「地域医療交流サロン」を訪れ、
担当の教授から、医師を求める市町村や医療機関の担当者と医学生が交流し、地域で働く医師の増加を目指すサロンの狙いについて説明を受けました=写真。
溝口知事はこうした場を通じて、学生と地域との交流が広がることに期待を寄せました。


お問い合わせ先
●医師確保対策については医療政策課医師確保対策室
TEL0852・22・6683
●看護師確保対策については医療政策課看護職員確保グループ
TEL0852・22・5252


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