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魂揺さぶる石見神楽

豪華な衣裳と表情豊かな面。早いリズムの八調子や六調子の神楽囃子(ばやし)。神々や鬼たちが躍動するたびに舞台の熱気は高まり、あっという間に客席を飲み込んでいく。子どもたちも食い入るように舞台を見上げ、見よう見まねで手足を動かしている。

そんな光景がいたるところで見られるのが、石見という地域だ。なにしろ、130を超す神楽団体がある。子どもは学校を終えてから、大人は仕事を終えてから、夜な夜な寄り集まって練習に励む。幼い頃からともに神楽を舞って育つ仲間がいる。

ここでは、神楽が生活の一部なのだ。


演目「鈴鹿山」の写真
演目「鈴鹿山」


三谷神楽社中を追って(益田市)

島根県西部、益田市美都町の三谷神楽社中は、明治初年から数えて実に150年の歴史をもつ。

25人の団員の中には、会社員もいれば、自営業や農業のメンバーもいるという。年齢も18歳から70歳までさまざまだ。

8月。地元に完成した屋外ステージのこけら落としに社中が出演すると聞き、車を走らせた。

清流・高津川が日本海に注ぐ益田市の中心部から30分。急峻な中国山地が間近に迫る会場では、住民らが汗を拭きながら神楽の準備を整えていた。舞台の天井には榊(さかき)や紙垂(しで)で飾られた「雲」が拵(こしら)えられている。

大太鼓に小太鼓、手拍子、横笛。神楽衣裳に面、弓、剣、蛇胴。色とりどりの道具を、社中が楽屋に運び込む。昼間の仕事を終えた団員が、ひとり、ふたりと到着しては、衣裳を身に着け始める。

若い舞手が「鈴鹿山」の所作を確認しあっていた。この春に高校を卒業し、県外で働いている二人。盆休みで帰省したところ、社中の先輩に声をかけられて出演することになったらしい。久々の舞台だが、幼い頃からなじんだ舞は体が覚えている。すぐに息が合ってきた。開演を待ちきれない子どもたちが、楽屋をこっそりのぞき込んでいる。

社中の代表いわく、ここでは「舞手はスター」なのだそうだ。小さい頃から神楽舞のスターにあこがれ、やがて一緒に舞うようになり、どっぷり神楽につかって生きる。そして、いつしか自分が子どもたちのスターになっている。そんなストーリーは、石見では珍しくない。

午後7時。日が沈むと、清めの神事である「御殿神楽」が始まった。「雲」の下が、にわかに神聖な空間に変わる。

舞台の前に陣取るのは、子どもたちだ。お目当ては二つ目の演目「恵比須(えびす)」。釣り竿を抱えて舞う恵比須が客席に飴をまく。それをキャッチしようというのだ。

しかし、続く「鈴鹿山」では一転。父親の出番を楽しみにしていた子どもも、父親が鬼の姿で登場して荒々しく舞い始めると、怖くて舞台に近づけない。やがて鬼は客席に乱入し、子どもたちは声を上げて逃げ回る。会場は沸き、空気が和らぐ。

最後の演目は「大蛇(おろち)」だ。石見神楽の大蛇は口から火を吐く。激しく打ち鳴らされる神楽囃子(ばやし)と、漂う火薬の臭い。星空の下、スサノオノミコトが大蛇の頭を次々に切り落としていく。結末は分かっている。しかし、子どもも大人も舞台から目を離さない。

石見の夜が佳境を迎える。


三谷神楽社中のメンバーの写真
三谷神楽社中のメンバー


楽屋に並ぶ神楽面の写真
楽屋に並ぶ神楽面


「雲」の取り付け作業の様子
「雲」の取り付け作業


開演を控え神楽衣裳に着替える様子
開演を控え神楽衣裳に着替え


三谷神楽社中の「大蛇」の写真


益田市の地図


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