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新庄二郎が愛した浮世絵

松江市出身の実業家・新庄二郎(しんじょうじろう)氏(1901〜96年)が収集した浮世絵コレクション名品選「没後20年新庄二郎が愛した浮世絵」が、島根県立美術館で開かれます。葛飾北斎(かつしかほくさい)などの浮世絵を集めた「新庄コレクション」は、摺(す)りや保存状態が極めて良く、国内外で高い評価を得ています。制作当時の美しい色彩と高度な技術を堪能できる同コレクションは、島根に残されています。


冨嶽三十六景・凱風快晴の画像
葛飾北斎《冨嶽三十六景・凱風快晴》


照明器具の製作会社を経営していた新庄氏は昭和25年ごろから、風景版画や肉筆画、美人画、異国風俗を描いた長崎絵など多様な浮世絵を自ら吟味して集めました。「虫に食われぬよう、水、火にも入らぬよう」心を砕いて守ってきたコレクションは、平成2年までに故郷の島根県に譲渡。今回の展覧会では、同美術館に収蔵された471点の中から選ばれた名品が展示されます。

北斎の代表傑作「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)凱風快晴(がいふうかいせい)」は新庄コレクションの目玉。版画は、いくつもの版木を使って色付けする複雑な技法のため、大量に摺り重ねていくうちに、輪郭線からずれてしまうこともありますが、新庄コレクションの赤富士はぴったりと合っています。また、褐色から赤色へのグラデーションをほどこす「ぼかし摺り」や、富士の山肌にうっすらと浮かび上がる版木の木目の美しさも鑑賞できます。その真価は、北斎研究の権威、リチャード・レインの著書の表紙を飾り、大阪万博(1970年)の万国博美術展で世界中の名画とともに展示されたことからもうかがえます。

全55図をそろえた歌川広重(うたがわひろしげ)の「東海道五拾三次之内(とうかいどうごじゅうさんつぎのうち)」の中でも「池鯉鮒(ちりゅう)首夏馬市(しゅかうまいち)」は、最初期に摺られ、絵師の意図が正確に反映されたものです。版木が摩耗する前のシャープな線が魅力的で、松の後ろに描かれている小山は、この「初摺(しょずり)」にのみ描かれ、希少性も高い名品です。

江戸中期の浮世絵師・鈴木春信(はるのぶ)の「見立三夕(みたてさんせき)西行法師(さいぎょうほうし)」には、明治時代に浮世絵をヨーロッパで販売した美術商・林忠正(ただまさ)の丸印と、パリの宝石商で19世紀末最大の浮世絵コレクター、アンリ・ヴェヴェールの鑑蔵印(かんぞういん)が押されています。鋭い鑑識眼を持つ2人の手を経たという作品の来歴が付加価値となるとともに、海外を巡り250年の時を経てもなお良好な状態を保つ逸品に、新庄氏の浮世絵に対する情熱がみてとれます。

浮世絵史上最も有名な美人画絵師・喜多川歌麿(きたがわうたまろ)の「糸屋小(いとやこ)いとが相(そう)」は、顔や手のしぐさを大きくとらえた「大首絵(おおくびえ)」で、女性美を表現しています。左右に大きく張り出した髪は、当時流行の髪型「燈籠鬢(とうろうびん)」で、髪の毛一本一本を緻密に描く「毛彫(けぼ)り」と呼ばれる彫師(ほりし)の技が光ります。

繊細で高度な技術を駆使して江戸庶民の生活ぶりや美意識を描き、時にはファッション誌や旅行誌のような役割を果たした浮世絵。その精華を、新庄コレクションは余す所なく今に伝えます。


東海道五拾三次之内・池鯉鮒・首夏馬市の画像
歌川広重《東海道五拾三次之内・池鯉鮒・首夏馬市》


糸屋小いとが相の画像
喜多川歌麿《糸屋小いとが相》


(見立三夕)西行法師の画像
鈴木春信《(見立三夕)西行法師》


新庄二郎氏の写真
新庄二郎氏


●お問い合わせ
島根県立美術館(TEL:0852・55・4700)

●メモ
会期は1月2日(月)〜2月6日(月)。1月3日を除く火曜日と、1月4日休館。




お問い合わせ先

広報室

島根県広報部広報室
〒690-8501
島根県松江市殿町1番地   
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