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生活に寄り添う石見の焼き物

江戸時代に島根県西部の石見(いわみ)地方で始まり、生活陶器として暮らしに寄り添い続ける「石見焼」。良質な都野津(つのづ)層粘土に恵まれた石見の風土が育んだ焼き物の歴史と、伝統産業を担う若手職人を紹介します。

石見焼の写真
石見焼

石見焼は、石見地方で焼かれる陶器の総称で、18世紀中頃から始まったといわれています。耐火度の高い都野津層粘土を、1300度の高温で焼き上げるため、とても堅く、耐酸、耐塩、耐水に優れています。そのため、石見焼の代名詞となっている大型の水がめ「はんど」は、生活に欠かせない品として、北前船で全国各地へと運ばれました。

また、石見焼は、出雲地方で採れる来待石(きまちいし)の釉薬(ゆうやく)が生み出す褐色のものがよく知られていて、同じ都野津層の粘土を原料とした赤い石州瓦も、はんどとともに流通しました。今も石見地方を中心に、集落の屋根に連なる赤瓦が地域特有の景観を形成しています。

はんどは、江戸時代から近代まで盛んに生産されていましたが、戦後は水道普及やプラスチック製品の増加によって需要が減少。最盛期には100軒を超える窯元があったと言われていますが、現在、石見陶器工業協同組合に加盟する窯元は7軒となりました。

窯は減っているものの、石見焼の持つ温かい風合いを生かしながら、種類やデザインを工夫し、バリエーションに富んだ日用陶器を作り続けています。現代の生活スタイルや料理に合う皿やカップ、テーブル、イスなど、県外から注文を受けたり、地元の飲食店で使用されたりしています。

江津(ごうつ)市の有福(ありふく)温泉街中心部の高台にある「有福cafe(カフェ)」では、イスや傘立て、食器などさまざまな用途で石見焼を利用しています。藤井有紀子(ゆきこ)店長は、「ぬくもりがあり、窯元によって色合いも違って楽しめる」と魅力を話します。

はんどの写真
はんど


赤瓦が印象的な江津市内の町並みの写真"
赤瓦が印象的な江津市内の町並み


デザートを盛りつけた石見焼の食器の写真
デザートを盛りつけた石見焼の食器


有福cafeのベランダ席に使われている石見焼のイスの写真
有福cafeのベランダ席に使われている石見焼のイス


石見の地に根付く焼き物の文化を絶やさぬよう、伝統技術を守り受け継ぐ者、伝統を土台に新しいものを探求する者。若手職人の思いを聴きました。


昭和10年開窯の石州嶋田窯。棒状の粘土を積み上げて成形する伝統的な技法「しの作り」を用い、はんどなどの大型陶器を得意としてきました。水道の普及ではんどが使われなくなってからも、その技法を生かして漬物つぼや傘立てなど、暮らしに身近な陶器を作ってきました。

同窯では、昔ながらの登り窯を使用しています。年5回ほど火を入れる登り窯は、一昼夜、薪で火をたき続けるため、手間暇がかかりますが、ガス窯では出せない独特の色味が出るのが魅力です。陶器に釉薬をあえてつけていない部分には、木の灰がつき、味わい深い色味となり、一つ一つが異なる表情を持ちます。

現在は、伝統工芸士で3代目の嶋田孝之さん(69)と、息子で4代目の健太郎さん(39)が伝統の技を守っています。県外から多くの受注を受けており、カップなどの小物を中心に製作。素朴な色合いのものから鮮やかな青色などカラーバリエーションも豊富で、ろくろを回しながら指で模様をつけるなどデザイン性のある陶器は、暮らしに彩りを添えます。「やった分だけ身につく」とろくろを回し続ける健太郎さんは、「お客様が求める物を作る」ことを第一に考えて、取り組んでいます。

しの作りの技術は未だ孝之さんには及びませんが「受け継ぎたい技術」と、伝統継承への思いを胸に、作陶に励み続けます。

ろくろを回す嶋田健太郎さんの写真
ろくろを回す嶋田健太郎さん


石州嶋田窯で販売している石見焼の写真
石州嶋田窯で販売している石見焼


4代目の健太郎さん(左)と3代目の孝之さんの写真
4代目の健太郎さん(左)と3代目の孝之さん


大正14(1925)年創業の元重(もとしげ)製陶所は、もとは石見焼の窯元として、すり鉢のほか、はんどや食器など幅広く製作していました。昭和62年、高温で硬く焼き締める石見焼の技術を土台に、すり鉢専門メーカーに業態転換し、現在は、全国大手のホームセンターで過半のシェアを誇ります。

こだわりは、くし状のへらを使って、「目」と呼ばれるすり鉢の溝を刻む「目かき」。コスト削減のために製造ラインは機械化する一方、目かきだけは手作業で行います。粘土の固さに合わせて力加減を微調整できるため最適な深さの目が作れ、すりこぎをなめらかに動かせる鉢が出来上がります。

この技を受け継ぐのが、平成27年に大阪から帰郷した4代目の慎市(しんいち)さん(31)です。かいた目に重ねるように次の目をかくため、「力が強すぎると段差ができてしまうし、弱すぎると前にかいた目が消えない」といい、今も試行錯誤を重ねています。

慎市さんは、すり鉢を使った料理教室を開催するほか、若者がすり鉢を使うきっかけを作ろうと、離乳食用のすり鉢を開発中。片手ですれるように鉢の底を広くして倒れにくくするなどの工夫をし、離乳食の時期が終わってもほかの用途で使える利点もアピールしていく考えです。

かつて、すり鉢専門に転換した時のように、「必要とされ続ける努力をしないといけない」と、現代の生活に即した石見焼を追求しています。

目かきを行う元重慎市さんの写真
目かきを行う元重慎市さん


元重製陶所のすり鉢の写真
元重製陶所のすり鉢


4代目の慎市さん(左)と3代目の彰治さんの写真
4代目の慎市さん(左)と3代目の彰治さん


江津市の地図


●イベント情報

伝統的工芸品展WAZA2017

2月16(木)〜21日(火)

東武百貨店池袋店


●お問い合わせ
有福cafe(TEL:0855・56・0070)
石州嶋田窯(TEL:0855・55・1337)
元重製陶所(TEL:0855・52・2927)




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