• 背景色 
  • 文字サイズ 

たたら製鉄の遺構と文化

日本古来の鉄づくり技法「たたら製鉄」。世界に誇る日本刀の素材「玉鋼(たまはがね)」を今なお造り続けている出雲の地には、鉄と共に育まれた文化も息づいています。

去る4月25日、鉄の道文化圏推進協議会(安来市、奥出雲町、雲南市)の「出雲國(いずものくに)たたら風土記〜鉄づくり千年が生んだ物語〜」は、文化庁の「日本遺産」に認定されました。

自然と人とが共存する中国山地の地域社会を支えてきた「たたら製鉄」の遺構と受け継がれる文化を紹介します。


雲南市吉田町/高殿の写真
雲南市吉田町/高殿


たたらの遺構

菅谷(すがや)たたら山内(さんない)

鉄穴流しの跡地を利用してできた福頼集落の棚田の写真
鉄穴流しの跡地を利用してできた福頼集落の棚田


全国で唯一現存する、製鉄炉を覆う菅谷たたらの「高殿(たかどの)」(雲南市吉田町)。奥出雲三大鉄師の一つの田部家が経営し、大正10(1921)年まで170年にわたって操業されていました。高殿には、砂鉄を木炭で製錬する縦3メートル、横1メートル、高さ1,2メートルの炉を中心に、風を吹き込む鞴(ふいご)が備えられています。世界一ともいわれた高品質の鋼はここで生産されていました。

高殿の傍らにある樹齢約200年といわれる桂の木は、鉄造りの神様「金屋子(かなやご)」が降臨した神木とされています。春先の数日間だけ、真っ赤に芽吹く桂の木。夕日を浴びてまるで炎が燃えているように見え、訪れた人は魅了されます。

菅谷たたら山内にはこのほか、山内全体を差配する事務所棟「元小屋(もとごや)」(平成29年10月まで保存修理工事予定)や、たたら操業の総責任者である村下(むらげ)と職人の住居棟「三軒長屋」などがあります。たたら師の日々の暮らしもここで営まれていたのです。

国の重要有形民俗文化財に指定されている高殿は、来春運行開始予定のJR西日本の寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」の立ち寄り地にも選ばれました。


鉄穴(かんな)流し

良質な砂鉄を多く含む中国山地脊梁(せきりょう)部に位置する奥出雲町では、丘陵を切り崩し、水流によって比重選鉱する「鉄穴流し」が盛んに行われていました。その跡地一帯は、福頼集落のような広大な棚田に再生されました。豊かな棚田で作られた米は「奥出雲仁多米」として今日も高い評価を得ています。

鉄穴流しのための水路は、農業用の灌漑(かんがい)用水路として活用され続け、墓地など、信仰対象のため切り崩されなかった「鉄穴残丘(ざんきゅう)」が棚田の中に点在しています。たたら製鉄の面影が色濃く残る美しい農村風景は、人々の生活、生業(なりわい)を基盤に形づくられたもので、国の重要文化的景観に選定されています。


●お問い合わせ
(公財)鉄の歴史村地域振興事業団(TEL:0854・74・0311)
奥出雲町教育委員会社会教育課(TEL:0854・52・2680)


高殿と赤く芽吹いた桂の木の写真(見頃は3月下旬から4月にかけて)
高殿と赤く芽吹いた桂の木(見頃は3月下旬から4月にかけて)


鉄と共に育まれた文化

安来(やすぎ)節

民謡「安来節」とどじょうすくい踊りの写真
民謡「安来節」とどじょうすくい踊り


「十神山(とかみやま)から沖見ればいずくの船かは知らねども滑車(せみ)のもとまで帆を巻いてヤサホ/\と鉄積んで上(かみ)のぼる」

どじょうすくい踊りの唄として全国で親しまれている民謡「安来節」。歌詞には、奥出雲などのたたらでつくられた鉄の集積地、積み出し港として栄えた安来の姿が表れています。江戸中期に、北前船の船頭たちが歌う全国の追分やおけさ節といった民謡などの影響を受けながら生まれ、現代まで歌い継がれています。

安来市古川町にある安来節演芸館では、安来節やどじょうすくい踊りの公演があり、島根を代表する伝統芸能に触れることができます。


ヤマタノオロチ

現在、神楽(かぐら)で演じられているヤマタノオロチ退治神話は、製鉄にまつわるという説があります。

スサノオが降り立ったとされる船通山(せんつうざん)に源を発し、数々の支川を合わせて北流する斐伊川(ひいかわ)。この斐伊川上流域で鉄穴流しが盛んに行われたことにより、下流域では大量の土砂が堆積して天井川となり、度々洪水に見舞われました。ヤマタノオロチは氾濫する斐伊川をなぞらえたもので、スサノオに退治されたオロチの尾から出る天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)(草薙剣〔くさなぎのつるぎ〕)は、たたらによって産まれた日本刀を象徴するものといわれています。神楽もまた、たたら文化を今に伝えているのです。


ヤマタノオロチ退治神話をモチーフにした神楽の写真
ヤマタノオロチ退治神話をモチーフにした神楽


●お問い合わせ
安来節保存会(TEL:0854・28・9988)
雲南市役所商工観光課(TEL:0854・40・1054)


安来節演芸館、福頼集落(棚田)、管谷たたら山内のマップ




お問い合わせ先

広報室

島根県広報部広報室
〒690-8501
島根県松江市殿町1番地   
【電話】0852-22-5771
【FAX】0852-22-6025
【Eメール】kouhou@pref.shimane.lg.jp