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島根の匠石見根付を彫る田中俊晞さん

江戸時代、現在の江津市で誕生した石見根付。「石見もの」「石見派」と称され、国内有数の産地、流派として名をはせましたが、明治以降廃れました。
同市嘉久志(かくし)町の彫刻家・田中俊晞(たなかとしき)さんは石見根付の技法を再現し、継承しています。
現代によみがえった独特な技が、かつての隆盛を思い起こさせています。

田中俊晞さん
 

少年時代から肥後(ひご)ナイフを常に持ち、木や竹を削って虫などさまざまな物を作っていたという田中さん。
彫刻家を目指して江津工業高校工芸科へ進学し、昭和36年に卒業すると、地元の製紙工場へ入社。
「長男だったし、生活の基盤がないと、作りたいものだけを作るということはできないと思った」。
定年退職するまで仕事と彫刻を両立させました。
昭和48年には、石見神楽面師で長浜人形師の安東三郎(あんどうさぶろう)氏(江津市)、彫刻家の森本眞象(もりもとしんしょう)氏(大田市、故人)に師事し、本格的に面作りや彫刻の世界に入りました。
根付との出合いは、安東氏のアトリエで石見根付の祖である清水巌(しみずいわお)のクモの根付を見た時。
「素晴らしさに目を見張った」と田中さん。
巌が居を構えたのが、自分と同じ嘉久志町という因縁も感じ、根付制作の世界へ。
椿の木でまねて彫り、次は石見根付独特の材料であるイノシシの牙に挑戦しました。
「非常に硬くて歯が立たず、彫刻刀では無理だった。
根付専用の道具を試行錯誤して作り、牙に挑むこと10年、ようやく何とか彫れるようになった」平成7年、根付に造詣が深かった故高円宮さまが江津市を訪問された際、桜の木で作った根付を贈呈したところ、
「あなたは石見人だからイノシシの牙で彫ってみてはどうですか」と勧められ、根付の制作に本腰を入れるようになりました。
2年後の「第20回日本の象牙彫刻展」にまず桜の木の根付を初出品して入選し、平成19年の第30回同展ではイノシシの牙の根付「渓流」で最高の高円宮賞に輝きました。
田中さんは、手のひらに収まる大きさの根付を制作するのにも3カ月かけます。
特に、根元が空洞になっていて薄いイノシシの牙を彫る時は神経を使います。
一本一本、厚みなどが微妙に異なり、無理をすると割れてしまうからです。題材は、カエルやクモなど巌一門が得意とした小動物を扱っています。
「特にカエルが好き。鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)のように、カエルは擬人化し、世の中を風刺しやすい」。
銘が浮き上がる石見根付特有の浮き彫りの手法も独学で解明。
田中さんの根付は平成15年度に島根県ふるさと伝統工芸品の認定を受けました。
「江戸時代に、清水巌らがいかに芸術性の高い仕事をしていたか、多くの人に知ってもらいたい。
そのためにも技を伝承し、作り続けていきたい」。
石見根付制作への情熱は、70歳になった今も衰えることがありません。


高円宮賞に輝いた「渓流」の写真(イノシシの牙)
高円宮賞に輝いた「渓流」(イノシシの牙)

「おーとー豆」の写真(桜)
「おーとー豆」(桜)

「萌いずる」の写真(イノシシの牙)
「萌いずる」(イノシシの牙)

「輪」の写真(象牙)
「輪」(象牙)

「百足」の写真(黒サンゴ)
「百足」(黒サンゴ)

○お問い合わせ
田中俊晞さん
(TEL0855・52・5855)
 

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