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島根のたたら

日刀保たたらで年数回行われているたたら製鉄の操業の写真(協力/公益財団法人日本美術刀剣保存協会)
日刀保たたらで年数回行われているたたら製鉄の操業(協力/公益財団法人日本美術刀剣保存協会)
 

古代から現代、そして未来へ

 

日本で生まれた製鉄の伝統技法「たたら」。島根では、中国山地の砂鉄と木炭を原料に、古代から鉄作りが行われてきました。
その生産量は、江戸時代後期から明治時代初めの最盛期には国内の生産量の半分以上を占めたといいます。
たたらは、第2次世界大戦後、一時途絶えましたが、日本古来の製鉄法を未来に伝えるために復活しています。

 

 

鉄の道具が大陸から伝わったのは弥生時代のことです。
古墳時代後期には国内で鉄の生産が始まり、島根では邑南町と雲南市掛合(かけや)町でこの時代の製鉄遺跡が発見されています。
この段階の製鉄炉は一辺が50センチほどの小さなものでした。
天平5(733)年に編纂(へんさん)された『出雲国風土記』には、仁多郡の三處郷(みところのさと)、布勢郷、三澤郷、横田郷について「以上の諸(もろもろ)の郷より出す所の鉄(まがね)、堅くして、雑具(くさぐさのもの)を造るに堪(た)ふ」との記載があります。
古代には、今の奥出雲町一帯が鉄生産の拠点だったことがうかがわれます。
中世になると、製鉄炉は長方形になって大型になり、一辺の長さが2メートルを超えるものも現れます。
炉の大型化は、鉄の量産化を可能にするとともに、施設の大規模化を促しました。
その完成されたものが、江戸時代の「高殿(たかどの)たたら」です。
高殿と呼ばれる建物の中で連続した操業が行われ、周辺施設を含め製鉄工場と言えるものに発展しました。
たたらには「一土、二風、三村下(むらげ)」という言葉があります。
土とは製鉄炉の粘土である釜土のこと、風は炉内の温度を上げるために送られるふいごの風のことです。
鉄を溶かすには、炉内の温度を千数百度にしなければなりません。
送風は製鉄の成否を左右しましたが、江戸時代に足踏み式の天秤(てんびん)ふいごが発明され、鉄の量産が可能になりました。
村下とは、たたら操業の責任者のことで、その技は一子相伝(いっしそうでん)門外不出とされました。
たたら製鉄は、原料である砂鉄と木炭を大量に確保するとともに、村下をはじめとする職人や家族が生活する集落「山内(さんない)」を維持しなければならず、経営には相当な財力が必要でした。
旧松江藩は、有力なたたら製鉄経営者であった田部(たなべ)家(雲南市吉田町)、櫻井(さくらい)家(奥出雲町上阿井)、絲原(いとはら)家(奥出雲町大谷)などを鉄師として製鉄を許可し、藩の財政に貢献させました。
たたらは江戸後期から明治初期にかけて最盛期を迎えます。
しかし、安価な洋鉄が大量に流通するようになると経営が行き詰まり、たたらは大正14年にいったん途絶えました。
その後、昭和6年の満州事変を皮切りに戦争が拡大すると、軍刀の需要に応えるため、たたらは復活します。
それも終戦で廃止されましたが、昭和52年の日本美術刀剣保存協会(日刀保)が、美術刀剣の材料を作るとともに、技術保存のため、
奥出雲町大呂に残っていた戦時中のたたらを「日刀保たたら」として復活させました。
この日刀保たたらは、毎年冬に数回操業しています。
村下の木原明(きはらあきら)さんらは3昼夜にわたって操業を行い、(けら)と呼ばれる鉄の塊を作ります。
この中に日本刀の材料となる玉鋼が含まれているのです。
その技術は後継者に代々伝承され、千数百年にわたる島根のたたら製鉄はこれからも未来へ受け継がれていきます。


『出雲国風土記』の写本(島根県古代文化センター所蔵)。右ページ3行目の下段に仁多郡の鉄について記載されている
『出雲国風土記』の写本(島根県古代文化センター所蔵)。
右ページ3行目の下段に仁多郡の鉄について記載されている


古墳時代後期の製鉄遺跡を参考に再現した古代のたたら製鉄炉の模型(和鋼博物館所蔵)
古墳時代後期の製鉄遺跡を参考に再現した古代のたたら製鉄
炉の模型(和鋼博物館所蔵)


天秤ふいごの実物と、再現したたたらの製鉄炉の写真(和鋼博物館所蔵)
天秤ふいごの実物と、再現したたたらの製鉄炉(和鋼博物館所蔵)

 


たたらを巡る

たたら製鉄が盛んだった島根県の出雲地方
たたら製鉄が盛んだった島根県の出雲地方。
かつての隆盛を今に伝える貴重な遺跡や資料が残っており、各地の博物館や資料館などで展示されています。


(けら)から玉鋼を取り除いた部分を加熱・鍛錬する大鍛冶の作業の模型の写真(雲南市吉田町吉田・鉄の歴史博物館)
(けら)から玉鋼を取り除いた部分を加熱・鍛錬する大鍛冶の作業の模型(雲南市吉田町吉田・鉄の歴史博物館)


和鋼(わこう)博物館
1.和鋼(わこう)博物館
(安来市安来町TEL0854・23・2500)
たたら製鉄に関する総合博物館。たたらの歴史、技術、鉄の流通などを紹介。
製鉄用具は国の重要有形民俗文化財に指定され、天秤(てんびん)ふいごを踏む体験もできる

金屋子(かなやご)神社
2.金屋子(かなやご)神社
(安来市広瀬町西比田TEL0854・34・0206=神社連絡所)
たたらなど、鉄に関わる仕事に従事する人々の守護神・金屋子神を祀る金屋子神社の総本社。
金屋子神社や金屋子神に関する資料を展示している、隣接の金屋子神話民俗館(TEL0854・34・0700)は4月1日再開

田儀櫻井(たぎさくらい)家たたら製鉄遺跡・朝日たたら跡
3.田儀櫻井(たぎさくらい)家たたら製鉄遺跡・朝日たたら跡
(出雲市佐田町高津屋TEL0853・21・6893=出雲市文化財課)
国の指定史跡。朝日たたらは、製鉄炉の地下構造が見学できる。
出雲市多伎町奥田儀には有力鉄師である田儀櫻井家の居宅で、本拠地であった宮本鍛冶山内遺跡がある

菅谷(すがや)たたら山内(さんない)
4.菅谷(すがや)たたら山内(さんない)
(雲南市吉田町吉田TEL0854・74・0350)
国内で唯一現存する高殿と山内集落。
大正10年まで170年にわたって操業された。
たたら山内の雰囲気が体感できる。
国の重要有形民俗文化財の高殿などは現在保存修理の工事が行われている(〜平成28年度)

田部(たなべ)家土蔵群
5.田部(たなべ)家土蔵群
(雲南市吉田町吉田)
松江藩随一の鉄師だった田部家。
土蔵群は道路沿いに建っており、鉄で栄えた往時の面影を今に伝えている

鉄の歴史博物館
6.鉄の歴史博物館
(雲南市吉田町吉田TEL0854・74・0043)
たたら製鉄の技術や歴史をわかりやすく紹介。
製鉄と技法をテーマにした1号館と、鉄山経営と鍛冶集団をテーマにした2号館がある。
雲南市吉田町内には「鉄の未来科学館」(TEL0854・74・0921)もある

櫻井(さくらい)家住宅・可部屋集成館
7.櫻井(さくらい)家住宅・可部屋集成館
(奥出雲町上阿井TEL0854・56・0800)
住宅は国の重要文化財。有力鉄師であった櫻井家の居宅で、庭園には松平不昧公が「岩浪(がんろう)の滝」と命名した滝がある。
敷地内の可部屋集成館は同家に伝わる美術工芸品、たたらなどの歴史資料を展示

たたら角炉(かくろ)伝承館
8.たたら角炉(かくろ)伝承館
(奥出雲町上阿井TEL0854・52・2680=奥出雲町教委)
櫻井家が昭和10年から10年間経営した角炉の展示施設。
たたら製鉄法に洋式製鉄の技術を取り入れた角炉の構造が分かる

絲原(いとはら)家住宅・絲原記念館
9.絲原(いとはら)家住宅・絲原記念館
(奥出雲町大谷TEL0854・52・0151)
住宅は国の登録有形文化財。
有力鉄師だった絲原家の居宅、庭園のほか、林間散策路も整備されている。
敷地内にある絲原記念館は同家に伝わる美術工芸品、たたらなどの歴史資料を展示

奥出雲たたらと刀剣館
10.奥出雲たたらと刀剣館
(奥出雲町横田TEL0854・52・2770)
現在、唯一操業されている「日刀保たたら」(非公開)の製鉄炉地下構造を実物大の模型で展示。
たたらで生産される玉鋼を用いた美術刀剣の作刀過程も展示解説している
 


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広報室

島根県広報部広報室
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