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特集1「石見神楽」

石見神楽


神々と人々が同じ空間に存在する不思議


島根県西部、石見地方では秋祭りになると、各地の神社で伝統芸能の石見神楽が奉納される。
太鼓や笛のリズムに乗り、華麗な衣装に身を包み、神と鬼の面をつけた舞い手たちが舞台狭しと熱演を繰り広げる。
かがり火に浮かび上がるその姿は、燃え盛る石見人のエネルギーそのものだ。


神を迎え、舞を捧げる

 

石見神楽はもともとは農神にささげた田楽が発祥といわれる。
古くは神職が演じていたが、明治時代になって民間に移り、いわゆる素人神楽と言われるようになって各地に広がり、隆盛となった。
神楽はテンポが緩やかな六調子と速い八調子に分けられ、六調子の神楽は詞章(ししょう)が比較的短く、八調子の神楽は長く古典的な詞章となっている。
石見人の気質には演劇的でリズミカルな八調子の方が合うようで、今では八調子で舞う社中(しゃちゅう)が多くみられる。
石見地方には100を超える神楽社中があるが、いずれも地域に根差した舞が特徴。
仕事や家事を遣り繰りしながら練習に打ち込み、お年寄りから若者へ、親から子へと、地域の舞が連綿と受け継がれる。
それだけに「神楽は生活の一部」と言われるほど身近な存在。
例え舞の中身が理解できなくても、独特の神楽のリズムは石見人の心を引き寄せる。
特に地域の祭りにあわせて披露される奉納神楽は、伝統のにおいを色濃く感じさせる。
神々と人々が同じ空間に立ち、両者が融合する不思議な世界が石見神楽の魅力といえるのではないか。

かがり火に浮かび上がる舞台で演じられる石見神楽の写真
かがり火に浮かび上がる舞台で演じられる石見神楽。独特のリズムが石見人の心を揺さぶる

 

夜ふけまで続く舞岡見神遊座


夜のとばりがおりた浜田市三隅町の岡見八幡宮。
境内にはかがり火がたかれ、毛布や座布団を抱えた地域の人たちが集まる。
太鼓や笛の音とともに地元の石見神楽社中・岡見神遊座の舞台が始まった。
神遊座にとって、地元の神社に奉納する神楽は1年の最大のイベント。
社中の副代表を務める大田久一さんは「豊作に感謝する思いをこめて舞う」と話す。
最初は「神迎(かんむかえ)」と呼ばれるお清めの舞。
そして神と鬼が登場する「八幡」「鍾馗(しょうき)」などと続き、「大蛇(おろち)」を挟んで、
三十数年ぶりに復活させた農事に関する哲理を説いた「五神」を奉納した。
「地域を大事にしたいとの思いがあってこそ神楽を舞い続ける意義がある。
兄弟仲良くして国土を守るという演目の五神は、その精神を伝えているのではないだろうか。
表舞台に立つ人だけでなく、女性や子どもたちも含めて地域を守っていきたい」と大田さんは熱く語る。
午後8時すぎから始まった舞台は、途中でご祝儀の披露をしながら翌日の午前零時過ぎまで4時間余り繰り広げられた。
田舎でも地域の人たちが触れ合う場が少なくなった現在、境内では地域の絆(きずな)がしっかりと根付いていた。

 

 

 

幻想的な雰囲気が漂う夜神楽の舞台
岡見八幡宮
境内で防寒用の毛布をかけて神楽見物する地域住民
夜神楽の風景の一覧表
幻想的な雰囲気が漂う夜神楽の舞台岡見八幡宮の写真 境内で防寒用の毛布をかけて神楽見物する地域住民の写真

 

 

 

 

お清めの舞の「神迎」 異国の悪魔王を退治する「八幡」 約30年ぶりに披露された「五神」 「大蛇」を退治するスサノオノミコト 子どもたちに人気の「恵比須」
夜神楽の演目一覧
お清めの舞の「神迎」 異国の悪魔王を退治する「八幡」 約30年ぶりに披露された「五神」 「大蛇」を退治するスサノオノミコト 子どもたちに人気の「恵比須」

 

 

 

疲れ知らず上府神楽社中


同じ夜、浜田市上府(かみこう)町の上府八幡宮では石見神代神楽上府社中の奉納神楽が行われた。
こちらも年に1度の晴れ舞台で、岩川清代表は「地域住民と一体となれる場で、気合が入る」と語り、
子供神楽団も一緒に夜明けまで熱演を展開。
境内には手作りの屋台も店開きして、大勢の観客は食べながら、飲みながら舞台を楽しんだ。
上府社中の面々は1時間ほど仮眠をとった後、江津市松川町の太田八幡宮に出向いて神楽を奉納。
メンバーによると「近隣の神社に呼ばれて年20回以上も出掛ける」ほどで、疲れはみえない。
楽しみにしていた住民を前に、昼前から日没まで華麗な舞を披露した。
神楽を続ける理由について岩川代表は「郷土に奉仕する気持ちと、自分を磨くという気持ちがある。
もちろん上手に舞いたいという向上心がないと続かない。
浜田に神楽の殿堂ができたらうれしい」と夢見る。


手品のような動きを見せる「天蓋」の写真
手品のような動きを見せる「天蓋」

 

 

 

美しい女性が鬼に変身する「黒塚」
黒塚の写真一覧
美しい女性が鬼に変身する「黒塚」の写真その1 美しい女性が鬼に変身する「黒塚」の写真その2 美しい女性が鬼に変身する「黒塚」の写真その3

 

 

 

 

上府八幡宮では夜を徹して早朝まで神楽が続いた
夜神楽の風景写真一覧
上府八幡宮では夜を徹して早朝まで神楽が続いた写真その1 上府八幡宮では夜を徹して早朝まで神楽が続いた写真その2

 

 

 

 

 

迫力満点の「大蛇」


石見神楽のハイライトは何といっても大蛇だ。
神話をもとにしたこの演目は、スサノオノミコトがヤマタノオロチのいけにえにされようとする老夫婦の愛娘のイナタヒメを助けるために、
オロチに毒酒を飲ませて退治するという物語。
目を光らせ煙幕を吐きながら現れる大蛇は、それだけで迫力満点。
その大蛇が1頭だけでなく何頭も舞台に登場する。
長い蛇腹を上手に操ってとぐろを巻き、大蛇同士が絡み合いながら舞台狭しと動き回る。
続いてスサノオノミコトとも激しい立ち回りを展開する。
上府社中では「オロチ役は体を見せないよう舞わなくてはならない。
18メートルもある蛇腹を扱うのは難しく、ベテランでないと務まらない」と、岩川代表は解説する。
見応え十分の舞台だけに、詰め掛けた観客は歓声を上げ、盛んな拍手を送る。
演じる人も見る人も満足感に浸り合えるのが、大きな魅力だ。


煙幕の中でポーズをとるスサノオノミコトの写真
煙幕の中でポーズをとるスサノオノミコト

 

 

とぐろを巻くヤマタノオロチ オロチとスサノオが立ち回りを展開
オロチの演目の風景写真一覧
とぐろを巻くヤマタノオロチ オロチとスサノオが立ち回りを展開

 

 

 

 

神楽支える衣装や面・・・


石見神楽の魅力はリズミカルな舞いだけでなく、金糸銀糸の豪華な衣装、迫力満点の鬼面、弓矢や茅の輪などの小道具が支える。石見神楽の魅力はリズミカルな舞いだけでなく、金糸銀糸の豪華な衣装、迫力満点の鬼面、弓矢や茅(ち)の輪(わ)などの小道具が支える。
衣装は専門店による1点ずつの手作り。
神楽社中の注文をもとに龍や虎、唐獅子(からじし)、鶴亀などの絵柄がビロード生地に鮮やかに浮かび上がる。
重さも20kgを超え、専門店によると「制作には1カ月かかり、手の込んだものなら3カ月かかる」そうだ。
神楽面はかつては木彫りだったが、明治15年ごろに和紙を使った紙張りの面が考案され、軽量化が実現した。
また大蛇の蛇腹もちょうちんをヒントに考案された。
弓矢や茅の輪なども神楽の盛り上げに欠かせない。
小道具は舞い手が手に持って攻防の武器としたり、神の依代(よりしろ)として使う。
衣装や面への社中ごとのこだわりと工夫が、魅力アップに通じ、メンバーや地域の結束を強める。
そして互いに切磋琢磨(せっさたくま)することで、石見神楽はますます盛り上がっていく。

4頭のオロチが絡み合う写真
4頭のオロチが絡み合い、迫力満点
 

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