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農業改良普及指導基本計画 平成20年度〜平成23年度

I 普及指導活動の基本方針

1 農業・農村の現況と課題 

ア 立地条件

  隠岐は、島根半島の北東約40〜80kmの日本海上に位置し、4つの有人島と180余りの大小の無人島からなる群島で、平野の少ない、概して急峻な地形より成り立っている。

  全島を大別して島前(どうぜん)・島後(どうご)と称し、島前は最も本土に近い知夫里島(知夫村)・西ノ島(西ノ島町)・中ノ島(海士町)の3主島からなり、島後は島前の北東約18kmに位置し、平成16年10月に4町村が合併した隠岐の島町がある。

 島の総面積は、34,604haで、その86.3%の29,873haが林野で、地域全体が中山間地域に属している。平地は少ないが、隠岐の島町の中条地区、中村地区、都万中里地区、海士町の海士、福井地区には、河川沿いに比較的広い平野が広がっている。

  年間降水量は1,753.8mmであり。隠岐の近海を流れている対馬暖流の影響を受け、平年の月平均気温は13.8℃で冬でも3℃を下らず、冬期の季節風は強いものの比較的温和な気候である。

イ 農業・農村の現況

 隠岐島は急峻な地勢にあって、本土市場との距離も遠いなど、他の地域以上に条件の厳しい中で農業が営まれている。農家の高齢化率も高く、耕種部門の経営規模は零細なものが多いが、隠岐の島町、海士町の平坦部では水稲栽培が、また、島前地域(海士町、西ノ島町、知夫村)を中心に、広大な公共牧野を活用した放牧による肉用牛の繁殖経営がなされており、近年では農外企業の肉用牛部門(繁殖・肥育)への参入などもあり、肉用牛では多頭飼育経営が地域の特徴となっている。

 農業産出額は米、肉用牛が大半を占め、いずれも島外移出産品として高い評価を受けているが、青果物は島内流通量の大部分を本土から移入しており、地産地消の拡大を目指して、小売店・ 学校給食等への地元農産物供給に取り組みつつある。

 【農家】

  農家戸数は年々減少しており、2005年センサスでは過去5年間で15.4%減少し、1,345戸となっている。この内主業農家は42戸で、大部分が副業的・自給的農家で占めている。

  経営の形態としては、島前地域では伝統的な放牧による肉用牛繁殖経営が、島後地域は水稲を中心とした耕種部門が主体をなしている。

  【農業の担い手】

 2005年センサスでは、農業就業人口(販売農家)は、837人(女性41.2%)、うち65歳以上613人(73.2% ※2000年70%)、基幹的農業従事者数は609人、うち65歳以上406人(60.7% 2000年73%)と高齢化が急速に進んでいる。

  こうした状況の中、一方では、担い手の中心としての認定農業者の育成が進み、一部では集落営農組織の高度化や企業の農業参入などの動きが見受けられるようになっている。また、地域によっては島内外からの新規就農者も増加してきている。

  【農業生産】

  農業産出額は、島根農林水産統計(平成17年)によると1,230百万円であり、耕種部門は、隠岐の島町で伸びたものの、ほぼ横ばいであったが、肉用牛は全地域で増加している。  (部門別割合)   米:47.9%  肉用牛:35.8%  野菜:8.1%

  【農用地】

  2005年センサスによる経営耕地総面積は約561ha(2000年約683ha)で減少が著しく、うち水田が74.7%を占めている。また、平坦地の水田地帯では担い手(認定農業者、集落営農)による農地の集積が進んでおり、平成19年度の品目横断的経営安定対策加入者  のカバー率は26%で県平均を上回っている。

 

2 農業・農村の展開方向と活動方針

(1)担い手の育成

 新たな「食料・農業・農村基本計画」の主要課題である、農業の担い手となるべき農業経営の育成確保を図るため、島前、島後にそれぞれ設置された、地域担い手育成総合支援協議会を軸に、認定農業者の育成・確保、集落営農の組織化・高度化(法人化等)を推進するとともに、新規就農者や農業参入企業等を支援することにより、経営感覚に優れ、競争力のある多様な担い手を育成・確保していく。

 【認定農業者】

 管内の認定農業者数は40経営体で年々増加傾向にある。

  経営類型別には隠岐の島町や海士町では水稲主体(26経営体)が最も多く、西ノ島町や知夫村では肉用牛繁殖経営のみ10経営体ある。

  水稲は、認定農業者と農業公社により管内の水稲作付け面積487.3haのうち、159.5ha(32.7%)の耕作を行っている。今後は、さらなる農地の集積と連坦化、団地化を進めるとともに、生産方式や経営管理の合理化を図り、経営改善計画の達成を支援する。

  畜産では、管内の肉用牛繁殖飼養頭数(H19.2.1現在)1,725頭のうち認定農業者15戸で634頭(36.8%)を飼育しており、多頭化が進んでいる。広大な放牧基盤(公共牧野)を活用した、低コストで省力的な経営による大規模化をより一層推進する。

  また、企業参入やIターン者等の新しい担い手も増加傾向にあり、これらの経営の安定化を支援する。

 【新規就農者】

 過去5年間の新規就農者は15人で、農業参入企業への雇用就農者も7名となり、畜産を中心に増加傾向にある。また、認定就農者2名が平成20年4月の就農を目指して研修中である。UIターン者、農業大学校生などの就農志向者も18名存在する。

  就農後間もない新規就農者に対しては、経営基盤の早期確立及び農業経営の安定化を目指し、栽培管理技術(飼養管理技術)と経営管理能力の向上に向けて支援する。研修中の認定就農者の円滑な就農への誘導を行うとともに、就農志向者については就農計画の作成、研修指導、就農相談等により支援する。

  【エコファーマー】

 管内のエコファーマーは6名であり、アイガモ農法等により稲作経営を行っている。今後は安全安心な地産地消システム構築の一貫として支援を行う。

  【集落営農組織】

 管内の集落営農組織は7組織であり、内2組織が法人化しており、他の5組織は共同利用型であることから、今後は法人化等にむけて組織の高度化を図る。また、休止中の組織や新たに組織化を目指す集落についても掘り起こしを行う。

  【農業参入企業】

  平成16年に海士町において農業法人(有)「隠岐潮風ファーム」の誕生を契機に、その後3社が新たに参入しており、経営基盤の早期確立及び安定した農業経営を目指し、栽培(飼養)管理技術と経営管理能力の向上に向けて支援する。また、新たな参入志向企業もあり、円滑な参入に向けての支援を行う。

(2)生産振興   

 隠岐地域では、地域の特色を活かした特産品(肉用牛、藻塩米等)が生産されるとともに、消費者が安心して消費できる農林水産物の生産・供給する地産地消の動きも活発になりつつあり、これらの生産拡大、流通体制整備について支援する。

  【隠岐藻塩米】

・島後地域では、品質の良い、売れる米づくり対策として地元産の藻塩を散布して栽培した「隠岐藻塩米」の生産販売を推進しており、平成19年産は、栽培面積が31.8ha(25戸)まで拡大している。

・販売先は、中京方面の卸商への出荷が中心であるが、食味等、品質の高位安定及び環境にやさしい栽培方法による米が要求されており、今後は、特別栽培農産物基準に統一するべく、栽培マニュアルの策定・普及に努める計画である。

 【肉用牛】

・島前地域を中心として、古くから牧畑と呼ばれる公共牧野4,550ha(内島前4,300ha)を利用した肉用牛の繁殖経営が行われており、現在1,725頭(内島前1,489頭)の繁殖牛が飼育されている。飼育戸数は122戸(内島前90戸)で 、平成元年に比べ半減しているが、飼育頭数は大幅に伸びており、認定農業者や農業参入企業等の規模拡大意欲が強く、今後も増頭傾向が続くと考えられる。      

・飼養戸数の減少により、共同作業で行われてきた公共牧野の維持管理作業に支障をきたしており、雑灌木や不食草の効果的な除去等公共牧野の機能(牧養力)向上の仕組み作りや、新たな牧野の整備等が計画されており、これらの活動への支援を行う。

・農業参入企業による、肥育牛生産も拡大されつつあり、「隠岐牛」としてのブランド化を推進するため購買者や消費者へのPRと販路開拓及び、品質向上を目的とした技術面での支援を行う。

 【島内の地産地消マーケットの展開】

 青果物は、島内流通の大部分が本土から移入されており、地産地消を活発化させるため、新鮮で安全安心な青果物の生産振興を進めるとともに、販路の拡大及び計画生産・出荷のための流通体制を整備する。

1)島後地域

・平成18年度に設立された隠岐の島町地域農産物直売流通振興協議会が中心となり、学校給食や福祉施設への販売体制を整えつつある。

・地産地消協賛店舗やイベント等を含めた販売額は1,250万円となっている。

・生産者の高齢化とそれに伴う生産量の減少など課題もあり、新規生産者の確保、計画生産・計画販売の実施、安全安心栽培の導入、栽培技術の向上が必要である。

・野菜に加え、果樹、農産加工品の取扱量も拡大する。

2)島前地域

・海士町のキンニャモニャセンター内に設置されている農産物の直販コーナー(しゃん山)では、町内で生産された野菜や加工品を販売し、約3,150万円の売上額がある。

・「しゃん山」生産者を中心とした生産・出荷体制の拡充を図り、島前地域各島の商店やスーパーとの連携による地産地消体制の確立を図るため、生産者の確保、周年出荷、栽培技術の向上、GAPの導入、販路の拡大等総合的な指導・支援を展開する。

 

II 課題と推進事項

1 地域プロジェクト課題

 環境農業の推進 

 隠岐の島町重栖川流域には、自然あふれる地域のシンボルとしてのコウノトリが飛来、生息し、自然環境保全の機運が高まっていることから、普及組織は環境にやさしい農業生産方式の普及定着を目標に、技術的な助言指導とともに、「コウノトリの里づくり」に向けたコーデイネート活動を展開する。

 「隠岐藻塩米」の生産振興

 「売れる米づくり」として、『ハデ干し米』や『隠岐藻塩米』等、地域の特色を活かした隠岐の「こだわり米」の生産・販売拡大に取り組んできたが、益々激化する米市場の産地間競争に打ち勝つために、今後は品質(食味値、一等米比率等)の高位安定化を図る必要がある。

 また、消費者の意向に沿った、環境にやさしい方法での米づくりを推進し、安全安心な米を安定的に供給できる生産体制の確立が急がれる。

 このため、県、町、農業団体が一丸となって、生産者への技術支援や販売業者・消費者等へのPR活動の展開、『隠岐藻塩米』の商標登録の検討など、ブランド化を推進し、隠岐産米の有利販売体制の確立を目指すとともに、地域水田農業の振興を図る。

 地域特産品(肉用牛)の育成

 広大な公共放牧場を活用した放牧による肉用牛生産が行われている隠岐地域では、農家数は減少しているものの、認定農業者、新規参入者、農外企業の参入等により、規模拡大が図られている。

 また、平成18年に東京デビューした肥育牛は、評価の高い肉質を維持してきたが、ブランドとして確立するためには、頭数の拡大と品質の確保が必要である。

 このため、繁殖及び肥育頭数を拡大し、「隠岐牛」ブランドを確立するため、生産農家の規模拡大、生産性の向上等の支援が必要である。

 島内の地産地消マーケットの展開

 隠岐の地産地消については、これまでに生鮮野菜の地元販売額の増加、集荷・販売体制の確立、直売、学校給食、福祉施設への食材提供、イベント開催等に取り組んできた。しかし、生産者の高齢化と離農による生産能力の低下や組織の弱体化、品目・作期の集中等による需要と供給のアンバランス化、販売側(定時・定量)と生産側(随時・不定量)の意向差の拡大等の問題が顕在化してきた。

  そこで、隠岐地域を一つのマーケット(市場)として捉え、生産〜販売〜消費のサイクル構築を図るとともに、安全・安心への取り組みを強化する。また、JA隠岐の「グリーンセンター構想」の実現に併せ、地元農産物の生産・供給体制の拡充・確立を図る。

 

2 ひとづくり課題

 担い手の育成、掘り起こし

 「食料・農業・農村基本計画」の主要課題である担い手経営体の育成、確保を図るため、島前、島後各地域担い手育成総合支援協議会を軸に、認定農業者の育成・確保、新規就農者の円滑な就農支援・掘り起こし、集落営農の組織化・高度化ならびに農業参入企業の支援を行う。

 経営感覚に優れ、競争力のある多用な担い手が管内農業の中核となり、持続的に発展する農村を目指す。

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