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島根県農業技術センター研究報告第37号(2007年1月)p51-94


果樹を用いた健康茶の製造方法と機能性成分含量に関する研究


鶴永陽子


摘要

 

 高齢化社会を迎え,健康を維持していく上で,生活習慣病にかからない食生活が望まれている.その中で,我が国の日常生活に密着している茶は,消費者の健康志向の高まりに伴いその機能性について注目を集めている.また,ツバキ科のチャ葉以外の材料から作られた健康茶も消費者の「安全志向」「健康志向」を背景に機能性が見直されてきている.
 そこで、本研究では、島根県内の未利用資源を用いて、高い機能性を有した健康茶の製造技術を確立することを目的とし,その素材としてカキ‘西条’及びヤマモモに注目した。そして、以下の点を明らかにした.
 

1.採取時期及び新梢長が柿葉及び新梢の機能性及び機能性成分含量に及ぼす影響
  1) 採取時期が柿葉の機能性成分含量に及ぼす影響
  14年生カキ‘西条’を用い,成育中の柿葉におけるアスコルビン酸,イソケルシトリン,アストラガリン,総ポリフェノール量含量の推移を検討した.その結果,アスコルビン酸と総ポリフェノールは6月から7月の含量がもっとも高く,それぞれ3,700mg/100gDW,16,100mg/100gDW(アストラガリン相当量)であった.また,イソケルシトリン,アストラガリン含量は5月葉が最も高く,それぞれ480,520mg/100gDWで,その後新梢長の急激な伸長に伴い6月には激減した.
  2) 新梢長の違いが柿葉及び新梢の機能性成分含量に及ぼす影響
カキ‘西条’を用い,未展開葉の部分を採取してFoliating-leaves(F-leaves)とし,新梢長でshort(20〜40cm),medium(40〜60cm),long(60〜80cm)の3段階に分け,未展開葉,長さ別に分類した新梢の葉及び新梢を用いて機能性成分を分析した結果,T-AsA含量は,長い新梢から得られた葉に非常に多かった.また,新梢部にもT-AsAが多く含まれていることから,T-AsA含量の多い柿葉茶を効率的に製造するためには,新梢の利用も有効であることが示された.また,イソケルシトリン,アストラガリン及び総ポリフェノール含量は短い新梢から得られた葉に多く,新梢には少ないため,これらの成分を多く含んだ柿葉茶を製造するためには,新梢を入れずに短い新梢の葉を利用することが良いことが明らかとなった。
  3) 異なる条件下で得られた新梢と圃場栽培樹から採取した成葉における機能性成分含量の比較
カキ‘西条’の成葉は柿葉茶や健康食品素材として使用されているが,不定芽の利用は保ほとんどない.そこで,圃場で栽培された樹から採取した成葉(M-leaves: Mature-leaves),不定芽(A-shoots: Adventitious-shoots)及び前年に伸びた枝を水に挿して得られた新梢(T-shoots: cultured by water-soaking the twigs that grew the year before)におけるT-AsA含量とポリフェノール含量を比較した.その結果,T-AsA含量は,M-leavesが最も高かった.一方,可溶性ポリフェノール含量は,M-leavesとA-shootsが高く,T-shootsの含量は著しく低かった.柿葉の主要フラボノイドであるイソケルシトリン及びアストラガリン含量も可溶性ポリフェノールと同様の結果だった.


2.製造方法が柿葉茶の機能性及び機能性成分含量に及ぼす影響
  1) 蒸熱加熱及び乾燥処理が柿葉茶の機能性及び機能性成分含量に及ぼす影響
 6月中旬のカキ‘西条’の葉を利用し,柿葉が有している機能性の低下を抑制する柿葉茶の製造方法を検討した.製造工程の蒸熱時間,乾燥方法を変えて柿の葉茶を製造し,常温保存6か月後のT-AsA残存量,ラジカル捕捉活性及び脱顆粒抑制活性を測定した.機械乾燥前に,10分間蒸熱処理したところ,短時間処理区と比較してT-AsA残存量及びラジカル捕捉活性は増加した.一方,脱顆粒抑制活性は,いずれの処理区においても強い活性が認められ,乾燥方法及び蒸熱時間による有意差は認められなかった.以上の結果から,原料葉の機能性を低下させにくい柿葉茶の製造方法として,10分間の蒸熱処理と,機械乾燥の組み合わせが適していることが推察された.
  2) 蒸熱加熱及び焙煎処理が保存中の柿葉茶の総アスコルビン酸含量及びラジカル捕捉活性に与える影響
生育途中のカキ‘西条’の葉を材料とした柿葉茶を用いて,蒸熱処理時間と焙煎処理が370日間保存後のT-AsA含量及びラジカル捕捉活性に及ぼす影響について検討した.(1)焙煎未処理の蒸熱5分間処理区で保存期間中のT-AsA含量を最も高く保持できた.それ以上の蒸熱処理時間区ではT-AsA含量の保持効果が低くなった.また、(2)対照区(蒸熱無処理区)では,保存前の焙煎処理区のみT-AsAを残存させることが出来た.(3)蒸熱5分間処理区では,焙煎処理が保存前後いずれでも同程度のT-AsA含量を示した.

3.ヤマモモ葉のラジカル捕捉活性
 1) 採取時期及び雌雄がヤマモモの当年葉におけるラジカル捕捉活性に及ぼす影響
ヤマモモの部位別のラジカル捕捉活性を熱水抽出,エタノール抽出で評価したところ,いずれも葉の活性が最も高く,次いで枝,未熟果であり,種子と成熟果においては活性が著しく低かった.また,活性が最も高かった当年葉について採取時期及び雌雄がラジカル捕捉活性に及ぼす影響について検討したところ,採取地点にかかわらず,7月採取葉の活性値が最も高かった.また,果実生産期における雌雄別のラジカル捕捉活性は、雄株葉が雌株葉より高かった.

4.製造方法がヤマモモ葉茶の機能性成分含量に及ぼす影響
  1) 製造工程がヤマモモ葉茶のアスコルビン酸含量,ポリフェノール含量及びラジカル捕捉活性に与える影響
  ヤマモモ葉を用いて製茶試験を行い,製造方法の違いによるアスコルビン酸含量,ポリフェノール含量及びラジカル捕捉活性の差異を検討した.その結果,以下のことが明らかになった.(1) T-AsA含量が高いヤマモモ葉茶を製造するためには,蒸熱処理後に凍結乾燥する方法が最も適する.(2) 可溶性ポリフェノール及びラジカル捕捉活性を多く残存させるためには,蒸熱処理を行わずに,凍結乾燥または機械乾燥する方法が適する.(3) ミリシトリン含量を保持するためには凍結乾燥または機械乾燥を行うか,もしくは1分間の蒸熱処理後に日陰乾燥を行う方法が適する.(4)ヤマモモ葉茶のラジカル捕捉活性は,他の市販健康茶と比較して高いレベルであることが明らかとなった.
 
 以上,本研究により島根県内で未利用資源として扱われていた柿及びヤマモモ葉について,機能性及び機能性成分含量の高い時期を検討し,また製造工程及び保存中においてそれらの成分を保持できる製造方法を明らかにすることで機能性成分含量の高い高機能健康茶の製造方法を明らかにすることができた.



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