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島根県農業試験場研究報告第34号(2003年2月) p1-46
土壌の可給態窒素の実態と作物によるその特異的吸収

松本真悟
摘要

 本報告は,都道府県農業試験場で行われた栽培試験におけるデータを検証していく中で,有機物を施用した場合の作物の窒素吸収反応が単に土壌中の無機態窒素の存在量だけで説明できない事例が少なからず認められることを端緒として,土壌中の有機態窒素の動態およびその起源の推定ならびに作物の窒素吸収反応における有機物施用の意義について論じたものである.
 
1.ホウレンソウにおける化学肥料の減肥,緩効性肥料の施用と比較した有機質肥料の肥効特性
  • 島根県の標準施肥量を施用した慣行区,その10%減肥区,20%減肥区,同施肥基準量を被覆肥料で施用した被覆肥料区,同様に有機質肥料として大豆油かす区,およびなたね油かす区の6処理区を設定してホウレンソウを露地栽培し,生育,品質成分および土壌に及ぼす影響を検討した.
     
  • 減肥することによってホウレンソウの窒素吸収量が減少した結果,体内硝酸含量が低下し,成分品質が向上した.ただし,アスコルビン酸およびシュウ酸の含量は処理間に差が見られず,減肥や有機質肥料の施用による制御はできなかった
     
  • 有機質肥料を施用した湯合,慣行区に比べて土壌の無機態窒素量は低く推移したが,土壌のアミノ酸含量およびタンパク質含量は収穫時まで常に高い値を示した.
     
  • 有機質肥料区のホウレンソウの体内硝酸含量は慣行区に比べて45%程度低減された.この一因として,土壌中での,窒素の無機化,硝化の遅れによって硝酸態窒素の吸収が抑制された結果であると考えられた.しかしながら,窒素吸収量は慣行区とほぼ同等であったことから,有機質肥料区に豊富に存在したアミノ酸態窒素およびタンパク態窒素が吸収利用された可能性を認めた(松本ら,1999).
     
  • 2.有機物施用条件下での窒素吸収量の作物間差異
  • 有機態窒素として稲わらと米ぬかの重量比4:1混合物(RBS,C/N19)を施用して9種類の野菜についてポット試験を行った.RBS区の無機態窒素量は無施用区よりも低く推移し,ピーマン,リーフレタスの窒素吸収量は無施用区の方がRBS区よりも高くなった.これに対し,チンゲンサイ,ニンジン,ホウレンソウの窒素吸収量はRBS区の方が無施用区よりも高くなった.すなわち,有機物を施用したときの作物の窒素吸収反応には差違が認められた.対照的な反応を示した上記5作物について,RBSよりもC/N比が低く,より土壌中の無機態窒素の高い条件での反応を見るために,なたね油かす(RC,C/N比7),乾燥牛ふん(DCF,C/N比10)を施用して,硫安を対照区としてポット試験を行った.無作付け土壌のRC区の無機態窒素量は硫安区よりも低く推移したが,チンゲンサイ,ニンジン,ホウレンソウの窒素吸収量はRC区のほうが硫安区よりも高く,ピーマン,リーフレタスの窒素吸収量は硫安区の方がRC区よりも高く,RBSを施用した試験と同様な傾向が認められた.有機物を施用した場合の土壌中のアミノ酸,タンパク質の濃度はいずれも無施用区および硫安施用区よりも高く推移していたため,無機態窒素量の低い条件でも高い窒素吸収反応を示したチンゲンサイ,ニンジン,ホウレンソウが土壌中の有機態窒素を吸収利用している可能性を認めた(Matsumoto et al.1999).
     



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