• 背景色 
  • 文字サイズ 
島根県農業試験場研究報告第32号(1999年3月) p1-34
ワサビ培養茎頂の超低温保存に関する研究

松本敏一
摘要

 ワサビ培養茎頂の超低温保存法を確立するため、4種類の超低温保存法、すなわち、ガラス化法、アルギン酸ビーズ乾燥法、改良ビーズ乾燥法及びビーズ-ガラス化法における最適処理条件を明らかにし、それらの利点と問題点を比較した。

 

  1. ワサビ培養茎頂を用いて、ガラス化法の最適処理条件を明らかにした。0.3Mショ糖培地による20度C、16時間の前培養と2M グリセリンと0.4Mショ糖の混合液による20分間のローディング処理により、液体窒素保存後のシュート形成率が90%以上に向上した。また、0.3Mショ糖の前培養において0.5Mのグリセリンを添加したところ、ローディング処理なしでも約80%のシュート形成率が得られた。

 

  • ビーズ乾燥法の最適条件について検討した。従来の方法では液体窒素保存後のシュート形成率が約65%であったが、乾燥前に0.8M ショ糖と1Mグリセリンの混合液で処理することによってシュート形成率が15%程度高くなり、約80%となった。これは、ワサビ茎頂がショ糖とグリセリンにより乾燥耐性が高まったことを示唆している。
  •  

  • 茎頂をアルギン酸ビーズに包埋して行うガラス化法の改変型であるビーズ-ガラス化法を開発した。この方法は、次の2つの長所を持っている。まず第1に、ガラス化法における液交換の煩雑さが解消された。また、この方法は茎頂より小さい縣濁細胞、毛状根を材料に用いる場合、さらに効果的な方法になりうると考えられる。
  •  

  • ガラス化法、アルギン酸ビーズ乾燥法及びビーズ-ガラス化法におけるシュート形成率、必要な乾燥時間及び再生植物の生育速度について比較を行ったところ、ガラス化法及びビーズ-ガラス化法における超低温保存後のシュート形成率及び再生速度はいずれもビーズ乾燥法より優っていた。
  •  

  • ガラス化法及びアルギン酸ビーズ乾燥法で超低温保存したワサビ茎頂の再生過程をFDA及びフェノサフラニンによる染色観察、光学顕微鏡による茎頂ドームとその周辺の細胞の生存性について組織学的観察を行った。その結果、ガラス化法、アルギン酸ビーズ乾燥法ともカルス経由しないで茎頂から直接シュートが形成されることが明らかになった。また、アルギン酸ビーズ乾燥法はガラス化法よりシュート形成率が約30%低かった。これはガラス化法で再生した茎頂は組織の大部分が生存していたのに対して、アルギン酸ビーズ乾燥法の茎頂はドーム近傍組織のみ生存していたことに起因する。したがって、アルギン酸ビーズ乾燥法での低いシュート形成率及びその再生過程の遅れは、生存茎頂部位の大きさから説明できるものと考えられる。
  •  

     本研究で改良したガラス化法とアルギン酸ビーズ乾燥法は、数種類のワサビ、ユリ及びスターチスの超低温保存に適用できた。


    back

    お問い合わせ先

    農業技術センター

    島根県農業技術センター
    〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
     TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380
     nougi@pref.shimane.lg.jp
      <携帯・スマートフォンのアドレスをご利用の方>
      迷惑メール対策等でドメイン指定受信等を設定されている場合に、返信メールが正しく届かない場合があります。
       以下のドメインを受信できるように設定をお願いします。
      @pref.shimane.lg.jp