• 背景色 
  • 文字サイズ 

島根県農業試験場研究報告第14号(1976年12月)p1-17

ヒ素汚染土壌における水稲発育障害の発現機構とその対策(第1報)

 


培地におけるヒ素形態の違いが水稲の養分吸収および生育、収量におよぼす影響


山根忠昭、山路健、高見有一


摘要

 ヒ素汚染土壌において水稲で特異的に激しい生育障害が発現する原因を明らかにするため、畑状態で安定なヒ酸と水田状態で存在可能と考えられている亜ヒ酸が水稲の養分吸収、生育、収量におよぼす影響を水耕法で比較検討した。得られた結果は次の通りである。

 

  • 1苗令5、6葉期のとき、培養液へAsを添加(晴天日)すると、亜ヒ酸(塩)5ppm区では1、2時間後に葉がわずかに巻き、10ppmでは大半の葉が巻いて水の吸収阻害が推定された。しかし、ヒ酸(塩)ではこのような現象は10oppmでも認められなかった。苗の生長、下葉の枯れ上りに件ない葉は巻かなくなった。

 

  • 亜ヒ酸によって養水分の吸収が阻害される順位はK2O>>NH4.N03>P205>Mg0.H20>Ca0のようになり、ヒ酸はK20.N03>NH4>Mg0.P05>H20>Ca0の順位となった.これらの順位は多少の違いはあるが、ほぼ同傾向であるとみられ、リン酸を除けば各種の呼吸阻害剤を添加して行われた実験結果に似ていた。ヒ素添加初期における養水分の吸収阻害は一部の成分を除けば亜ヒ酸がヒ酸より大きかった。

 

  • As処理を1週間継続すると、亜ヒ酸ではカリの吸収阻害率が減少し、ヒ酸ではリン酸の阻害率が増加して両者とも各成分間の差が減少した。

 

  • As処理25日間継続した稲体の養分含有率は亜ヒ酸区が同濃度のヒ酸区よりも高かったが、吸収量では逆の傾向となった。

 

  • 培地のAs濃度が2.5ppm以上で、分けつ草丈が抑制され、根群の発達も不良となった。このような生育障害はAs濃度の増加に伴ない、激しくなり、同濃度では亜ヒ酸がヒ酸よりも生育障害が甚だしかった。地上部の乾物量によって、生育半減レベルの培地のAs濃度を求めると、25日間処理で亜ヒ酸塩は2ppm、ヒ酸塩は3ppmとなり、収穫期近<まで処理を続けると、これらの濃度は多少低下した。

 

  • 収量は対照区に比べて亜ヒ酸2.5ppmで78%、ヒ酸区では35%の減収となり、5ppm以上では下葉の枯れ上りが進み収穫皆無となった。以上のことから培地に水水溶性ヒ素が存在すれば、根の代謝活性を低下させ、養水分の吸収を阻害して間接的にも生育を抑制することが明らかになった。この作用は亜ヒ酸がヒ酸よりも生育量(乾物重)で12倍、収量では3倍程度強力であった。
    back

お問い合わせ先

農業技術センター

島根県農業技術センター
〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380
 nougi@pref.shimane.lg.jp
  <携帯・スマートフォンのアドレスをご利用の方>
  迷惑メール対策等でドメイン指定受信等を設定されている場合に、返信メールが正しく届かない場合があります。
   以下のドメインを受信できるように設定をお願いします。
  @pref.shimane.lg.jp