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島根県農業試験場研究報告第10号(1972年12月)p29-50

非かんがい期間の地下水位の差異が水田土壌の肥沃度におよぼす影響

 


 


山根忠昭、松浦一人


摘要

 非かんがい期間における水田の地下水位を0、23、60cmに保ち,夏季は全区たん水状態で施肥量を異にして水稲を栽培する枠試験を10年間継続後、跡地土壌の肥沃性について検討し、つぎのような結果を得た。

 

  • 非かんがい期間における地下水位の高低により土壌の断面形態に明らかな変化がみられ、水位0cmの場合は作土以下全層が、23cmで作土直下から、60cmでは表面下40cm以下からそれぞれグライ層となった。

 

  • 土壌の有機物含量は水位の高低と堆肥の施用量との相互関係によって規制され、堆肥の施用量の増加にともない有機物含量は増加を示すが、その増加量は水位が高いほど大きい。また土壌の全窒素含量もほぼ同様な傾向を示した。

 

  • 生土をたん水保温(30度C)したときの土壌有機態窒素の無機化量は、水位が同じ場合、施肥量(堆肥量)が多いほど増加し、施肥量が同量の場合は水位の差異によって0cm>60cm>23cmの順位となった。風乾土の場合は生土で無機化窒素量が最少であった水位23cm区が最高で、それより水位が高い場合も,また低い場合も減少した。

 

  • 水位が低いほど作土から置換性のカルシウムやマグネシウムが溶脱し、酸性化の傾向を示した。水位0cm場合は逆に下層から表層へこれらの塩基の移動が行なわれ、作土に富化が認められた。

 

  • 遊離鉄も水位0cm区では下層から表層へ移動し、カルシウムやマグネシウムと同様作土に富化が認められた。水位23cm区では鉄の溶脱が進み遊離鉄含量は最も低かった。水位60cm区では作上から鉄が弱い溶脱を受け鋤床層に集積がみられた。非かんがい期間の鉄の溶脱は作土が還元的で、しかも水が下方へ浸透するような条件下で大きく、排水良好で落水後上壌の酸化が速やかである条件では鉄の溶脱は微弱である。マンガンの土壌中における行動は鉄とほぼ同様の傾向がみられた。

 

  • 水稲の生育は多肥区で初期明らかな生育抑制がみられたが、その程度は非かんがい期間の水位が低いほど軽度で回復も早かった。移植後約1か月経過すると各水位とも施肥量(主にN)が多いほど生育はまさった。

 

  • 草丈の推移は各水位とも類似のパターンを示したが、茎数は水位によって肥料(N)の応答に明らかな差異がみられ、水位が低い区ほど増肥による茎数の増加数も大きくなった。

 

  • 水位の差異による収量差は、少肥の場合は0cm≒60cm>23cmとなり、標肥では水位間の収量差は小さく、多肥の場合は60cm>0cm≒23cmの順位となった。少肥条件で水位23cm区の収量が低かったのは土壌からの窒素供給量が少なかったことが主原因であると考えられる。

 

  • 非かんがい期間における地下水位の高低によって、土壌の窒素供給能や施肥効果に対して明らかに差異を生ずることが判明した。
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