• 背景色 
  • 文字サイズ 

島根県農業試験場研究報告第8号(1967年3月)p1-122

 


ブドウペスタロチア蔓枯病の生態と防除に関する研究


尾添茂、多久田達雄、川本亮三


摘要

 1953年、安来市下坂田町に発生したブドウの新病害、ぺスタロチア蔓枯病菌をPestalotiamenezesianaBRES&TORPと同定し、その形態、生理的諸性質を明らかにしたが、むろんブドウ園にはこのほか病原性のないPestalotia属菌もかなり生息している。本病菌はブドウに寄生し、カキなどにも病原性をもつ。しかし、その寄主範囲は割合狭く、ブドウ品種間の発病差も顕著で、甲州は最もよく発病する。そのほかDK151などもおかすが、デラウエアなど多くの同種は本病にかからない。ただし、これらの強い品種も本病菌に対し免疫性とは考えがたい。本病菌は傷夷部より侵入し、またある段階に発育した棘毛よりも感染する。このように本病菌は寄主への侵略力が弱い反面、ひとたび感染するとその発病力はかなり強い。本病菌の生活環あるいは伝染環上興味深いことは、緑色味をもった新梢への侵入、発病には付傷が必要条件となるが、この枝が外観褐色となり登熟すると、その表層で腐生生活をすることである。この場合、登熱枝は何ら病変を生じることなく、罹病性の甲州でも、また本病にかからない強い品種でも本病菌の潜在を許すことになる。本病は枝病斑部、外観無病部、芽部、巻ひげ、散逸した分生胞子、罹病落葉(地表面のものを除く)で越冬する。分生胞子の形成、飛散はとくに15−30度Cで多く、雨と密接な関係があり、感染適温は25−30度Cである。

 一方、本病の発病にはブドウ樹の生育やブドウ園の環境も強く影響し、窒素過多、多肥はブドウを軟弱にして本病に対する感受性を増し、繁り過ぎて陰湿な園での発病が多い。したがって、ブドウ樹の健全な栽培、園における不良環境の排除などは薬剤防除の根底となる。本病に対してブドウの発芽前の散布農薬としては有機水銀剤、生育期散布の農薬としてはダイホルタン水和剤、モンゼットが最も有効である。しかしその効果はなお十分といえないので、本病の防除は農薬にのみたよることなく、上記合理的施肥、カリの増施、園内不良環境の排除などをあわせ行なう、いわゆる総合的防除法の配慮と実施がとくに必要となる。なお前記農薬中には、残留毒性などに関して現在とかく論議されているものもあるので、今後この心配のない卓効ある農薬の出現を切に期待したい。


BACK


お問い合わせ先

農業技術センター

島根県農業技術センター
〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380
 nougi@pref.shimane.lg.jp
  <携帯・スマートフォンのアドレスをご利用の方>
  迷惑メール対策等でドメイン指定受信等を設定されている場合に、返信メールが正しく届かない場合があります。
   以下のドメインを受信できるように設定をお願いします。
  @pref.shimane.lg.jp