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島根県農業試験場研究報告第7号(1966年3月)p87-106

 


二十世紀梨のコナカイガラムシ防虫用果実袋の研究


宮下忠博


摘要

 

  • 二十世紀梨の果実に寄生するコナカイガラムシ類に対し殺虫能力のある果実袋を考案するため、果実袋にダイアジノンその他の殺虫剤を塗布または袋内への投入を試み、その防虫効果を検討した。

 

  • 果実袋がクワコナカイガラムシの被害を防止するためには、果実袋の被袋時期とクワコナカイガラムシの生態からみて防虫力の残効は被袋時期から60−70日間を必要とするものと推測される。

 

  • パラフィン2重袋(外袋はパラフィン紙、内袋は薄い洋紙類)の内袋にダイアジノン特殊油剤を袋当り、10mg以上(主成分量として)点注することにより、コナカイガラムシ類の被害をほとんど完全に防止することができる。

 

  • 果実袋に用いるパラフィン紙のパラフィン中にダイアジノン特殊粉剤を混入し、袋当り5−20mgをろう引加工処理することにより、その被害をほとんど完全に防止することがてきるが、実用的な処理薬量は袋当り10mg内外でよいものと思考される。

 

  • ダイアジノンに補助剤としてカネクロールを加用しても、袋当りの処理薬量が、10mgの場合には、その加用の有無による防虫効果の差はあまり認められない。

 

  • ダイアジノン混入パラフィン紙を用い2重袋を縫製する場合、パラフィン紙を内袋としても外袋として製袋しても、両者間の防虫効果の差はほとんとみられない。

 

  • ダイアジノン混入パラフィン処理袋を製造してから約1ケ年経過したのちに使用した場合、袋当りの処理薬量が20mg以上あれば防虫力の減退ははあまりみられないが、処理薬量が10mg以下ではその防虫力はかなり減退するようである。

 

  • ダイアジノン処理袋はパラフィン小袋の上に被袋しないと果実に著しい薬害を生ずる。

 

  • ダイアジノンを植物性の荏油に混入して新聞紙袋に袋当り50mg塗布しても高い防虫効果かある。また同様の方法でDDT入り塗布剤を処理しても有効であるが、DDT剤がなぜ有効であるか明らかでない。

 

  • 2重袋の内袋または外袋に対するダイアジノン処理は防虫効果が高く薬害もないので果実の品質は向上する。

 

  • スミチオンおよびバイジットのパラフィン混入処理果実袋の防虫効果について検討した結果、前者は袋当り24mg処理に顕著な効果を認めたが、後者は袋当り25mg処理でも十分な効果はあがらなかった。

 

  • ダイアジノンの錠剤、パラフィン混入加工紙および油剤処理加工紙を試作し、これらを2重袋の被袋直前に投入しその防虫効果を検討した結果、2種の加工紙の効果は認められたが楽害を生じさらに検討の余地かある。

 

  • ダイアジノンおよび水銀剤混入パラフィン2重袋は長野県の二十世紀梨地帯で広く普及し、1965年現在、使用される果実袋の約90%を占め、その使用面積は800−900haに達し高い効果をおさめている。
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