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島根県農業試験場研究報告第2号(1961年3月)p1-44

山葵に関する研究(第1報)

 


 


上野良一、横木国臣、清水徳一


摘要

 

1.水中溶存酸素に関する研究

 

  • 湧水源地点における水温12度C−14度C、最高温になる時期は概ね10月-11月にあり、最高気温を示す時期より約2−3カ月ずれて現れている。渓流水利用地点の水温は気温の変化と同様に7−8月高く、1−2月に低かった。

 

  • 水中溶存酸素量は湧水源地点において多く、特に渓流水に比し夏期における酸素量が多い、飽和率においても湧水源地点は常に飽和度が高く、過飽和状態にある時期が相当に見られるも、渓流水利用地点は溶存酸素量が少く、特に山葵の呼吸作用その他の生理作用が盛んな夏期において少い。飽和率も湧水源地点に比し低率である。

 

  • 調査地点付近における山葵の生育は湧水源地点が勝れているも、溶存酸素からこれを説明するには未だ実験的究明を必要とする。

 

2.水山葵の根茎肥大に関する研究

 

  • 根茎重からみた場合、根茎の肥大は5月中旬−6月中旬、10月−11月中旬の2期に著しい。

 

  • TR率は12−2月が最も高く、7−8月がこれにつぎ、4−6月、10−11月は低い。即ち肥大停滞時期に高く肥大期に低いことを示している。

 

  • 肥大停滞期と雖も条件に恵まれれば(夏期における水温の低いこと、病虫害罹病率の低下、冬期における保温)根茎の肥大は進むものと考える。

 

3.花及び種子に関する研究

 

  • 花粉の発芽床には庶糖濃度15%、寒天1%の培養基を用い、23度Cにて5時間後発芽調査を行なうのがよい。

 

  • 花粉は室内放置の場合開花後1日まで実用的に差支えない程度の発芽能力を有する。

 

  • 山葵の自家受授精率は概ね10%内外(硫酸系袋掛の場合)である。

 

4.抽苔生理に関する研究

 

  • 花茎伸長のみられるのは10月上−中旬であり、分化期は9月上−中旬ど推定せられる。

 

  • 花芽分化は主生長点においては認められず専ら腋芽が分化、伸長し開花、結実する。なお腋芽と雖もすべてが分化せず未分化のまま苗として利用出来るものも混在する。従って花芽分化の機構については今後検討を要する。

 

5.葉の剪除が山葵の肥大に及ぼす影響

 

  • 夏期における葉の剪除の影響は10月堀取の場合に強くあらわれ、剪除程度の強いもの程肥大が悪い。

 

  • 12月堀取の場合は10月堀取の場合程剪除の影響があらわれない。10月−11月の肥大期を径て収穫せられた結果、即ち処理後の新葉展開による草勢回復の期間が長い結果によるものと考える。

 

6.品種に関する研究

 

  • 現在用いられている品種、系統分類を整理再録し、更に島根三号、在来種、静岡系統につき特性を調査し、今後改良すべき点を指摘した。

 

7.採種時期に関する試験

 

  • 採種量、発芽率等から概ね開花盛期(4月上旬)後50日前後が採種適期と認める。

 

8.播種期に関する試験

 

  • 11−12月上旬が播種適期と認めたが、育苗の能率化を図るためには早播と発芽揃いに要する日数の短縮を考慮しなければならない。

 

9.種子処理に関する試験

 

  • 0−−2度Cで15日、30日間低温処理を行ない、発芽調査を行なったが高温期(8月下旬及び9月中旬)と雖も相当の発芽率を示し、低温処理効果の高いことを認めた。

 

  • ジベレリン処理については9月上旬播種の場合50、100ppmで若干発芽促進の効果を認めた。

 

10.熊笹被覆試験

 

  • 熊笹を山葵田に敷く効果は水田よりも畑地において強くあらわれた。特に陽光の強い場所、旱魃を受け易い場所において効果の高いことは当然である。水田においては水温低下に及ぼす効果は余り期待出来ない。但し水量の少い場合、日焼けを起し易い場合においてある程度効果を認める。

 

11.ビニール被覆試験

 

  • ビニールトンネル、ビニールマルチ等の冬期間における処理は山葵の全重増加に相当の効果があるが根茎重の増加はあまり認められず、専ら茎葉重の増加効果が大きい。

 

  • 播種時おけるビニール被覆は発芽促進に顕著な効果を示すけれども、ビニール除去後の生育は無処理と大差ないように観察せられた。

 

12.尿素葉面散布試験

 

  • 山葵田は特殊な環境条件を必要とする為、尿素葉面散布の影響より従って以上に他の因子の支配を敏感に受ける。従って葉面散布効果の確認が困難である。

 

  • 試験年次によってはその効果が或る程度認められたが、この場合全重の増加はみられるも根茎重の増加は認められなかった。即ち茎葉重が無散布に比し勝っている。

 

  • 燐酸葉面散布についても尿素と同じ傾向があり、根茎重の増加はみられないが,茎葉重の増加は認められる。

 

13.固形肥料試験

 

  • 固形肥料の施用は全重の増加には或る程度効果があるも根茎重の増加に対しては明確でない。

 

14.畑山葵に薄する施肥試験

 

  • 肥料の種類並に三要素適量試験を実施したが未だ継続中にして充分な検討を加えることが出来ない。標準的施用量として3.3m2当N、37.5g、P2O530g、K2O37.5gを用いた。なお当圃場は三回連作(6年間)園である。

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