1 島根県の農耕地土壌
2)土壌群の特性及び分布と土壌管理の要点
(1) 水田土壌
多湿黒ボク土
水分の多い火山灰土で、本県では丘陵地の谷あいや黒ボク丘陵地及びその周辺の沖積地水田に分布する。降下した火山放出物がその場所で堆積してできたものと、これらが水によって運ばれ再堆積したものとがある。多湿黒ボク土は黒ボク土と類似しているが、他の母材が混入したり水田化などによって、仮比重の増加や透水性の減少、ばん土性の低下、リン酸吸収係数の滅少などの傾向が見られる。本県では主として雲南地方に分布し、大田市、瑞穂町にも分布する。リン酸がアルミニウムと結合し作物が吸収しにくい形態に変化しやすいので、リン酸の施肥が不可欠である。
黒ボクグライ土
火山灰台地や丘陵地間の低地など地下水位の高い排水不良地に分布し、グライ層の出現位置が高い。黒ボクグライ土は多湿黒ボク土と以ているが、この土壌は地下水位が高く、排水不良であって概ね全層が強度の還元状態となっているのが特徴である。母材は火山灰(非固結火成岩)であるが、再堆積の過程で、多少とも他の母材が混入していることが多い。雲南地方の一部にみられ、強湿田のため排水対策が重要である。
グライ台地土
台地あるいは一部の山地、丘陵地に存在し、下層にグライ層をもつ土壌である。このグライ層は地下水、宙水などによってできたものと、水不足地帯で人為的な湛水によってグライ層が発達した場合とがある。堆積様式は洪積世堆積、残積などで、各種の岩石が母材となっている。本県では雲南地方などにわずかに分布する。主として棚田などの形で水田として利用されているが、透水性が悪いので地表排水によって田面を乾かし、透水性を増大させることによって地下排水を促進する必要がある。
黄色土
主として台地放び丘陵地の200m以下の地帯に分布している。小面積ながら県下の各地に分布するが、細粒黄色土は益田市に多く中粗粒黄色土は雲南地方に多い。細粒黄色土では有機物を十分に施用し、物理性の改良と肥沃度の向上を図ることが重要である。また、活着後の浅水や間断かん水等水管理に留意が必要である。一方、中粗粒黄色土では有機物や転炉さいの施用を積極的に行うと共に、肥料切れに注意する。また、登熟不良を防止するため落水が早すぎないよう注意が必要である。
褐色低地土
沖積低地のうち、自然堤防などのような比較的排水良好なところに分布する。作土下の土色は概ね黄褐色で斑紋をもつ。本県では河床の低い谷底平野に多く、その多くは礫質で、美濃、鹿足地方に分布する。中粗粒質や礫質土壌では排水が良く作業性には優れるが、肥効の持続に留意が必要で有機物や珪カル、転炉さい等の施用を積極的に行うことが重要である。また、落水時期に注意し登熟不良を招かないようにする。
灰色低地土
ほぼ全層が灰色ないし灰褐色を呈しており、下層には斑紋がある。これらの土層は母材が地下水あるいはかんがい水の影響を受けて灰色化したか、あるいは以前のグライ層が地下水の低下によって酸化され、灰色化したものと考えられている。扇状地や河床の低い谷底平野に多く見られ、全国的には分布面積が最も大きい土壌群である。本県ではグライ土に次ぐ分布面積を有する。全般的に生産力は高いが、中粗粒質や礫質土壌では特に養分の溶脱が起きやすいので、有機物や土づくり肥料の施用に努める必要がある。
灰色系の細粒灰色低地土は大田、邇摩及び邑智地方に多く分布しており、中粗粒灰色低地土は、雲南、安来、能義、邑智地方に多い。また、灰褐色系の細拉灰色低地土は小面積ずつ県下各地に分布しており、中粗粒灰色低地土は雲南地方に、礫質灰色低地土は安来、能義地方に、灰色低地土下層黒ボク土は邑智、雲南地方に分布する。
グライ土
主として河川、湖岸及び海岸沿いの沖積平野や台地、丘陵地間の低地に分布し、本県では最も分布割合が大きい土壌群である。この土壌群は地下水位が高く排水不良であるため湿田や半湿田となっている。土色が青灰色あるいは緑灰色のグライ層が全層または作土直下から出現する強グライ土と、グライ層がやや深い位置(30〜80cm)に出現するグライ土に大別される。細粒強グライ土は宍道湖、出雲平野周辺の谷底平野や山麓部に多く、大田、邇摩、浜田、那賀地方にもかなり広く分布しており、最も排水対策を必要とする。中粗粒強グライ土は出雲・簸川地方の主要な土壌統群であり、雲南、松江、八束地方にも多い。礫質強グライ土は県下各地に少しずつ分布している。細粒グライ土は安来、能義、出雲、簸川、松江、八束地方にかなり分布する。中粗粒グライ土は安来、能義、出雲、簸川地方や雲南地方に分布する。グライ土・下層有機質は出雲、簸川地方や美濃、鹿足地方に少し分布する。いずれも排水を必要とし、特に細粒強グライ土壌では稲作期間に溝切りなどを行い、水管理を徹底する必要がある。
(2) 畑地土壌
岩屑土
山間の急傾斜地等に分布する。有効土層がごく浅く、30cm以内から礫層、岩盤などが出現する土壌である。礫質土壌が多く、土壌化は進んでおらず、腐植はほとんど集積していない。土壌侵食を受け易く、夏期は過干になり易い。養分に乏しく保水力も小さいので生産力は低い。本県では仁多、大田地域に分布するが面積は少ない。
砂丘未熟土
日本海の海岸線に沿った砂丘に分布する。表土、有効土層はともに深く、透水性は大、保水性は小で過干のおそれが大きく畑かん施設を必要とする。保肥力が小さいので肥料は流れやすく地下水の硝酸性窒素汚染を起こしやすい。有機物の施用や客土による土壌改良効果が大きい。本県では出雲・簸川及び浜田、益田地域に分布する。
黒ボク土
三瓶山、青野山及び鳥取県の大山を起源とする火山放出物が東部の山間地を中心に広く分布する。黒ボク土は一般的に腐植含量が多く、保水性、透水性、通気性に優れ、保肥力も大きいが酸性土壌が多い。リン酸吸収係数の大きいことも特徴で、可給態リン酸含量は一般に少ないのでりん酸の施用が不可欠である。黒ボク土は腐植層の厚さによって、厚層(50cm以上)と表層(50cm未満)に、また腐植含量によって、多腐植質(10%以上)と腐植質(5〜10%)、さらに淡色(5%未満)に分けられるが、本県では4土壌群である。雲南、松江・八束、大田・邇摩地域に多く分布する。
褐色森林土
山地、林地、台地にごく普通にみられ、県下全域に広く分布する。畑地では主として中山間〜山間の山腹及び山麓に分布する。この土壌は一般に腐植含量が少なく表土は浅い。細粒褐色森林土のなかには下層土の物理性が悪く、強酸性を示すものが多い。
灰色台地土
松江、平田市の丘陵の一部に分布する。土性の違い、礫層の存在によって3土壌群に分かれるが、本県では細粒灰色台地土だけである。土壌の特徴は表土がやや浅いこと、下層の構造の発達が弱く、ち密で透水性が小さいことなどである。保水性は中〜小、保肥力は中〜大である。分布面積はごくわずかである。
赤色土
日本海沿岸の丘陵・台地及び中山間・山間の丘陵頂部など、比較的なだらかな地形に多くみられる。また、第三紀層、洪積層の上に分布する場合が多い。一般的に腐植含量が少なく、粘質〜強粘質であるため透水性が悪い。また保水力の小さい土壌が多いため、多雨時に湿害を受ける恐れがある一方で、乾燥時には干害の発生する危険性もある。
黄色土
赤色土と同様に第三紀層、洪積層上に分布することが多い。分布面積の多い地域は大田・邇摩、浜田・那賀、安来・能義地域である。一般に腐植が少なくち密であるため物理性は不良である。また、石灰、苦土、りん酸などの養分含量が低く酸性になりやすい。
褐色低地土
沖積地のうち、自然堤防などのような比較的排水良好なところに分布し、ほぼ全層が黄褐色の土層からなる土壌である。本県では斐伊川、神戸川、飯梨川、高津川などの河川流域に多い。最も分布の多い土壌統群は、土性が砂(S)〜壌質(SL、L)であって地下水位の高い中粗粒褐色低地土・斑紋ありで、これが褐色低地土の半分を占める。表土の腐植含量は少なく、肥沃度や養分含量は中〜小であるものが多い。

