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1.土づくりの意義と歴史

 「土づくり」という言葉は親しみやすく、時には精神的な要素も込めて広い意味で使われているが、本質的には作物の収穫をつくりだす土壌の能力、すなわち地力を高めることであり、生産力を向上させるための土壌管理、改良ということである。

 地力は土壌の(1)化学的性質(養分供給力、pHや酸化還元電位、緩衝能、有害物質の有無)(2)物理的性質(水分供給能・排水性・透水性、通気性、耕耘の難易、耐侵食性)(3)生物的性質(有機物の分解や窒素固定などの役割をもつ有用生物の活性、病虫害の原因となる寄生的生物の活性など)が総合されたものである。したがって「土づくり」は息の長い仕事であり、営農の中で絶えず意識して取組んでいかなければ効果はあがりにくい。

 大半の農家に牛が飼育されていた頃は、稲わらだけでなく畦畔や里山などの山野草まで飼料や敷料として利用され、家畜のふん尿とともに堆きゅう肥を作って農耕地へ還元し「土づくり」が行われてきた。昭和30年代の中頃まで出雲平野で行われた苜蓿(もくしゅく)のすき込みも「土づくり」のひとつである。これは非稲作期間の湿田で独特の高畦をつくり、マメ科のアルファルファの仲間である苜蓿を栽培し、水稲の作付前に土壌にすき込むという大変な重労働であった。

 しかし、農業の機械化が進み耕種農家から牛の姿が消えると共にこれらの伝統的な土壌管理がすたれ、堆きゅう肥投入量の減少や耕土深の浅耕化など地力の維持、増進が危ぶまれるようになった。さらに、我が国の経済発展と食糧の増産が求められる時代背景のもと、化学肥料や化学合成農薬、石油エネルギーに依存した生産性の高い農業が全盛となるなかで、収量や品質の不安定化、自然環境への負荷の増大など土壌の疲弊がもたらす様々な問題が顕在化した。また、消費者からは十分な「土づくり」が行われたほ場から生産された、品質や安全性が高く安心な農産物が強く求められるようになった。

 これらの状況とそれに対する反省から、平成11年には「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」が施行された。これは環境と調和のとれた農業生産の確保を図り,もって我が国農業の健全な発展に寄与することを目的としており、堆肥等の施用による土づくりと、化学肥料・化学農薬の使用の削減を一体的に行うことが基本となっている。

 このように、農業をめぐる情勢の変化と共に「土づくり」の様態にも変化がみられるが農業生産の基盤であることに変わりはなく、科学的な裏付けに基づいた着実な取り組が求められる。

 

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