情報政策の基本的考え方について
平成17年1月
島根県情報政策課
島根県は、財政健全化に向けた中期財政改革や新たな総合計画の策定等を踏まえ、今後の情報政策を次のような基本的考え方に基づいて推進していきます。
1.条件不利地域におけるブロードバンド実現
(1)ブロードバンドとは
- ブロードバンドとは、「高速・大容量通信」「常時接続」「定額料金」という利点・特長を持ったインターネット通信の形態であり、具体的には、既存の固定電話回線網を利用した高速伝送技術であるADSLや、ケーブルテレビの伝送路を利用したCATVインターネット、光ファイバを用いたFTTH(fiber to the home)等を指しています。
- このうちADSLやCATVインターネットは、下り方向利用(ダウンロード)には高速性を発揮するものの、上り方向利用(アップロード)の通信機能に一定の技術的制約を受ける点に留意する必要があります。
- 一方、FTTH(fiber to the home)は、光ファイバを利用者宅まで敷設することによって、100Mbps(毎秒100メガビット)程度の超高速インターネットを利用できる技術であり、ブロードバンドの本命と言われています。FTTHは、上り・下りの双方向で十分な通信速度を安定的に確保できるため、動画等の大容量データを用いた情報発信、リアルタイム映像による双方向コミュニケーション、多地点間を結ぶ遠隔会議などを行う場合に優れた特性を発揮します。
- ブロードバンドの扉が開いたばかりの初期段階には、多くの利用者が情報検索・情報収集等の下り方向利用だけで満足してきましたが、ブロードバンド社会が成熟するにつれて、情報発信や双方向コミュニケーションなど上り方向利用も含めた「双方向」の通信機能の重要性が増しており、既にサービスを利用できる大都市地域を中心に、FTTHの利用者数が急増しています。
参考:ブロードバンドの普及の現状(総務省)[PDF:1Mb]
(2)ブロードバンドの地域格差
- 本県は、全国に先駆けてブロードバンドの地域格差の是正に取り組み、既にADSLやCATVインターネットのレベルでは県内の情報格差を解消したところですが、FTTHについては、全国的に大都市地域と条件不利地域との間に著しい情報格差が生じています。
[参考] ブロードバンド利用可能市町村(H16.4月末現在 総務省調べ)
| 区分 | 全国 | 島根県 |
過疎地域 (全国) |
島根県内 |
|---|---|---|---|---|
| ADSLサービス利用可能市町村 | 82% | 93% | 58% | 93% |
| CATVインターネット利用可能市町村 | 28% | 29% | 9% | 18% |
| FTTHサービス利用可能市町村 | 28% | 19% | 3% | 3% |
(3)条件不利地域におけるFTTH実現の意義
- ブロードバンド、とりわけFTTHは、地理的ハンディキャップを克服し、21世紀の地域間競争を勝ち抜いていく貴重な切り札となるものであり、生活の利便性や住民福祉の向上に寄与するだけでなく、地域特性を活かした産業振興を図る上でも有力な手段となります。
- 特に条件不利地域では、多様な地域資源(歴史・伝統文化・自然景観・特産物など)の価値をFTTHの情報発信力を用いて全国・世界に訴えたり、都市住民との連携・交流関係を双方向コミュニケーションによって一層強固にする取り組みなどを通じて、特色ある地域づくりやコミュニティビジネス等を発展させていく切り札となります。
- また、条件不利地域では、著しい過疎化・高齢化の中で、独居高齢者等の健康管理や、公共交通機関の撤退による交流活動の停滞、伝統芸能等の継承の困難性など、多くの深刻な課題を抱えていますが、FTTHによる双方向映像コミュニケーションは、これらの課題に対処し、地域社会の諸機能を維持・補完する上で重要な社会基盤となっていくことが期待されています。
- このようなブロードバンド、とりわけFTTHの意義を踏まえ、本県は、全国に先駆けて条件不利地域におけるFTTHの実現に取り組んでいきます。
参考:条件不利地域におけるFTTHの活用 [PDF:13kb]
2.「情報通信インフラの発展シナリオ」の推進
- 条件不利地域のFTTH実現をめざす本県の「情報通信インフラの発展シナリオ」は、全国をリードする先進性・独創性を持ったIT戦略であり、全国の自治体だけでなく国のIT政策にも影響を及ぼしつつあります。
- 本県は、現時点で「発展シナリオ」の第二ステップ(「全県高速インターネット環境」)を既に達成し、第三ステップを推進しているところです。
- 具体的には、市町村や合併協議会が、第三ステップに沿って地域公共ネットワーク構築に向けた光通信サービスの調達を進めています。一方、民間通信事業者は、市町村からの調達を受け、公共施設へ光ファイバを敷設する工事に併せて、条件不利地域の集落ごとに「き線点」(光ファイバを各家庭・事業所に向けて敷設するための配線ポイント)を確保する先行投資を精力的に進めています。
- 本県は、今後、第四ステップに取り組み、条件不利地域でもFTTH(加入者系光ファイバサービス)を利用できる全国屈指の情報通信環境を実現していきますが、そのためには、民間通信事業者の設備投資を促進するための思い切った支援制度の創設が不可欠なことから、今後とも国に対する要請活動や具体的な制度提案を粘り強く継続していきます。
第四ステップの実現方策に関する考察 [PDF:77kb]
- なお、総務省は、本県をはじめとする地方の切実な声を踏まえ、昨年6月「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」を設置して格差是正に向けた政策支援の在り方の検討に着手したところであり、12月には中間報告「ブロードバンド・ゼロ地域脱出計画」が取りまとめられました。
- 研究会は引き続き検討を重ね、今年夏に予定されている最終報告において、国の具体的な支援策を明らかにする方針であり、本県は、研究会委員として、本県の考え方が反映されるよう努めていきます。
- また、本県のIT戦略は民間通信事業者による積極的な設備投資に依拠していることから、民間通信事業者の設備投資意欲が後退してしまうような事態が将来にわたって生じ ることのないよう、これまで築き上げてきた民間通信事業者との厚い信頼関係を今後さらに発展させていきます。
3.IT利活用の促進
- 全国トップレベルのブロードバンド環境を住民福祉の向上や地域振興に活かすためには、その前提として、県民の情報リテラシー(IT活用の力量)を高めていくことが極めて重要 です。
- このため、県と市町村とが役割分担しながら、IT講習事業を引き続き全県展開するとともに、地域ITリーダーを核とする住民主体の学習活動の輪を広げていく取り組みを重点的に推進していきます。
1. 市町村のIT講習事業:
全市町村において、インターネット体験や基本的な機器操作研修等の初心者向け講座が開催されるよう、引き続き支援します。
2. 県立高度情報化センターのIT講習事業:
しまねe講習(インターネット遠隔学習システムによる地域ITリーダー養成講習)、地域ITリーダー実践活動サポート(インストラクタ等の派遣)、地域ITリーダー育成塾、中級・上級者向け講座等を実施します。
県立東部情報化センター / 県立中部情報化センター / 県立西部情報化センター
- 一方、これまで、IT利活用を図る市町村のソフト施策(アプリケーション開発・導入、コンテンツ充実など)に対する財政支援(市町村IT化総合推進補助金、IT利活用促進総合補助金)を行ってきましたが、中期財政改革における奨励的県単独補助金の廃止の基本方針を踏まえ、平成17年度以降の制度維持は困難と判断したところで す。
- 今後は、県の他部局や国の各種補助制度を利用してもらいながら、ITを活用した地域振興策に対する側面的な支援を行っていきます。
4.次期「全県域WAN」の運用管理
- 本県は、平成14年度から、本庁と地方機関、県内の市町村、主要公共施設等を超高速・大容量の光通信でネットワーク化する「全県域WAN」を整備して、行政職員の情報共有や公共施設における住民サービスの充実を図ってきました。
- 現在、次期「全県域WAN」(H17-19年度)の調達に向けた準備を進めていますが、次のような点を変更する予定です。
- 接続箇所数を拡大: 現行138箇所 → 次期150箇所
- 業務電算システム(財務会計・税務など)のネットワークを「全県域WAN」へ移行
- 合併による市町村再編に対応(合併が間に合わないケースには経過措置を講じる)
- ATMとイーサネットとの組み合わせにより、通信速度・通信品質等を改善
- 通信サービスだけでなくインタフェース機器類も併せて完全アウトソーシング化
- これにより、県と通信事業者との責任分界点が明確になり、速やかな障害・故障対応が可能になることから、ネットワーク全体の運用管理の質的向上を図っていきます。
5.電子自治体の推進
- ITを活用して住民サービス向上と行政の効率化を図る電子自治体の取り組みを、県と市町村が連携しながら推進していきます。
- インターネットを通じて申請・届出等の行政手続や公共施設予約を可能にするシステムの開発を県・市町村の共同アウトソーシング方式で進めてきましたが、「しまね電子申請サービス」の運用を 昨年10月から一部団体(県・松江市・海士町)で開始しました。
- 平成17年度には市町村側の運用団体数を順次拡大するとともに、県・市町村の対象手続を増やし、電子申請の定着を図っていきます。
- なお、平成16年度から当課に電子自治体推進室を設置して、他部局が所管する既存システムの効率化や新システム開発に対する技術的な支援体制を強化したところであり、中期財政改革の期間を通じて全庁的な情報システムの最適化を図っていきます。
6.情報セキュリティ対策の推進
- 本県は、「島根県情報安全対策指針(基本方針+対策基準)」を平成15年2月に制定しており、これに基づき、県が管理する情報資産や個人情報をウィルスや不正アクセス等の脅威から保護する情報セキュリティ対策を体系的かつ継続的に進めていきます。
- 情報セキュリティは、各所属における職員の意識改革と着実な対策の積み重ねによって始めて確保されることから、全職員への啓発とともに各所属の情報化リーダーに対する研修・情報提供を充実していきます。
- また、平成17年4月に予定されている個人情報保護法の全面施行、島根県個人情報保護条例の抜本改正を踏まえ、ネットワーク等を通じた個人情報漏洩の防止に万全を期す観点から、新たに全庁を対象とする情報セキュリティ監査を実施します。
7.市町村支援の充実
(1)具体的な支援内容
- 次に掲げる市町村のIT施策に対し、適切な助言指導を行うとともに、最新の技術動向や優良事例等の情報を収集提供していきます。
- 市町村の庁内ネットワーク及び地域公共ネットワークの構築・運用
- 「全県域WAN」と市町村側ネットワークとの連携及びその有効活用
- 市町村における電子自治体化の推進
- 市町村における情報セキュリティ対策の推進
- 県内各地域におけるブロードバンド環境(DSL・CATV・FTTH等)の向上
- 住民の情報リテラシー向上及びブロードバンド利活用の促進
- ブロードバンドを住民福祉向上や地域振興に結びつけるアプリケーション開発導入・コンテンツ充実
- 地上波デジタル化に伴うテレビ難視聴対策等
- 第三世代携帯電話の不感地域対策
- 市町村合併に伴う新市・新町の「行政情報化計画」「地域情報化計画」策定 など
※ 4. 8. 9. 10. : 今後特に市町村支援の必要性が増していく課題
(2)市町村合併に係る支援
平成16年度合併団体
- 平成16年度に合併する団体は、合併期日までに業務電算システム統合と庁内ネットワーク整備を間に合わせるため全力を傾注していますが、一方、新市・新町建設計画の中でIT施策の議論が必ずしも十分には行われていない傾向があります。
- このため、平成16年度合併団体にとって、平成17年度は新市・新町の「行政情報化計画」「地域情報化計画」を策定する重要な節目になることから、県としても新市・新町の要請に応じて情報提供・技術的支援を行っていきます。
平成17年度合併団体
- 平成17年度に合併する団体は、ようやく業務電算システム統合と庁内ネットワーク整備に着手したところであり、これらを遺漏なく成し遂げてもらうため、県として引き続き技術的支援を積極的に担っていきます。
- また、平成17年度合併団体では、新市・新町建設計画の策定作業が今後本格化していくことになりますが、その中でIT施策の議論を十分に煮詰めてもらうため、県として情報提供・技術的支援を行っていきます。
(3)県の役割の変化と政策支援の必要性
- 本県は、平成15年12月「今後の地方自治制度のあり方に関する論点整理等」(政策企画局)を取りまとめたところであり、第3章第1項「市町村合併をふまえた今後の島根県のあり方」において、「都道府県の役割として地方自治法に定められている広域的機能、連絡調整機能、補完機能という3つの機能は、今後も市町村との役割分担の前提となるものである。補完機能については、市町村の規模・能力の拡大に伴い、一般的には縮小し、より高度な専門的知識や技術の先導的な提供などにおいて求められることとなる」という考え方を明らかにしています。
- このような考え方を踏まえれば、IT(情報通信技術)という極めて高度な専門的・技術的知見を求められる行政領域において市町村に対する技術的支援を行うことは、県の本来的な役割であり、その必要性は今後一層増していくことになるものと考えられます。
- また、本県のIT戦略は全国をリードする先進性・独創性を持つものですが、その本質は、県・市町村・産業界が足並みを揃えて通信需要の喚起を図ることを通じて、民間通信事業者の設備投資に向けた積極的な経営判断を導き出すことから成り立っています。
- このため、市町村への適切な助言指導とともに最新の技術動向や優良事例等の情報を収集提供する県の役割は、県と市町村との連携を強化し、足並みを揃えていくための政策支援の手段として極めて重要になります。
(4)財政支援から技術的支援への移行
- 本県は、平成13年度以降、地域ネットワーク構築支援事業補助金(H13-16年度)、市町村IT化総合推進補助金(H14-15年度)、地域公共ネットワーク構築支援交付金(H16-21年度)、IT利活用促進総合補助金(H16-18年度)を相次いで創設し、財政支援の手法によって強力に市町村を誘導してきました。
- しかしながら、中期財政改革のもと、今後の市町村支援の在り方については、技術的見地からの助言指導や技術動向の情報提供など、技術的支援を中心に据えざるを得ないと考えています。
- 全国をリードする本県のIT戦略を停滞させないためには、財政支援から技術的支援へと力点を移しながらも、引き続き強力に市町村を政策支援していく必要があります。
- その一環として、県立高度情報化センター(東部・中部・西部)に1名ずつ配置している市町村ITヘルプデスク※(H14?16年度)についても1年間延長する予定です。
※ 市町村ITヘルプデスク: 市町村のIT施策に対する技術的支援を担当するため、県立高度情報化センターに配置したネットワーク・システムに関するスペシャリスト
- 以上のような事情を踏まえ、市町村に対する技術的支援を充実していくため、当課職員の技術的知見及び情報収集力の向上に向けた研修(On Job Training)や情報共有に努めるとともに、市町村ITヘルプデスクと連携しながら、市町村支援業務[PDF:16kb] に重点的に取り組むことができる体制を整備していきます。
情報政策の推進状況
情報通信インフラ
超高速・大容量の光通信(基幹通信網)
・ATM専用線サービス提供市町村
H13年3月末時点: 2市
H16年9月末現在: 59/59市町村
・広域イーサネット専用線サービス提供市町村
H13年3月末時点: 0
H16年9月末現在: 59/59市町村
ブロードバンド(加入者系回線網)
・DSLサービス提供市町村
H13年3月末時点: 0
H16年9月末現在: 55/59市町村
・CATVインターネット提供市町村
H13年3月末時点: 3市町
H16年9月末現在: 17/59市町村
・FTTHサービス提供市町村
H13年3月末時点: 0
H16年9月末現在: 11/59市町村
・ブロードバンド利用可能世帯
H13年3月末時点: 1%
H16年9月末現在: 99%
・ブロードバンド世帯普及率
H13年3月末時点: 0%
H16年9月末現在: 25%(推定)
情報リテラシー
県立高度情報化センターのIT講習事業
H13年3月末時点: IT講習会のみ
H16年9月末現在: IT講習会、出前講座、地域ITリーダー実践活動サポート、e-ラーニング
市町村のIT講習事業
H13年3月末時点: 未実施
H16年9月末現在: ほぼ全市町村実施中(4年目)
電子自治体
しまねフロンティアネットワーク
H13年3月末時点: 地上系無線による自営通信網(1.5Mbps・13箇所)
H16年9月末現在: 光通信調達による「全県域WAN」(10Mbps・138箇所)
住民基本台帳ネットワーク
H13年3月末時点: 未整備
H16年9月末現在: 運用中
総合行政ネットワーク(LGWAN)
H13年3月末時点: 未整備
H16年9月末現在: 運用中
公的個人認証基盤
H13年3月末時点: 未整備
H16年9月末現在: 運用中
電子申請システム
H13年3月末時点: 申請書ダウンロードサービス
H16年9月末現在: しまね電子申請サービス運用開始
パソコン一人1台
H13年3月末時点: 本庁・地方機関の一部(配備率49%)
H16年9月末現在: 全ての本庁・地方機関(配備率100%)
ホームページ開設所属
H13年3月末時点: 本庁89%・地方機関53%
H16年9月末現在: 本庁100%・地方機関100%
情報セキュリティ対策
H13年3月末時点: 未整備
H16年9月末現在: 情報安全対策基本方針策定済み
情報安全対策基準策定済み
市町村支援
市町村に対する県単独財政支援制度
H13年3月末時点: なし
H16年9月末現在: 地域ネットワーク構築支援補助金
地域公共ネットワーク構築支援交付金
IT利活用促進総合補助金
市町村に対する技術的支援体制
H13年3月末時点: なし
H16年9月末現在: 市町村ITヘルプデスク3名配置

