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しまねの旬の魚一口メモ(10-11月)

島根で10-11月ころに水揚げされる水産物の特徴と「売り」について、県の調査結果や外部リンクを交えて解説します。

※文中の脂の量は三枚におろした際の可食部に含まれる脂質含有量です。

 

参考リンク:島根のさかな(島根県でとれる主な魚介類についての解説です)

イラスト

目次

島根の旬の魚(10-11月)

アカムツ(ノドグロ)

アカムツ(ノドグロ) 脂の乗りや鮮度が売りです

サワラの写真

サワラ 曳き縄釣りのものは大きさと鮮度の良さが自慢です

アンコウの写真

アンコウ 今の時期が一番多く獲れます

ハガツオの写真

ハガツオ(キツネガツオ) 鮮度の良い刺身はマグロのトロを超える美味しさ!

マトダイ

マトウダイ(バトウ) 地元浜田では人気!フライや刺身で美味しい!

ベニズワイガニの写真

ベニズワイガニ 身の甘さではズワイを超える!安くて美味しい庶民の味方!

アオリイカの写真

アオリイカ イカの王様!秋が深まるにつれ漁獲量が増加します

ケンサキイカの写真

ケンサキイカ(白いか)

ヤリイカ(てなしいか)

ケンサキイカは夏のイカですが、この期間の漁獲量も多いです。

ヤリイカはハシリです。

マサバの写真

マサバ 適度に脂が乗ってます!シメサバや一夜干しには最適!

ヨコワ

クロマグロ(ヨコワ) モチッとした食感が魅力。大型のものは脂の乗りも良好。

シイラの写真

シイラ(まんさく) 大型のものは秋に脂が乗ります。

アナゴの写真

アナゴ 脂の乗りや鮮度が売りです

キダイの写真

キダイ(れんこだい) 漁獲量は秋がもっとも多いのです

カレイ類

カレイ3種

(ソウハチ・ムシガレイ・ヤナギムシガレイ)

そろそろ子持ちになる季節です

ソデイカの写真

ソデイカ(ベニイカ、アカイカ) 食用になるイカとしては最大!身が厚く、もちっとした食感が特徴です

カワハギ類の写真

カワハギ類 この時期一番漁獲量が多いです、骨離れも良く、色々な料理に活用できます!

ブリの写真

ブリ この時期一番漁獲量が多いです・・・あっさりした歯ごたえのある刺身が味わえます!

●アカムツ(のどぐろ)

-脂の乗りや鮮度が売りです-

 

アカムツ(ノドグロ)

 

 島根県では主として底曳網で漁獲されます。地元でも人気の高い魚ですが、浜田市ではどんちっちの名で、マアジ、カレイ類とともにブランド化されています。産地により脂の乗りが異なり、同じノドグロでも、西部(主に沖合底曳網)で漁獲されたものの方が、東部(主に小型底曳網)で漁獲されたものよりも平均的に見てやや脂の乗りが良い傾向があります。また県外で漁獲されたものの中には、産地により脂の乗りが極端に低いものがあります。

 島根県水産技術センターにおいて、ノドグロの脂の乗り(脂質含有量)を測定することが可能となっていますが、浜田ではこの装置を用いて、セリ前や店頭において脂質含有量を測定し、販売する試みがなされています(右の写真、とびっくすNo.6参照)。また、ノドグロは調理方法によっても(一夜干し、塩焼き、煮付け)脂の乗りの違いで消費者の好みが分かれますが、加工業者の中に水産技術センターの技術を活用し、ノドグロの一夜干しを脂の乗りごとに3段階程度に分け、販売する業者も現れました。この試みは全国発といえますが、将来的には個人の好みに応じた脂の乗りの加工品や、鮮魚が販売されるようになるかもしれません。

 

●サワラ

-曳き縄釣りのものは大きさと鮮度の良さが自慢です-

 

サワラ

 

 漁獲量は9-11月が最も多くなっています。大部分は定置網で漁獲されますが、本土沿岸域ではひき縄釣りで大型のものが漁獲されます。中でも美保関の福浦地区では、活け〆や冷却方法の改善等の高鮮度処理を施したサワラを試験的に出荷していますが、身割れや肉質の劣化が通常の出荷のものよりも抑えられています。肉質や脂の乗りはやや個体差が大きいものの、大型のものでは、身がサワラ独特のピンク色を呈したものが多く、また分析結果から脂の乗りも比較的良好な個体が多いようです。

 小型の0歳魚(サゴシ)については、定置網や浜田のまき網等で多く漁獲されますが、こちらは脂の乗りはあまり良くないものの、西京みそ漬けや一夜干し等に加工され、ネット販売やスーパーの商材として好評のようです。

 

※参考リンク

 

●アンコウ

-今の時期が一番多く獲れます-

 

アンコウ

 

 島根県では、底曳網で年間500-700トンが漁獲されています。アンコウは冬に鍋として食されることが多い魚ですが、漁獲量が最も多いのは10-11月です。味は鍋の時期と比較して遜色なく、肝の入りも良いので、比較的安価なこの時期にいつでも食べられるよう下ごしらえしてから冷凍しておき、寒いと感じた日にさっそく鍋料理・・・というのもよいかもしれません。また一般的には鍋料理に用いられるアンコウですが、鍋以外にも色々な調理法があります。一例をあげると、身は唐揚げ、皮は酢の物、肝は酒蒸し、肝ステーキに・・・冬だけにしか食べないのはもったいない食材といえます。

 

●ハガツオ(キツネガツオ)

-鮮度の良い刺身は、マグロのトロを超える美味しさ!-

 

ハガツオ

 

島根県では夏から秋にかけ、主にまき網で漁獲されます。漁獲量は数トン程度と少なく、漁獲される日数は少ないものの、カツオの赤身とは異なり、ほんのり桜色の身色と、脂の乗った、とろけるような美味しさで地元では評価の高い魚です。しかし、身質が柔らかく、また魚肉の軟化が比較的早いので、十分な鮮度管理が必要な魚といえます。

 

 

●マトウダイ(バトウ)

-地元浜田では人気!フライや刺身で美味しい!-

 

マトダイ

 

 主に底曳網で漁獲されますが、定置網、釣り、刺網でもわずかながら漁獲されます。島根県では年間100-200トン程度水揚げされますが、そのうち3分の2が、9-12月の間に漁獲されます。身は白身で淡白、鮮度のよいものは肝とともに刺身にされますが、加熱すると身に旨みが出るので煮付け、塩焼き、フライ、バター焼にされます。また、フランス料理の素材にも活用されます。バトウフライは「浜田のソウルフード」と呼ばれるほど地元では親しまれています。

 

●ベニズワイガニ

-身の甘さではズワイを超える!安くて美味しい庶民の味方!-

 

 深い水深(数百-二千m)において、かご漁で漁獲されます。いわゆる松葉ガニ(ズワイガニ)の漁期は11-3月ですが、このカニは漁期が長く、夏場の6-8月を除いて年中漁獲されます。身が甘く、松葉よりも美味しいという方もおられる反面、鮮度落ちが早く、身入りに個体差があります。通常は茹でたものが流通しますので、身入りの良し悪しである程度、選別することも可能です。ベニズワイガニかご漁業においては、漁業者だけでなく加工業者も含めて、地域でベニズワイガニ資源を守っていこうという先進的な取り組みが行われています。

ベニズワイガニの写真

 

 

●アオリイカ(ミズイカ)

-イカの王様!秋が深まるにつれ漁獲量が増加します-

 

アオリイカ

 

 透き通るような身質が自慢のイカです。秋が深まるに連れ漁獲量が増加します。主に定置網で漁獲されます。漁獲されるのは主に今年産まれたばかりの小型のものです。イカの王様と呼ばれるほどの高級魚とされますが、実際に分析しても、甘味成分のもとである遊離アミノ酸(グリシン、アラニン、プロリン)の含有量がよく漁獲されるイカ類の中で、もっとも多いことがわかっています。最近アオリイカの一夜干しが多く出回るようになりましたが、柔らかくて甘みが強く、冷凍にも耐えられるので、気の利いた贈答品として重宝される一品といえます。

 

●ケンサキイカ(白いか)

-ケンサキイカは夏のイカですが、この期間の漁獲量も多いです。-

 

イカの写真
ケンサキイカ ヤリイカ

ケンサキイカ

ヤリイカ

 

 ケンサキイカ(白イカ)は"夏のイカ"とされますが、秋にもまとまって漁獲されます。10-11月の漁獲量が島根県全体でおよそ300トン程度と、最盛期の8-9月が400トン程度ですからそれほど大きな差はありません。数多いイカの中でも、ケンサキイカは味の面ではトップクラスにランクされます。刺身は柔らかく独特の甘みがあり、地元では刺身で食べるならこのイカしかない、という人がいるくらい美味しいとされています。実際に分析すると、甘味成分の元である遊離アミノ酸(グリシン、アラニン、プロリン)の含有量がアオリイカについで2番目に多いことがわかっています。刺身の他、煮付け、天ぷら、するめ、いか飯、麹漬など多様な料理法があります。

 ケンサキイカの漁獲量が少なくなってくると、それに併せてヤリイカの漁獲量が多くなってきますが、この時期はまだハシリなので、漁獲量は少なめです。秋にはもっぱら底曳網で漁獲されますが、冬になると定置網やイカ釣りなど沿岸でも漁獲されるようになります。

 

●マサバ

-適度に脂が乗ってます!シメサバや一夜干しには最適!-

 

マサバ

 

 全国どこでも漁獲されているマサバですが、山陰のものは、太平洋側と比較するとやや脂の乗りが旬(秋-冬)の時期に低いのが特徴です。しかし、年間を通じて脂の乗りに大きな差がみられないので、浜田では一部の加工業者が開き干しにして、にほんばししまね館にも出荷していますが、ノルウエーのサバと違って、脂の乗りが適度で美味しい、と評判です。また、シメサバにするには、旬のサバは脂が多すぎるという声も聞きますが、山陰のサバであれば、どんな料理にも合うレベルなので重宝されること請け合いです。

 

●ヨコワ(クロマグロの小型魚)

-モチっとした食感が魅力!大型のものは脂の乗りも良好なものが多い!-

 

ヨコワ

 

 クロマグロの小型のものをヨコワと呼びますが、大きいものではマグロといってもよいような大型の個体(10kg以上)から、1kgにも満たないようなものまで漁獲されます。大型の個体ではクロマグロと同じく、腹身の脂の乗りが良いものが多く、赤みはマグロと同様モチモチっとした食感があります。気の利いた地元の回転寿司や居酒屋では、この時期の目玉として入り口の黒板に書かれていたりします。まき網や引縄釣りで漁獲されます。

 

●シイラ(まんさく)

 -大型のものは秋に脂が乗ります・・・小型のものは刺身、フライで-

 

シイラの写真
シイラ

釣り上げられたシイラ

 

 漁獲量は夏場が多く、秋には少なくなりますが、秋が深まるにつれ、脂が乗って美味しくなってきます。これらは一本釣りや定置網で漁獲されるほか、大田市五十猛など一部の「シイラ漬け」は、この美味しいシイラを狙って秋に操業することもあるようです。また、定置網には、小型のシイラが入網しますが、これらは身に透明感があって刺身やフライなど、色々な料理に活用できます。

 シイラは個体によって肉の色や硬さが異なり(筋肉中の乳酸の量によります)、肉に透明感がある物は刺身素材に適しており、肉が白っぽい物はムニエル、フライや冷燻(いわゆる魚の生ハム)の素材に向いています。シイラはフライ素材としては、ふっくらサクサクとして美味しく、国産のフライ素材としてもっと活用できると思います。ちなみにハワイではマヒマヒとよばれ高級魚となっています。

シイラの料理

 

※参考リンク

とびっくすNo.15(平成18年8月)夏のシイラは島根の味!(PDF,293KB)

 

●アナゴ

-脂の乗りや鮮度が売りです-

 

 アナゴはこの時期、主に底曳網で漁獲されます。アナゴは瀬戸内海産などのものが有名ですが、島根県のアナゴは比較的大型のものが多く、分析結果から脂の乗りは良好なものが多いことが分かっています。現在は底曳網であっても活魚出荷したり、活け締めして出荷されています。高品質にこだわり、活け締めしたアナゴを開きにし、一夜干し等に加工する業者もいます。また、温泉旅館の中には、アナゴ料理を売りにするところもでて来るほどになりました。

 

写真
アナゴ マアナゴ

マアナゴ(活けしめによる鮮魚出荷)

マアナゴの活魚出荷

 

 

●キダイ(れんこだい)

 -漁獲量は秋がもっとも多いのです-

 

 キダイはタイ類の中でも特に美味とされ、高級惣菜物として塩焼き、吸物、煮付け、刺身などにされます。

 島根県のキダイは、夏場に脂の乗りがピークに達し、秋には減少するので、この時期の脂の乗りはいまひとつです。しかし、身にはタイ類独特の旨みがあるうえ、秋の時期には底びき網による漁獲量が多く、値段も手ごろになることから、お勧めの一品といえます。

 

キダイ

 

 

●カレイ3種(ソウハチ・ムシガレイ・ヤナギムシガレイ)

-そろそろ子持ちになる季節です-

 

カレイ3種
ソウハチ ムシガレイ ヤナギムシガレイ

ソウハチ(えてがれい)

ムシガレイ(みずがれい)

ヤナギムシガレイ(ささがれい)

 

 島根県で漁獲されるカレイの多くをこの3種類が占めます。

ソウハチ:年間を通じた漁獲量はソウハチ(写真左)が最も多いのですが、ソウハチは春の漁獲量の方が多いので、10、11月だけを見るとムシガレイ(写真中央)が最も多く、ついで、ソウハチ、ヤナギムシガレイ(写真右)という順序です。これら3種とも、産卵期が1-2月なので、この頃から成熟が始まり、雌は子持ちガレイになります。同じように見えるカレイですが、どのカレイにもそれぞれ特徴があります。ソウハチは肉厚で脂が乗ります。

ムシガレイ:ムシガレイはソウハチよりもやや薄いですが、関西で浜田のカレイというとムシガレイの干物を指すほど有名です。

ヤナギムシガレイ:ヤナギムシガレイはササガレイとも呼ばれ、高級なカレイの代表格といえます。その理由は、通常カレイ類の旨み成分であるイノシン酸は死後短い時間で速やかに減少するのですが、このカレイだけは減少速度が遅いため、干物として食べる場合でも十分イノシン酸が残っているのでより美味しいのです(島根県水産技術センターでの分析結果より)。

 カレイ類は一般にイノシン酸の減少速度が速いので刺身にするには高鮮度であることが要求されますが、高鮮度のカレイの刺身は大分の城下ガレイが珍重されているように、旨み成分であるイノシン酸が豊富に含まれているので、超お勧めの一品です。

 

●ソデイカ(ベニイカ、アカイカ)

-食用になるイカとしては最大!身が厚く、もちっとした食感が特徴です-

 

ソデイカ

 

年間300-600トンが漁獲されますが、そのほとんどが10-12月に漁獲されます。身が厚く、モチっとした歯ざわりが特徴のイカです。刺身や回転寿司のネタ、フライの素材などに用いられます。紋甲イカなど、国産で身の厚いイカは少ないので、重宝されるとともに、その大きさが5-20kg程度と大きく、人目を引くこと請け合いです。鮮度の良いものは赤みが強く、見た目にもきれいです。

 

●カワハギ類

この時期一番漁獲量が多いです。骨離れも良く色々な料理に活用できます!

 

ウマヅラハギ

 

 島根県で漁獲されるカワハギ類のうち、8割以上をウマズラハギが占め、約1割がカワハギです。秋から冬にかけ、主として定置網や底曳網で漁獲されます。鍋物にはよく利用されるカワハギ類ですが、鮮度のよいものは刺身(薄造り)で美味しいほか、煮付けや唐揚げなど、意外にも色々な料理に向いている魚といえます。調理しやすいだけでなく、骨離れがよいので、魚料理の苦手な方の魚料理入門の魚ともいえます。

 

●ブリ

この時期一番漁獲量が多く、あっさりした歯ごたえのある刺身が味わえます

 

ブリの写真

 

 漁獲の主体は1kg前後から3-4kg程度の、地元ではワカナやマルゴと呼ばれる小型サイズが主体です。主に定置網やまき網で漁獲されます。刺身にすると脂気は少ないのですが、透明感のある身の鮮度感とプリッとした食感です。この時期は漁獲量が多く、価格の設定を比較的安価にできることもありますが、地元のスーパーの鮮魚売り場から姿を消すことがないほど好まれています。

 


お問い合わせ先

水産技術センター

島根県水産技術センター(代表)
〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1
TEL.0855-22-1720 FAX.0855-23-2079 E-Mail: suigi@pref.shimane.lg.jp