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島根県水産技術センター研究報告第1号(2007年3月)

全文(PDF,17,227KB)

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島根県敬川沖における魚類の出現特性−III(PDF,5,392KB)
-底性魚類群集の経年変動-

(森脇晋平・若林英人・為石起司)

沿岸漁場開発調査事業/第2県土水産資源調査事業(昭和56年度〜平成15年度)

1981〜2003年にかけて島根県西部敬川沖において底びき網調査で得られた底生魚類の採集資料をもとに、出現した魚種の経年変動について言及した。クラスター分析により出現した魚種の年々の類似性を調べたところ、大きく3つのグループに分類できた。1つは1980年代初めから半ばまでのグループ(I)、2つ目は1980年代後半から1990年代後半までのグループ(II)、3つ目は1990年代末から2000年代初めまでのグループ(III)である。この結果を日本海南西部海域における長期的な水温変動と対比するとIグループは低温期、IIグループは低温期からの移行期、IIIグループは高温期にそれぞれ符合する。この比較的よい対応関係は水温環境の差異が魚種組成に影響を与えたことを示唆している。

島根水技セ研報、No.1、1−10(2007)

 

(PDF,2,088KB)

清川智之、井岡久

島根県水産技術センターの分析結果から、浜田沖で漁獲されるマアジやアカムツは豊富な脂質を保有していることが明らかとなった。これらの価値をさらに向上させるため、"競り"の前や"小売の店頭"において、脂質含有量を測定できるよう、ポータブル型近赤外分光分析装置を用いて脂質測定技術の開発を行った。その結果、化学分析値との相関係数は0.95以上、予測標準誤差が約1%と、精度良くこれらの魚種の脂質含有量を測定することが可能となった。この取り組みは関係者の信頼を得て、価格にも反映し始めた.また、この装置を使ってマアジを異なる脂質含有量ごとに分類し、脂質含有量の異なったマアジの開き干しを作製し、消費者に提供したところ、得られる満足度は異なった。さらに、アカムツでは、水揚げ現場や小売店で脂質含有量を測定し、数値を表示して販売したところ、"売りやすく買いやすい"といった、高評価が得られた。

島根水技セ研報、No.1、11−17(2007)

 

島根県周辺海域で漁獲されたアカムツ総脂質含有量の季節変化と個体差

(PDF,1,645KB)

清川智之、開内洋、井岡久

アカムツを購入する際、消費者は脂質含有量の多寡を最も重要視するが、島根県に所属する底曳網で漁獲される本種の脂質含有量は、その多くが消費者の期待に沿うレベルに達していると考えられた。しかしながら、漁獲物の中には、可食部の脂質含有量が10%以下の低脂質な個体も存在した。このような脂質含有量の低い個体は、季節に関係なく存在したが、これらは、肥満度や色から推定するのは難しいと思われた。正確な脂質含有量を把握する目的で、近赤外線等を用いた測定技術の開発が望まれる。

島根水技セ研報、No.1、19−23(2007)

 

ワカメ養殖業安定化対策試験‐I(PDF,1,934KB)

−島根県におけるワカメ養殖の実態調査結果−

道根淳・佐々木正・清川智之

増養殖技術開発事業:ワカメ養殖業安定化試験(平成12〜16年度)

島根県におけるワカメ養殖業の収獲量の減少要因を明らかにするために聞き取り調査を行った。養殖ワカメの収獲量は,経営体数の減少とともに減少している.特に,経営体数の減少率は1990年以降大きくなっている.また,年齢構成は60歳以上の漁業者が7割を占めており,40歳未満の若手漁業者がいない状況である.一方,1経営体当たり収穫量は年代による違いはあるが,安定推移している.さらに,近年の水温上昇により種苗の沖出し時期の遅れ,収穫期間の短縮を漁業者は感じている.以上のことから,養殖ワカメの収獲量の減少要因として,高齢化による労働力の低下と環境要因による生産性の低下が考えられた.

島根水技セ研報、No.1、25−31(2007)

 

島根県多伎海域における種苗放流メガイアワビの漁獲状況(PDF,1,225KB)

内田浩・佐々木正

1998年以降継続してメガイを放流している島根県多伎海域を対象にして2001〜2005年に放流貝の再捕状況等の調査を実施し、漁獲量の推移や放流貝の混獲率とともに各放流群の加入状況や回収率を推定した。調査の結果、多伎海域の放流メガイの混獲率46〜79%は非常に高く、また放流群毎の回収率は,9.7〜15.7%であり,メガイを対象にした他県の回収率調査例と比較して高い傾向が見られた。

島根水技セ研報、No.1、33−39(2007)

 

中海における漁獲量変動(PDF,1,144KB)

森脇晋平・道根敦

宍道湖・中海水産振興

利用可能な漁獲統計資料を用いて中海の重要水産資源生物の長期的な変動傾向を調べた。エビ・カニ類・貝類などの底生動物は1980年代に入ってから急激に減少し始めた。アミ類や小型のハゼ類は1980年代半ばから低水準で経過している。1990年代に入り、ワカサギ・ヒイラギがほとんど漁獲されなくなったこと、マハゼ・ウナギが大幅に減少したこと、スズキは大型化し増加したことなどから魚類資源と魚類相は異なった状態に転移したと思われる。2000年代半ばにいたり、中海の生物群集が新たなフェーズにシフトしていくのか今後とも注意深く観察していく必要がある。

島根水技セ研報、No.1、41−48(2007)

 

宍道湖における塩分の長期的変動(PDF,4,403KB)

森脇晋平・安木茂

宍道湖・中海水産振興

宍道湖における1930年代から2000年代初頭にかけての文献記録のある塩分観測値を整理・分析した。宍道湖の長期的な塩分変動は、1930〜1950年代の高塩分期と1950〜1970年代初めまでの低塩分期に分類できる。その後は塩分上昇のモードに転じたと思われる。定期観測が実施され始めた1980年代以降では表層、底層・湖底直上ともに顕著な変動傾向は認められないが、水産資源生物に大きな影響を与える塩分の変動に注目していく必要ことが重要であることを指摘した。

島根水技セ研報、No.1、49−59(2007)


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島根県水産技術センター(代表)
〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1
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