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中山間地域・離島振興特別委員長報告

 

中山間地域・離島振興特別委員長報告  平成25年2月定例会

 

中山間地域・離島振興特別委員会の調査結果について、御報告申し上げます。

 

本委員会は、中山間地域及び離島の維持活性化に関する審査及び調査活動を行うこととして、平成23年6月定例会で設置されたところであります。

昨年度は、付託案件のうち、「島根県中山間地域研究センター」の機能強化と、「中山間地域活性化計画」の策定に向けた総合的施策の方向性の2点について調査を行い、昨年3月に、中間報告として調査結果をとりまとめ、御報告したところであります。

その報告において、センターの機能強化については、

・研究成果を迅速に地域に普及するシステムを機能させる方策の検討。

・地域独占的なブランド産品の開発と、それを活用した地域活性化。

・研究成果を、県の施策に反映させるための仕組みづくり。

以上の3点に取り組むよう要望いたしました。

 また、中山間地域活性化計画の総合的施策の方向性については、

・今まで以上にスピード感のある取組。

・部局連携を一層強化するために発足したプロジェクトチームの機動性の確保と、連携した予算執行。

・時宜を得た議会への報告と、本委員会の場を活用した意見聴取。

の3点を要望したところであります。

 

2年目の今年度につきましては、主に3つのテーマについて調査してまいりました。

一つ目は、他県における生活機能や所得の確保等を通じた地域活性化の取り組みについて、二つ目は離島の産業振興について、三つ目は、昨年度中間報告で本委員会への意見聴取を求めた中山間地域活性化計画の取組状況についてであります。

 

その概要をご紹介しますと、まず、一つ目の他県における生活機能や所得の確保等を通じた地域活性化の取り組みでは、高知県の株式会社大宮産業と広島県神石高原町の事例を調査いたしました。大宮産業は、JAの経営合理化による出張所の廃止を機に、地元住民で株式会社を設立し、日用雑貨・農業資材等の販売やガソリンスタンドなどの事業を引継ぎ運営を行っておりました。神石高原町では、道の駅に大手コンビニを誘致し、大手コンビニと連携した移動販売を開始するなど、生活機能の維持・確保に向けた取組がなされておりました。

 また、所得確保の視点では、高知県で成果をあげている株式会社四万十ドラマの事例を調査いたしましたが、そこでは、これまで見向きもされなかった檜の端材、オガクズ、古新聞など、足元にあった素材を見事に商品化し、国内有名店で取り扱われるだけでなく、海外からも注目されるまでになっております。さらにかつて特産であったものの、大幅に作付けが減少した栗やお茶などの農産品に光をあて、加工による高付加価値化、商品化により、かつての特産品の復活を現実のものとさせつつありました。商品化の過程では、販路開拓という出口対策と商品化を同時並行で行っていること、地元で加工し、自分たちで販売することで地元に金が落ちる仕組みを作り上げていること、さらに、単に物を売るだけでなく、消費者とのネットワークを構築するため、三十を超える体験プログラムを組み立て、提供しており、中山間地域の活性化につながるヒントを数多く抱えている事例でありました。

 これら、他県での調査を通じ、それぞれの代表者たちが口にされたキーワードのうち、地域の活性化に結びつくものをいくつか上げますと、「発想の転換」「キーマン」「モチベーション」「考え方」「本質」などであります。足元にある地域資源を商品にするには、発想の転換と、眠った宝に気づく外部の目が必要であり、モチベーションを維持するための仕掛け人や、どういった考え方で商品を作り上げていくのかといったプロデュース役の存在も重要と言えるでしょう。物事を仕掛ける際には、最初から周囲に理解を得られるケースは少なく、理解してもらえる人たちだけで実績を作ること、それを最後までやり遂げる強い意志がプロデュース役には必要との、実体験に基づく重い言葉もうかがったところです。

また、情報発信や地域住民の拠り所となる拠点として、道の駅、廃校になった学校、撤退したJAの施設等を生きた施設とすることも重要であると改めて感じたところであります。特に、株式会社四万十ドラマのように、道の駅を、単に特産物販売所ではなく、自分たちの考えや商品等の情報発信基地として位置づけ、さらには単なる通過点ではなく目的地として人が訪れる場所に作りあげていたことも大変参考になりました。

 加えて、高知県においては、県職員を全市町村に地域振興企画員として駐在させており、県職員の10人に1人はその市町村駐在を経験しております。地域の課題、ニーズを吸い上げ、地域でともに汗をかく職員は、地域から頼りにされ、その存在意義は大きいという印象を受けたところであります。

 

 次に2点目の、離島の産業振興についてでありますが、畜産経営に異業種参入した有限会社潮風ファーム、岩ガキ養殖に取り組む海士いわがき生産株式会社、隠岐ジオパークの世界認定に向けた取組などを調査いたしました。いずれも地域資源を活用した取組がなされており、品質向上やニーズに対応した販売など、改善の余地があるものの、それら課題解決により今後まだ販売拡大が期待できる事業を展開されておりました。

海士町においては、海の砂漠化対策として、海藻を人工的に増やすだけでなく、海藻の多用途利用等、新たな産業創出に向けスピード感を持った果敢なチャレンジをスタートされたところでありました。

また、人材の確保、育成の観点で、西ノ島町においては巻き網漁など漁業を中心としたIターンの受入状況を、海士町においては島外から講師を招聘しての公営塾の設立や全国からの留学募集など島前高校魅力化事業の状況についても調査を行いました。Iターンの受入にあたっては、働く場、住む所が確保されており、着実に成果が上がっておりました。高校の魅力化については、国公立大学合格率がアップするなど着実に学力向上を実現しているだけでなく、将来自分がどう地域に貢献できるかを考えさせる「夢ゼミ」というキャリア教育にも力を入れ、将来地域を担う人材の育成と、その結果としての地域での産業雇用の場の創出を見据えている点で、過疎化が進む他地域でも大いに参考になる取組であると感じたところです。

 

 次に3点目の、本県における中山間地域活性化計画の取組状況についてであります。

今年度、県内全地区において、公民館等のエリアを単位に227の「しまねの郷づくりカルテ」が作成され、現時点での各地区の総合診断が行われました。今後、平成27年度までに70地区程度を過疎地域自立促進特別事業実施地区として選定し、市町村とも連携しながら課題解決を進めていく予定であります。これらの取組を通じ、選定地区以外の地域への波及効果も狙っているところであります。

昨年度の中間報告で要望したとおり、定例会ごとに本特別委員会において取組状況について執行部から説明がなされました。それを受け、各委員からは、

・市町村により、取組に差が出ないよう働きかけること。

・地域外も含め、人材の確保、育成する仕組みが必要であること。

・「しまねの郷づくりカルテ」に、処方と結果を書き込むドクターの役割が重要であること。

・「しまねの郷づくりカルテ」が、各部局、市町村で広く等しく活用されること。

・各地区の一番の問題はなにか、根底から探ること。

・移動商店についても検討すること。

などの意見が出されたところであります。執行部においては、これらの意見を踏まえ、今後取組を進めていただきたいと考えております。

 

 この2年間の調査により、県内の中山間・離島地域において、全国的に見ても先進的な取組がある一方で、地域の資源を生かしきれていない地域があることも改めて確認したところであります。

地域の活性化や集落維持、さらにはUIターンを積極的に呼び込むためには、そこで安心して生活し定住できる生活機能や所得の確保が必要不可欠であり、それらを実現するための方策について、本委員会として次の8項目を要望するものであります。

 

1 推進体制(部局横断、市町村との連携)について

 ○集中的に施策を講じるため、県の部局横断的体制のさらなる強化と、十分な予算を確保すること。

 ○温度差のある市町村、地元住民に対し、連携体制を深めるよう働きかけること。

 ○各部局及び市町村における「しまねの郷づくりカルテ」の認知を進め、事業構築、事業実施にあたってカルテを十分活用すること。

2 中山間地域研究センターの研究成果の普及について

 ○これまで蓄積した研究成果やノウハウを分かりやすく現地に提供するとともに、プロジェクトチーム活動において最大限活用し、その成果を他地域に波及させること。

3 核となる人材の確保について

 ○プロジェクトチーム活動であぶり出された地域の課題に対し、専従で解決する実働部隊を、地域の内外から確保すること。

4 地域資源の商品化による所得確保について

 ○地域資源への気づき、商品化、販路開拓等、それらをトータルプロデュースできる指導者の派遣、またはそういう人材の配置に対し支援すること。

○道の駅等、情報発信拠点のテコ入れに対し支援すること。

5 中山間地域活性化計画に基づく対策の確実な実践について

○地域住民や市町村が課題解決に向けて実施する取組に対し、プロジェクトチームが総合的・一体的に支援を行うとともに、既存事業では対応できない課題等に対し、ピンポイントでスピーディーに対応できる予算を十分に確保するなど、中山間地域活性化計画の着実な推進に努めること。

○部局横断プロジェクトチームによる対策の推進、しまねの郷づくりカルテの活用、過疎対策事業債(ソフト事業)の有効活用等について、時宜を得た議会への状況報告につとめること。

6 保育所、学校等の存続と若者の定着について

 ○定住対策を総合的にすすめる観点から、中山間地域や離島における、小規模保育所・学校等が存続するための支援、及び教育環境の充実を図ること。

 ○専門高校生を始め若い人材を、地域あげて育て、地元への就職率をあげる取組を継続すること。

7 お年寄りにやさしい助けあいの創出について

 ○買い物バス、移動販売、通院バス等の買い物不便対策や交通空白地域解消にむけた条件整備について、引き続き支援すること。

8 離島の振興について

 ○人材の育成・確保や、地域資源の活用による産業振興など、新たに策定される島根県離島振興計画の着実な実行を推進すること。

 

 以上、8項目であります。

 

知事はこれまで、中山間地域、離島の振興は、大変重要な課題だと言ってこられました。全国に先駆けて作られた中山間地域研究センターも、設置されて15年が経とうとしています。

しかしながら県内を見ますと、地域の維持活性化に積極的に取り組む地域がある一方で、中山間地域の人口減少、高齢者比率の上昇、若年者比率の低下に歯止めがかかっておらず、医療、商業など生活に必要なサービスも低下が進んでいます。もう2年もすると、これまで中山間地域を支えてきた「昭和ひとけた世代」が皆80代に達する、「もう待ったなし」の状況に来ております。

そうした中、県では「島根県中山間地域活性化基本条例」第4条に基づき第3期の「中山間地域活性化計画」を策定し、公民館等の範囲を基本とした対策の推進や、部局横断プロジェクトチームによる推進、「しまねの郷づくりカルテ」の活用など、今年度その取組をスタートさせたところであります。

これから、まさに正念場を迎えるわけであり、総合的に施策を実施するため、同条例、第11条で定める基金を積み増しするなど、十分な財政措置を講じ、中山間地域活性化計画の着実な成果に結びつけるよう強く求めます。

また、短期間で成果を上げていくには、必要に応じた職員の弾力的配置(期間、人員)など、慣例にとらわれない手法も必要と考えられます。

さらに、プロジェクトチーム関係者はもちろん、それ以外の職員もあらゆる角度から地域に入り、地域住民とともに活性化に取り組む機運のさらなる醸成を望みます。

いずれにしましても、知事以下、不退転の決意と危機感をもって、県をあげて強力かつスピード感ある取組をいただくようお願いし、委員長報告とさせていただきます。

 

 

 



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