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建設環境委員長報告

                                

    建設環境委員長報告   平成24年2月定例会(3月16日)

 

 建設環境委員長報告をいたします。

 建設環境委員会に付託されました議案の審査結果等について報告いたします。

 

 今定例会において建設環境委員会に付託されました議案は、第2号議案「平成24年度島根県一般会計予算」など予算案17件、第42号議案「特定非営利活動促進法施行条例の一部を改正する条例」など条例案6件及び第59号議案「宍道湖流域下水道の維持管理に要する費用の市の負担について」など一般事件案4件であります。

 これらの議案について、執行部に説明を求め、慎重に審査いたしました結果、予算案第2号議案、第16号議案から第19号議案及び条例案第53号議案については賛成多数により、その他は全会一致をもって、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。

 

 次に、議案の審査過程における執行部からの説明、委員からの質疑、意見等のうち主なものについて報告いたします。

 

  まず、平成24年度予算及び平成23年度補正予算についてであります。

 環境生活部の予算審査において、委員から、東北のがれき処理については、日本青年会議所のアンケートによれば、自治体の長の6割は検討中または受け入れをしたい意向だが、安全性に対する住民の指摘等もあり受け入れができないようだ。この件についてどのような認識をしているか。との質問がありました。また、この受入れの主体は市町村であるが、県も検討に必要な情報を収集して市町村からの相談に応じ、東北の方々を助ける気持ちで問題の処理を進めて欲しい。との意見がありました。

 執行部から、がれきの広域処理については、住民に安全性への不安があることから、国の責任において安全性を説明され、住民が安心できる環境整備がなされないと先に進むことが困難な状況と考えている。県としては、市町村からの相談を受けながら検討し、できることを行っていきたい。との説明がありました。

 

 土木部の予算審査において、委員から、島根原発の有事の際の対応については、検討中と思うが、現在の道路状況で避難に対応できるのか。福祉関係は、車での避難計画を検討しているが、警察等と連携して問題が起きないよう対応して欲しい。との意見がありました。

 執行部から、避難計画については、どう避難するかが先行しており、必要な道路の整備については、今後検討を行うこととしているが、関係部署と連携を取りながら必要な対策を行っていきたい。との説明がありました。

 

  企業局の予算審査において、委員から、神戸川工業用水道事業の一般会計への移管について、工業用水の需要が見込めない中の処理であるため、やむを得ないと思うが、料金の高い水道事業についても、一般会計からの繰り出しなど同様の措置ができないか。との意見がありました。

  執行部から、工業用水道は、県として産業振興のため施策として行ったものである。一方、水道事業は、地元自治体の同意の上で進めてきた事業であり、事情が異なるものと考える。との説明がありました。

 

 

 次に、今年度取り組んで参りました調査テーマ「地域に貢献する建設産業のあり方」について調査結果を報告いたします。

 

 建設産業は、近年の公共事業費削減や経済状況悪化で大変厳しい状況が続いております。一方、地域においては、古くから地域経済の牽引役であった建設産業に対し、その人的資源、技術力、資金力、ネットワーク等を活用した地域課題解決の取組みが、今もなお期待されているところであります。過疎化・少子高齢化の進展により地域活力や防災力の低下など、様々な課題が顕在化するなか、これまでのように全てを行政で対応することが困難な状況になってきている現状を踏まえ、本委員会では、建設業と地元自治体、住民、異業種団体等の連携による地域課題解決や活性化の取組み事例を調査し、「地域における建設産業の役割と必要性」を検証してまいりました。この度、調査を通じて得られた成果も踏まえ、何点か報告いたします。

 

 第一に、建設産業の新分野進出における現状と課題についてであります。

 今回、邑南町と北海道において、農業分野及び観光分野に新たに取り組む建設事業者と、商工会、観光協会、JA、建設業協会なども交えて意見交換会を行ったところ、幾つかの課題が浮き彫りになりました。

 まず、公共事業費削減を受け、経営強化のために新分野に参入したものの、不慣れな産業分野であるため、適正な生産・収支計画が策定できず、初期投資やランニングコストが嵩むため、資本回収が出来ないまま長期的損失が出やすく、本業に悪影響を及ぼす事例が多いことです。また、不断の企業努力により生産技術を習得しても、もともと販売ルートを持たない個々の建設事業者はバイヤー交渉に不利なうえ、市場出荷要件となる定量性・定期性の確保が困難なため安定的な収入に至らないケースが圧倒的に多いことがわかりました。

 

 第二に、建設産業が地域で果たす役割についてであります。

 今回の調査を通じて改めて浮き彫りになったのは、建設産業が各地域において新分野に進出する際の取組みに共通しているのが、単に公共事業費削減の代替策として業績を伸ばす「生き残り策」ではなく、「まちおこし」や「地域の雇用・活性化」など、今まで地方自治体が担ってきた"地域再生"機能であり、古くから雇用を中心に地域経済を支え、安全安心を守ってきた建設産業ならではの使命感に裏付けされた活動であったことです。長年にわたり自治体との連携による災害対応や、地域住民の生活に密着した見守り隊、安全安心パトロールなど、建設業界が果たしてきた役割、活動範囲は私たちの生活の多岐にわたっています。皆さんの記憶にもまだ新しい平成22年年末の豪雪時には、邑智郡エリアを例にとりましても、通常業務を行いながら30日以上延べ500時間を超える除雪作業を行うなど、エリアごとに建設業界の方々には迅速かつ安定的な災害対応業務を行っていただきました。しかしながらその災害対応業務を適確に行うためには、除雪機械の保有はもちろん、機械を操作できる人材の確保こそが、欠くべからざる必要条件だったのです。

 邑南町における意見交換会では、昭和の合併前の町村単位程度に能力を有した建設業者がいなければ、将来にわたって地域住民の安全安心を守る迅速な災害対応はできないであろうという示唆的な意見が出されたところです。

 

 この度の調査を通じて、私たちは、改めて地域における建設産業の重要性に気づかされました。東西に長く、離島や中山間地域を抱える本県は、経済基盤が弱く、公共事業が地域の雇用や経済を支えてきました。それぞれの意見交換会を通して印象的だったのは、建設産業は、地域の雇用と経済を支える基幹産業であるとの強い自負心と、地域全体を元気にしなければ建設産業だけで地域活性化は図れない「地域あっての建設産業」という言葉に象徴される社会的責任意識が根付いていることでした。災害対応時には、自ら命がけで現場に赴き、地域住民の安全安心を守り続けてきたのが建設産業です。また、平常時においても、地域経済が疲弊していく中で、なんとか、地域全体の活力を維持・向上させ、元気なまちづくり・地域再生を目指そうと雇用確保策などに地道に取り組んできたのが建設産業なのです。

 

 今後も、公共事業費全体が圧縮され続ける懸念を払拭できない状況下で、地域に必要な建設事業者数を適正確保するのは非常に困難であります。都会地に比べ民需が弱く、公共事業費への依存度が高い本県においては、健全な建設産業をつくるための経営力強化が必要であり、自助努力としての新分野進出による経営悪化を防止することが必要不可欠であります。しかし、自助努力だけに頼っていては、新分野に進出できるだけの体力を維持できている事業者さえも、その本業を圧迫するほどの長期的損失を出し、ますます建設産業の弱体化を加速する恐れがあります。建設産業の健全性を強化し、地域貢献を実現するためには、やはり、本業の収益確保対策がまずもって重要なのであります。

 戦後の高度成長時代には、国策によって、全国各地で雨後の筍の様に増加した建設事業者ですが、その後の三位一体改革で一気に圧縮され、今や、各地域における建設事業者はサバイバルゲームのごとく、大幅削減された公共事業費を巡って淘汰され続けています。このままでは早晩、地域の安全安心を日常的に支える建設産業の弱体化による産業構造の崩壊が起こるのは必至であります。「県民を守る」という視点で「地域を支える」建設産業の適正化を図ることが求められます。

 

 これまでに行った2度の現地調査・意見交換会と、6回にわたって委員会で交わしてきた大激論の結果を踏まえて、地域の安全安心な暮らしをこれからも守っていくために行うべき「建設産業の地域貢献を支える支援の方向性」について、本委員会から県に対して、次のとおり要望いたします。

 

一.新分野進出支援については、参入先企業・団体の理解を促すためのコーディネートや、投資と回収の財務指導、安定的な生産を確保するための技術指導、販路確保のマネジメントなど、農林商工分野との連携による総合的な支援策や、複数建設業者の連携による新分野進出のコーディネートを行い、島根型の新分野進出支援を行うこと。

 

二.新規の公共事業費の確保に努める一方、今後、過去から積み上げてきた社会資本の維持管理が大きな課題になってくることから、社会資本の中・長期的な維持管理計画を策定し、計画的に維持修繕工事を行うとともに、県内の建設業者が維持管理工事に対応できるよう専門的な技術を有する建設業者の育成に努めること。

 

三.地場産業活用による住宅リフォーム制度など、裾野の広い民間投資誘導施策を拡充し、建設産業全体の底上げを図ること。

 

四.地域を守るための建設産業振興を産業政策に位置づけること。

 

五.建設業で働く人の労働環境が厳しくなり、若い人の建設業離れが進み技術の継承が困難になっていることなどから、労務賃金の改善や若手技術者の育成に取り組む企業を評価する仕組みとして「公契約条例」などの研究や、元請下請関係の適正化や下請保護の強化など、建設産業全体の労働環境の改善に取り組むこと。

 

 最後になりますが、離島や中山間地域を抱え、経済基盤が弱く、公共事業が地域の雇用や経済を支えてきました本県においては、地域の安全安心を守るために、建設産業の果たす役割は非常に重要であり、本県地域経済の牽引力となってきた建設産業がこのまま崩壊することとなれば、それは、産業構造に多大な影響を及ぼすこととなり、見過ごすことはできません。

 県は「県民を守る」ことが最大の大義であります。その巨視的視点に立って、限られた自主財源にあっても、「地域を支える」建設産業に従事する人々が誇りを持ちながら、必要な施工能力を維持できる環境整備が必要です。そして、次世代が安心して島根県で暮らしていくために必要なナショナルミニマムを実現するための「島根型手法」を検討すべきであるということを申し上げたいと思います。

 

 

 次に、今後の本委員会の調査テーマについてであります。

 本委員会では「持続可能な社会に向けた省エネの推進について」を調査テーマとして設定し、調査に取り組むことといたしました。

 温室効果ガスの9割以上を占める二酸化炭素の県内の排出量は、平成21年度において、平成2年度(1990年度)比で9.6%増加しており、なかでも、民生業務部門及び民生家庭部門の増加が著しい状況にあります。環境への負荷の少ない持続可能な社会を構築するためには、県民、事業者、行政が一体となって省エネルギーの取り組みを推進することが必要とされています。

  こうしたことから、今後、このテーマに沿った所管事項調査を展開し、執行部に対する政策提言等につなげていきたいと考えております。

 

 以上、建設環境委員会における審査の概要等を申し述べまして、委員長報告といたします。

 

 



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