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中山間地域・離島振興特別委員長報告

 

中山間地域・離島振興特別委員長報告  平成24年2月定例会(3月16日)

 

 中山間地域・離島振興特別委員会の調査について、中間報告を申し上げます。

 

 本委員会は、中山間地域及び離島の維持活性化に関する審査及び調査活動を行うこととして、平成23年6月定例会において設置されたところであります。

 今日まで、5回にわたり、先に述べた付託案件に関する調査を行ってまいりましたが、そのうち、「島根県中山間地域研究センター」の機能強化と、平成20年度に策定された「島根県中山間地域活性化計画」の計画期間が今年度末に終了することを踏まえ、次期計画策定に向けたコミュニティ維持や、担い手確保、地域に活力を生む産業振興、生活機能の維持など、中山間地域が抱える喫緊の課題解決に向けた総合的施策の方向性について、委員会としての調査結果を取りまとめましたので、御報告いたします。

 

 まず、「島根県中山間地域研究センター」の機能強化についてであります。

「島根県中山間地域研究センター(以下「センター」という。)」は、農林水産物の生産や地域住民の生活の場であり、国土保全などの多面的機能を担っている中山間地域が、過疎化・高齢化の進行等による地域の担い手不足の深刻化や経済活動低下、集落機能低下により、資源管理や地域社会の維持・存続が危ぶまれていることから、こうした状況を打開・克服し、中山間地域の活性化を図るため、平成10年4月に設置され、地域の調査研究並びに農業、畜産、森林・林業の試験研究を総合的に実施し、研究成果を活かした研修機会提供、技術指導、情報提供を行ってこられました。また、中国地方知事会において平成10年に設置された中国地方中山間地域振興協議会の共同研究機関として、鳥取県、岡山県、広島県、山口県と共同で広域的な研究事業に取り組んでこられたところです。

 地域研究部門では、平成19年度に取り組んだ、中山間地域においてのつなぎ役・束ね役となる「地域マネージャー」を配置する社会実験の成果を踏まえ、地域マネージャーの配置や多様な主体の参画による集落を越えた新たな地域運営の仕組みづくりに取り組む県のモデル事業(中山間地域コミュニティ再生重点プロジェクト事業)が実施されました。

 事業の実施にあたっては、地域研究部門の研究スタッフが各モデル地区に入り、集落内の話し合いや地域マネージャーの活動をサポートすることにより、浜田市波佐・小国地区の「縁(えにし)の里づくり委員会」や、邑南町市木地区「安夢未(あゆみ)プロジェクト」などで、地域課題の解決に向けた新たな取り組みがスタートいたしました。

 個々の集落単位での地域運営が困難になりつつある状況を踏まえ、公民館等の広い範囲での新たな地域運営の仕組みづくりとして、地域マネージャー等を活用されたこの取組はモデル事業として一定の成果を上げたと評価いたしております。

更に、このモデルづくりを県内各地域で本格的に展開するために平成23年度から新たに後継事業として取り組まれている「中山間地域コミュニティ再生支援事業」においても、それぞれの地域においてセンターのサポートによる、あらたな地域運営の仕組みづくりが広く普及することに期待を寄せているところであります。

 また、農林技術部門では、中山間地域が活性化するためには、そこで安心して生活し、定住できる所得の確保が重要であることから、基幹産業である農林業の所得確保のための特産品開発を推進してこられたところであります。地域条件が不利な中山間地域の資源を使った産業創出のため、もの・技術開発だけでなく、流通を視野に入れ、人と結びつけることを重点的に住民参加型、現地実証型の研究を実施されております。「丹波黒大豆」より熟期が早く、山間部でも栽培可能で、収穫作業の労力分散や地域特産化が期待される「赤名黒姫丸(黒大豆)」のエダマメは、JA雲南を通じて広島市内スーパーでの販売を開始し、町内の道の駅やレストランなどで特産品として今後の販路拡大に期待が寄せられております。

 

 このように、これまでに取り組んでこられた研究課題には、集落を越えた地域運営の仕組みづくりや、特産品開発など、実際に地域住民の生活機能維持や所得向上につながる素晴らしい研究もありますが、せっかく取り組まれた研究成果が世間一般に周知されていない、情報発信が不十分であるといった反省すべき点があると思われます。

 そこで、今までセンターが果たしてきた役割とその研究成果を検証し、今後の更なる機能強化のために、本委員会から県に対し、次の3点について強く求めることといたします。

 

 

一.売れるものづくりなどの研究成果は素早く現場である地域に普及させることが必要であり、もっと迅速に地域に普及するシステムをうまく機能させる方策を検討すること。

 

二.本県の中山間地域住民が真に望む地域独占的なブランド産品の開発と、それを活用した地域活性化に取り組むこと。

 

三.センターの更なる機能強化を図るためには、その研究成果をセンター内で完結させることなく、いわば出口として、県の施策に反映させるための仕組みづくりを行うこと。

 

 

 さて、本委員会では、もうひとつ「第3期島根県中山間地域活性化計画」策定に向けた中山間地域が抱える喫緊の課題解決に向けた総合的施策の方向性について調査してまいりました。

 本年1月の臨時委員会で、執行部から計画骨子の説明を受けましたが、今後の中山間地域活性化施策を俯瞰するにあたり、委員から次のとおり意見がありましたのでご紹介いたします。

 まず全般的に、目指すべき中山間地域活性化のイメージが掴みにくいという印象を受けました。これまで、中山間地域の地域運営を中心となって担ってこられた「昭和ひと桁世代」と言われる70歳代後半の住民が平成27年には全員80歳代となり、現役を引退する局面を迎える事が予想されています。このまま世代交代が円滑に行われなければ地域の活力が急速に失われる懸念があり、中山間地域の危機的状況ばかりがクローズアップされがちですが、そのような厳しい状況の中でも地域住民が安心して住み続けられるよう、将来に向けた明るい未来のイメージを喚起すべきではないかといった意見がありました。また、中山間地域の基幹産業である農林水産業の担い手を確保し、地域活力を取り戻し、UIターン等を進めるためには地域で安心して生活できる「儲かる仕組みづくり」が必要であります。そして、なによりも計画の実現に当たって重要なのは、市町村や地域住民が主体となった地域づくりの取組です。第3期計画を着実に進めて行くには、新たな地域運営の基礎単位(地区)として設定する「公民館等の範囲」ごとの地域詳細データを元に、市町村や地域住民が自ら、地域の現状をつぶさに検証し、目指すべき地域のビジョンを描くことを通して、自主的な地域課題解決のために立ち上がり、それを部局連携によって支援する体制がぜひとも必要であります。しかしながら、モデル事業を参考に頑張っている地域もあれば、なかなか現状を打破できず住民の主体的・積極的な取組に繋がっていない地域も見受けられます。それらを一括して同一手法で活性化を進めるのではなく、地域特性に応じて、元気な地域が周りの地域を巻き込んで、活性化していくしかけづくりや、県や市町村からの目配りなどが大切であります。

 

 この第3期中山間地域活性化計画策定に向けた調査については、本年1月の臨時委員会における計画骨子の説明及び、2月定例会の臨時委員会の二度にわたり、執行部としても本委員会の意見に真摯に耳を傾けていただき、島根県が目指す中山間地域の姿として「にぎわい」「生きがい」「なりわい」「助けあい」のある中山間地域の創出を掲げられ、素晴らしい計画に仕上げていただいたことは、高く評価するところであります。

 今後の中山間地域活性化に対する県の取組が、より一層地域目線に立って、きめ細かく市町村と連携し、充実した取組となることを期待して、本委員会では次のとおり県に要望いたします。

 

一.今まで以上にスピード感を持って中山間地域の活性化施策に取り組むこと。

 

二.従来の、地域振興部が中心となり、主に農林水産部との連携により進めてきた中山間地域の活性化のための取組について、今後、農林、商工、土木、福祉、教育など、地域の生活機能維持及び安定した所得の確保のために真に必要とされている施策を総合的に実施していくこと。平成24年度から部局連携を一層強化するために発足するプロジェクトチームの機動性の確保と、連携した予算執行に取り組むこと。

 

三.第3期中山間地域活性化計画に基づく施策実施にあたっては、時宜を得た議会への報告を行うとともに、中山間地域・離島振興特別委員会の場を活用した具体的な施策検討のための意見聴取を行うこと。

 

 以上、3点を要望するものであります。

 

 最後になりますが、中山間地域の住民生活は待ったなしの危機的状況にあり、その活性化なくしては本県の活性化はないといっても過言ではありません。この課題解決こそが本県の至上命題であり、中山間地域が果たしている多面的・公益的機能が国民共有の財産であり、それらは全て、今もなお中山間地域に住み続けている住民によって支えられ、守られ続けていることを私たちは決して忘れてはなりません。

これまで中山間地域研究センターと他の研究機関と連携して取り組んでこられた幾多の実証的な研究成果を踏まえ、各県との連携強化及び迅速な県施策への反映が実現されることを強く求めるものであります。

 加えて、平成24年4月の組織改正による「しまね暮らし推進室」の課への格上げと、部局横断的なプロジェクトチームによる総合的・一体的な中山間地域対策が形だけでおわることなく、機動性・実効性を兼ね備えた体制となることを強く期待するところであります。

再度、中山間地域活性化のためには、住民の生活機能維持の安定化、産業振興や農林水産業の所得向上策につながる施策を打つことが急務であるということを申し上げて、本委員会の中間報告といたします。

 

 



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