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地方分権・行政改革調査特別委員長報告

 

地方分権・行政改革調査特別委員長報平成21年2月定例会(3月12日)

 

 地方分権・行政改革調査特別委員会の調査結果について御報告いたします。

 本委員会は、地方分権改革推進法の成立により地方分権、行政改革の流れが加速する中、行政の広域化への対応や、国・市町村との役割分担など多くの課題に取り組むべきという認識のもと、平成19年の6月定例会において設置され、以来8回にわたり調査を行ってきました。

 本委員会設置後、国においては、地方分権改革推進委員会による第1次、2次勧告や道州制ビジョン懇談会の中間報告などがありました。また、県においては、溝口新知事の下で、「改革推進会議」の設置や同会議行政改革専門小委員会の提言、また「財政健全化基本方針」の策定・改革の実行などがありました。

本委員会は、これらの動きに関して適宜執行部から報告を求め調査してまいりましたが、以下、その調査結果及び調査の際委員から出された意見や要望等について御報告いたします。

 

 まず、地方分権についてであります。

 平成18年まで行われた第1期地方分権改革では、機関委任事務の廃止や地方への権限移譲が一部なされたものの、それに伴う税財源移譲については成果がなく、特に三位一体の改革により地方自治体は厳しい財政難に陥りました。

 平成19年には第2期地方分権改革が始まりましたが、この時生じた国に対する地方の不信が以降も改革の進展に暗い影を落としているように思われます。

 本委員会は、「国と地方公共団体とが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る」という地方分権の基本理念については同意するものの、地方分権を進めるには権限と税財源の移譲が不可欠であり、そして何より県民の理解が前提になる、という基本認識に立っております。

 この認識のもと、本委員会の主要な調査項目であります地方分権のあり方についての調査概要を、以下国との関係、市町村との関係に分けて御報告いたします。

 

 まず、国との関係についてであります。一つは、道州制の導入についての政府、与党、経済団体、全国知事会による報告・提言等について、二つは、「地方自治体への義務付け・枠付けの見直し」や「国の出先機関の見直し」を柱とする地方分権改革推進委員会による第2次勧告の考え方について説明を受けました。

道州制については、私ども議会や、県民の認識、議論も十分では無く、全国的にも意思統一が図られた具体案がない段階にあります。

 また、全国知事会の中でも導入については温度差があり、昨年開催された全国町村長大会では都道府県を複数のブロックに再編する道州制に反対する特別決議が採択されております。

 委員からは、「地方の実状から見れば、初めに道州制ありきではなく、まず広域自治体である都道府県のあり方から考えなければならないのではないか。」との意見がありました。今後の現行制度上における地方分権の進行状況を見ながら、都道府県の役割・あり方を検討し、そこから広域自治体のあるべき姿を議論することが、行政システムの最適化という理念や目的にかなうものと考えられます。

 また、「地方自治体への義務付け・枠付けの見直し」については実状にあった行政サービスにつながることから評価できるものの、「国の出先機関の見直し」についてはまだ具体性が欠如しており、二重行政の解消につながるかどうか明らかでないことから、今後の動きを見守る必要があると思われます。

 なお、国からの権限移譲について、個別の国が管理している国道や河川について既に移管に係る協議が始まっているとのことです。移管にあたって財源、人員等の前提条件は確保しつつも、「前向きの姿勢」を示すことは必要ではないかと思われます。

 

 次に基礎自治体である市町村との関係についてであります。まず、県の権限移譲計画に基づく市町村への権限移譲の実施状況について、また、359条項にものぼる事務の市町村への権限移譲を法制化しようとする地方分権改革推進委員会の第1次勧告の考え方について説明を受けました。

 県から市町村への権限移譲については、未移譲市町村があるため、県に一部業務が残っておりますが、県の行政改革の観点からも非効率であり、解消に努められることを望みます。また、今後法制化され画一的に権限移譲が進められると、規模・体制などがそれぞれ異なる市町村にとっては、困難が生じることが予想されることから、県として、法制化にあたって市町村の意見を国に強く伝えていただきたいと思います。

 

 また、先月、広島県議会地方分権改革推進特別委員会と意見交換を行いました。分権改革のトップランナーを自負する広島県は、道州制の実現に向けて段階的に改革を進めていこうとしていますが、出先機関の見直しを表明する一方で大規模な新庁舎を建設するという国の矛盾に対して疑問を呈するなど、地方のためになる「真の分権改革としなければならない」という危機感は共通のものがありました。

 新地方分権一括法案が今年秋にも国会提出を予定される中、税財源移譲などを含む第3次勧告の先延ばしや、その内容の不透明さも懸念されております。

 島根県議会としては、税財源の確保や地方の実状の反映などについて、執行部とともに国に対して強く意見を申し述べるなど様々な取り組みが必要であります。また、執行部には、議会及び県民に迅速かつ十分な情報を提供するとともに、議会と協力の下、島根の自立につながる分権改革となるよう、努められることを望むものです。

 

次に、行政改革についてであります。

本委員会では、定員の管理、給与の適正化、民間委託等の推進などについて報告を受けました。

以下、主な事項に関して個々に御報告します。

 

まず、定員の管理についてであります。

総人件費の抑制につながる定員管理の1000人削減計画の削減実績については、平成20年4月現在で計画を104人上回る661人の削減を達成しているとの報告を受けました。

財政改革を進める上で総人件費の抑制は必要不可欠であり、「財政健全化基本方針」においては、さらに追加500人程度の定員削減の目標が掲げられているところです。これを踏まえ、平成24年4月までの計画期間中の着実な実施を要望しますが、執行部におかれては引き続き業務の効率化に努めるとともに、新たな行政課題への対応を求められる部署には必要な人員を配置するなど、人員削減が住民サービスの低下を招かないよう配慮をお願いします。

 

次は、外郭団体・公の施設の見直しについてであります。

「島根県が出資する法人の健全な運営に関する条例」に基づいて行われた平成18年度、平成19年度決算における外郭団体の施設の経営評価について執行部から報告を受けましたが、県出資比率50%以上の団体数、団体への県からの役職員派遣といった人的関与や補助金・負担金などの財政的関与は、減少傾向にあるとのことでした。また、改革推進会議行政改革専門小委員会による提言についての説明も受けました。

経営評価の取り組みにより、県の関与度の減少傾向の状況や、各団体の経営改善に努力している姿が見えるようになりました。しかしながら、依然として多額の借入金を抱えている団体や、基金を取り崩して運営している団体などが見受けられます。今後も毎年の経営評価で点検を行うとともに、適切な指導を行っていただきたいと思います。また、課題のある団体については長期的な展望に立った方針の検討を求めます。

 

次は指定管理者制度についてであります。

指定管理者制度の導入施設について平成18年、19年度の実績報告を受けましたが、集客施設においては、入館者数が増加傾向にある一方で、貸出施設においては、使用料収入が減少傾向にあるとのことです。

各施設で利用者の要望に対応し、サービス提供体制やソフトの充実に努めておられるようですが、景気の先行きが懸念される中で、今後利用見通しは厳しいと考えられます。執行部におかれては、引き続き運営状況を把握するとともに、指定管理者と連携を図りながら利用向上に努められるよう望みます。

 

次は組織の見直しについてであります。

職員組織のフラット化グループ化の評価について、執行部から説明を受けるとともに、職員との意見交換会を開催し、意見聴取を行いました。

その中で、フラット化グループ化は、責任がグループリーダーやグループ課長に集中することになり、現場の渉外業務や業務のチェック体制、また若手職員の指導・育成、中堅職員の活性化などに課題が生じているとの指摘がありました。

そこで、執行部におかれては、グループ制導入による総戦力化などのメリットを生かしながらも、これらの課題を改善する方策として、グループ内に新たな階層を設けることなく、本庁及び地方機関の必要なグループに、それぞれ「サブリーダー」、「副課長」を配置し、一定の権限を付与することによりその改善を図ることとされております。

この改善策は、平成21年度から行われる予定とのことですが、導入後も引き続き職員組織の検証を行い、必要に応じて改善を検討されることを願うものです。

 

以上、本委員会の調査テーマに関する調査結果及び要望について申し上げましたが、終わりに今後の地方分権・行政改革に関して本委員会の考えを申し上げます。

世界的な経済危機は、本県経済に深刻な影響を及ぼしており、国の財政出動を受けて県も積極型の予算を組んだところであります。しかし、短期間での景気回復は期待できず、当面は引き続き厳しい財政運営を強いられるものと考えられ、今後も不断の行政改革努力が必要であり、様々な取り組みが着実に実施されることが望まれます。但し、改革を進めるにあたっては県民生活に悪影響を及ぼすことがないよう、県民の声に、配慮する視点を持って取り組んでいただきたいと思います。

また、第2期地方分権改革は年内には第3次勧告が出され、来年度中には新地方分権一括法案の提出と、レールが敷かれつつある一方で、その中身と実現可能性については依然として不透明な状況が続いています。「真の地方分権改革」の実現に向けて、今、議会と執行部が連携して取り組まなければならないと思います。執行部におかれても、県民のためになる地方分権・行政改革を進めていただくよう要望し、本委員会の最終報告といたします。

 



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