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平成19年11月定例県議会知事提案理由説明要旨

 

定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ち、県行政を巡る最近の状況についてご説明申し上げます。

 

(財政健全化について)

 まず、当面の重要課題であります財政健全化について申し上げます。

 県財政は、放置すれば今後も多額の赤字が続くことが見込まれ、その健全化は「待ったなし」の課題であります。私は、知事就任以来、財政の健全化を最優先の課題として取り組んでまいりました。

 そのため、有識者で構成する「改革推進会議」を設置し、同会議からご提言を受け、また、議会をはじめとして県民の皆様のご意見を幅広くお聴きし、先月末に「財政健全化基本方針」を決定致しました。

 この過程におきまして、議会の皆様からはいろいろなご意見・ご指摘をいただきました。また、給与の特例的な減額につきましては、職員並びに職員組合、さらに議会や行政委員会の方々からご理解とご協力を賜りました。こうした関係者の皆様に深く感謝の意を表する次第であります。

 今般決定致しました基本方針は、中長期的に収支を均衡するための今後の財政運営の大きな枠組みを示すものに過ぎません。

 その意味で、健全化の作業は、やっとスタートを切ったばかりであります。本格的な作業は、来年度以降の予算編成の過程などで具体的に行っていく必要があります。そしてその中で、私は先頭に立ち、職員一丸となって、事務・事業の見直しや総人件費の抑制など、行政の効率化・スリム化を積極的に進めてまいります。

 その際、事務・事業の見直しにおきましては、基本方針の大枠を維持しながらも、県民の生活に急激な影響が出ないよう段階的に行ったり、安全で安心な県民生活の確保や、県の将来的な発展のために真に必要なものなどにつきましては、適切な配慮を行ってまいりたいと考えております。

 今後、来年2月の予算案の作成・提出までの間におきまして、市町村とは前広によく相談を行いますし、議会や県民の方々のご意見などを引き続きよくお聞きしていく考えであります。

 他方、島根の財政は、地方交付税など国の地方財政措置に大きく依存しております。我々自身が改革の努力を続けながら、国に対しましては、地方交付税を含め一般財源の確保・充実を強く働きかけていくことが極めて大事であります。

 特に、法人事業税と法人住民税の地方法人二税につきましては、近年、IT化やグローバリゼーションの進展などにより、企業において本社機能の役割が増大し、大企業の本社部門を数多く抱える東京などの大都市に税収が集中し、いわゆる税の偏在の問題が生じてきております。

 このため、地方法人二税を中心とした税収の大都市偏在について、「時代の変化にあった調整」を行うべきであるとする意見が地方の県などから強く出されてきております。

 こうした中で私も、9月末に増田総務大臣が来県された際や、私が上京した折に、総務省や財務省の幹部などに働きかけを行ってまいりました。さらに11月中旬には、東京において、鳥取・島根両県知事の懇談、中国地方知事会、全国知事会、さらに各都道府県知事と総理大臣等との懇談の場におきまして、大都市圏と地方部における税の偏在是正を行うよう強く訴えてまいりました。

 まだ予断を許しませんが、年末の国の予算編成の過程で、この問題につきましては、一定の進展が図られる可能性があるのではないかと期待しております。

 

(「活力あるしまね」の実現に向けて)

このように私どもは財政再建を進めてまいりますが、これにより島根の活力が失われることになってはなりません。

活力ある島根を築くため、「島根総合発展計画」の中でその展望を示す作業を、財政健全化の作業と並行して進めてきております。この計画は、来年3月末には具体策を含めて最終的に決定・公表することとしておりますが、今月初め、その基本構想をまとめました。その中で「豊かな自然、文化、歴史の中で、県民誰もが誇りと自信を持てる、活力ある島根」を目指し、政策を展開していくこととしております。

そのためには、まず、産業を振興し、若者が活き活きと働くことのできる雇用の場を創出する必要があります。ここで産業振興について最近の動きを少し詳しくご報告申し上げたいと思います。

まず先週、「産業活性化戦略会議」でのご意見などを踏まえて、産業振興を戦略的に推進していく具体的な方策を「しまね産業活性化戦略第一次取りまとめ」として公表しました。

この中では、製造業を中心とする「ものづくり産業」の振興や、観光や県産品の販売など「地域資源を活かした産業」の振興を一層強化するとともに、島根発のプログラミング言語「Ruby(ルビー)」の活用やソフト系IT企業の立地促進などの「IT産業」の振興に積極的に取り組むこととしております。

「ものづくり産業」におきましては、新産業・新事業創出に向けた研究開発、県内企業の競争力強化支援、企業誘致の推進などに取り組むこととしております。

このうち、企業誘致につきましては、今年4月からの8ヶ月間で6件の誘致企業の認定を行い、誘致企業による投資計画額は既に昨年度の2倍の約250億円となり、新規の計画雇用数は昨年度とほぼ同じの500人程度になると見込まれます。

また、今年度から施行された国の「企業立地促進法」に基づいて、企業の新規立地や増設等を進め、機械金属、IT、食品関連産業の集積を目指す5カ年の基本計画を、市や町、経済団体などと一緒に策定しました。年内に国の同意が得られる見込みであり、今後はこの計画に基づき、立地企業の設備投資の減税や、人材育成や企業誘致への助成、規制緩和などの国の支援策を活用しながら、企業誘致などに積極的に取り組んでまいります。

「IT産業」におきましては、特に、ソフト系IT企業の振興に取り組むこととしております。今後、県外企業の誘致や、県内企業の育成・支援、IT産業人材の確保・育成を進めてまいります。

十月には、東京で「島根県企業立地セミナー」を開催し、首都圏のソフトウェア業者など102社、160名の方々に、島根県の立地環境の良さや企業立地にあたっての支援策などを詳しく説明致しました。今後は実際に島根にご来県いただき、現地を見ていただくなど、積極的な働きかけを行うこととしております。

また、情報サービス産業の成長を支える専門性の高い人材の育成を進めるため、プログラミング言語「Ruby(ルビー)」の研修や、技術者の技能認定事業への支援などを実施しております。

「地域資源を活かした産業」におきましては、観光の振興や県産品の販路開拓・拡大の支援などに取り組むこととしております。

観光につきましては、石見銀山遺跡の世界遺産登録の効果で、県内各地で観光客が増加しております。10月には東京で「観光情報説明会」を開催し、首都圏の旅行会社やマスコミ関係者など約240名の方々に、石見銀山周辺や出雲路などの観光資源を映像で紹介しました。今後、関西などでも説明会を開き、観光情報の発信に努める考えです。

県産品の販路拡大につきましては、今月、東京の大手高級スーパーと食品産業振興に関する提携協定を結びました。県の農林水産品が、この会社の助言を得て、都市の消費者に愛好されるように品質改善され、そしてこのスーパーで取り扱われることにより、ブランド力が高まることを期待しております。その効果が、他の県産品や大都市の他の小売店へも波及することが期待され、これにより販路や生産の拡大につなげていきたいと考えております。

また、農林水産物や伝統技術などの地域資源を活用し、新たに事業化を行う取組みを支援するための基金を、6月の補正予算により商工会連合会に造成しております。先週まで事業計画の公募を行い、十数件の提出がありました。今後、助成金交付決定のための審査会などを経、1月下旬から各事業主体が事業に着手されることとなっております。

雇用対策につきましては、「雇用対策推進会議」において検討を進めてきましたが、先般、今後5年間の雇用施策の方向性と緊急に取り組むべき対策を盛り込みました「島根県総合雇用対策の方針」を取りまとめ、産業人材の育成・確保や若年者の県内就職促進に重点的に取り組むこととしました。

この方針に基づき、12月には県外からの人材確保のため、県出身者の多い広島で初めて「企業ガイダンス」を開催します。また、来年2月には県内高校生や保護者の方に対して、県内企業に優良な企業があることをよく知ってもらうため、「県内企業見学会」を行い、若者の県内定着を高めていきたいと考えています。

 

次に、産業振興のために極めて大事であります道路網の整備につきまして申し上げます。

国直轄事業として整備中であります国道9号出雲バイパスが、来月2日に全線開通します。これにより、現国道9号の渋滞は大きく緩和され、出雲市内の通過時間も大幅に短縮されることとなります。

また、今月中旬に国土交通省から、今後10年の「道路の中期計画」の素案が公表されました。この中で、島根県が強く要望してきました山陰高速道路につきましては、益田市以西も含めて全線が早期に整備されるべき道路として位置付けられました。

また、国全体で今後10年間で必要な事業量は65兆円と見込まれ、そのため道路特定財源の暫定税率は今後10年間維持することが必要とされています。

今回の素案には、救急医療施設への搬送時間短縮のための道路整備や既存の橋梁等の適切な維持管理など、島根県が求めてまいりました内容が盛り込まれておりますので、この素案の内容で決定されることを強く望むものであります。

なお、道路特定財源は、その暫定税率が維持されなければ国の税収だけでなく、軽油引取税など県の歳入も約140億円という大幅な減額となり、単に道路整備にとどまらず島根県財政全体にとって大きな問題となります。今後とも国に対して、暫定税率を維持した上で、その全額を道路整備費へ充当することを強く求めてまいります。

次に、過疎地域におきまして、地域の活力が減退しないような方策を講ずることが島根の活性化に必要であります。

平成21年度末で期限切れとなる現行の過疎法に替わる新たな過疎対策について検討する場として、全国知事会に過疎対策特別委員会が設置され、先週開かれた第1回目の会合に私も出席してまいりました。今後、この委員会などで、私どもが先頭に立って具体的な提案を行うなど、積極的に活動してまいります。

また、国においても、過疎地域の実態調査を行うなど、新たな法律制定に向けて、国・地方をあげた全国的な動きが展開されております。これらの動きを踏まえつつ、中国・四国9県で共同の提案を行うなど近隣県と連携するとともに、市町村や議会の皆様とともに引き続き積極的に取り組んでまいります。

 

(その他の報告)

これまで申し述べました財政健全化と産業振興などの分野以外における動向について、ご報告申し上げます。

市町村への権限移譲の取組みにつきましては、「住民に身近な行政サービスは、可能な限り住民に最も近い市町村が担う」という観点で積極的に進めております。

町村の福祉事務所は、既に設置している7町村に続き、来年4月には斐川町、邑南町、津和野町、吉賀町において新たに設置されることとなりました。

また、旅券発給の窓口事務や保育所の指導監督等の事務につきましても、来年度から、希望する市町村へ権限の移譲を行う考えであります。

今後も、市町村の規模・体制の差も考慮しつつ、市町村への権限の移譲を積極的に進め、住民の視点に立った行政サービスが提供できるよう市町村とよく相談してまいります。

次に、隠岐地区の大雨災害に係る復旧状況につきまして申し上げます。

現在、農林水産施設及び土木施設の災害査定を受け、復旧工事を順次実施しております。年内には全ての査定が終了し、早期の復旧が図られるよう努めてまいります。また、八尾川など被害が甚大であった河川の治水対策や、土砂災害対策などに取り組んでまいります。

被害が大きかった西ノ島町及び隠岐の島町につきましては、局地激甚災害として指定される見込みであり、これにより農林水産施設及び公共土木施設災害復旧事業等の国庫負担の嵩上げ措置が実施され、地元負担の軽減が図られるものと思っております。

次に、PFI方式により整備を進めている「こころの医療センター」が、来年1月に竣工し、2月1日に開院することとなりましたことをご報告致します。精神医療の基幹的病院として、外来機能を強化するとともに、児童思春期などの専門医療や救急医療の一層の充実を図ることとしております。

次に、がん対策について申し上げます。

このたび、島根のがん患者や家族の方々が取り組んでこられた「がんサロンの活動」が、「新しい医療のかたち」賞を受賞することとなりました。この賞は、医療の質・安全に関する学会が、今年新たに制定した賞であり、島根の「がんサロンの活動」が全国レベルで認められたことは誠にすばらしいことと思います。

県と致しましては、「がん対策推進計画」を策定するため、今月、「がん対策推進協議会」を立ち上げたところであります。今後とも、患者、家族の方々への支援を行っていきたいと考えております。

次に、国の進める医療制度改革への対応につきましては、外部の有識者からなる有識者会議のほか、さまざまな場でご意見を伺いながら準備・検討を進めてきておりますが、このたび療養病床の転換推進計画をとりまとめました。その内容は、現在2,600床ある療養病床のうち、1,500床を医療療養病床のまま維持し、1,100床を介護保険施設に転換するというものであります。

現在、この計画などにつきましては、パブリックコメントにより県民の皆様のご意見をお伺いしているところであり、この中で寄せられた意見等を踏まえ、年内に決定することとしております。

次に、障害者自立支援法につきましては、障害者団体や事業者などから、利用者負担の問題をはじめとして多くの課題が指摘されております。県と致しましては、それらの声を受け止め、利用者負担や障害程度区分など制度の見直しについて、国に対して強く要望してまいりました。

現在、国において制度の抜本的な見直しについて検討されているところでありますが、その検討の状況等を注視しながら、障害者の方々の自立に向けて、より一層充実した制度となるよう、今後も引き続き働きかけてまいります。

次に、地球温暖化防止などの面で大きな役割を果たしている森林の整備につきまして申し上げます。

島根県では、「水と緑の森づくり税」により、荒廃森林を再生させるための森林整備を行っていますが、様々な視点から事業の見直し・拡充を行い、県内の森林が公益的機能を維持・持続できるよう、森づくりの事業をさらに促進していく考えであります。

また、森林の恩恵は、二酸化炭素の吸収などを通じて国民全てが受けるものであり、その整備のための財源につきましては、国税として国民から広く負担を求め、配分は各都道府県の森林面積に応じて行うような「森林環境税」の創設などを国に対して引き続き働きかけていきたいと考えております。

最後に、交通安全について申し上げます。

10月には、交通死亡事故が短期間に連続して5件も発生したことを受け、緊急対策に取り組みましたが、その後も後を絶たず、憂慮すべき状態が続いています。今後、特に年末に向け、飲酒運転の根絶に向けた広報啓発活動や高齢者に対する街頭安全指導など、市町村や関係機関・団体と連携・協働した交通安全対策を推進してまいります。

 

(補正予算案について)

それでは次に、今回提案致しました一般会計補正予算案について、ご説明申し上げます。

今回の補正予算案は、隠岐地域における8月30日からの大雨災害から早期に復旧するために必要な経費などについて措置することとし、総額36億9,000万円余を増額しております。

この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,210億円余となっています。

このほか条例案17件、一般事件案3件を提案しております。

このうち、職員の給与に関する条例等の改正につきましては、人事委員会勧告は、職員の期末・勤勉手当の支給月数を平成19年度から0.2月引き下げるという内容でしたが、諸般の事情を勘案し、非管理職の職員につきましては、平成19年度は0.1月引下げ、平成20年度から0.2月引下げとし、段階的に実施したいと考えております。

諸議案の詳細につきましては、この後、総務部長に説明させることに致しますが、何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。



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