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財政健全化調査特別委員長報告

 
1.はじめに

財政健全化調査特別委員会の調査の経過並びに結果について、ご報告致します。
本委員会は、平成15年6月定例会において、議長を除く全議員が参加する特別委員会として設置され、延べ33回にわたり県財政の健全化を図るため財政運営や総合計画など重要な案件について、調査を行ってまいりました。
調査に当たっては、我が国の三位一体改革への対応、本県の財政状況と財政健全化に向けた取り組み、島根県総合計画の策定などについて、精力的に協議を重ねてまいりました。
本報告は、平成14年12月に策定された島根県財政健全化指針及び平成16年10月に策定された中期財政改革基本方針に基づく執行部の取り組み等に対する調査の状況をとりまとめるとともに、今後の財政改革に向けた要望等をまとめたところであります。


2.財政健全化への取り組みについて

まず、財政健全化指針に基づく取り組みについてであります。
本委員会設置に先立つ平成14年10月の中期財政見通しにおいては、毎年度300億円程度の収支不足が生じ、平成18年度には基金が枯渇し、平成19年度には起債制限比率が危険ラインの20%に近づくなど非常事態ともいえる状況が見込まれました。
このため、県では同年12月にさまざまな環境変化に機敏かつ柔軟に対応できる財政基盤を築くことをめざした「島根県財政健全化指針」を策定され、平成16年から平成18年度までの3ヶ年で収支不足を100億円程度改善する具体的な計画を平成15年9月に示されました。
この具体的な改善策として、歳入については産業廃棄物に関する税の導入など課税自主権の活用、未利用財産の売却促進や財産貸付の減免見直しなど受益者負担の適正化が示され、速やかに取り組みがなされました。
また、歳出については、職員定数の削減、給与のカットや見直しなどによる人件費総額の抑制、内部事務経費の削減や外郭団体の見直しなどにより簡素で効率的な行政運営を目指すとともに、公共事業費の削減など予算の見直しが図られてきたところであります。
本委員会では、地方交付税等の依存財源の減少が見込まれ、また基金の取り崩しにより財源不足を補っている現状を踏まえ、歳出規模の削減に努め早期の収支均衡を図ること、また財政健全化には県民の理解と協力が不可欠であることから、各職員がコスト意識を持ち基礎的コストの削減や効率的な事務執行に努めること、更に県民に対しては各年度の予算要求の概要や財政健全化指針に定められた目標の達成状況をタイムリーに提供することなどを執行部に要望する中間報告を平成15年12月に行いました。
本県が歳出削減の取組に着手して間もない平成15年末に決定された平成16年度の国の地方財政対策では、三位一体改革の名のもと地方交付税などを対前年度比で12%減額する地財ショックともいえる衝撃的な内容であり、このような突然かつ大幅な減額により予算編成に重大な支障をもたらしました。
この地財ショックによる平成16年度の本県財政への影響は、極めて大きく地方交付税等の削減が250億円程度となり、大幅な財源不足を補うため337億円にのぼる基金の取り崩しが予定され、また本県の構造的収支不足が150億円から400億円程度に拡大する状況に陥ったのであります。
本委員会では、国庫補助負担金の見直しや税源移譲が不十分な中で、行財政改革に真剣に取り組む本県のような地方自治体が自立的な行財政運営ができるよう、国に対し地方財政の見通しを早期に明らかにするとともに、地方の実情を踏まえた的確な財源保障の措置の実現を、執行部と一体となって国に対し求めていく中間報告を平成16年3月に行ったところであります。
また、この中間報告では、執行部に対し歳出削減を中心とした財政健全化への取組にあたり、従来以上の節減に向けた努力を求めるとともに、今後の県政運営の基本指針となる島根県総合計画の策定にあたり、重点施策を厳選し事業の優先順位を明確にすること、また島根の豊かな地域資源を最大限活用し、本県の独自性・良さを活かし伸ばしていくことを強く打ち出すよう要望しました。
これを受けて、県では地財ショックに迅速に対処するため、財政構造を抜本的に改めることとし、10年間で500人の定員削減計画を可能な限り前半に前倒しし早期の達成を図るとともに、平成16年度から行政組織のフラット化、グループ化を導入し、迅速な意思決定や事務処理ができる機動的な体制とされました。また、県立高等学校や警察署の統廃合や、外郭団体について県の財政的・人的関与の適正化などに努められたところであります。
しかしながら、平成16年5月の中期財政見通しでは、国の地方財政対策に伴う構造的収支不足が450億円程度見込まれることとなるなど、本県財政運営が危機的状況になりました。
このため、財政健全化指針に替わる「中期財政改革基本方針」の骨子を同年5月末に決定されたところであります。
この骨子では概ね10年後の収支均衡を視野に、構造的収支不足として見込まれる450億円のうち平成16年度から18年度までの3ヶ年で、行政の効率化・スリム化で100億円、事務事業の見直し・削減で200億円、合わせて300億円程度圧縮し、財政再建団体への転落を回避する、また起債制限比率を20%に達しないよう起債発行額を抑制する目標を掲げられました。
本委員会では、この方針の骨子を平成17年度予算に反映させるため、施策等の取捨選択と優先順位付けの考え方を明らかにするよう要望するとともに、改革を県民理解のもと進めるため財政改革計画の周知を図るよう執行部に求める中間報告を平成16年6月に行いました。
県では、中期財政改革基本方針の骨子や、本委員会の要望等も踏まえて平成16年10月に本県の財政改革の具体な方向を示す中期財政改革基本方針が策定されたところであります。

 

3.中期財政改革への取組について

次に、中期財政改革基本方針に基づく取り組みについてであります。
本委員会では、平成18年7月の「骨太の方針2006」の政府決定に先立ち、国における地方財政計画の論議に地方の声が反映されるよう、国と地方の役割分担の明確化や地方交付税の有為性、離島など地域実情への配慮、都市と地方の共生の重要性などを国等関係機関や都市住民などに対し主張するよう、同年4月に全国知事会副会長である知事に要請しました。
中期財政改革基本方針で示された300億円の収支不足改善の取り組みについては、平成18年度当初予算を編成した段階で、総人件費の抑制等の行政の効率化・スリム化により100億円程度、事務事業の見直し・削減等により150億円の改善がみられ、最終的には執行段階の節減等によりさらに50億円程度の収支改善が図られることにより、概ね達成される見込みとの説明がありました。また、起債制限比率も公共事業の抑制等により県債発行額を抑制できたことなどにより、相当程度引き下げられる見込みであるとの説明を受けたところであります。


4.今後の財政改革に向けた取り組みについて

最後に、今後の財政改革に向けた取組についてであります。
昨年7月の「骨太の方針2006」では平成23年度までに国・地方を通じたプライマリーバランスの黒字化を図る歳出・歳入一体改革を取り込み、そこで地方財政の5年間の歳出圧縮の方針が示されました。
こうした国等の動きからも読み取れるように、地方自治体がこれまでの徹底した取組により人件費や公債費の圧縮を進めようとも、国の地方財政計画が圧縮され、交付税が削減される中では、決して将来の財政運営に余裕が出るとは言えず、地方財政計画の圧縮ペースを上回る歳出削減ができねば財政運営は依然厳しいと言わざるを得ません。
本県の財政状況について、昨年9月時点の「骨太の方針2006」等を踏まえた影響額の試算では、平成22年度には地方交付税が56億円の減となり、財源不足は当初見込みの100億円台半ばから200億円台に再び拡大するとともに、実質公債費比率は、現状のまま推移すれば、平成24年度には18%以上になるなど引き続き厳しい予測が示されております。
こうした中で、議会においては、議員定数を2名削減するとともに、議員報酬の削減を平成19年度も継続するなど、自ら行財政改革への取組を実施してきているところであります。
本定例会に提案された来年度予算案において、既に136億円程度の収支不足が生じていますが、本県が大きく依存する地方交付税の更なる減額が想定され、今後も多額の収支不足が続くと見込まれる状況にあっては、これまでの歳出削減手法では限界と言わざるを得ず、今こそ抜本的な財政対策が求められています。
国の地方財政対策の動向などを見据え、まず前提となる収支不足の削減目標額や達成時期の設定、それを達成するための手法などを、早急に具体化する必要があります。
財政対策の具体化にあたっては、現在の歳出構造を徹底的に見直し、人件費の抑制、組織のスリム化、定員の削減及び徹底したコストの縮減に努めるとともに、あらゆる分野の行政サービスについて、本来県が担うべき事業か否か徹底した検証や事務事業の存廃を含めた抜本的な見直しを行い、また民間活力を積極的に活用することも重要であります。
また、公的サービスの提供にあたっては、受益と負担を明確化し特定の受益者に提供されるサービスについては受益者負担の適正化を図るとともに、徴収率の向上など県税収入の確保を図らねばならないと考えます。
一方で、徹底した歳出削減と平行し、医療体制の整備や児童が安心して登校できる道路の整備など、真に必要な事業の選択に努め、計画的に推し進めることも重要であります。
なお、地方が今後とも必要とされる役割を持続的・安定的に果たしていくためには、財政基盤の充実が不可欠であり、本県のような自主財源に乏しい団体であっても役割を十分果たせるよう、財政力指数の類似した県とも協調しつつ、執行部と議会が一体となり、地方交付税など一般財源の所要額確保を国や県選出国会議員など関係者に対し、粘り強く主張する、そのことが重要であると考えます。
財政健全化は、本県が将来にわたり持続的に発展していくための大前提であり、なんとしても乗り越えねばならない課題であります。
残された任期を全力で取り組まれる知事におかれては、また今後の本県行政の舵取りを託される新たな指導者におかれても、目指すべき島根の将来像を具体的に示し、その実現に力強いリーダーシップを発揮されるよう期待をするものであります。
また、全ての県職員にあっては、危機的な状況にある財政への理解を高め、それぞれの立場において従来の慣例にとらわれることなく、この危機的状況において自らが何ができるのかを常に考え、職務を改革していくことを強く望むものであります。
報告の終わりに、財政健全化の取組は県民の皆様に負担や痛みをもたらすものであることから、執行部にあっては、財政の現状や県の取組状況などについて積極的に情報提供するとともに、県民の皆様の意見の反映に努め、県勢の発展と県民福祉の向上に邁進されることを期待し、当委員会の委員長報告と致します。
 



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