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市町村合併調査特別委員長報告

 

市町村合併調査特別委員長報告平成十五年二月定例会


市町村合併調査特別委員会の調査の過程及び結果について御報告いたします。
本委員会は、平成13年6月定例会において設置され、市町村合併の推進及び地方分権等に関する調査を付託されました。以来、本日まで市町村合併等に関して執行部から説明、報告を求めるとともに、学識経験者、民間団体からの意見聴取、県内及び県外の事例調査を行ってきたところであります。

まず、はじめに、市町村合併に関する現状分析と今後の進め方についてであります。
本日現在、法定協議会が10、関係市町村42、任意協議会6、関係市町村15と、ほとんどすべての市町村で合併に関する協議会が設置され、検討がなされております。
これら協議会の設立に当たっては、県内各地域で公聴会、住民アンケートなど意向調査が精力的に行われ、また住民も市町村合併を自らの問題として捉えて対応する行動が見られたことは、地方行政とりわけ市町村行政に対する住民の新たな関わり方として特筆すべきことであります。
昨年同期には、法定協議会は勿論、任意協議会さえ設立されていなかったことを考えますとき、この1年間の関係市町村の皆様方の御努力に対しまして深く敬意を表するものであります。
県においては、平成13年3月に市町村合併の検討材料として13の合併基本パターンを提示されたところであります。現時点での合併の枠組みは半数ほどの地域においてそれと相違しており、また、合併せずに引き続き今の区域のままで行政運営に取り組もうとする自治体もありますが、今般の市町村合併は自主的な合併を推進するものであり、その地域の将来について十分議論が尽くされたうえでの決定であれば、その判断は尊重されるべきであります。
今後は、各地域の法定協議会において、各種協定の締結や合併市町村の将来像をまとめた市町村建設計画の策定作業に入られるわけであります。
本委員会では平成11年4月に新設合併した兵庫県篠山市を調査いたしましたが、当市では、合併までに頻繁に住民説明会を開催するなどして住民への積極的な情報提供を行うとともに、住民合意の形成に腐心されておりました。
市町村合併の真の受益者は住民でなければなりません。県内市町村の中には、住民への情報提供が未だ十分でないと思われるところも見受けられます。今後さらに積極的に情報提供しながら住民の意向把握を不断に行い、新しいまちづくりに反映させていかなければなりません。

次に、市町村合併に対する県の支援のあり方についてであります。
今後各合併協議会においては、合併市町村のマスタープランというべき「市町村建設計画」が策定されることとなります。
県におかれては、昨年9月に県独自の「島根県市町村合併支援プラン」を策定されたところですが、市町村建設計画にかかる合併協議会との協議に当たっては、市町村建設計画がより実効性の上がるものとなるように必要な助言を行うとともに、新しいまちづくりに必要な県事業については積極的に支援していくことが必要であります。その際、地域の実情に配慮しながら、県土の均衡ある発展を推進する視点を持つことが求められます。
また、本委員会では昨年9月に県内調査を行いましたが、市町村合併に関する不安として、いわゆる中心部と周辺部との格差の発生に対する懸念、また地域コミュニティの衰退に対する懸念の存在を確認いたしました。国においても、これらの問題に対処するため、合併後の旧市町村に一定の自治権を与える制度の創設に向けて検討が開始されたことは、注目に値するところであります。
これら懸念の払拭には、まず市町村において、地域審議会制度導入の検討を行うなり、住民がその地で暮らし続けたいと思えるような地域ビジョンを確立することが求められますが、県においては、生活基盤整備事業のみならず地域文化振興事業などソフト事業の実施に対する支援を総合的に展開していくことが必要であります。
いずれにいたしましても、合併市町村の新しいまちづくりに向けた取組を支援する県事業については、その確実な執行に全庁を挙げて取り組まれることを求めます。

次に、県から市町村への権限移譲についてであります。
本委員会で調査したところ、以前県が実施していた事務のうち、これまでに法定外公共用財産の境界確定や有害鳥獣捕獲の許可事務など35項目が市町村に移譲され、それに伴う財源措置も平成14年度においては総額1億6千万円余となっている、また県が市町村への権限移譲について市町村へ意向調査を行ったところ、権限移譲は必要であるという意見が多いが、全市町村一律の移譲ではなく、行財政基盤に応じた権限移譲や財政及び人的支援を要望する意見が多かったとのことでありました。
今後、市町村合併により新しいまちづくりの方向が明確になるとともに行財政基盤が充実強化され、更に権限移譲を進める環境が整ってまいります。
基礎的自治体として地域の実情を把握しやすい市町村において住民に身近な事務を処理することは、住民の利便性向上に大きく貢献するものであります。市町村におかれては、住民の意向に沿った自主的・主体的なまちづくりのために、積極的な受入に向けた検討を今般の市町村合併に併せて早急に行うことが必要と考えます。
また、県においては、平成15年度前半を目途に「権限移譲推進計画」を策定される予定ですが、本県における地方分権の推進のため「市町村優先の原則」に基づき、市町村の意向を十分に踏まえて計画を策定されることを求めます。

 

次に、地方分権推進と市町村合併後の課題についてであります。
地方自治法第2条は、「市町村は、基礎的な地方公共団体として、都道府県が処理するものとされている事務を除き、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされている事務を処理する。」と規定しております。全国の各市町村は人口、面積とも様々ですが、原則的には総合行政体として同じ事務を所掌しております。
平成12年4月の地方分権一括法の施行により地方自治法が大幅に改正され、機関委任事務の廃止に伴い国と地方公共団体との関係にかかる行政システムの画期的転換が図られ、地方公共団体の自己決定や自己責任が問われる領域が拡大されました。このことによって、自主的な行政運営、政策展開をめざす自治体にとってはその可能性が拡大され、今後は自治体間において、地域づくりや住民サービスといった観点で競い合っていく環境が整ってきたということができます。
行政をめぐる情勢は変化しており、これに即応して地域住民の福祉の向上に貢献していくためには、住民に一番身近な自治体である市町村の重要性及び担うべき役割は今後ますます増大していくことになります。
一昨年から、国の第27次地方制度調査会において、「社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革」に関する議論がなされており、そのなかで合併特例法期限後の合併推進方策及び基礎的自治体のあり方が検討の焦点となっております。この問題に関して本委員会でも討議を行いましたが、合併特例法期限後に合併強制方策を採ること、また一律に人口規模のみをもって市町村に付与された権限を縮小することは地方自治の本旨に合致しないとの意見で一致したところであります。
市町村のあり方については、地域の問題は地域で決定するという自主的合併制度の継続並びに市町村への税源移譲及び地方交付税の財源保障機能の堅持による財政基盤の強化も並行的に検討されるべきであり、国においては、第27次地方制度調査会でなされている議論に対して懸念を表明している全国町村会などの意見を真摯に受け止め、慎重に対処すべきであります。
今後は、市町村合併の進展に伴い、県と市町村との新たな役割分担が課題となってくるものと思います。現在進行している枠組みで市町村合併が行われれば、一部地域で不透明なところもありますが、県内59市町村は概ね8市9町に再編されることになり、市町の区域は拡大し、その能力は確実に向上するわけであります。権限移譲により県が所掌していた事務の一部が市町に移行し、また合併により市域が拡大することにより、県においては、福祉事務所等の見直しを含め、本庁、地方機関の再編と職員配置の見直しが必要となってくるものと考えます。
また、県が従来果たしてきた機能が変転し、都道府県合併、道州制等の都道府県再編成の議論に発展することも十分に想定されるところであり、その際には、本県が今後果たすべき役割が問われてまいります。
県においては、これらの課題を早急に検討し、市町村及び県民に明らかにしていかなければならないものと考えます。
県議会におきましても、本委員会で調査を行ってきた市町村合併に合わせて、県と市町村との関係、県のあり方など地方分権を積極的に推進するための調査を、改選後も調査特別委員会を設置して継続していくことが必要であります。

いわゆる昭和の大合併から50年近く経過し、交通通信網の飛躍的な発達に伴う生活圏の拡大、住民ニーズの高度化・多様化、少子高齢化、等々、市町村行政を取り巻く環境は大きく変貌しております。今般の市町村合併は、これらの諸課題に的確に対応するための一手法として位置付けられていますが、住民は大きな期待とともに不安も抱いております。
合併特例法の施行期限まで残すところ2年となってまいりました。市町村合併の成否は後世において判断されることとなりますが、市町村合併に携わる行政関係者は、地域住民とともに、将来に禍根を残さないよう残された期間内で徹底した議論を尽くされることを切に希望いたしまして、委員長報告といたします。

 



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