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中海・宍道湖周辺地域調査特別委員長報告

 

中海・宍道湖周辺地域調査特別委員長報告平成十五年二月定例会


中海宍道湖周辺地域調査特別委員会及び中海土地改良事業本庄工区特別委員会の調査の経過並びに結果について御報告します。
先の12月定例会初日、知事は「宍道湖・中海の淡水化は中止することが適当である。」と表明され、12月13日、国は宍道湖・中海の淡水化中止を決定されました。
昭和38年に国営中海土地改良事業に着手して以来、40年に及ぶ『昭和のくにびき』ともいわれた大事業がその収束を迎えることになりました。
県議会では、昭和34年に「中海干拓特別委員会」を設置して以来、12度にわたり中海干拓・淡水化に関する特別委員会を立ち上げ、慎重に議論を重ねて参りました。
その間、減反政策による米から畑作への事業転換、昭和63年の淡水化試行の延期、平成8年3月には知事が本庄工区の「全面干陸・農業利用」による事業再開要請、平成12年4月「本庄工区検討委員会」による三論併記の最終報告書提出、8月知事の本庄工区の干拓事業再開は当分の間延期するとの意向表明、そして9月の本庄工区の干陸中止決定など、国営中海土地改良事業を取り巻く状況には様々な変化があったことは皆様ご承知のとおりであります。

平成11年12月8日に設置された「中海土地改良事業本庄工区特別委員会」では、8回にわたり本庄工区の取扱いに関する調査及び審査を行ってまいりましたが、本庄工区の干陸中止決定に伴い事後措置や周辺整備対策など新たな諸課題が出てまいりました。このため、平成12年10月11日、設置要綱を変更し、名称を現在の「中海・宍道湖周辺地域調査特別委員会」とし、本庄工区干陸中止に伴う事後措置、中海・宍道湖淡水化の取扱い、中海・宍道湖周辺既存農地の農業用水に関する調査及びこれらに関する請願、陳情の審査について付託を受け、今定例会まで15回にわたり審査を行って参りました。

まず、本庄工区の取扱い及び本庄工区の干陸中止に伴う事後措置等に関する調査についてであります。
本庄工区の干陸中止に伴う周辺整備については、国に要望することとなりましたが、このような大規模事業の中止は全国でも初のケースであり、関係市町の意見を十分に踏まえた上で、県の責任のある計画として国に要望していく必要がありました。
県は、関係市町等から提出された49項目の要望について、本庄工区中止との関連性、事業実施の可能性と費用対効果などを判断し、国の早急な対応が必要な事項を整理し、大海崎堤防などの改築・譲渡、護岸整整備、道路網の整備、江島架橋の建設促進、つるべ湾埋め立てなど周辺整備12項目と地方負担金の77億円の措置を国への要望事項として平成12年10月農林水産省に提出されました。
この中で、特に早期に解決すべき地方負担金77億円の措置については、その年の国の補正予算で対応され、また、その他の項目についても、平成13年12月、農林水産省より「国営中海土地改良事業(干拓)本庄工区の取扱いに関する基本方針」が県に示され、県は、関係市町や県議会の意見を踏まえ、平成14年2月、この基本方針に、関係市町の要望を添えた上で異論がない旨回答され、これにより、大海崎堤防の譲与や、江島幹線道路など八束町北西岸道路の公有水面埋立法に基づく竣功と県への帰属など、県が要望していた12項目についてほぼ方向付けがなされたところであります。
本委員会では、これらの本庄工区の事後処理の状況を調査するにあたり、北部承水路堤防や森山堤防、本庄排水機場、中浦水門や江島大橋の現地などへ出かけ、それぞれの状況を確認し、本庄工区の事後処理の状況等について、精力的に調査を行ったところであります。

次に、中海・宍道湖淡水化の取扱いに関する調査及び中海・宍道湖周辺既存農地の農業用水に関する調査についてであります。
淡水化の取り扱いについては、代替水源の見極めをつけた上で対応することとなり、県では、平成13年4月から代替水源の調査・検討に着手されました。
本委員会では、執行部より代替水源調査の進捗状況や調査結果、関係市町との協議状況について報告を受けると共に、安来・揖屋干拓地、斐伊川右岸・左岸地域など現地の状況調査、確認を行いました。また、農業水利事業についての見識を深めるため、学識経験者による勉強会や、愛知県新矢作川用水事業、豊川総合用水事業などの現地調査も行うなど、精力的に調査を行って参りました。
平成14年4月、県は淡水化に替わる「農業用水確保対策の基本的な考え方」を取りまとめて、関係9市町に協議をされ、5月に関係9市町は地元負担軽減などの要望を付した上で、了承されました。
その際、特に強い要望のあった地元負担軽減については、その重要性にかんがみ、7月に本特別委員会正副委員長において農林水産省農村振興局へ出向き、太田局長と地元負担の考え方について意見を交わし、地元の厳しい状況を訴えるなど、農業用水確保対策の検討にあたっては地元負担軽減が必要不可欠であるという認識のもと、委員会としても精力的に取り組んできたところであります。
9月には、農林水産省から県に、具体的な対策の内容が提示され、平田市と斐川町については併せて国営かんがい排水事業で、安来及び揖屋干拓地は国営中海土地改良事業での実施を検討する、その他の地区は国庫補助事業での実施に協力するとの内容でありました。
この対策案については、本委員会に、中国四国農政局整備部長を参考人として招請し、詳細な説明を受けたところであります。
これを受けて、県は10月に農林水産省に一層の負担軽減を求める重点要望をされ、農林水産省からは、県営農村振興総合整備事業での取り組みについては国として必要な協力をすること、国営中海干拓地の農業用水確保対策と既造成施設の効果未発現施設については地元に負担を求めないこととし、この地元負担の国と県の負担割合は、今後協議することなどが示されました。
県では、農林水産省から示された内容を基に各地区の地元負担額を関係市町に示されました。関係市町は11月、確保対策の実施にあたっては、地元関係者の意向にも十分に配慮するよう要望を付した上で了承されました。
平成14年11月27日に開催した本委員会において、こうした農林水産省や関係市町との協議状況について報告を受け、審議を行った結果、地元の理解は得られたと判断し、「宍道湖・中海淡水化に替わる農業用水確保対策と関係市町や農家の負担軽減策については了承」という委員会の意見を賛成多数で集約いたしました。
そして、平成14年12月2日、12月定例会の初日、知事は、「宍道湖・中海淡水化は中止することが適当である」との判断を表明され、12月13日には、農林水産大臣は宍道湖・中海淡水化の中止決定を表明され、国営中海土地改良事業は収束に向かう
こととなりました。

 

終わりに、淡水化は中止となりましたが、いくつかの重要な課題が残されていますので、今後の取り組みについて要望を申し述べます。

まず、淡水化に替わる農業用水確保対策については、一刻も早く安定した農業用水を確保する必要があります。
国営かんがい排水事業の早期着手や県営事業の採択、これらに関する速やかな予算措置について、農林水産省に引き続き要請をされますよう要望いたします。
また、関係市町と協議、検討が必要な事項も残されています。今後とも、精力的な取り組みをされるよう要望いたします。

次に、本庄工区については、周辺地域の整備として要望している護岸や道路網の整備等について、着実に実現されるよう、執行部の引き続きの取り組みをお願いいたします。

次に、国営中海土地改良事業の収束に向けた事後処理のうち、土地改良施設としての目的を失う中浦水門や堤防などの取扱いについてであります。
これらの審査にあたっては、本委員会においても様々な議論が交わされました。
開削による水質への影響や、開削と塩分濃度の関係について質疑がかわされ、執行部からは県や農水省の水質予測結果によると、概括的には宍道湖への影響はほとんど見られないこと、また塩分もほとんど変化がみられないという説明を受けたところであります。
中浦水門については、中国四国農政局から、「河川法上、用途を廃止した許可工作物は原則として、設置者である農林水産省が撤去することとし、土地改良事業以外の目的に利用する場合には、新たな管理者に譲渡する」との基本的な考え方が示されましたが、執行部からは「県としては水門を残して利用するような方法は見当たらない」との説明がありました。委員会では、用途を失った施設については、事業主体である国において、撤去をしていただきたいという意見がありました。いずれにしても、中浦水門の取扱いは、管理業務に従事しておられる従業員の今後の生活や水門の維持管理費の問題にも関わることでありますので、早期に国において、適切な方向性を示されたいと思います。
また、堤防の開削については、先般の「中海に関する協議会」においても、関係者の意見の隔たりが大きいとして、今後引き続き議論することとされたこともあり、現時点での委員会の判断は困難であることから、本委員会としての結論を出すには至らなかったところであります。

これらの案件については、事業主体である農林水産省に方針をまず示していただくべきでありますが、県においても、「中海に関する協議会」の場の活用をはかる等、十分に議論を尽くされ、適切な方向が示されるよう働きかけられるとともに、中海、宍道湖のこれから目指す姿、堤防の取扱いなどについて、県としても慎重に検討されるよう要望いたします。

これをもって、特別委員会としての役割は終えますが、これまで事業に携わってこられた多くの方々の努力と想いを今後に生かし、中海・宍道湖という両汽水湖を未来に誇れる姿にしたいという心を忘れることなく、今後とも、関係各位と共に努力をして参りたいと存じます。
以上、中海・宍道湖周辺地域調査特別委員会及び中海土地改良事業本庄工区特別委員会における調査の概要を申し述べ、委員長報告といたします。

 



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