第15回しまね景観賞受賞作品(平成19年度)
物件一覧
大賞
事業主体/島根県
所在地/出雲市大社町杵築東
事業主体/国土交通省中国地方整備局松江国道事務所
所在地/松江市袖師町-嫁島町
優秀賞
まち・みどり部門
事業主体/山王寺本郷棚田実行委員会
所在地/雲南市大東町山王寺
土木施設部門
事業主体/島根県
所在地/邑智郡美郷町粕渕
民間建築物部門
事業主体/角 輝夫
所在地/松江市殿町
奨励賞
まち・みどり部門
事業主体/西ノ原自治会、上乃木2区自治会連合会
所在地/松江市上乃木
事業主体/雲南市
所在地/雲南市木次町里方-下熊谷
民間建築物部門
事業主体/有限会社小川商店
所在地/大田市温泉津町温泉津
工作物その他・活動部門
事業主体/松江洞陀羅会
所在地/松江市殿町
事業主体/あれとい屋
所在地/鹿足郡津和野町後田
特別賞
公共建築物部門
事業主体/独立行政法人国立高等専門学校機構 松江工業高等専門学校
所在地/松江市西生馬町
物件紹介
島根県立古代出雲歴史博物館
大賞
事業主体:島根県
所在地:出雲市大社町杵築東
→地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)
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深い歴史性と、そこから湧出する調和の精神を出雲的なものの神髄とすれば、この建築物ほどそのことを巧みに表現した例は、現代建築ではないのではないか。大規模な建物でありながら、弥山を中心とする背後の山々に比べ低くおさえてあり、まったく威圧感がない。色彩的にも、透明なガラス張りとコルテン鋼の茶褐色の屋根が、背景の山の緑と際立った調和をみせている。一見、注意していないと通り過ぎるほど目立たない控え目な建物だが、そのことが、いったん入館したとき、内部の豪華さを一段と引き立たせる効果となっている。まさにそこのところが出雲的だ。また、夕闇の北山のシルエットのなかに、内部の照明がガラスごしに淡く光るのは、この上もなく幻想的である。
(藤岡大拙)
宍道湖夕日スポット
大賞
事業主体:国土交通省中国地方整備局松江国道事務所
所在地:松江市袖師町-嫁島町
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斐伊川を源流とする宍道湖。静かで美しい。
遠くかすむ山々の紫、萌える草の芽、夕焼けの茜色の空、何時見ても飽きることは無い。宍道湖周辺に暮らす多くの人々は、「今日は夕日が綺麗でしたね」「夕日見ましたか」などと日常の挨拶代わりに交わすほど、親しみ慈しんでいる。
この度、念願の夕日スポットが完成した。時分時ともなるとカメラを持った人達が何処から現れるのか、湧いて出てくる感じ。100人とも200人とも。その光景は異様なほどの賑わい。
私の小学校時代は、泳いだり、藻葉や蜆を採って遊んだものだが、50年も前のことである。ランドスケープとなっているお地蔵さんは何代目であろうか、健在で、スポットのシンボルとして、写真に納まるのは嬉しい。
地域の人々や、松江市デザイン委員会の方、各方面のNPOからの様々なアイデアや提案を国土交通省がまとめられ出来上がったと聞く。宍道湖のボリュームとのスケール感や、自然材と光沢材のバランスも心地よい。横断地下道の明るさ、ゆったりとした空間、テラスのシンプルさ、など細部にわたり暖かいデザインに仕上がっている。
周辺の清掃には多くの企業、団体の方々が名乗りをあげ活動を始められた様子、また、今後コンサートや市民ギャラリーで賑わうことでしょう。
(平本映子)
山王寺の棚田
優秀賞
まち・みどり部門
事業主体:山王寺本郷棚田実行委員会
所在地:雲南市大東町山王寺
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11月の半ば、雲南市大東町の山間にある山王寺地区の棚田展望台に立つ。小さいながらもゴミ一つ見あたらない展望台では、後ろを振り向けば茅葺きの古民家があり、眼下には手入れの行き届いた棚田が広がっている。季節によって様々な表情を見せる棚田も、今は収穫が終わり、静けさが漂う。まるで時間が止まっているようなその落ち着いた情景には、初めて訪れた私もどこか懐かしさを憶えた。
後継者不足や少子高齢化といった深刻な問題を抱える過疎の集落において、「日本の棚田百選」にも認定された魅力ある風景と棚田文化を守り続けることは難しい。そうした中、地域の方々は、水土里ネット島根のご協力のもと、子供達が田植えや稲刈りを通して環境について学ぶ「田んぼの学校」や都会の学生が田舎体験をする「ちち☆ばす」などの活動や交流に積極的に取り組んでいる。聞けば、活動に参加した子供達の笑顔が地域の方々の弛まぬ努力のエネルギー源になっているそうだ。
賞に値するこの素晴らしい景観が、また、それを支える多くの方々の守りたいとの想いが、共に後世に受け継がれていくことを願う。
(淺田純作)
主要地方道川本波多線邑智大橋
優秀賞
土木施設部門
事業主体:島根県
所在地:邑智郡美郷町粕渕
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渡れば大田市という邑智郡美郷町北東端の谷に架かる。3年の歳月を費やし、2007年3月に完成したばかりだ。「4径間連続波形鋼板ウェブPCラーメン箱桁橋」と、覚えるにはいささか難儀な形式。県内初の工法という。
特徴は、アコーディオン状の波形鋼板だ。これを用いることにより、橋桁じたいの重さを大幅に軽減。耐震性などを向上させたうえ、下部構造を省略化することもできた。結果、太くて武骨な橋脚を免れ、細身ですっきりとした表情をもつ橋が出来上がったのである。
周りを山また山が囲む。そのなだらかな稜線と、橋が描くゆるやかなカーブ、鋼板部分の弓形とが穏やかな調和をなす。さらには、あえて彩色を避けた欄干の銀色と橋桁の白とが、あたり一面の緑に違和感なく映え、凛として納まってもいる。
この橋の開通によって800mの距離、約3分半の時間が短縮可能になったという。国立公園三瓶山や世界遺産石見銀山への、快適な観光ルートとしても期待が高まる。
(伊藤ユキ子)
蔵々(くらくら)
優秀賞
民間建築物部門
事業主体:角 輝夫
所在地:松江市殿町
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松江市内では橋北地区の東西を貫く幹線道路(城山・北公園線)として、通称「大手前通り」と呼ばれている道路の大幅な拡幅を伴う改修工事が進められている。そのため今では沿道沿いの建物が取り壊され、またセットバックして新しく建つ建物も目立ち始めてきた。ここはこの改修計画を機に格調高く歴史ある城下町に相応しい通りになるようにと沿道周辺のまちづくり論議も活発で市民の注目を集めている通りのひとつだ。
飲食店やギャラリーを持つこの建物はその通りの西、大手前広場にほど近い場所に建っている。周辺はお城や、堀川、白壁の建物など城下町の雰囲気を色濃く残しているエリアで、蔵々(くらくら)と名付けられたこの店舗は、その名のとおり白壁といぶし瓦の蔵が二棟並んだような外観イメージで、周囲の風情に自然と溶け込んでいる。それでいて、大きな吹き抜けの開口部や大小様々な窓が配されたその壁との絶妙なバランス、その周りのディテールなどさりげなくデザインされた外観は、何ともシンプルではあるが存在感を漂わせている。
(小草伸春)
上乃木のけやき通り
奨励賞
まち・みどり部門
事業主体:西ノ原自治会、上乃木2区自治会連合会
所在地:松江市上乃木
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原宿表参道とまでは言わないが、松江にも立派なケヤキの並木通りがある。ここ上乃木地区にある市道では毎年秋も終わりに近づくと「けやき落ち葉拾い大作戦」と銘打ち、地区自治会の呼びかけで、約一キロにわたって落ち葉集めが繰り広げられるそうだ。すでに地区のイベントとして定着し、花壇作りや花の手入れも行われ、この通りに彩りも備えられている。落ち葉をただ集めて燃やすのではなく腐葉土として再利用され、リサイクル活動として環境保全にも役立ち、温暖化対策の地域活動のモデルとしてグランプリに選ばれたとか。ここまで立派になるには約30年の年月を経ていると聞く。おそらくその間には落ち葉の始末に困るからとか、電線の妨げになるからとか、歩くのにじゃまになるとかの理由で、伐採の危機に直面する場面も幾度となくあったと思われるが、このように松江市内でも有数のケヤキ並木通りに成長したのは、地区住民の方々などの強い思いや、協力があったからこそと思う次第だ。将来電線の地中化が実現し、ショップや家並みがもっと整備されれば、さらに素敵な通りになること請け合いだ。
(小草伸春)
木次大橋と周辺河川環境
奨励賞
まち・みどり部門
事業主体:雲南市
所在地:雲南市木次町里方-下熊谷
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斐伊川の中流に位置する桜並木。
花咲く時期、斐伊川堤防に桜のトンネルが2キロに渡って続くその光景は、素晴らしいの一語に盡きる。
近くで見るとその迫力に感動し、遠くから見ると淡いピンクの花霞となって人々を酔わせる。
この美しさが保たれているのは、桜守や地域の人達の努力があってのことである。この並木は明治の頃から守られ、洪水で一時荒れ果てたが、人々の努力と熱意で徐々に復活し今日に至っている。
スサノオノ命の剣をイメージして造られた木次大橋。この橋は、地域のシンボルとなって松江尾道線と木次中心地を結ぶ架け橋ともなっている。夜になるとブルーの灯がともり、一段と美しく幻想的な光景を現出させる。
その上流に架かる潜水橋(沈下橋)は、無機質なコンクリートではあるが、周辺の人達の近道で、風景のアクセントになっている。
(山谷裕子)
路庵(ろあん)
奨励賞
民間建築物部門
事業主体:有限会社小川商店
所在地:大田市温泉津町温泉津
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日本で唯一の、世界遺産となった温泉街のなかに立つ。赤瓦の家々が肩寄せあうように連なる谷筋だ。重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのが2004年春のこと。その翌年に保存修理事業第1号として誕生したのがダイニングバー「路庵」だった。
もともとは明治中期に建てられた呉服屋だったと聞く。改修にあたっては古材をできるだけ使い、屋根は赤瓦のまぜ葺きにすることなどが義務づけられたそうな。おかげで、古い町並みにしっくりと馴染む。桟入りのガラス戸や2階の手摺りは郷愁を呼ぶほどだ。電気計量器を囲う木枠や錆色の雨どいなどにも心配りのほどがうかがえる。
ここが刺激剤となったか、その後も保存修理事業は相次いでいるという。江戸末期から昭和まで、建築年代もまちまちな、寺や神社、温泉浴場、旅館、商家、民家が混在する小路。ともすれば、ちぐはぐな景観になりがちなところ、路庵はひとつの方向性を示したように思えてならない。
温泉津焼きの水瓶「はんど」が似合う町並みに、という道筋を。長い眠りから覚めたこの町が数十年後、どんな景観になるのやら、見守っていきたいと思っている。
(伊藤ユキ子)
松江城二ノ丸のなんじゃもんじゃと松江洞陀羅会
奨励賞
工作物その他・活動部門
事業主体:松江洞陀羅会
所在地:松江市殿町
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五月の初めごろ、松江城二ノ丸に雪が降り積もったかのような純白の花を咲かせる木がある。観る人々を魅了してやまないこの木は、モクセイ科の落葉樹「ヒトツバタゴ」であり「なんじゃもんじゃ」とも呼ばれている。人々は毎年この時期が来るのを楽しみに待っており、この地を訪れた観光客は真っ先に駆け寄り思わず歓声をあげる。
松江城二ノ丸の「なんじゃもんじゃ」は、昭和15年松江市出身の故杉坂治氏が、現在の韓国光州市で自生樹から採取育成した苗木を故郷松江市へ寄贈したものである。
松江洞陀羅会の会員が、この「なんじゃもんじゃ」の由来を後世に長く伝え、保護・普及するために平成10年から松江市内で苗場を確保し、丹誠を込めて接ぎ木苗の生産と育成を行い、公共施設への寄贈や一般配布を続けている。これまでの総数は、1,600本にも及んでいる。
市内各所で、風薫る五月に真っ白い雪に覆われたような繊細で壮観な風景がさらに広がっていくことを願う。 (神長耕二)
津和野の魅力ある夜の景観づくり活動
奨励賞
工作物その他・活動部門
事業主体:あれとい屋
所在地:鹿足郡津和野町後田
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津和野町中心部のメインストリート、「殿町通り」と「本町・祇園丁通り」は、近年、住民の意見を踏まえた整備によって景観上も安全面でも歩行者にとって快適な石畳の道に変身し、町内外の多くの人々に親しまれている。今回選ばれたこの活動は、上記二つの通りを舞台として、地元有志によるグループ「TSP(津和野スクリーンプロジェクト)」が2004年以来展開しているものである。
寂しくなりがちな夜の景観に賑わいをもたらそうと始められたもので、住民の協力のもと、通りに面した白壁をスクリーンに見立てた古い写真の上映会や、和紙製の灯籠を並べての通りのライトアップなどが実施されている。上映会は年に6回程度の開催であるが、オープンカフェの開設や琴の演奏等が行なわれることもあり、和やかな雰囲気の中、昔の津和野の生活や行事を伝える映像を見ながら世代を超えた会話が弾み、町民と観光客の交流も深まるという。
昨今、青春時代の旅を懐かしんで津和野を再訪するかつての「アンノン族」も増えていると聞く。人々の心をほっと癒してくれる津和野の魅力がいっそう高まるような、輝きとあたたかみのある活動を今後も期待したい。 (八田典子)
松江高専「学びの庭」
特別賞
公共建築物部門
事業主体:独立行政法人国立高等専門学校機構 松江工業高等専門学校
所在地:松江市西生馬町
→地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)
「学びの庭」何ともいえない懐かしい響き。国立松江高専は松江市街から佐太神社に向かって車で10分、小高い丘に昭和39年に開校された。
高度成長期のはしりで、効率と機能重視の建物であった。だが当時は高専というネーミングと白い建物は珍しく、新しい風を感じていた。40年前のことである。
今回、何十年ぶりに訪ねた。穏やかな曲線をダイナミックに用いたスケール感がとても気持ちよく、活気に満ちたオープンスペースがあった。モダンで建物が空気や光を吸って生きているかのような印象を受けた。
「学びの庭」は、学生が足を踏み入れることの無い校舎隣棟空間の緑地を利用したもので、採光屋根を架け、廊下の延長として、また、全天候型外部空間としても使えるよう改修された。天候に恵まれない山陰にあって、新しいエネルギー空間として、成功したのではなかろうか。
木製のステージはバリアフリーに、植栽やベンチの設置、学生の憩いの場として、また、創造性を育む製作空間として生まれ変わった。
これからの学校建築のあり様を示唆した好例ではなかろうか。教授と学生のコンセンサスによる新しい高専の顔が生まれ、若者たちの活気に満ちた表情がそこにあった。
(平本映子)
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