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第14回しまね景観賞受賞作品(平成18年度)

物件一覧

 

 大賞

水仙の花咲く里づくり

事業主体/鎌手ふるさとおこし推進協議会

所在地/益田市西平原町

島根県芸術文化センター グラントワ

事業主体/島根県

所在地/益田市有明町

 優秀賞 まち・みどり部門

鉄の歴史村の町並み

事業主体/吉田町まち並委員会

所在地/雲南市吉田町吉田

土木施設部門

寺町地区のまちなみ環境整備事業

事業主体/松江市

所在地/松江市寺町 

公共建築物部門

松江市営住宅 荻田団地

事業主体/松江市

所在地/松江市宍道町佐々布

 工作物その他・活動部門

掛戸松島の一本松再生

事業主体/久手町自治会連合会、久手町商工振興会、久手町観光開発協会、久手公民館

所在地/大田市久手町波根西

 奨励賞 まち・みどり部門 

パークタウン出雲

事業主体/島根県住宅供給公社

所在地/出雲市今市町

土木施設部門 

江島大橋

事業主体/国土交通省中国地方整備局境港湾・空港整備事務所

所在地/松江市八束町〜鳥取県境港市

民間建築物部門 

Audi山陰

事業主体/山陽自動車株式会社

所在地/松江市西津田 

荒木文之助商店

事業主体/有限会社荒木文之助商店

所在地/松江市天神町

個人住宅部門 

藤野邸

事業主体/藤野孝夫

所在地/隠岐郡隠岐の島町久見 

伊藤邸

事業主体/伊藤文子

所在地/簸川郡斐川町大字荘原町 

 

  

物件紹介 

水仙の花咲く里づくり

地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。) 

 

近景 活動のようす

 

 日本海の美しい海岸が連なる、島根の中でも人目を惹きつける、天然記念物に指定された有数の海岸である。唐音の蛇岩、なるほど、溶岩の跡が連なって、蛇のように見える。奇景、というか、自然の不思議な美学を感じる。ここは、磯釣りのメッカでもあるという。普段は人が訪れなかったこの美しい海岸に、水仙の花咲く園が毎年、毎年広がりつつある。鎌手の小学、中学の卒業生が、地域の人たちと共に毎年水仙を3万球ずつ植えていく、そうした取り組みは10年近くにもなり、これからさらに続いていく仕組みが出来上がっているのが素晴らしい。

 水仙は、もともとここに自生していたと言うが、『出雲風土記』に水仙は出てこない。日本には朝鮮半島を通じて、平安時代にもたらされたと考えられる。北限は越前、太平洋岸だと千葉という。淡路島など、水仙園の先達はあるが、全国でも有数の水仙園になりつつある。山は全て民有地である。土地所有者の理解も徐々に拡がり、花咲く季節に訪れる人々も増えつつある。

 日本で最大の水仙園が近い将来出来上がり、さらに拡大していくことを願う。

(布野修司)

 

島根県芸術文化センター グラントワ

地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

中庭 全景 

 

 石見待望の芸術文化の拠点である。出雲にはない先端施設の誕生である。無窓で巨大な量塊は、落ち着いた町にはいささか威圧感があるが、市街地景観の核となる。大きい屋根(グラントワ)とネーミングされたこの施設が豊かな果実を産んでいくことを期待したい。

 石州瓦を28万枚使ったというグラントワは、まさに瓦の建築である。焼きが足りなくて黒ずむなど、時間の経過と共に味がでる瓦の魅力を意識して、五種の色の瓦を用意して混ぜ葺きするなど、意が匠まれている。石州瓦の家並みが並ぶ美しいしまねの景観を第一に意識した表現に、まずは敬意を表したい。

 大ホール、小ホール、美術館、スタジオなど多彩なプログラムも、立ち上がりは素晴らしく、何よりも、薄く水を引いた(雨水利用)中庭の空間が、様々に利用可能で面白い。建築としても、床のレヴェルを揃える(バリアフリー)などそつはない。瓦、打放しコンクリート、木というのもシンプルで安定している。壁には瓦を用いない手法もあったと思うが、このグラントワを景観の核として、益田の街がより一層すばらしいものになることを願う。

(布野修司) 

 

鉄の歴史村の町並み

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

全景 近景

 

 秋も深まり少し紅葉した周辺の山々と町の吉田町を歩く。たたら製鉄で繁栄した田部家がある吉田町の中心部は「企業城下町」として活気づき、生活風土と文化の名残りを濃く残し往時の面影がしのばれる家並みが続く。全体としてよく手入れされ落着いた町である。

 なだらかな石畳の道を上る手前にはその田部家の歴史を刻んだ白い重厚な美しい土蔵が六棟建っている。歩いていると北前船による出荷に因んだ品々も「北前船一坪博物館」として商家の店先に展示され趣きをそえている。道の中程にはツーリズムの宿「若槻屋」があり、元庄屋を改築した明るく軽快な景観の二階建ての、カフェやショップを兼ねた気持のよい建物である。向い側には「鉄の歴史博物館」、これも伝統的民家である。その入口や「若槻屋」の表庭先の白いさざんかの花の下、その他所々にこの町出身の彫刻家内藤伸氏のブロンズ像が置かれ、一段と町の風格にアクセントを与えて快い。また、店々には木製の字を彫り込んだ看板が掛けられたり、立看板が置かれたりしており、温かい雰囲気を醸し出している。

 そしてこの二百六十米の道の周辺は、家並みから縦横に走る小路まで石畳で丁寧に整備されており、四季折々の風情が楽しめそうでフッと誘われ散策したくなるような全体として心安らぐ町並みである。

(山谷裕子)

 

寺町地区のまちなみ環境整備事業

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

近景 鼕庫

 

 寺町は古く、松江開府によって城下町建設の一環として作られたといわれている。この地区は名称のとおり大きな寺の集積地で、沢山の墓と住宅、店舗が立ち並ぶ。

 この整備事業は寺町の特徴を良く捉え、屋根の燻し瓦、漆喰の壁や樹木などの雰囲気をうまく生かし特色ある町並みを再生し、落ち着いた空間を作り出している。

 交通量の多い駅通りの北側に面し、一歩曲がるとしっとりした佇まいの小路に入り騒音も気にならない。舗装は自然石の洗い出しと石畳でさり気無く、色彩のトーンも落ち着いたものになっている。人間的なスケール感と来待石の足元燈などディテールに繊細な気配りがあり気持ち良い。

 望めるものならば、寺町地区に隣接する駅通り、和多見町や白潟本町との関係性で、これら広い地域全体を一体感のある空間として捉えてあれば、今以上にお互いの町が生きるのではないだろうか。

 骨組みは出来上がった。今まで以上に住民の皆さんが周辺の調和を考えられ、潤いのある美しい町に作り上げてほしい。

(平本映子)

 

松江市営住宅 荻田団地

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

外観 中庭

 

 松江市郊外の比較的新しい住宅団地に建つ市営住宅。

 この建物はRC造2階建で、程良い広がりを持つ中庭をコの字型に囲んで建っている。各住戸はメゾネットとフラットタイプが組合わさっていて、敷地に沿って少しずつずれながら、しかも分節ユニット化されたその棟構成は、穏やかな曲面屋根と相まって、親しみやすいスケール感と共に変化のある豊かな外部空間を生み出している。この事によって周辺に多くある瓦葺き一戸建ての住宅群とはボリュウムや形態は異なるにしてもその中で違和感無く佇んでいる。

 隣接の公園とは道路で分断されてはいるが、それに繋がるスロープやブリッジ・通路等の軸線を強調する事によって一体化させる事に成功しているし、敷石やベンチ、外灯などには来待石を使用し地域性にも配慮されている。駐車場や中庭床の芝とコンクリート床のコントラスト、程良い植樹、道路際のコンクリート打ち放し腰壁部分の板張りといい、周辺との調和を図るための工夫が随所になされていることが評価された。

(小草伸春)

 

掛戸松島の一本松再生

地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

全景 作業の様子

 

 四季折々に表情を変える日本海を背景に、日ごと印象深い姿を見せてくれる「掛戸松島」は、古くから多くの人々に親しまれてきた大田市久手町の名勝である。

 松を頂いて海中にそそり立つ高さ約20メートルの奇岩は、今から約700年前、干拓事業に伴って行われた岩山の開削工事の名残という。昭和51年に初代の松が枯死した後、52年に地元有志の手で植えられた二代目が伝統を守ってきたが、平成16年9月、台風によりこの二代目が惜しくも根こそぎ倒されてしまった。地元ではすぐさま対応が協議され、「500円募金」の呼びかけがなされたところほぼすべての世帯(約1400世帯)が応じ、商工団体等からの寄付と合わせて目標を超える資金が集まった。それを元に、平成17年4月、海中の岩場に足場を組んでの難作業を経て植えられたのが現在の三代目「一本松」である。日照りが続いた同年6月には、地元消防団が訓練を兼ねた放水を行いエールを送った。

 JRの車窓からも一瞬の絶景を目にすることができる。地元住民をはじめとする多くの人々の愛情に支えられ、末永く勇姿を見せてほしいものである。

(八田典子)

 

パークタウン出雲

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

近景 ツツジの頃

 

 「緑色濃き鷹ノ沢」と出雲高校・校歌の冒頭にも謳われる地である。こんもりと雑木の茂る丘を「共生の森」と名づけて残し、開発された。春には薄紅と白のあでやかな帯となる、つつじに縁どられた坂道が住宅街を東西に分かつ。

その坂を登るたび、のびやかな心持ちになる。なぜか。ひとつには、行く手の空を邪魔するものがないせいもあろう。電線類の地中埋設化が、こんなにも景観をすっきりさせるものかと、つくづく思わずにはいられない。

 さらには、緑豊かな環境にふさわしい統一感。街並みの調和を図るため、戸建ての住宅は勾配屋根とすること、屋根と外壁は落ち着いた色彩にすること、自家用以外の広告物の設置は原則認めないこと、道路に面する柵類は生垣、もしくは低木の植栽とすることなど、確たる制限が設けられているのだ。東西それぞれの北側に配された中高層の公営集合住宅にしても、赤瓦の勾配屋根をかぶる。

坂道の向こうに広がる一の谷公園の景観ともしっくりと溶け込む、まさにパークタウン。散策していても心地いい。暮らしている者がいうのだから間違いない。じつは、私も「森と共に生きる」、ここの住人なのである。

(伊藤ユキ子)

 

江島大橋

地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

全景 夜景

 

 平成16年10月に開通した江島大橋は、大型車が通れないなどの不便さがあった中海水門に代わり松江市八束町と鳥取県境港市を結ぶ橋梁で、中海圏域の交通ネットワークの中では特に重要なリンク(link:線,交通路)である。橋の構造形式はPCラーメン構造(柱と桁が一体となった構造)というもので、同構造の橋梁では日本一の長さを誇っており、その存在感は中海の新しいシンボルにふさわしいものとなっている。

 市民の投票によって中海八景にも選ばれたこの橋は、風をテーマにデザインされているそうだが装飾は控え目な印象で、そのことが、近景ではマイナスイメージになりがちなコンクリートの重量感を爽快な機能美へと変えていた。また、松江側から江島大橋を通して遠く大山を望むと、海に浮かぶ緩やかなアーチが山の稜線と見事に調和し、受賞に値するすばらしい景観を形成している。

(淺田純作)

 

Audi山陰

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

全景 夜景

 

 車のディーラーが立ち並ぶところと言えば市街地に入る手前の街道沿いに多くはある。その風景も看板・広告塔の林立や道路際ぎりぎりまで所狭しと並べられた車等、全国何処でも同じように見ることができるし、松江もまた例外ではない。このショールームを持つ外国車のディーラーもそんな場所に建っている。

 この社屋は白を基調としたガラスとスチールで構成された透明感のある軽快でオシャレな建物だ。付属の屋外展示場も本体とうまくバランスさせているし、その後ろにあるバックヤードの目隠しになっているコンクリート打ちっ放しの屹立した独立壁がさらに場を引き締めているように感じられる。何よりも特徴的な事は、この種の施設には珍しく建物をセットバックさせ空地を程良く確保するとともに植樹や自然石を施し、歩道に広がりと潤いを提供していることだろう。敷地に対してゆったりと配置された建物や展示車、抑制の利いた看板やサイン等、雑然としたこの通りのなかで隅々まで行き届いた豊かな空間を作りだしている事が評価された。

(小草伸春)

 

荒木文之助商店

 地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

 

全景 看板

 

 荒木文之助商店のある天神町は松江大橋から白潟本町通り、天神町と続く白潟天満宮までの地区にあり、かっては商業の中心で買物客や行き交う人々で賑わっていた。夏祭りともなると市内はもちろん近在の町からの参拝者で通れないほどの人の群れがありエネルギーに満ちていた。昭和20年・30年代のことである。今日の郊外型消費者動向にともない、空店舗や駐車場が目立ち、シャッターが開かない店も出始めている。

 そうした状況のなかにあって、屋号「佐草屋」は240年前の江戸・寛政時代から仏具商として続いた老舗らしく、昔を彷彿とさせるファサードは全体を黒一色で統一し、質素な建物であるが人目を引く。

 京町家風の格子や板戸を連想させるイメージでモダンにデザインをまとめ、黒の中に唯一生成りの暖簾がやさしく収まっている。建物としては美しく仕上がっているが、周辺との調和に工夫があれば一層成功したのではなかろうか。

 「仏壇屋」が天神町通りの先導的なファサードとなり、再び活気ある街となることを期待したい。

(平本映子)

 

藤野邸

 

全景 外観

 

 この住宅は隠岐島後の北西部の漁業集落久見にあり、もともと地区の氏神社の宮司の住まいだったものである。現在の建物は、この地区一帯が焼失した天保9年(1838年)の大火の後早い時期に再建されたものといわれ、六間取りで、接客空間である四室続きの座敷を鍵曲がりとする特徴的な間取りをもつ神官屋敷であったが、その後幾度かの改変を受けていた。

 施主はこの度の改修に当たり、以前土間であった部分に居住部分を配置する代わりに、接客部分を古図を元に当初の姿に戻すことを決断し、出入り口を三カ所(行事によって使い分けていた)に戻したり、建具取り替えに当たってもサッシではなく雨戸と障子のままにするなど、現在の生活形態や住みやすさとは必ずしも相容れないものをも復元されている。赤瓦から銀黒瓦に葺き替えられてはいるが、およそ往時の姿を取り戻し、改築された部分も一体的な仕上がりとなり、通りに対して開放的で、背後の山々や集落の風景にすっぽりと収まる伝統的な民家が再生された。

 個人の住まいにおいて、通りや周辺の風景との調和に配慮するのみならず、地域の歴史や文化、そして風土の継承までをも考えた施主の情熱に感服するものである。

(伊藤慶幸)

 

伊藤邸

 

全景 外観

 

 荘原の町と九号線の間に位置する閑静な住宅地の一画にある。個々の住宅がゆとりのあるスペースで建っているが、まだ若干の空き区画も見える。そのせいか、全体的にゆったりとした雰囲気がただよっている。伊藤邸は東と南を路に接する角に建てられている木造二階住宅。なによりも、木材色をやや濃い目にした暖色系の外見がいい。東側から南側にかけて、庭が作られているが、特に東側の落葉樹の植え込みは、建物を一段とやわらかい感じにしている。東側の入口に向かって、一定間隔で枕木が埋め込まれているのもいい。また、家屋の周囲には透き間のある板塀をめぐらせて、或る程度の開放感を演出している。総じて、周辺の景観とも調和をみせており、木のもつ柔らかさが醸し出す落ち着いた雰囲気が、辺りにただよっていて、好感のもてる建物となっている。

(藤岡大拙)

 


 

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