第13回しまね景観受賞作品(平成17年度)
物件一覧
大賞
田和山遺跡と共存する松江市保健医療福祉ゾーン(松江市立病院・松江市保健福祉総合センター)
事業主体/松江市
所在地/松江市乃白町
優秀賞 まち・みどり部門 事業主体/出雲市、高松奈津子、新町町内会、片原町町内会、宮之町町内会、木綿街道の会、木綿街道商業振興会
所在地/出雲市平田町
土木施設部門 事業主体/国土交通省中国地方整備局斐伊川・神戸川総合開発工事事務所
所在地/飯石郡飯南町志津見
公共建築物部門 事業主体/斐川町
所在地/簸川郡斐川町大字神庭
事業主体/益田市
所在地/益田市匹見町道川
民間建築物部門 事業主体/有限会社ぬしや
所在地/江津市有福温泉町
奨励賞 まち・みどり部門 事業主体/中垣内中間の棚田を守る会
所在地/益田市中垣内町
土木施設部門 事業主体/島根県隠岐支庁
所在地/隠岐郡西ノ島町大字美田〜浦郷
事業主体/国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所、雲南市
所在地/雲南市木次町新市
個人住宅部門 事業主体/竹下由美子
所在地/浜田市長浜町
工作物その他・活動部門 事業主体/NPO法人まちづくりネットワーク島根
所在地/松江市(嫁が島)
事業主体/NPO法人斐伊川流域環境ネットワーク、松江市立秋鹿小学校、松江市立中島小学校、秋鹿地区布川寿会、松江市秋鹿公民館
所在地/松江市大垣町
物件紹介
田和山遺跡と共存する松江市保健医療福祉ゾーン(松江市立病院・松江市保健福祉総合センター)
→地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)

田和山遺跡に隣接し、島根女子短大、松江商業高校、湖南中学など多くの学校に囲まれた文教地区にある松江市保健医療福祉ゾーン。
田和山遺跡の空間を活かしたやさしいフォルム、自然素材の質感を大切にした本館やストリートファニチュア等のデザイン、それぞれに細やかな気配りがなされている。周辺の植裁では、すでに市有地であった緑地帯を自然なかたちで残し、桜やハナミズキの並木道、落葉樹と常緑樹の配置バランスで季節が感じられるよう、文教地区という地域性を考慮した設計となっている。また、屋上緑化の将来にわたる維持などの課題が存在するものの、環境への配慮も十分感じられた。そして、田和山遺跡をはじめ松江市街地や宍道湖、遠くは大山まで一望できる立地を活かし、この施設を利用する人々が様々なロケーションを楽しめる工夫をいたるところに施してあるのは見事である。
夜になると、まるでホテルをイメージさせる光の演出は、昨今の社会情勢から賛否は分かれるところではあるが、街路を明るく照らすことで文教地区の安全性を保ち、山陰道を通る車に現在地松江を知らせるランドマークとなっている。
単に医療福祉施設の機能を追求するだけでなく、利用者、周辺地域の人々、そして、市街地や山陰道といった離れた位置にいる人々など、施設を見る(施設から見る)あらゆる目を意識し、出来る限りの配慮を行ったデザインは、まさに大賞にふさわしいといえよう。
(淺田純作・平本映子)
木綿街道の町並み
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木綿街道......何か心地よいぬくもりのある響きである。旧平田市の3つの町並みを『木綿街道』としている。川に沿った家並みと道をはさんで建つ家並みは、江戸、明治、大正、昭和期のものが混在している。そのことがユニークで面白い。
なかでも目立つのは、切妻妻入り塗壁造りのモダンなデザインの本石橋邸である。藩主が出雲大社参詣の際の御成屋敷として造られ、築250年からのもので、その間、増改築、保存がなされてきた。となりには、平田の商業、歴史、文化の情報発信の場として木綿街道交流館交流棟が建ち、手仕事を伝える研修室などの棟も並ぶ。ここは、元医家だった家を復元した建物で、やはり本石橋邸とつながって、この一郭は見るべきものがある。
平田は、江戸期から雲州木綿の市場町として栄えた。京・大阪への道は日本海へ通じる川が搬路であった。その川から店へ荷を通す小路が幾筋かあり、歩くと家々の間から川が見え、ホッとする風景となり、何軒かの家には白地に藍の字で『木綿街道』と染められたのれんがかけられ、いい風情だ。また、家々の前には、綿(わた)の木の鉢が置かれているのも面白い。明治、大正からの3軒の醤油屋、300年ののれんを守る生姜糖屋などを含めて、全体として他の歴史的建物・町並みとひと味違う町並みとなっている。
(山谷裕子)
志津見大橋
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飯南町の山間にかかるこの橋は、志津見ダム建設による主要地方道付け替えにともなって出来た湖面橋である。この橋の特徴はなんといってもこの構造形態にあって、橋桁のウェブ部分が一般的にはコンクリートだがここでは鋼管トラスとし上下の床版がPCコンクリート版の、所謂「ハイブリッド構造」となっている事だ。この構造形態は国内でも前例が少ないらしい。
印象的なのは、ウェブ部分がトラス構造のため透けていると同時に、そのトラスの色も山々の緑に同化させたことによって、上下にあるコンクリート床版の水平ラインが際だってシャープに見えることだ。さらに鋼管トラスにしたことで重量が軽減されたため橋脚もスマートになり、全体のバランスも良く実に軽快な姿になっている。また、橋の下の地形の変化に併せて橋桁のせい(高さ)も変えていくなど、橋梁がもつ圧迫感を減らすための配慮が随所に感じられる。この橋の周囲にはコスモス畑やポピー畑などもあり、現在は公園整備も行われているとのことで、それが完成すれば志津見大橋一帯には調和のとれた見応えのある新たな景観が出現しそうだ。
(小草伸春)
荒神谷博物館
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小高いアプローチから俯瞰すると、なんともつつましく、愛らしく見える。エントランスも、荒神谷の自然に開かれていて、控えめに脇に佇む感じがいい。緩やかにカーブしたファサードも実に自然である。初めに展示ありき、という方針が貫かれたというが、流れるような空間構成が手堅い。建築も、自己主張することはなく、しかし、集成材を巧みに用いるなど、それなりに遊んでいて楽しい。出土地に設けられたサイト・ミュージアムの建築として景観賞に相応しい仕上がりである。
愛称は出雲原郷館。町民の寄付をもとにしていることといい、多くのヴォランティアに支えられていることといい、手作りの運営もユニークである。多くの来館者が、地域を見つめ続ける、それこそ原郷であり続けて欲しい。
(布野修司)
旧割元庄屋 美濃地屋敷
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静かな田園地帯の一角に立つ、風格漂う伝統的建造物である。割元庄屋を度々務めるなど、古くから同地において大きな存在感を示してきた旧家の屋敷が修復(一部新築)され、新たな文化拠点として公開されたものである。長屋門、米倉、母屋は、旧来の姿をよく残しており、建築史上の貴重な事例であるとともに、伝統的家屋の美しさを十分に伝えてくれる。白壁と石州赤瓦のつややかな屋根、黒い木材による束柱や桁、格子窓、そして母屋をどっしりと包み込む茅葺きの屋根等が、シンプルながら鮮やかな調和を見せている。敷地内に新築された民俗資料倉も、他と統一された外観であり違和感がない。また、母屋の葺き替えには、地区の人々が分担して集めた茅が使われたという。
訪れた日、多くの見学者の姿を目にした。関係者の話によると、近くの温泉施設からバスでこちらに案内する取り組みもなされているらしく、PRにも尽力されている様子がうかがえた。これからは様々な活動の場として利用される機会も増えそうである。近くを通る国道191号からもよく見え、今後いっそう、地域内外の多くの人々に親しまれる「地域の顔」となることが期待される。
(八田典子)
旅館ぬしや
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温泉街からぽつんと離れ、雑木林のなかに立つ。本館、宿泊棟から大浴場に至るまで、外壁は木舞の土壁を模した淡い朽葉色。かぶる屋根は赤茶や渋色などの、石州瓦の混ぜ葺きだ。とり囲む木々にも溶けこみ、一体となって閑雅な景観を創り出している。
そもそも県道の拡幅工事に伴い、移転先を探すなか、ふと浮かんできたのがここ、「四季によって色が変わる山」だったという。つまり、自然に惹かれて決めた場所だ、建築にあたっては可能な限り自然を壊さぬよう心砕いた。おかげで、かつては棚田を潤していたという自然湧出の泉も、堤も、そのまま中庭として残る。天を突くクヌギや背高く伸びたアシビなどの樹木群もやけに居心地よさそうだ。
新築開店したのは平成17年2月だが、落ち着いて映るのは、古民家を移築しているせいにちがいない。主が構想したのは「石見の田舎家」という。波子町の酒蔵2棟、都治町と旭町の古民家それぞれ1棟がここで息を吹き返した。
春を待ってアシビが淡い紅や白っぽい緑の、スズランに似た花を咲かす。やがて山ツツジがあたりを薄紅色に染め、青葉のころになるとモリアオガエルが堤で泡状の卵を産む。紅葉の秋には、風に吹かれたドングリの、瓦を打つ音が静寂のなかに響くそうな。冬は枯淡な墨絵の世界、雪でも降れば......。雑木林が奏でる季節の詩ど真ん中に在る湯の宿。文庫本1冊を手に、泊まってみたいと思った。
(伊藤ユキ子)
中垣内(なかがうち)の棚田
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柿本人麿の歌にも詠まれたという打歌山(大道山)の麓に広がる、規模の大きな棚田景観である。入り組んだ山裾の急傾斜地に、約40ヘクタール、枚数にして2,100枚の棚田があるという。住民の高齢化や都会地への転出に伴なって、耕作放棄地が増加することに危惧を抱いた地区の人々により、保全活動が始まったのは約5年前。平成17年春には、「第二の故郷ますだでお百姓さん農業特区」として国の認定を受け、棚田オーナー制度も開始された。同年5月末には、花田植えも賑やかに、オーナーを招いての「打歌村開村式」が催されている。
稲作が行なわれているのは全体のおよそ6割であるが、休耕田の有効利用として蕎麦の栽培も行なわれ、蕎麦打ち体験会も開かれる。また、各所でコスモスも育成され、秋には多くの人々の目を楽しませるという。
打歌山山頂への登山道の整備も、地区の活動として平成10年頃から進められており、ここ数年は、元旦に数百名の参加者を迎える「初日遥拝登山」が恒例行事となっているそうだ。地域に寄せる人々の熱意に支えられ、今後もこの地で賑わいのある農村景観が創出されることであろう。
(八田典子)
西ノ島大橋
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西ノ島大橋は、西ノ島町の東の玄関口「別府港」と西の玄関口「浦郷漁港」を結ぶ国道485号のバイパスの一部として整備された美田湾をまたぐ橋である。この路線は、島内交通を担う幹線であり、また国賀海岸等への主要観光ルートでありながら、これができるまでは、湾を大きく迂回する狭隘な道路の通行を強いられていた。
周辺は大山隠岐国立公園に指定されており、橋の構造については、地元関係者や景観アドバイザーを交えた懇談会を設置し、決定されている。この結果、造られた橋はいたってシンプルであるが、隠岐の自然景観の中にあっては、それがまたよい。航路を確保するため桁下の空間が大きく取られ、その結果生まれた橋脚の高さと橋長のバランスはとても美しい。さらに、橋桁の緩やかな曲線が周辺の穏やかな水面や柔らかな山並みとほどよく調和している。
この島にとって、地域をつなぐかけがえのない橋であり、島民に愛され、観光客の印象に残る橋となって欲しい。
(伊藤慶幸)
斐伊川 木次水辺の楽校
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この「水辺の楽校」は、木次の中心地に近い斐伊川の中州や小さな島を誰もが容易に近づけて、文字どおり楽しく水辺体験や自然体験が出来るよう整備されたものだ。
水辺は見立たぬようにさりげなく自然石で際が作られ、数本の高木だけが残り、低木や雑草は刈り取られ、すっきりとした岸辺に近い中州やその島は、いかにも人が渡ってくるのを待っているようだ。一方、岸辺からやや離れた島は芦や竹、雑木が生い茂って、そのままだ。そこは小鳥や小動物の住処となっているに違いない。中州に渡れば観察も容易に出来そうだ。その中州も岸との間の水深が浅く誰でも簡単に渡れる。その浅い川底は自然石が所々に置かれ、そこはいろいろな水中生物のたまり場になっているはずで、まさに人や動植物の共生が図られていると言って良い。
近くには幼稚園があり、夏場にはこの水辺や中州で、幼児たちが歓声を上げて自然に親しんでいる光景も容易に想像される。
自然の地形や植生を最大限生かし、人工的なものを限りなく排除しながら、大仰にならずに自然体で整備されたこの「水辺の楽校」を河川の良好な景観保全の1つのモデルとして評価したい。
(小草伸春)
高野の家

望洋たる日本海を見はるかす浜田市長浜町の高台、高野の住宅地の入口に建つ木造家屋。ここから眺める漁火は絶景だそうだ。外壁は下見板張り、屋根は片流れ、腰高のデッキが庭にせり出していて、一見、山荘風である。建築してから14年を経過し、板壁は塗り直されているというが、薄い茶褐色の色調は、周囲の木々とよく調和している。広い庭には、建築当初植栽された木々が、自然のままの姿形で成長繁茂し、隣接する雑木林と同化しており、結果として、広い自然の中にこの家は包みこまれている感じがする。おそらく住む人に落ち着きと安らぎを与えてくれているだろう。新築の家とちがって、年を経るにしたがって家屋も庭木も周囲に馴染み、一種の風格ができあがっている。
(藤岡大拙)
宍道湖景観を守るための嫁が島保全管理活動
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宍道湖の湖岸から嫁が島を通して見る夕日、朝霧の中に浮かぶしじみ船と嫁が島、これらは、全国に知られる島根県を代表する景観のひとつである。松江市に住まう人、松江市を訪れる人は皆、いつまでもこの情景は変わらないでいて欲しいと願うであろう。このような宍道湖の景観を守ることについて、その必要性を感じ「守りたい」という想いがあっても、そのための行動を実際にとり、継続していくことは非常に難しい。そうした中で、「NPO法人まちづくりネットワーク島根」は、斐伊川の上下流域にも影響を与えるであろう宍道湖周辺の住み良い地域づくりを理念に、嫁が島の保全管理活動を実際に行い、そして継続している。
この保全活動とは、年に数回ボランティアを募り嫁が島の草刈りなどを行うものであるが、野焼きが禁止されている現在において、数トンもの刈った草を船で陸に運び処理するなど、この活動には想像以上の苦労が伴っている。そのような中にあって、毎回数十名の方々がボランティアで参加されていることに対しては、本当に頭の下がる想いである。
このような活動がこれからも多くの人に認知され受け継がれていくことを願い、意欲的な活動を行う「まちネット」の方々は勿論であるが、彼らの呼びかけに応じて活動に参加された人達全てに感謝の気持ちを込めて是非この賞を贈りたい。
(淺田純作)
花とヨシに託す宍道湖岸の景観づくり
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自然を愛していると自負している我々の足下で、環境の荒廃が進み、地球規模で起きている台風や地震などさまざまな現象に誰もが危機感を抱いている。しかし、不安や社会を嘆いているだけでは問題は解決しない。このような中、それを自分自身の生き方の問題として捉え行動を起こしているグループ「斐伊川流域環境ネットワーク(斐伊川くらぶ)」がある。その活動の数々は、目に見える形で着実に答えが出され、現在も進行している。
「宍道湖ヨシ再生プロジェクト」「ドングリの森づくり」に続く今回の「花とヨシに託す宍道湖岸の景観づくり」は斐伊川流域の景観や環境を考えた地域づくり「菜の花プロジェクト」の一環として、松江フォーゲルパーク前の浜を活用し、ヨシの栽培、菜の花を播種、桜の植栽などを行うものである。活動の土地はけっして広いとは言えないものの、高齢者と子供達、地域住民と児童のふれあいを通じてあるべき地域社会の姿が見て取れる。
斐伊川の上・下流と宍道湖を深く見つめる彼らの行動には、何にもまして代え難いほど愛が感じられる。彼らの行動力とシステムの連動の良さ、そして地域を愛する心根に是非賞を贈りたい。
(平本映子)
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