第7回しまね景観受賞作品(平成11年度)
物件一覧
大賞
事業主体/島根県、松江市、建設省中国地方建設局出雲工事事務所
優秀賞 土木施設部門 事業主体/島根県
工作物・その他部門 JR木次線トロッコ列車「奥出雲おろち号」【JR木次線木次駅〜備後落合駅間】
事業主体/西日本旅客鉄道(株)米子支社、木次線強化促進協議会
奨励賞 まち・みどり部門 事業主体/忌部まちづくり推進委員会
事業主体/松江市
土木施設部門 事業主体/島根県
一般建築物部門 道の駅「シルクウェイにちはら・リバーサイド鮎のよりみち」【津和野町】
事業主体/日原町、島根県
事業主体/中国郵政局
個人住宅部門 事業主体/橋本広幸
事業主体/村上修二
特別賞 工作物・その他部門 高津川の水制工作物「聖牛」(ひじりうし・せいぎゅう)【益田市】
事業主体/建設省中国地方建設局浜田工事事務所
※事業主体は受賞時の名称
物件紹介
島根県立美術館・岸公園・宍道湖袖師親水型湖岸堤
→地図はこちら(「マップonしまね〜島根県統合型GIS〜」の「しまね景観賞表彰箇所マップ」にリンクしています。)
<県民に開かれた美術館>、<水と調和する美術館>などを基本テーマとする県立美術館は、その造形には内部空間にいたるまで常に宍道湖が意識されており、対岸から見る景観も、背後の山並みの緑の中に、湖面に沿って連続した緩やかな曲線のチタン鋼の屋根が映え、天候により宍道湖と共に表情をかえる様は正に絶景である。そして、建設省によって既存のコンクリート護岸を取り払い同時整備をされた親水型湖岸堤は、人々が散策する水際遊歩道や市民の憩うテラスや緩やかな勾配の芝生護岸となり、さらにまた、これらと連続して松江市によって同時整備をされた岸公園により、この袖師ヶ浦は、美術館を中心に三つの事業が見事に有機的に統一された水都松江に相応しい高次元の新しい景観に生まれ変わった。
この建築と土木部門が一体化し、三つの行政機関が協調した事業展開は、審査委員会でも高く評価され、満票で今年度の大賞に決定された。
(矢田 清治)
小田川県単独砂防環境整備事業
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近年の河川環境の整備では、河川のもつ多機能性に配慮した整備が検討されるようになってきたが、単に従来の河川整備で用いられてきたコンクリートが自然石に置き換わっただけなら、その意味はあまり感じられない。ともすれば、巨石をむやみに使用することにより河川のみが目立つような事例が多い中で、この整備事業は「県民の森」というレクリエーション地の場所性をうまく活かした整備がなされ、造りすぎたという感じを受けない。護岸と天端に連続性がある、護岸の高さと傾斜のバランスがいい、河床に変化をつけているなどの工夫があり、周辺の風景の中に収まっていて違和感がない。とくに、一般にない魚道の形態と配置がおもしろく、そこに子供達のプールとしての機能をもたせている。水遊びの歓声が聞こえるようだ。
(藤居 良夫)
JR木次線トロッコ列車「奥出雲おろち号」
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出雲横田駅の近くの踏切で待った。紅葉の季節がほぼ終わりかけ、明日には運転がお終いになるという日で、雪も降り出しそうであった。
やがてゆっくりと奧出雲おろち号が現れた。白とブルーに塗り分けられた車体は後ろの山の緑と紅葉によく映えて見えた。映えると言っても、自己主張をする映え方ではない。適度のスピードで通り過ぎるから、適度に刺激的である。このデザインが賞の対象だけれど、それよりこの企画自体が景観賞に値する。すなわち、景観を鑑賞する仕掛けがいい。
このトロッコ列車の存在によって鉄道沿線の景観は常に意識されるだろう。旅客たちは奧出雲の自然を楽しむと同時に奧出雲の歴史と伝統を思う。他に同様のアイディアはあるにせよ、いつまでも続けて欲しいと思う。
寒いから、トロッコ列車に乗っている人はいないのじゃないか、といささか心配であったけれど、やってきた奧出雲おろち号には紅葉を楽しむ少なからぬ客があった。
(布野 修司)
忌部花街道
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「継続は力なり」という言葉があるが、地道な努力を最早10年近くも続けてこられた事実にまず敬意を表したい。 そもそもは下忌部地区を中心にした菊作りの同好会が中心となって花壇を作っていたところ、くにびき国体の際の花づくりプロジェクトを経て、「忌部のまちづくり活動」に組み込まれ、現在は花壇が22ヶ所にまで増えたという。
中心メンバーは、主として寿会(平均年齢73歳)と自治会の委員、そして個人など150名位。種から自分達で作り、年間を通して植付け、水やり、草取り、植え替え、そして片付けと、一口に花作りといっても大変な作業に違いない。
願わくはこの活動がメンバーだけに任されるのではなく、街道沿いの住民たち、特に若者が、仲間に加わるようになって欲しいものだ。そうすれば本当の意味のまちづくり、景観づくりへと発展するだろう。
受賞を機会に一つ提案したい。活動はここまで知られたのだから、看板をはずしても良いのでは。残すならば、もう少し色彩を含めたデザイン上の工夫をお願いしたい。
(田村 美幸)
松江市立第一中学校周辺の並木及び石積み整備
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松江市外中原町の愛宕山に抱かれた月照寺は歴代の松江松平藩主の菩提寺として、自然環境に恵まれた閑静な佇まいを見せている。その前に位置する第一中学校敷地は、旧島根県立師範学校の跡地で、敷地の周辺には島石の石垣が今まで残されてきていた。この島石は、中海に浮かぶ八束町(大根島)の特産で玄武岩質の硬く丈夫な性質を利用して松江の建築の基礎石等にも珍重されてきたものであるが、今では貴重な材料となっている。
このところ、その石垣の傷みが激しかったこともあり、今回の街路整備にあわせ修復し、既存の島石を出来る限り利用し組み直して、解体前の形状に近づける努力がなされた。
月照寺やその隣に新築移転された東林寺の道路面に面した竹垣や植栽等の雰囲気に合わせ、中学校の校庭外周の石垣上にぐるりと植栽を施し、フェンスや自転車置き場、グラウンドなどを目隠しして周囲の閑静な環境と一体感を持たせることに成功し、落ち着いた街路として甦った。 近年、松江市では「緑の大通り事業」を推進し、市内各所の街路整備を積極的に推進してきているが、今後は拠点毎の整備だけではなく、その拠点から別の拠点へと多くの人を誘う「導線」としての、さらに拡大した街路整備をと願うものである。
(小草 伸春)
石見やかみ地区県営ふるさと水と土ふれあい事業
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のびやかな田園風景が広がる於保知盆地の中ほど、石見町役場の隣に位置する水路である。比較的小規模なものであるが、規模に見合った「自然らしさ」や「親しみやすさ」の感じられる整備がなされている。
自然な曲折を見せる流れに沿って形作られている石積みは、大小さまざまな自然石を組み合わせたもの。自然石を使用しても、コンクリートに埋め込まれた格好のものでは窮屈そうな感じがして、その趣がもうひとつ生かされていないことがあるが、ここではその点、石それぞれの面白みが伝わってくる。八橋や散策路も整備され、周辺の緑地や背景の山々とも抵抗なく共存している風情であり、ほっと一息つけそうな水辺の景観が演出されている。多くの町民が出入りするエリアにふさわしい親水空間といえよう。(少し残念に思ったのは、2、3本、長く突き出した排水管が目についたこと。また、一部、擬木の使用も見られたが、やはり違和感のあるものである。)
今後、時に応じた手入れとともに、緩やかな自然の作用が、この流れのある景色のさりげない趣を一層深めてくれるものと思う。
(八田 典子)
道の駅「シルクウェイにちはら・リバーサイド鮎のよりみち」
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「シルクウェイにちはら」は緑深い中国山地の山々に囲まれ、県内屈指の清流である高津川に面してつくられた、国道9号沿いの道の駅である。
建物は高津川の流れに沿って南北に細長く配置され、建物を結ぶ正面の回廊も、その自然の流れと同様に緩やかな曲線を描いている。この回廊は集成構造材や板材を見えるように使い、木の温もりを感じるとともに、建物の瓦葺きの屋根、板張りの外壁など、全体が暖かく柔らかい印象を受ける。色彩についても、屋根は3色程度の違う瓦を混ぜ合わせて柔らかな色合いを醸し出しながら、様々な表情を見せるよう工夫されていて近隣にある赤瓦の集落や豊かな自然と調和している。
建物の東側が高津川に面していて、豊かで清らかな水に触れられるよう親水護岸に整備されている。イベントができる広場や憩いの場がつくられ、夏は子供たちが水遊びをする姿が思い浮かべられる。自然石をうまく使い、建物と高津川を近づけた一体的整備は高く評価できる。
今回の施設整備と同様に、今後の新たな施設整備にも配慮され、この地域が日原町の顔となるような新しい景観が生まれ、地域住民が参加できる生き生きとした地域景観づくりが進んでいくことを期待したい。
(飯塚 紀)
津和野郵便局
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何気なく足を踏み入れた通りの風情、高台から目にした町全体の雰囲気......。観光ポイントのみならず、そんな、いわば普段着の津和野の姿に魅力を感じる人が少なくない。この町独自の歴史的な陰影が、そのような素顔にこそ色濃く漂い、人の心を引き付けるのだろうか。
津和野郵便局は、JR津和野駅と観光客で賑わう一画との中間地帯、まさに上記のような、生活感と昔ながらの趣が同居する町並みの中にあって、個性の発露と周辺環境への配慮の両立を目指したものといえる。
大きな勾配屋根を頂いた外観は、幾何学的でシャープな印象である。外壁には杉板が張られており、木目が見える程度の薄さでグレーの塗装が施されている。シックな色使いとも相俟って、全体的にはさっぱりとした現代的な表情をもつ建物であるが、同時に、木の温かみや柔らかさも十分に伝える「和風」の趣も備えたものとなっている。側道部分の水路を整備して菖蒲を植える、外部の床板にはJR山口線の枕木を再利用するなど、地域性を取り込んだ試みもなされている。また、昔ながらの円筒形のポストも、この街角にふさわしいアクセントとなっていた。
(八田 典子)
橋本家住宅
一般的に、市街地の古くからある住宅地では、中小規模の住宅がさほど広くはない道路沿いに密集して並んでいる様や、そこでは道路と住宅敷地の境界は無機質なブロック塀かフェンスなどで遮断され、恐ろしく無愛想な光景が作り出されていることは珍しくない。
この住宅は、松江市街地北部に位置する、国道沿いのやはり古くからある住宅密集地の一隅に建っているが、ここでは道路に面したゆったりとしたアプローチ兼用の屋根のない駐車場が確保され、やや窮屈そうな全面道路に広がりを持たせている。セットバックされた土壁風の塀の高さも適当で、その内側にある樹木も道路に潤いをもたらしてくれている。門や母屋は切妻屋根のスッキリとしたデザインとなっており、塀やその足下の島石の植え込みを含めて、全体に落ち着いた雰囲気をつくりだし周囲の景観形成に大きく寄与している。願わくば、駐車場にもう一工夫(例えば駐車にじゃまにならない程度の植樹等)あればさらに環境形成に貢献することになるであろう。
(小草 伸春)
アトリエHEARTH
この住宅は交通量の多い県道・松江木次線に面していて、運転者や道行く人々の目に付きやすい位置にあると言える。建築家の事務所兼住居ということで、見られることを多分に意識した住宅であり、田園生活を楽しんでいる住人のライフスタイルがよく現れている。目立つと言っても決して景観的に自己主張はしておらず、自然素材にこだわって、むしろ周りの風景に溶け込もうとしているように見える。
家の裏側はうっそうとした欅などの樹々におおわれた川となっており、夏にはベランダで旅人と一緒にホタル観をするという。そんな恵まれた周辺環境も相まってこの地域に良い雰囲気を作りだしている。一年に5回も展示会やリサイタルを開催して地元のコミュニティの場となっているのも、塀を作らずオープンな佇まいで親しみやすい建物となっているからだろう。ひとつ注文をつければ、畑越しに見える壁面の空調外機に、景観面からの配慮が欲しいと思った。
(田村 美幸)
高津川の水制工作物「聖牛」(ひじりうし・せいぎゅう)
近年、根固め工・護岸の強度が向上したため、水制工はほとんど用いられなくなってきたが、環境への配慮から多自然型の河川整備が行われるようになって、伝統的な治水工法が見直されている。その中で、この聖牛は伝統的な透過性の水制工である。ただ、このような伝統的治水工法を部分的に用いても、周辺の風景全体を考慮した整備でないと多自然型の川づくりとはならない。
しかし、従来の護岸整備により単純化された河道から、複雑でより自然に近い河道に一歩でも近づき、単調な河川景観に変化をもたせている。従来のような護岸を必要最小限にとどめ、このような水制工によって積極的にその機能を高めれば、河川は生物にとっての良好な生息空間になり、ひいては環境及び河川景観の改善が可能となろう。今後さらに、周辺全体の風景を利用した整備につながっていくことを期待したい。
(藤居 良夫)
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