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補助線とベクトルと

 数学は得手ではないが、これは使えると秘かに思い、時として使用する数学用語がいくつかある。ベクトル、方程式、補助線、楕円の二重焦点、座標軸などだ。

 補助線の定義は「幾何の問題で、解答を導き出すために図形に補う直線または円(広辞苑)」である。

 図形問題であれやこれやと解答を考え、ああでもない、こうでもないと引いては消し、消しては引き、ある瞬間、突然その補助線によって解答に至る。かれこれ数時間に及び、夜も更けた頃の疲れと眠気の中での心地よい解決。そしていい眠りにつく。そんな経験があった。同じ経験をお持ちの方もあろうと思う。

 ここではそれを、教育一般論の説明にあてはめて日頃の考えを述べてみたい。

 

 教育は、「あることを教え、授けると同時に、そのあることについて、受け手側が自らの力で成長を育むこと」が基本をなす。だから教・育である。この教育における力の貸し様が、まさに補助線の役割であると思う。

 試行錯誤のプロセスを大事にしながら、ちょっとヒントを出し、サポートしてやるということだ。それまでのモヤモヤがサァーッと晴れるように一挙に解決を見る。そして、そのプロセスから結果に至った学習は、すぐに解決を見た場合よりもずっと強く記憶に残り、またその試行錯誤そのものが、次の課題に対するアプローチの方法として学習されるのだ。

 行政の中ではよく修羅場経験が人を育てるという。人生の若い時の挫折体験が精神の深みの形成に寄与するという。教科学習にとどまらず、人格形成期の学習とはまさにこれに似たものである。

 

 次。「ベクトル」は力の大きさを長さで表し、その方向を矢印で表現する。二つのベクトルの向きが同一方向にあるほどその合力は長く大きくなり、反対方向であれば相殺しあう。教育は授ける側と受け手側があって成立し、授ける側、受け手側の内部での人間関係も実効があがるかどうかに影響する。すなわちそれぞれのベクトルが同じ向きに力を合わせることで合力は大きくなり、大きな力になるということだ。このベクトルの概念を組織運営、学校経営は倣うべきであると思う。

 

 この二つは、あるいは、既に前々から教育界で言われていることかも知れない。そうであればお許し願いたいし、その場合でも再認識して欲しい。そして実行して欲しい。

 最後に新たなフレーズを記す。

 「知的な会話の中で子ども達を育てよう。教師を育てよう。」

 

 


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