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教育長メッセージ:学校の先生方へ(その1)

 人口減少問題が日本全体の課題となる中、島根県は、豊かな自然、古き良き文化・歴史、特色ある地域資源、温かい地域社会、そして勤勉な県民性など、島根ならではの強みを生かして、活力ある地域づくりに取り組んでいます。
魅力ある就業の機会を創出し、子育てに適した環境を生かして、若い世代の人たちの結婚・出産・子育ての希望が叶えられる社会をつくり、そして島根に定着、回帰・流入する人の流れを拡大すること。この目標の達成に向け、県民を挙げた取り組みを進めることによって、島根の将来を切り開こうとしています。
その中で、地域の将来を担う人材の育成が島根県政の重要な政策課題となっており、教育に寄せる県民の期待はとても大きなものとなってきています。

 

島根の子どもたちにどうやって本物の「生きる力」を身に付けてもらうのか。そして、学校の教育活動を地域社会の活力へとつなげていくためにはどうすればよいのか。今や教育には、子どもの成長という元来の目的に加え、地域社会への貢献という役割も求められるようになっています。
このような、教育に求められる大きく二つの役割を積極的に担っていこうという考え方に立って、島根県教育委員会は、「教育の魅力化」という取り組みを進めています。

 

 このメッセージは、学校の先生方に「教育の魅力化」の考え方をあらためて確認していただくことによって、県・市町村の教育委員会と学校現場とが認識を共有しながら、この取り組みを力強く推進していきたいと願って作成したものです。

 

1.島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力

 

 一点目は、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力とは何か、という学力観について述べます。

 

 平成19年、学校教育法の改正によって、「学力の3要素」が初めて法律に位置づけられました。
1.基礎的・基本的な「知識・技能」
2.課題を解決するために必要な「思考力・判断力・表現力」
3.学びに向かう「意欲・態度」
これは、変化が激しく容易に予測できない未来の社会で生きていかなければならない子どもたちに、伝統的な学力観であった「知識・技能」の習得だけでなく、「思考力・判断力・表現力」や学びに向かう「意欲・態度」をバランスよく身に付けてもらう必要があるとの考えに基づき、新たな学力観として提起されたものです。
それから十年余が経過しましたが、いまだに「知識・技能」の習得を重視する狭い学力観に捕われているかのような感覚、そして、狭い学力観のもとであたかも競争の中に置かれているかのような「煽られ感」が、一部の教育現場に残されているように感じられるのはとても残念なことです。

 

 現在普及している学力テストは、「知識・技能」の定着状況とその応用力の一部を測定するものです。この測定の方法は、長年にわたって改良が重ねられ、熟成されて、皮肉にも一点刻みで受検者を序列化することができるとまで言われています。
一方、今後一層重視されることになる「思考力・判断力・表現力」や学びに向かう「意欲・態度」については、現時点でその測定方法が確立されているとは言えません。この測定方法の熟度の差が、一部の教育現場がいまだに狭い学力観から抜け出しにくい状況を作り出しているのかもしれません。
しかしながら、国は、教育関係者の英知を結集し、新たな学力観に基づいて資質・能力を正しく評価する測定方法の具体化に向けて精力的に作業を進めています。そうした教育改革の大きな動きの中で、新たな測定方法を取り入れて設計される「新しい大学入試」が2020年から始まることになります。


大きなタンカーの進路を変えようとすれば、大変なエネルギーを要するわけですが、今こそ覚悟を持って舵を切らなければならないのではないかと感じます。
もし変革のタイミングを逃してしまえば、失われるものは何でしょうか。
「失われるのは、島根の子どもたちの未来であり、子どもたちが担う島根の未来かもしれない。」
県・市町村の教育委員会や学校、そして教育に携わる全ての関係者は、その責任を自覚し、正しい学力観を共有したうえで、「思考力・判断力・表現力」や学びに向かう「意欲・態度」を育成するための教育の方法論の具体化に向けて、果敢に挑戦していく必要があります。

 

 今述べたように、正しい学力観に立脚して島根の子どもたちに本物の「生きる力」を育もうという考え方が、「教育の魅力化」のまさに核心を成す教育理念です。
そして、この教育理念を広く県民の皆様に伝えていくため、島根県教育委員会は、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力を、「主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、定まった答のない課題にも粘り強く向かっていく力」と表現しています。

 

 2.島根らしい教育の魅力

 

 二点目は、島根らしい教育の魅力とは何か、について述べます。

 

 それは、例えば、障がいがあったり困難を抱えていたりすることも含めて、多様な個性のある児童生徒一人ひとりと丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで大切に育てることではないでしょうか。
また、子どもたち一人ひとりの人生の進路選択に丁寧に立ち会い、それぞれの自己実現を精一杯支援していくことではないでしょうか。
そして、そのような子どもを育む営みを学校だけで抱え込んでしまうのではなく、地域社会全体で理念を共有し、学校・家庭・地域の連携の中で実現することが、島根ならではの教育の魅力になるのではないかと考えます。

 

 学校は、学校だけに閉じた自己完結的な存在であってはならないと思います。地域社会に開かれ、地域社会との連携・協働の中で子どもの力を伸ばしていこうとする存在へと進化していくことが求められます。
教室の中だけでなく、学校内外の多様な教育活動を通して、地域のあらゆる教育資源を活用しながら、子どもを育むための教育の方法論を高めていく必要があります。

 

 そのキーワードは、
「より良い学校教育を通して、より良い地域社会を創る」
「より良い地域社会が、より良い学校教育を創る」
「鶏と卵」の関係のように、学校教育と地域社会との間の好循環を生み出そうとする理念を共有することが、島根らしい教育の魅力を高めることにつながるのだと思います。

 

(県ホームページのシステム上、「その1」と「その2」に分けて掲載しています。)

 


お問い合わせ先

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〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎)
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