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教育長メッセージ:H29島根県PTA連合会研修大会教育長メッセージ

 県内各地域からPTA役員の皆様方が多数お集まりになり、島根県PTA連合会研修大会が盛大に開催されますことを、お祝い申し上げます。

 

 学校の教育活動は、言うまでもなく保護者の皆様のご理解とご協力なくしては成り立ちません。本日ご参加の皆様におかれましては、それぞれのPTA活動を通じて、小学校・中学校を力強く支えていただいていることに対しまして、この場をお借りし、島根県教育委員会から厚く御礼申し上げます。

 

 さて、私は、微力ながら教育長の職責を果たしていくうえで肝に銘じていることがあります。

 

 一点目は、そもそも教育委員会は教育現場を支えるために存在している、という教育行政の原点を大切にすることです。

 

 二点目は、戦後採用された「レイマンコントロール」の仕組みを大切にすることです。
「レイマン」すなわち「市民感覚を持った良識ある大人」としての教育委員が、話し合いによって教育の大きな方向性を示し、学校や教育行政の専門家集団(すなわち教職員)がそれを誠実に具現化しようと努める。この仕組みは、歴史の中で、大きな代償を払って手に入れた「人間の知恵と経験の結晶」のように感じられます。

 

 三点目は、教育をめぐる課題に対して、一つ一つ誠実に取り組んでいくことです。
私は、この十年、県の教育委員会に出たり入ったりしながら教育行政に携わり、島根の教育の良さも課題も見てきました。この経験が、教育長としての私の仕事の糧となっているように思います。島根の教育には様々な課題があります。教育委員会と学校は、それをしっかり受けとめ、改善に向けて誠実に努力を重ねていくことが大切であると思います。

 

 一方、いたずらに危機感をあおるような風潮を感じることがありますが、そうした風潮は、教育の現場にとっては、かえって萎縮したり挑戦する意欲を萎えさせたりして、「悪循環」を生む要因になりかねないのではないかと危惧しています。
教育の本質は、多様な個性のある児童生徒一人一人と丁寧に向き合い、一人一人の力を最大限引き出し、そして、一人一人の自己実現を精一杯支援することに尽きると思います。
それぞれの学校には、危機感をあおるような風潮に流されることなく、教育の本質を学校経営の基本に据えて、自信を持ってぶれることなく、日々の教育活動を実践してもらいたいと願っています。

 

 他方、私にとって、この十年の経験に照らして気がかりなこともあります。
最も根の深い問題ではないかと私が感じているのは、県教育委員会、市町村教育委員会、学校の間で、「学力観」についての基本認識が共有されていないのではないかという懸念です。

 

 堅苦しい話になって恐縮ですが、今から十年前、学校教育法が改正され、「学力」の重要な要素として、
1.基礎的・基本的な知識・技能
2.知識・技能を活用して課題を解決するために必要な、思考力・判断力・表現力
3.主体的に学習に向かう意欲・態度
という「学力の3要素」が、はじめて法律に位置づけられました。

 

 これは、変化が激しく容易に予測できない未来の社会で生きていかなければならない子どもたちに、「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に向かう意欲・態度」をバランスよく身に付けてもらう必要がある、との考えに基づき、新たな学力観として提起されたものです。
それから十年が経過しましたが、いまだに知識・技能の習得のみに重きを置いた、狭い学力観に捕われているかのような感覚、そして狭い学力観のもとであたかも競争の中に置かれているかのような「あおられ感」が、一部の教育現場に染み付いているように感じられるのは残念なことです。
現在普及している学力テストは、「知識・技能の定着とその応用力の一部」を測定するものですが、この測定の方法論は、長年にわたって改良が重ねられ、熟成されて、皮肉にも一点刻みで受験者を序列化することができると言われています。
一方、今後一層重視されることになる「思考力・判断力・表現力」等については、現時点でその測定方法が十分確立されているとは言えません。
この測定方法の熟度の差が、一部の教育現場がいまだに狭い学力観から抜け出しにくい状況を作り出しているのかもしれません。

 しかしながら、国は、新たな学力観に基づき、「学力の3要素」を正しく評価する測定方法の具体化に向け、教育関係者の英知を結集して作業を進めています。
そうした教育改革の大きな動きの中で、現在の中学生・小学生は、新たな測定方法を取り入れて制度設計される「新しい大学入試」を受けることになります。

 

 大きなタンカーの進路を変えようとすれば、大変な時間とエネルギーを要するわけですが、今こそ覚悟を持って舵を切らなければならないのではないかと感じます。
もし変革のタイミングを逃してしまえば、失われるものは何でしょうか。
「失われるのは、島根の子どもたちの未来であり、子どもたちが担う島根の未来かもしれない。」
教育に携わる関係者は、その責任を自覚し、正しい学力観を共有したうえで、「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に向かう意欲・態度」を育成するための教育の方法論の具体化に向けて、果敢に挑戦していく必要があります。
国も、新たな学習指導要領を通じて、全国の学校に対し、変革を強く後押ししようとしています。

 

 これから学校は大きく変わっていきます。
学校は、学校だけに閉じた自己完結的な存在ではなくなり、地域社会に開かれ、地域社会との連携・協働の中で子どもの力を伸ばしていこうとする存在へと、進化していくことが求められます。
教室の中だけでなく学校内外の多様な教育活動を通して、地域のあらゆる教育資源を活用しながら、子どもを育むための教育の方法論を高めていく必要があります。

 

 そのキーワードは、「より良い学校教育を通して、より良い社会を創る」という理念です。

 

 長々と「学力観」をめぐる話をさせていただきました。これは島根の子どもたちの未来に関わる話です。そして、子どもたちが担う島根の未来に関わる話です。
それぞれのPTAにおかれましても、このような教育をめぐる大きな動きを意識しながら、学校とPTAとの連携・協働の関係をより一層発展させていただきたいと切に願うものであります。

 

 最後になりますが、島根県PTA連合会様の益々のご発展と、ご参加の皆様方のご健勝・ご活躍を祈念しまして、ご挨拶といたします。


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