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教育長講話~教育施策説明会(小・中学校校長対象)

1.はじめに

 現在、教育を取り巻く環境は大変厳しくなっている。一方で、教育に対する県民の関心は高く、学校への意見・要望も多様化している。現場のトップである校長先生方には、ご苦労の連続ではないかと思っている。今後は、皆さんと一緒に島根の将来を担う子ども達を育てていきたい。

 私は、これまで政策企画局で、県の総合発展計画の策定、県全体の施策の調整、他県との調整等の仕事を行ってきた。

 こうした経験も踏まえ、本日の前半では、県の置かれた状況や県政の取組(総合発展計画)について、後半では教育について考えていることを話させていただく。

 

2.「活力ある島根」の実現に向けて

 まず、島根の人口。だんだん減って、最近は年間5〜6千人の減少。前回の国勢調査(H17)では74万人、最近72万人を切って、今年4月には71万6千人に。90万人を超えていた昭和30年と比べると20万人の減少。

 また、問題は少子高齢化の進行。老年人口と年少人口の割合をみると、老年人口の割合が27%で全国一高齢化が進んでいる。反対に、年少人口は15%を切る状況。

 人口減少の要因を社会動態と人口動態に分けて見てみる。社会動態は、転出と転入の差であるが、社会減という状況が続いている。昭和30〜40年の高度経済成長期、昭和60〜平成初めのバブル期、そして最近と、島根の人口が都市部へ吸収される3回の波がある。この社会減(年約3千人)は、進学・就職で県外に流出する若者が、島根にU・Iターンで居住する若者よりも多いことの表れであり、島根の大きな課題である。自然動態は、出生と死亡の差。平成3年から自然減に転じた。高齢化で亡くなる方が増え、生まれる子が少なくなった状況。日本全体が、人口減少社会に入っており、こうした傾向は避けられないが、島根は特に顕著。これでは島根の社会全体の活力が失われる。年金・保険や産業、消費、教育に影響が出てくる。特に子どもの数の減少により、教育に与える影響は大きい。

 次に、都道県別の出生率と人口増減率の関係を見てみる。島根県は、ここ50年間の人口増減率は、20%の減少だが、合計特殊出生率は、1.53で全国4番目に高い。反対に、人口が増えている大都会は出生率が低い。子どもを産み、育てにくい環境の表れ。今の日本は、そうした都市部に人口が集中し、日本全体の少子高齢化が更に進むという、いびつな状態といえる。地方の人口が増えるような環境をつくっていくことが、日本全体のバランスのとれた発展のために必要ではないか。ぜひ、子ども達にも島根県のような地方の果たす役割を伝えてほしい。

 次に、経済。一人あたりの県民所得は、全国と比べると2割弱少ない。経済活動の差であり、全国と比べると劣っている。2.5兆円の総生産は我が国全体の0.5%のシェア。業種別で見ると、政府サービス生産者(公的部門)の割合が全国と比べてかなり高い。これは決して島根県の公務員の給料が高いという訳ではなく、経済全体のパイが小さいことの表れ。経済活動を活発にさせないと若者定着に結びつかない。産業の振興は県政の大きな課題。

 次に、島根の財政。一般会計の予算規模は平成21年は5,270億円、厳しい財政状況からピーク時より1,500億円少ない。平成21年で1兆円余りの地方債の残高。過去の経済対策や地方交付税の不足を補てんするための対策等に伴う地方債の発行の結果による。近年は、財政改革による予算の縮減に伴い、借入額も大幅に減少しているが、借入期間が長い(20〜30年)ため、すぐには残高が減らず、当面1兆円程度で推移。一方、県の貯金である基金の残高は300億円、ピーク時は1,500億円。国の地方財政対策の変遷もあり、1兆円の借金と比べるとはるかに小さくなっている。こうした厳しい財政状況を改善するため、平成19年10月に財政健全化基本方針を策定し、改革を進めている。毎年250億円の財源不足。この解消に向けて、平成23年までの4年間を集中改革期間として取り組む。このうち、給与カットによる収支改善額が年間60億円、皆さんにも痛みを分かち合っていただいている。国への依存の大きい県財政の構造であり、今後不透明な状況もあるが、現在のところ計画どおり改革は進んでいる。いずれにしても、若い世代に大きな赤字を抱えたままの財政を引き継がないようにしたい。

 

 こういう状況を踏まえ、県が取り組んでいく施策を掲げた島根総合発展計画を策定(平成20年3月)。

 島根の将来像に向けて、基本目標1は「活力あるしまね」であり、産業経済の振興。第2は「安心して暮らせるしまね」であり、医療や福祉等の充実。第3は「心豊かなしまね」であり、人材の育成等、教育関係の施策が中心である。3つの目標とも重要であり、3本をバランスよく一体になって取り組むことにより、島根の発展が目指せる。

 以降は、それぞれの目標別の具体的な施策を掲げている。少し取り上げてみる。まず、商工業関係。製造品の出荷額は1兆円程度。情報通信機、鉄鋼、電子部品の3つで50%を占めている。ものづくりやIT産業の振興には特に力を入れて取り組んでいる。

 農林水産業は、島根にとって大切な産業。食の確保や国土保全等国全体にとっても重要であり、教育でも大切な分野であることを伝えてほしい。

 観光の振興。島根の産業の中で、観光の占める割合は大きい。2,870万人の延入り込み客数がある。最近は、島根を舞台とした映画、テレビの放映も多い。島根を全国に売り出す好機。子ども達にも、ふるさと教育等で島根の良さを再認識させてほしい。

 雇用問題。高校生の県内就職率は、今年も7割程度となったが、地域によってバラつきがある。高校生の県内就職については、産業振興による雇用の場の確保にあわせて、先生方にも適切な進路指導をお願いしたい。

 次は、産業基盤。高速道路の整備では、島根県は遅れている。山陰道は出雲まで整備されたが、東西の移動が更にスムーズになるように早期の整備を国に要望していく。尾道線は数年内に三次まで開通予定。航空路線は、石見空港の大阪線が厳しい状況。路線の維持に向けて取り組んでいく。

 医師不足の問題。特に、石見・隠岐地域、中山間地域は厳しい状況。即戦力となる医師の確保とともに、医師の養成が必要。小中学校段階から、こうした人材を育てる教育、島根で医者をやろうという者が育つ教育をお願いしたい。

 基本目標3は、「心豊かなしまね」。教育の充実による人材の育成、文化の振興等である。

 「総合発展計画」の最後には、県内の7圏域の特徴に応じた発展の方向性を示している。それぞれの地域の特色・資源を活かした取組を期待。

 

 3.教育を取り巻く動向

 まず、国の動き。学習指導要領が改訂され、現在、教科書の改訂作業中。平成23年に小学校、平成24年に中学校で厚くなった新しい教科書が使用される。今回の学習指導要領の改訂は、「生きる力」の育成という基本的な考えは変えずに、学習内容の充実を図っていこうとするものである。現場の先生方は大変だと思うが、こうした教育内容が、きちんと子ども達に伝わるように、適切な対応をお願いしたい。

 その他、大きく4つくらいの社会環境の変化がある。一つ目は、少子高齢化(核家族化)、情報化、国際化、人々の価値観の変化、生活様式の変化が子どもたちの生き方そのものにも影響をもたらしている。二つ目は、家庭・地域の教育力の低下。学校への依存が拡大している。学校の責任を問う状況も多くなっている。三つ目は、島根県が抱える、人口減、医師不足、産業・経済・社会基盤整備の遅れ等の状況。四つ目は、最近の厳しい経済状況である。

 こうした島根県を取り巻く環境変化の中で、私達は教育に取り組まなければならない。

 

4.島根の教育に望む

 望むことは、この環境変化にしっかり対応でき、今後の島根県を担っていく人材の育成。そのために、次の5つを校長先生方にお願いしたい。

 一つ目は、子どもの力を伸ばしてほしい。

 様々な才能を子どもたちは持っている。スポーツ、文化、芸術各分野に。時には厳しく、時には温かさを持った指導で子どもを育てていただきたい。

 二つ目は、子どもを正しい方向へ導いてほしい。

 社会環境は不安定で方向性の定まらない状態にあるという感じもする。子どもの生き方にも様々の悪影響を及ぼしている。今、教育の役割は大きい。毅然として、子ども達を正しい方向に導いていただきたい。

 三つ目は、島根のすばらしい自然・歴史・文化に誇りをもつ子どもを育ててほしい。

 四つ目は、信頼される教職員づくり。

このようなことを教えることができる教員を育ててほしい。また、教員が力を発揮できる校内環境を整えてほしい。

 五つ目は、学校・家庭・地域の連携。

 家庭・地域を巻き込んだ取組となるような具体的な動きをしてほしい。

 教育の三種の神器と言われている学力(知)・人間性(徳)・身体(体)のバランスの取れた生徒の育成をあらためてお願いしたい。

 

5.具体的課題

1.学力向上

 単に知識の詰め込みではなく、学習の基礎・基本を習得した上で、それを活用して自分の頭で考える力、そういうことのできる子どもに育てていただきたい。

 そのために必要なことは、何よりも子どもたちが自ら知ることや学ぶことの楽しさを実感できること。それは、教員の指導力に負うところが非常に大きい。子どもがそういう気持ちになる、分かりやすい授業づくりをお願いしたい。また、自ら取り組む力をつけるためには、家庭での学習時間の確保も大切。宿題等を適切に出すことにより、そのための手助けをすることも必要。さらに、家庭での生活習慣も大事であり、保護者の理解を得て協力して取り組んでいただきたい。体力・気力の充実も関係してくる。体育教育や保健教育による、体力や精神力・忍耐力の育成や食育、生活習慣の改善等も大切にしたい。

 子どもの可能性や夢の実現を手助けするため、昨年から「夢実現チャレンジセミナー」を実施。医師や工科系の技術者等の養成という県の課題にもマッチしており、今後もこうした取組を行っていきたい。いずれにしても、小中学校段階から、子ども達に学ぶ意欲・学ぶ力をつけてほしい。

 

2.読書活動

 「人のいる図書館」「多くの本(蔵書)」をめざし、力を入れて取り組んでいる。学力や豊かな心を育てるためには、言語能力、読解力、想像力が大切。これを高めるために読書は大切。学校図書館については、全校で活用する取組を。各学校において、図書館を活用する授業、校内体制の整備に力を入れてほしい。今後も、市町村と連携して、学校図書館の機能や読書活動の充実に取り組んでいく。

 

3.ふるさと教育

 島根には、自然・歴史・文化とすばらしいものがある。古事記の編纂が712年になされてから、1300年。その中に、出雲を舞台にした神話が3分の1を占めている。全国に島根をPRする絶好の機会であると同時に、島根の子ども達が郷土の特色・良さを理解する好機。島根の歴史に関する副教材等も活用した教育を。先人の築いた貴重な遺産のすばらしさを子ども達にしっかり教えたいもの。島根に愛着を持つ子どもを一人でも多くつくってほしい。

 

4.道徳教育

 思いやりや忍耐力の低下など、社会全体の道徳心の低下が懸念される。本来、家庭や地域で育てるべきものだが、現実には学校への依存がますます高まっている。学校教育の中に、家庭・地域を巻き込んだ取組を。道徳の時間だけでなく、全教育活動で取り組むことが大切。これに関連して、最近は、切れる子やトラブルを起こす子どもが増えている、いわゆる「小1プロブレム」という問題もあるようだ。こうした状況を踏まえ、今年度から「ふるまい向上プロジェクト」に取り組むこととした。これまでも様々な事業で取り組まれてきているが、あらためて"ふるまい"(礼儀、作法、挨拶など)を認識しようという取組である。教育委員会だけでなく、他の部局とも連携して県全体で進めていきたい。

 

5.キャリア教育

 先ほど、高校生の就職の問題を申し上げた。ニートやフリーター、また早期の離職等、若い人の働き方が社会全体の問題となっている。子ども達に生きること、働くことの意義を学校教育でしっかり教えていく必要がある。高校生の就職率は、今年はよかったが、専門学校へ進路変更した生徒もかなりいる。一種のモラトリアムの状態。小中学校の段階から、働くこと、生きることを意識づけた教育指導が大切。若者の県内就職を増やすためには、受け皿となる雇用の場をつくる産業の振興を図ることが大事だが、教育面では、子ども達に県内の産業に目を向けるような指導も必要。社会科等で、県内産業についての認識も深めさせてほしい。

 

6.不登校

 以前、全国1位と騒がれたこともあり、いろいろな対策や取組により数値的には改善してきている。しかし、まだかなりの子ども達が問題を抱えている。未然防止、早期発見・対応とともに、居場所づくり等これまでの取組をさらに力を入れて続けていくが、よりきめ細かな対応が必要。難しい課題ではあるが、教職員には研修等で専門性を身につけるとともに、校長先生方には、校内の支援体制づくりや医療・福祉等外部機関との連携もお願いしたい。

 

7.特別支援教育

 国の調査では、通常学級の中にも、発達障害等特別支援の必要な子ども達が6%くらいいると言われている。これも難しい課題であるが、一人一人にきめ細かく対応するとともに、校内全体の相談体制を整えてほしい。また、県立特別支援学校のセンター機能を積極的に活用してほしい。特別支援教育については、対象の児童生徒の増加、担当教員等指導面の問題、卒後の就業等、特別支援学校、特別支援学級、通級教室を通して多くの課題がある。「今後の特別支援教育のあり方検討委員会」を立ち上げ、県としてどのように進めていけばよいかについて年度内に計画をまとめる予定。市町村とも連携して、力を入れてやっていきたい。

 

8.その他

 一つ目は、幼小中高の連携である。「小1プロブレム」、「中1ギャップ」、「学力の向上」等の課題を解決していくためには、幼稚園から高校まで校種間を円滑に接続していくことが大切。生活面も含め、教員や児童生徒の交流、情報交換等、お互いの連携を深めていきたい。

 二つ目は、社会の変化や動向への敏感・迅速な対応である。社会は、急速に変化し、保護者や世間のニーズも多様化している。従来の常識や慣行が通用しない難しい課題、安全に係る課題も多くなっている。社会や地域の動向に十分留意し、問題には学校全体で対応する校内体制の整備に努めていただきたい。

 三つ目は、教員の心の問題である。心に悩みを抱える教員が増加している。教育をめぐる環境の変化の影響もあると思う。教員には多忙感もあると聞いている。教員の悩みや問題を相談できる体制づくりが必要。戦線を離脱する教員を出来る限り少なくしてほしい。

 

6.最後に

 いろいろ課題を申し上げてきたが、明るい話もある。辞令交付式では、若々しい教員に出会えた。代表の挨拶に大変心強く頼もしく感じた。同時に、こうした志を持った若い教員がしっかりと教育を行うことのできる環境をつくっていかなければならないと肝に命じたところである。

 また、最近、島根の若者達が活躍している。横田高校のホッケー部、中学生を含め合唱部や吹奏楽部等各分野の活躍、観光甲子園に出た隠岐島前高校、ぜんざいの商品化に取り組んだ出雲商業高校、将棋の里見さん等々。彼等の活躍は、小中学校の基礎があったればこそ。今後とも、皆さんと一緒にこうした島根の将来を担う有為な若者を育てるために努力していきたい。

 


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