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秋山仁先生の講演

 

 今年度初めての試みとして理工系大学への進学を目指す高校生を対象としたセミナーを開催した。

 秋山先生のあふれかえる情熱と知識に強い刺激を受け、あらためて「知ることの楽しさ」を教えることの重要性を感じた。先生のバンダナは脳から知識がオーバー・フローするのを抑えるためにあるらしい。

 今回は、このレポートを総務課中澤さんにお願いした。

志をかかげよう(秋山仁先生の講演を聴いて)

 

 「運命の風」E.W.ウィルコックス

 同じ風を受けていながらある船は東に進み、またほかの船は西に進む。

 行くべき道を決めるのは疾風(はやて)ではなく帆のかけ方なのだ。

 海の風は運命の風のよう。

 生涯という海路を辿るとき、ゴールを決めるのは凪か嵐ではなくそれは魂の構えだ。

 数学者として有名な秋山仁先生の講演を聴いた。

 8月5日から3泊4日の日程で、県内の医療、理工系大学への進学を目指す高校生70名が集い、互いに切磋琢磨する中で学びを高めあうことを目的に「夢実現進学チャレンジセミナー」が開催された。そのセミナーの皮切りとして秋山先生が講演され、冒頭で紹介されたのが上の詩である。

 「魂の構え:原語では"thesetofthesoul"」というと何やら難しく聞こえるが、日本語には一文字で表せるいい言葉がある。「志」である。「風」はそれぞれの人間のおかれた環境や状況、「帆のかけ方」は正に先ほどの「魂の構え」のたとえであるが、人生を表現するのに理解しやすい、いいたとえだと思った。

 秋山先生の講演の前半では、このセミナーに集っている高校生へのメッセージが語られた。

 先ほどのウィルコックスの詩や「青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相をいうのだ。優れた創造力、逞(たくま)しき意志、炎(も)ゆる情熱、怯懦(きょうだ)を却(しりぞ)ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春というのだ。年を重ねただけでは人は老いない。理想を失うときに初めて老いが来る。」というサミュエル・ウルマンの詩「青春」、札幌農学校のクラーク博士の"Boysbeambitious"など生徒達に対して「志を大きく持て。」と鼓舞する話が続いた。

 札幌農学校の教え子に新渡戸稲造や内村鑑三らがいるという。志を持ち、それに向かって努力することが、それを本当に実現させる力になりうるということを生徒達も感じることができたのではないだろうか。

 そして、若者に贈る10ヶ条。

  1. デッカイ志を立て、自分流横綱を目指せ。
  2. 1週間に1冊は本を読め。
  3. 感動を求め、ドンドン外へ出かけよう。
  4. 外国語を次々とマスターしよう。
  5. スポーツに汗を流し、強靱な体力を身につけよう。
  6. 親から自立し、自分のことはすべて自分でせよ。
  7. 出会いを求め、旅に出よう。
  8. 真実を語れる友、尊敬する師をもとう。
  9. 無から何かを創り上げる創造的な日々を送ろう。
  10. 今日は何人の人を喜ばせることができるだろうかと考え、朝起きよう。

 ひとつひとつ心に残しておくべき言葉だと思うが、個人的には10番目の「今日は何人の人を喜ばせることができるだろうかと考え、朝起きよう。」という言葉が非常に印象に残った。これは若者だけに向けられた言葉ではない。我々一人ひとりがそういう気持ちで朝を迎えれば、今の妙にギスギスした世の中に突き出した角のかなりの部分は丸くなるのではないかと思う。

 前半の話が終わったとき、サプライズゲストとして、由美かおるさんが登場。高校生には、ちょっと世代が違っていたので反応が今一つだったが、我々にとっては十分なサプライズだった。

 秋山先生がアコーディオンと数学を、由美さんが歌とダンスを教えあう仲だとのことで、その後秋山先生のアコーディオンの演奏と由美さんの歌が披露された。シャンソン「詩人の魂」やロシア民謡「カチューシャ」など中高年世代にはわかるが、今の高校生にはどうだろうか?という選曲ではあったのだが・・・。

 その後、後半の数学の話では由美さんはアシスタントに徹しておられ、このためだけに来られたのかと思うと、二度びっくりしたのだった。

 後半は自らの専攻分野である数学の話だった。

円の面積がどうしてπr2になるのか(※1)、球の体積の求め方など公式として丸暗記して覚えていたものを自作の器具を使いながらわかりやすく説明された。また多面体の体積についても、自らつくった器具であっという間に直方体にしてしまうなど、楽しませながらもわかりやすい説明があった。

 また、数学が生かされている分野として、医療への応用があり、楕円の性質(※2)を利用した胆石の破砕機(実際に風船を使って焦点を合わせて破砕する実験もされた)やMRIなどが数学を使って開発されたとのことである。

 私のような完全に文系の頭では想像しにくいが、数学が社会の様々なところに応用されているということは感じることができた。

 こうして秋山先生の熱い語りに圧倒され、2時間20分ほどの時間があっという間に過ぎた感じがした。高校生達もこのようにパワフルで「青春まっただ中」の秋山先生の姿を見て、自らの志、決意を新たしたのではないかと思う。

 秋山先生の話の中に「高校生は人生のラッシュアワー」という言葉があったが、大学受験、部活動、友人との交際など高校生は本当に忙しい。そのような中、高校生の時代に志をもって自らの道を切り開く努力をしていくこと自体非常に難しいことではないかと思う。このチャレンジセミナーに集った高校生達の未来に大いに期待したい。

 秋山先生の話は非常に分かりやすく、知的好奇心を刺激されるものだった。まさに「知ることの楽しみ」を味わえた講演だったと思う。学校現場でも秋山先生のようにとは言わないまでも、先生方には是非子ども達が知ることの楽しみを味わうことができる授業をしていただければと思う。(総務課中澤)

(注:図はそれぞれイメージで、数学的に厳密なものではありません)

※1円は、半径で切ると底辺が円周、高さが半径の三角形になる。円周は2πr(rは円の半径)だから、円の面積=1/2*2πr*r=πr2

円の面積

※2楕円は、長径(一番長い直径)上にある2つの定点(焦点)のうち、一方の焦点から出た光は楕円で反射し、すべて他方の焦点に集まるという性質を持つ。

楕円の図


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