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教育長メッセージ:平成29年度スタートに当たって

平成29年度が始まりました。

 

 このたびの人事異動に伴い、教育委員会事務局で新たに仕事をされる方々を多数お迎えいたしました。
新任の方々に私の考えを知っていただく一助になればと思い、また引き続き担当される方々にも、これまで様々な機会に述べてきたことをあらためて確認していただきたいと思って、このメッセージを作成しました。

 

 私は、昨年3月、教育長着任の日に、皆さんの前で次のような話をしました。

 

 一点目は、そもそも教育委員会は教育現場を支えるために存在しているという地方教育行政の原点について、
二点目は、合議制の執行機関である教育委員会がその職責を果たしていくに当たっての「レイマンコントロール」の意義について、
そして三点目は、教育委員会事務局の中の議論を大切にしたい、大いに議論しよう、ということでした。
丁寧な議論を繰り返しながら、現場を支える側にある我々自身のベクトルを合わせていくことがとても大切であるという話をいたしました。

 

 その日から、皆さんと共に様々な議論を積み重ねてきましたが、その多くが、例えば県議会での教育長答弁という形で結実しましたし、それが更なる議論を喚起するといったような「議論の好循環」を生みだしてきたように感じます。
このことは、教育委員会における意思形成プロセスの「見える化」につながった面もあり、教育に対する県民の皆様の関心を広げる効果をもたらしました。また、長年の懸案も含め、教育課題を前進させていく推進力になってきたのではないかと思います。

 

 ここで、その代表的な論点を幾つか挙げてみたいと思います。

 

 一点目は、学校の存在をどう考えるか。
学校は、もちろん教育の場であることが基本ですが、今や学校の在り方は、学校教育のみに閉じた自己完結的な発想で考えるのではなく、地域の在り方や地域振興の方向性の中に位置づけて考えていく必要が生じています。

 

 二点目は、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力とは何か。
それは、これからの変化の激しい社会の中で生き抜いていく力、言い換えれば「主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、答えのない課題にも粘り強く向かっていく力」のことです。具体的には、論理的思考力やコミュニケーション力、感性・情緒といった「生きる力」を構成する重要な力を、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい。これが我々の考える「学力観」です。

 

 三点目は、島根の子どもたちにそうした力を身に付けてもらうために学校はどうあればよいか。
例えば、全国学力・学習状況調査や島根県学力調査は、決して学校ごとの調査結果を競うようなことを煽るために行なっているものではありません。平素の教育活動の成果や課題を客観的に把握しようとする調査の目的を正しく理解すること。調査結果の分析・検証に基づき、学校現場において授業改善や児童生徒の個別指導に生かしてもらうこと。そして、このようなPDCAサイクルを回していくことを、教員一人ひとりの個人的な課題と位置づけるのではなく、「チーム学校」としての学校全体の課題と位置づけた上で組織的な取組として進めてもらうこと。我々は、このような基本認識を市町村教育委員会や学校と共有していく必要があります。

 

 四点目は、島根らしい教育の魅力とは何か。
それは、例えば、障がいがあったり困難を抱えていたりすることも含めて、多様な個性の広がりのある児童生徒一人ひとりと丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで大切に育てることではないでしょうか。また、島根の子どもたちがこれからの社会の中で生き抜いていけるよう、一人ひとりの人生の進路選択に丁寧に立ち会い、それぞれの自己実現を精一杯支援していくことではないでしょうか。
そして、そのような子どもの育ちを学校だけで抱え込んでしまうのではなく、地域社会全体で理念を共有し、学校・家庭・地域の連携の中で実現することが、島根ならではの教育の魅力になるのではないかと考えます。

 

 五点目は、「地方創生」を進める上での教育の役割は何か。
島根らしい教育の魅力を高めようとする理念や方向性について、できるだけ多くの県民の皆様の共感を得ながら、地域を挙げて、「校種の壁」を越えて一体的・系統的な教育活動を心がけていけば、それは教育という領域にとどまらず、若い世代の人たちに「ここで生きていきたい」と感じてもらい、移住・定住の地として選択してもらうための「地域の魅力」につながっていくのではないかと考えます。
したがって、「教育の魅力化」を進めることは「地方創生」の柱の一つとなるのではないかと思います。

 

 以上、皆さんと議論してきた代表的な論点例を挙げてみました。
そうした議論の集大成として、いよいよ平成29年度から教育魅力化推進事業に着手することになります。
そこで、今一度、「教育の魅力化」の原点を再確認しておきたいと思います。「教育の魅力化」とは、誰のためでもない、島根で育つ子どもたちにとっての「魅力」にほかならないということです。
したがって、県・市町村の教育委員会、学校現場、社会教育の関係者などが総力を挙げて取り組まなければ実現することができないもの、言い換えれば、教育の本質そのもののことであると思います。

 

 県教育委員会においても、予算所管課である教育指導課や社会教育課だけで推進する施策ではなく、教育委員会事務局のすべての所属に関係する政策課題と言ってよいと思います。
島根の子どもたちに本物の力を身に付けてもらうために、皆さんがこれまで教育現場や教育行政を通して培ってこられた知見や経験を惜しむことなく注ぎ込んでいただきたいと願っています。

 

 さて、今日から平成29年度の仕事が始まります。
今年度も大いに議論しましょう。そして我々自身が「主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、答えのない課題にも粘り強く向かっていこう」ではありませんか。
皆さんのご健康とご活躍を心より祈念し、平成29年度スタートに当たってのメッセージといたします。


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