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小沢議員

(問)教科書謝礼問題について

1.今般発覚した教科書謝礼問題とはどういうことか伺う。

2.公立小中学校の教科書の選定(採択)にはどのような人が関与するのか、また、それぞれどのような権限や役割があるか伺う。

3.教科書選定にあたっては、調査員の役割は非常に重いと言えるが、本県の場合、調査員はどうやって選ばれるのか伺う。

4.教科書会社が選定に関わる人に検定中の教科書を見せることはなぜいけないのか伺う。

5.いわゆる「白表紙」を閲覧した教員は何名で、謝礼を受け取った教員は何名なのか伺う。

6.本県教育委員会の文科省への報告はどのようになされたのか伺う。

7.当然対象教員一人ひとりからヒアリングがなされた思うが、本県教委の調査方法について、どこでどのように行われたか伺う。

8.いずれの教科書会社が、検定中の教科書を、どこで、どのような形で誰に示し、どんな立場の教員が、どれだけの額の謝礼を受け取ったのか伺う。

9.本県の事案は、地方公務員法あるいは服務規定に照らせばどうなるのか具体的に伺う。

10.懲戒基準に照らせばどうか、また、これらの教員の名前等について公表基準はないか伺う。

11.今春の人事異動で、この問題の影響はなかったのか、具体的に伺う。

12.対象者の中に、今春退職予定者はいたのか、いたとすれば、どのように対応したのか伺う。

13.本県の再発防止策はどうなっているか伺う。

14.教科書無償措置法では、採択の結果や理由を公表する努力義務が各教育委員会に課せられているが、公表について本県の対応を伺う。

15.知事の総括的感想を伺う。

 

(答)教育長

1.教科書会社は、文部科学省の定めたルールによりまして、検定中の教科書を他者に閲覧させてはならないこととされております。

 今回の事案は、複数の教科書会社が、このルールに反して、全国の多数の教員等に検定中教科書を閲覧させたものであります。また、閲覧した教員等の一部が、その後、教科書採択に係るプロセスの中で一定の役割を担う役職に就いたケースがございました。

 このため、教科書採択の公正さに対する国民の信頼を損ねることがあってはならないとの判断から、文部科学省が全国的な調査を行ったものであります。

 今年3月末、文部科学省は、この調査結果を踏まえ、教科書採択への影響はなく、公正に行われたとの公表を行いました。

 次に、本県の状況について概要を述べますと、今年1月、文部科学省から事実関係を確認するよう依頼を受け、市町村教育委員会等を通じまして調査したところ、44名の教員等が検定中教科書を見たことが確認されました。

 これは、検定中教科書であることを知らされぬまま、「学校で指導する立場から、教材に対する改善意見等を助言してほしい」というような趣旨で見せられ、今回の確認調査の段階で、初めてそれが検定中教科書の一部であったことを認識した例が多かったというものであります。

 また、検定中教科書に接してから一定期間が経過した後、教科書採択に係るプロセスの中で何らかの役職に就いた者としては、本県では、判断材料となる基礎資料の一部を作成する業務に従事した「調査員」「専門調査員」が、合わせて10名でございました。

 本県で教科書採択に影響のあった事例はございません。

 

2.小中学校の教科書につきましては、採択権者である市町村教育委員会が、県教育委員会の示した「採択の基本方針」に基づいて教科書の選定を進め、決定をいたします。

 市町村教育委員会は、採択地区協議会が行う教科書選定の結果に基づき、教科書を決定することになります。

 また、採択地区協議会は、複数名の調査員が作成した基礎資料を判断材料として検討を行い、教科書選定を行います。

 一方、県教育委員会は、教科用図書選定審議会の答申に基づき、「採択の基本方針」を決定します。

また、教科用図書選定審議会は、複数名の専門調査員が作成した基礎資料を判断材料として検討を行い、「採択の基本方針」を答申します。

 要約いたしますと、「調査員」、「専門調査員」は複数名で判断材料となる基礎資料の一部を作成する役割を担うことになります。

 

3.まず、教科書採択に係りますプロセスは、教科書検定の終了後に、合格した教科書を対象として行われます。したがいまして、教科書の検定中に調査員、専門調査員を委嘱することはございません。

 採択地区協議会の調査員は、教科ごとに当該教科に関する知見及び教科指導力の両面において優れた教員等の中から、採択地区協議会が、適任者複数名を選考いたします。

 そして、教科用図書選定審議会の専門調査員は、これも教科ごとに当該教科に関する知見及び教科指導力の両面において優れた教員等の中から、教育事務所の推薦に基づき、県教育委員会が、適任者複数名を選考いたします。

 

4.繰り返しになりますが、教科書検定が行われている段階で、調査員、専門調査員を委嘱することはありません。

 したがいまして、検定の期間中に、調査員、専門調査員が検定中教科書を見ることはございません。その前提でお答えをいたします。検定中教科書を他者に閲覧させてはならないという文部科学省のルールですが、これは教科書検定の審査プロセスに対する信頼性を確保する必要があること、また、検定途上にある未確定の内容・表現があたかも検定済みであるかのような誤解のもとで独り歩きをしてしまうことを防止する必要があること、といったような理由から、定められたものと考えております。

 教科書会社は、このルールを知りながら、全国規模で多数の教員等に閲覧させるというルール破りを行ったものであります。コンプライアンスの面で非常に問題があると考えます。

 

5.検定中教科書を見たもののうち、謝金を受けたものが26名。検定中教科書を見たもののうち、謝金を受けなかったものが18名であります。

 

6.今年1月、文部科学省から、教科書会社が策定したリストをもとに事実関係を確認するよう調査依頼がございました。

 対象となる教員等の服務監督者である市町村教育委員会等を通じて確認調査を行い、今年3月、県教育委員会から文部科学省へ調査結果を報告いたしました。

 報告の内容としては、対象者ごとに、教科書会社名、教科、閲覧時期、その後の教科書採択プロセスにおける役職の有無、教科書採択結果への影響の有無、謝金受領の有無について、確認調査の結果を報告いたしました。

 

7.対象者の服務監督者でございます市町村教育委員会等が、対象者の所属学校または教育委員会事務局において、複数の調査担当者を配して、直接本人から聞き取りを行いました。

 県教育委員会は、それぞれの服務監督者が行った確認調査の結果を取りまとめ、文部科学省へ報告したものであります。

 

8.まず、謝金を受けた26名の事例についてご説明をいたします。教科書会社は東京書籍、光村図書の2社であります。場所と方法でありますが、松江市内、あるいは県外の会場で、教科指導の方法、教科書・問題集の内容について意見交換する中で、検定中教科書であることを知らされぬまま、「学校で指導する立場から、教材に対する改善意見等を助言してほしい」というような趣旨で見せられたものであります。謝金の金額につきましては、1万円が16名、1万2千円が4名、2万円が6名であります。その後、教科書採択に係るプロセスの中で何らかの役職に就いたものとしては、教科用図書選定審議会の専門調査員2名、採択地区協議会の調査員4名であります。

 次に、謝金を受けなかった18名の事例についてお答えいたします。教科書会社は学校図書、数研出版、開隆堂の3社であります。場所と方法につきましては、教科書会社が勤務校などを突然訪問し、教員等に面会し、教材等の話題の中で、前触れなく、検定中教科書を示し、助言を求めたものであります。その後、教科書採択に係るプロセスの中で何らかの役職に就いたものとしては、教科用図書選定審議会の専門調査員が2名、採択地区協議会の調査員が2名でありました。

 

(再質問)宿泊料、交通費はどうであったか。

 

 まず、先ほどのご質問の中で、県外の会場で意見を求められた中で、旅費相当額の支給を受けたものが一部おります。

 

9.地方公務員法では、先ほど総務部長の方からも説明がありましたが、第38条第1項で報酬を得ての兼職・兼業の制限がなされております。そして、第38条第2項でその許可にあたっては、人事委員会規則によることとされております。そして第24条第4項では、重複給与支給の禁止の規定がなされております。地方公務員法は、このような規定をしておりますが、そもそも教員は、その特例が別の法律で定められております。すなわち教育公務員特例法第17条によりまして、教員は、本務に支障のない範囲で報酬を得て教育に関する他の業務に従事することが認められております。

 その業務が継続的・定期的なものであれば、教育委員会への申請が必要となります。一方、一時的なものについては、申請も不要でございます。

 

10.懲戒処分の根拠は、条例ではなく、地方公務員法第29条に根拠がございます。ここには、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」、「懲戒処分をすることができる」と規定されております。

 今回の行為が仮に収賄に該当すれば、懲戒処分の対象となりますが、このことにつきまして、弁護士に法律相談を行ったところ、次のような見解でありました。

 「収賄に該当するかどうかは、まず、文部科学省が行う検定に際して職務権限があるかどうかで決まる。今回の該当教員等にその権限はないため、賄賂を収受したとは言えない。また、受けとった謝金等の金額は日当程度のもので、社会通念上認められる範囲内であり、賄賂を収受したとは言えない。」との判断でありました。したがいまして、懲戒には当たらないとの判断を行ったものであります。

 なお、仮に懲戒を行う場合の氏名の公表基準につきましては、免職あるいは飲酒運転による停職の場合には、氏名を公表するとの指針を設けております。

 

11.一般論として、懲戒にあたるような事例があれば、人事上一定の考慮を行うことがあります。また、服務監督上の指導対象となった教員につきましては、服務監督者である市町村教育委員会の意向を確認しながら人事を行うことになります。

 個別具体の人事については、お答えは差し控えさせていただきます。

 

12.該当44名のうち、今年の春の定年退職者は4名おりました。他と同様、3月に服務監督者であります市町村教育委員会より本人に対して服務上の指導を行ったところであります。

 

13.教科書採択に影響のあった事例はありませんでしたが、結果として教科書採択の公正さに対する県民の皆様の疑念を抱かせかねない事案でありました。このことから、次の点につきまして、採択権者であります各市町村教育委員会の教育長あてに通知をするとともに、市町村教育委員会及び全ての小中学校の校長に対し、会議において直接指導を行いました。

 指導のポイントは3点ございます。

 まず1点目、調査員等の選任について、特定の教科書発行者と関係を有する者を教科用図書選定審議会委員、調査員等に選任しないこと。

 2点目でありますが、検定中教科書の取扱いについて、教科書の著作編修関係者、教師用指導書執筆者などは、検定中教科書の一部を了知することになるため、教科書採択に関与させないこと。

 3点目でありますが、教科書会社との関係について、教科書会社と健全かつ適切な関係を保つよう、すべての学校・教員に対して指導を徹底すること。

 以上を直接指導したところであります。

 

14.市町村立の小・中学校で使用する教科書につきましては、採択権者であります市町村教育委員会が、採択の結果や理由等を公表するよう、努力義務がございます。

 市町村教育委員会が独自で公表している例もありますが、県内では5地区の採択地区協議会でそれぞれ、採択結果、採択理由などを公開しております。

 県教育委員会は、県内の市町村教育委員会の教科書採択結果を一覧にして公表しているところであります。

 

(答)知事

15.教育長が先程来答弁しましたように、教科書採択に影響はなかったものの、県民の方々などに疑念をもたれかねない事態があったのであり、遺憾でございます。

 教育委員会に対しましては、今後こうしたことが起きないよう、適切に対処してもらいたい旨、伝えておるところであります。

 


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