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和田議員

(問)道徳教育について

1.近年のいじめの認知件数の増加は、報告の徹底があったためと考えるが、所見を伺う。

2.「道徳の時間」が「特別の教科」となることについて、「特別の教科」とはどういう教科ということか伺う。また、国が検定する教科書を使って記述式で評価するようだが、どう評価するのか伺う。

3.授業時間は週1時間で以前と変わらないようだが、評価する担任の先生の負担が増えるだけではないか、所見を伺う。

4.文科省は一定の価値観を押しつけるものではないと言うが、これまでの県教委の方針とどう違うのか、生きる力を身につける、ふるまい向上の方針で十分ではないのか、伺う。

5.昨年度から今年度にかけて実施されている研修会では、どのような研修を実施しているのか伺う。

6.戦前の学校には道徳を教えるための教科として「修身」があったが、どういうものだったのか、この度の「特別の教科」となる道徳とどう違うのか伺う。

7.安倍首相は、2006年12月の教育基本法改正で教育の目標に「愛国心」の規定を盛り込み、この度道徳を「特別の教科」として教科化し、前進させようとしているという理解でよいか、所見を伺う。

8.グローバル化が加速度的に進む中、多様な生き方、価値観を許容できる人間こそ、これからの島根の子どもたちに求められる人間像ではないかと考えるが、所見を伺う。

 

(答)教育長

1.いじめの認知件数についてであります。文部科学省がこのほど公表した調査によりますと、平成27年度、全国の国立・公立・私立の小・中学校、高等学校・特別支援学校におけるいじめの認知件数は合計で22万件を越えまして、過去最多となりました。

 このことについて文部科学省は、「いじめ問題の解決に向けて積極的に認知して、組織的に対応するという方針が浸透してきている」と分析しております。

 

(再質問)報告の徹底があったからと認識していることについての考えを伺う。

 

 報告を徹底するというよりは、いじめを初期段階で認知をする、積極的に認知をする結果として、その報告件数は伸びてきていると、このように文部科学省は分析をしております。

 

2.道徳教育に係る学習指導要領の一部改正は、行われましたが、その背景としては、先ほど議員ご指摘がございました深刻ないじめを本質的に解決する必要が生じていることに加えまして、情報通信技術の発展による子供の生活の変化、諸外国に比べて低い、高校生の自己肯定感や社会参画への意識、世界に例を見ない急速な少子高齢化、こういったことを背景にいたしまして、「答えが一つではない課題を自分の問題として考えたり、真剣に議論したりして、自立した人間として他者と共によりよく生きようとする道徳心を育むことがより一層重要になってきた」との考え方に基づくものであります。

 これまでの道徳では、教材の中に登場する人物の心情理解などに偏った言わば形式的な指導が行われがちであったとの指摘がなされてまいりました。

 そこで、「考え、議論する道徳」への転換を図るため、今後は「道徳科」を要としつつ、学校の教育活動全体を通じて、効果的な指導を展開できるようにしようとするものであります。

 したがいまして、今後の「道徳科」については、学習指導要領に示された内容について体系的な指導によって学ぶという各教科と共通するような側面がある一方で、道徳教育の要となりまして、学校の教育活動全体との関連性の中で、人格全体に関わる道徳性の育成を目指すという面もございます。

 「道徳科」は、このような二面性を有しますので、専門科の教科免許によらず、学級担任が担当することが望ましい、そして、数値などによる評価はなじまないといった、各教科とは異なる側面をもったものとして、新たな枠組みによって教科化することとされたものであります。

 道徳科で行う評価につきましては、以上述べましたような事情の中で、文部科学省通知によりますと、学習活動における児童生徒一人一人の「学習状況や道徳性に係る成長の様子」を丁寧に見取り、数値ではなく、個人の変容として記述で表現するとされております。

 

3.道徳科では、個人の変容を記述により、表現することになりますので、評価の側面だけを見れば、担任の負担は一定程度増すことになると考えております。

 しかしながら、そのような評価を通じまして、児童生徒が自己肯定感を得たり、自らの成長を実感し、更に意欲的になったりすることが期待されます。

 したがいまして、児童生徒が人間として成長していく上で貴重なプロセスと言えることから、学校現場には、この必要性を理解していただけると思っております。

 

4.島根県教育委員会では、島根の子どもたちに「生きる力」を身に付けさせるため、様々な取組を進めてまいっております。議員からご指摘ございました「ふるまい向上」の他にも、「ふるさと教育」、「キャリア教育」「学校図書館活用教育」等も「生きる力」の育成を目指した島根の特色ある教育だと思っております。

 今後の「道徳科」も「生きる力」を育もうとする点では、当然、島根らしい教育と同じ目的意識を持つものではありますが、一方「道徳科」は学校の教育活動全体の要と位置付けられ、個人の変容を記述により表現するという新たな枠組みを与えられるものになりますので、従前にも増して児童生徒の生きる力の育成に効果を発揮するのではないかと期待するものであります。

 

5.平成27年度から、道徳教育に係る学習指導要領の改訂につきまして教職員を対象とした研修を行ってまいっております。

 この研修により、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の進め方や、教科化に向けた趣旨や背景などについて教職員の理解を進めてまいりました。

 今後は、平成30年度に小学校、平成31年度に中学校での実施に向けまして、指導方法や個人の変容の記述の在り方等についても研修で取り上げ、学校現場の理解を深めていきたいと思っております。

 

6.「修身」は、「教育に関する勅語」の趣旨に基づきまして、児童の徳性を養うことなどを目的として設けられた教科でありました。

 その内容は、時代により変遷いたしましたが、例えば孝行、友愛などといった、普遍的なものもありますが、現憲法に照らすと、現在では妥当性を欠くものも含まれていた、とされております。

 また、「修身」は三段階で評価を行うこととされていました。昭和20年にGHQ指令により停止されたと認識しております。

 一方、この度の「道徳科」は、答えが一つではない課題に子供たちが向き合い、「考え、議論する道徳」へと、より充実を図ろうとするものでありまして、戦前の「修身」とは全く異なるものであると理解しております。

 

7.まず、「我が国と郷土を愛する」ことの捉え方でありますけれども、学習指導要領で規定されている「国」とは、「政府の統治機構を意味するものではなく、歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統、文化などからなる、歴史的・文化的な共同体としての「国」を指すものである。」とされております。

 したがいまして、「我が国と郷土を愛する心」とは、偏狭で排他的な自国賛美ではなく、国際社会の一員として自覚と責任をもって国際社会に寄与しようとする態度につながっていくものであると考えております。

 私どもの認識は、このような通りでございます。

 

8.今議会、いろいろな局面でご答弁申し上げてまいりましたが、これからの変化の激しい社会を生き抜くためには、主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら答のない課題に粘り強く向かっていく力が必要だと考えております。

 具体的には、論理的思考力、コミュニケーション力や感性・情緒といった「生きる力」を構成する重要な力を島根の子どもたちに身につけさせたいと考えております。

 こうした力を育むことは、議員からご指摘がありました「多様な生き方、価値観を許容できる人間」にも通じるものであると考えております。様々な文化や価値観を背景とする人々と相互に尊重しあいながら生きていく人に成長してもらいたいと思っております。

 新たに特別の教科となります道徳科は、このような島根の子どもたちを育む上で、有効に機能するものになると、このように期待しております。

 


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