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渡辺議員(県政)

 

(問)教育問題について

  1. 愛国心についての所見を伺う。
  2. 愛国心を評価することについての所見を伺う。
  3. 県内の各自治体での就学援助基準と、高校生の授業料減免のここ五年間の動向実態について伺う。
  4. 所得格差が教育格差につながるようなことがあってはならないと思うが、所見を伺う。
  5. 県財政が厳しい中、高等学校の再編や障害児教育諸学校の改革が進められているが、県立学校の現状と今後についての見解を伺う。
  6. 島根の教育に対する思いを伺う。
  7. 特別な支援を必要とする発達障害を持つ子どもたちに対する取り組みを具体的にどのように進めていくか伺う。
  8. 県と国との学力調査の関連についての所見を伺う。
  9. 県独自の学力調査を今後も続けて実施する考えがあるかどうか伺う。
  10. 県独自で実施した意識調査を、学力調査と合わせ、どのように役立てていくのか伺う。

(答)教育長

 1.まず、愛国心についてであります。

 恐縮ですが、個人的な思いを少しまじえて述べさせていただきます。

昭和三十年前後から四十年前後にかけての戦後民主主義教育を最も純粋な形で受けた私ども団塊の世代にあっては、愛国心という言葉について、ややもすると一歩引いてしまう教育を受けて育ちました。

 ベストセラー「国家の品格」の中で、藤原正彦氏は、今日のグローバル化、情報化した世界の中にあって、我が国が国際社会から信頼されるためには、国際的視野を持つと同時に、我が国の歴史や文化についての正確な認識と自負を持つことが必要と述べております。

 また、愛国心という言葉の中で使われている国、というのは、国家ではなく国民であると述べております。

 自分さえよければ卑怯も恥もない、弱者に対して惻隠の情も持たない現代の価値観の傾向、いわばモラルが著しく低下した社会状況を改善するためには、日本文化の源郷である地方・中山間地域などの再評価、言い換えれば、我が国が今日に至った歴史・文化的な価値についての再評価が必要であると私は考えております。

 「我が国と郷土を愛する」ということについて、政府は、「歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統と文化から成る歴史的、文化的な共同体としてのわが国というものを愛していくという趣旨であり、その中には統治機構、すなわち今日の政府や内閣、こういったものは含んでいない」との見解を出しております。すなわち、「国」という概念が意味するところは、国家権力に対する忠誠ではなく、歴史・文化を共有する国民であるとの考え方であり、私もまさにそうだと考えております。

 2.次に、愛国心の評価についてであります。

 現行の学習指導要領においては、社会科の目標に、「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てる」などと示されており、我が国の歴史における人物や文化遺産に関心を持ち、意欲的に調べ、考えながら追究しているかなど「関心・意欲・態度」に係わる評価を行うこととなっております。

 小泉首相は、今国会で、教育現場での「愛国心」をめぐる評価の在り方に関連し、「この子には愛国心があるかとか、そういう項目は必要ない」との考え方を示しております。

 これもまさしく私も同じ考えでございます。

 3.次に、島根県内の各自治体の就学援助基準及び高校生の授業料減免の動向実態についてであります。

 平成十七年度の小・中学校の就学援助の対象者は、約五千七百人で、全児童・生徒の約九%を占めております。

 同じ数字を、平成十六年度についてみると、全国平均は約十三%となっております。これからいたしますと、若干低い数値となっています。

 就学援助には、生活保護を受けている家庭の児童生徒を対象とする「要保護児童生徒援助」と、市町村が独自の基準により、生活保護は受けていないが、それに近い程度に経済的に困難な状況にあると認定した家庭の児童生徒を対象とする「準要保護児童生徒援助」とがあります。

 「準要保護児童生徒の各市町村の認定基準」の代表的なものとしましては、「市町村民税非課税世帯」あるいは「児童扶養手当受給世帯」等があります。

 「要保護児童生徒援助」に要する経費につきましては、国が予算の範囲内でその経費の二分の一を補助する制度となってしておりますが、「準要保護児童生徒援助」に要する経費につきましては、昨年度から、国庫補助がなくなり、市町村への税源移譲により一般財源化されております。

 なお、この一般財源化に伴って、認定基準を厳しくした市町村はありません。

 また、県立高等学校の授業料についてでありますが、現在、全日制課程が月額九千六百円、定時制課程が月額二千百円となっております。この授業料の免除につきましては、学習意欲が旺盛であって、かつ、学資の支弁が困難な生徒を対象として実施しております。

 ここ五年間の状況でございますが、平成十三年度が、約千四百人で、割合にしますと六%となっております。以降、十四年度が約千五百人であったのが、十七年度が約千七百人と二百人程度増加しています。割合については、全体の生徒数が減っていることから、十四年度が六・六であったものが十七年度は八・五%に増えています。

 4.次に、所得格差による教育の格差についてであります。

 文部科学省が取りまとめたデータによりますと、全国的に就学援助及び授業料減免を受ける児童・生徒の数が増加しており、本県においても同様な傾向を示しております。

 家計の状況によって教育の機会が失われたり、学習意欲を喪失するようなことはあってはならないと考えており、そういう意味からも、小・中学校の児童・生徒に対する就学援助制度は、教育の機会均等という義務教育制度の根幹を支える大変重要な制度であります。

 今後とも、市町村とともに就学援助の適切な実施が行えるように、他の都道府県とも連携を図りながら、国に対して制度の充実を要望してまいります。

 また、高等学校につきましては、希望する生徒が教育を受けることができるように授業料の免除や奨学資金の貸与を行っているところであり、今後もこれらを通じて、引き続き教育の機会の提供に努めてまいります。

 5.次に、県立高校の統合再編成と特殊教育諸学校の改革についてであります。

平成二十年度までの高校の統合再編成については、平成十六年に策定した「県立学校後期再編成計画」に基づいて行っています。本年、益田翔陽高校を、来春、島根中央高校を開校することとしました。

 平成二十一年度以降の高校の再編成については、本年三月に外部識者から成る委員会を設置し、魅力と活力ある県立高校づくりの観点から、検討を始めたところであります。

 生徒数の減に伴う県全体の学級減は避けられないと考えていますが、再編成にあたっては、学校規模などの教育環境とともに学校がおかれている地理的・社会的状況なども含めた総合的な判断が必要であると考えています。

 次に、特殊教育諸学校については、国において、特別支援学校制度への転換を進めることとしています。

 このような制度改正を踏まえ、本県においては、複数の障害種別にどう対応するのかという点や、地域における特別支援教育のセンター的機能を担う特別支援学校の設置の在り方について、現在、検討を進めているところであり、今年度中に、とりまとめを行うこととしております。

 6.次に、島根の教育に対する思いであります。

 教育の目標とするところは「確かな学力」「豊かな心」「健康・体力」の三つに要約されており、この三本柱を教育の柱に据え、従来から取り組まれてきました。

 子どもたちの健全な人格形成においては、まさしくこの三本柱がバランスよく並び立つことが重要であると私も考えております。

 こうした点からも、昨年から取り組んでいます、自然や地域とのふれあいを通してふるさとへの愛着や誇りを培う「ふるさと教育推進事業」に力を入れて参りたいと考えております。

 このふるさと教育では、ふるさとについての知識の習得だけではなく、地域の人々、地域資源とのふれあいを通して「他人を優しく思いやる心」や「美しいもの、気高いものに感動する心」などを養うこと、また、健康・体力・生活習慣とも関連の深い食育にも取り組んで参りたいと考えております。

 障害のある子どもの自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援する特別支援教育は、子ども一人ひとりの教育的ニーズを明らかにし、目標とする自立と社会参加につながるよう、その実態に即した教育を行っていきたいと考えております。

 教育は学校だけが行うものではなく、従来から申しておりますように、学校・地域・家庭が各々役割を果たすとともに、相互に補完しながら、三位一体で取り組んで行くことが重要であり、そうした思いで教育行政を進めて参りたいと考えております。

 7.次に、発達障害のある子どもに対する取り組みについてであります。

 まず、関係機関との連携を図るため、主として小中学校において「特別支援教育コーディネーター」や、校内委員会を設置しております。また、市町村及び教育事務所においては、学校を支援する巡回相談員を置くとともに、医療・福祉・就労等の関係機関との連携を図るための協議会を設置しています。

 次に、発達障害のある子どもに対するきめ細かな教育の充実を図るため、「特別な支援のための非常勤講師配置事業」(にこにこサポート事業)を昨年度、新規事業として開始し、五〇名の非常勤講師を小学校に配置しました。今年度は、さらに二〇名を増員し、七〇名を配置しています。

 また、発達障害に関する専門性のある教育の人材を養成するため、主として小中学校の教員を対象とした研修の充実を図るとともに、今年度からは、高等学校の教員にも受講対象を拡大して実施しております。

 8.9.次に、県と国との学力調査についてですが、

国は、来年平成十九年四月二十四日に全国一斉の調査を実施すると既に決定しています。小学校六年生に国語と算数、中学校三年生に国語と数学の二教科を、各教科の土台となる基盤的な事項に絞って行い、同時に、生活習慣や学習環境等に関する調査も実施することとされております。

 一方、本県においては、小学校三年生から中学校三年生までの全児童生徒を対象に、幅広く実施しました。また、学科につきましては、小学校三・四年生が国語、算数の二教科を、小学校五年生から中学校一年生までは、国語、算数、社会理科の四教科を、中学校二・三年生には、それに更に英語を加えた五教科で実施しました。加えて生活や学習の意識調査を実施したところです。

 この県単独で行いました調査結果を基に、各種の学力向上対策事業を実施することとしております。

 また、各学校においても、この調査結果を基に、指導の工夫・改善の取組を行い、児童生徒の学力の向上や生活習慣の改善を図ることとしており、これらの事業や取組の成果の検証も今年度行って参ります。そのためには、継続的・定期的調査が必要と考えておりますが、一方、国の調査方法の詳細、また、分析方法が現時点で明らかにされていないことから、今後、国からの情報を得て、その上で、国の調査との関連の中で検討したいと考えております。

 10.次に、今年度の学力調査の結果をどう役立てていくかについてであります。

 まず、教科の学習の状況や、意識調査の結果を、児童生徒一人一人に個人カードとして返し、児童生徒自らが学習意欲を高め、目標をもって学習に取り組めるように活用していきたいと考えております。

 また、各学校においては、詳しく分析した上で、児童生徒個々の状況に応じた指導の工夫、あるいは授業の改善ができるようにして参りたいと思っております。

 県全体野としての学力向上パイオニアスクール事業、学力向上サポート事業などの学力向上対策事業、あるいは教師の指導力の向上にも生かして参りたいと思っております。

 また、生活習慣改善推進事業ということで行っております家庭、地域と一体となって学校が行っております生活習慣の改善の改善にも使えるデータになるだろうと思っております。

 貴重な財源を使わせていただいておりますので、この調査結果を最大限教育の現場に生かして参りたいと思っております。


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