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石倉議員(せ)

(問)教育問題について

1.学力向上プロジェクトの目的について伺う。また、個々の学力向上対策について、児童生徒の学習意欲向上や興味を喚起することとの関連付けはどのようになっているのか伺う。

2.小中学校における授業時間減少と対策の現状、今後の方針について伺う。

3.家庭でのゲームなどとの関連についても調査しながら、家庭教育における意識をも高めていくことが課題の一つであると考えるが、所見を伺う。

4.教職員の人事権の市町村への移譲に係る、今後の調査研究の進め方について伺う。

5.教育分権時代における教職員採用試験に対する考え方と、最近の採用制度の改善状況について伺う。

 

(答)広沢教育長

1.まず、「しまね学力向上プロジェクト」についてであります。

 このプロジェクトは、本県の児童生徒の学力実態を把握・分析し、その実態に即した具体的・効果的な対策を検討するとともに、指導方法の改善や教員の指導力向上につながる事業を展開し、学力の定着と向上を図ることを目的としております。

 その内容といたましては、全県学力調査の一斉実施等による「学力の把握・分析と周知・啓発」、学力向上フォーラムや指導事例集の発行などの「学校パワーアップ事業」、学力パイオニアスクールやリーダーセミナーなどの「教員パワーアップ事業」を展開することにしております。これらの事業をとおして教員の指導力を高め、わかりやすい授業を行うことにより、児童生徒の学習に対する意欲や、興味を高めていくことにつなげていてきたいと考えております。

 例えば、「小中学校の実践事例集」には、具体的な授業の中で使用し、効果のあったワークシートや教具、指導の計画など、すぐに各学校で活用できる資料を掲載したいと考えております。また、「リーダーセミナー」では、研究主任、教務主任など各学校の指導的・中核的な立場にある教員を対象として、学力向上に有効なシステム、例えば、学力向上のための目標及び評価の明確化と、その達成のための組織的な取組の在り方や指導法について研究し、その成果を各学校で実践していくことをめざしております。

2.次に、小中学校における授業時間数についてであります。

 昨年度の県内小学校の、年間平均授業時数は、全ての学年で学習指導要領で定める標準時間数を上回っており、例えば六年生では一〇時間程度上回っています。

 中学校全体では、おおむね標準時間数が確保されていますが、三年生では、一〇時間程度下回っております。

 標準時間数を下回った学校に対しては、原因の分析と改善策の作成を求めるなどして、計画的に授業時間数を確保するよう努めているところです。

 学校によっては、基礎学力の定着をめざして、放課後、希望者を中心に補充学習をしたり、地域人材や大学生を活用した学習支援などを行っているところもあります。

 また、多くの学校では、夏休みなどの長期休業期間を利用して、補充学習の実施や、学校図書館の開放をするなど、子どもたちの学習の場を提供する取組も行われております。

県教育委員会といたしましても、引き続いて、指導主事の学校訪問等を重ね、全ての学校において少なくとも標準の授業時間数が確保されるよう指導すると共に、多様な学習の場を設けるよう、助言してまいります。

3.次に、家庭教育に関する意識についてであります。

 平成十六年一月に行った生活・学習の意識調査を含む「教育課程状況調査」においては、家庭での予習や、復習、読書の習慣を身につけた子どもたちは学習面の理解度が高いという分析結果が明らかになっております。

 昨年の国の委託事業による「家庭教育に関する調査」におきましては、子どもが「テレビやゲーム、パソコンを使用することについてルールを決めているか」の問に対しては、きちんとルールを決めていない家庭が大半であり、メディア機器への対応にとまどいが窺える調査結果となっております。

 また、ある研究によれば「脳の後頭葉の所に働くのがテレビゲームの脳で、その特異的な場所を集中的に長時間使っていることが、最近異常行動をする子どもの脳と関係がある」と言われています。

 今年五月に実施する「島根県学力調査」の中の生活実態調査や意識調査においては、家庭での学習時間やゲーム、テレビ視聴の時間等について調査し、学校外での生活や家庭での学習、生活習慣についての実態を把握することとしております。

 家庭での生活習慣やゲームへの接し方などは家庭で教育すべきものであり、これまでも啓発に努めてまいりましたが、今後、この調査結果を基に、子どもの家庭でのゲームやパソコン等への接し方や、望ましい家庭学習の習慣づくり等について、保護者の意識を高める方策について検討し、PTA指導者研修でも継続して啓発に努めるとともに、家庭教育支援総合推進事業の一層の充実に資することとしております。

4.次に、人事権の移譲についてであります。

 市町村立の小・中学校の教員の定数・人事については、市町村教育委員会の意見を聞いて都道府県教育委員会が定めることとされておりますが、平成十一年の地方分権一括法による法改正により、条例による事務処理の特例制度が設けられ、都道府県教育委員会の権限に属する事務の一部を市町村に移譲することも可能になっております。

 また、昨年五月に開催されました知事と各市町村長とのトップミーティングの場におきましても、一部の市長から、教員人事権の移譲についての要請がなされました。

 このような状況下において、県教育委員会といたしましては、人事権の在り方について全県的な視野に立った検討を行うため、五市四町の教育長に県側の委員二名を加えた十一名の委員で組織する「教員人事権移譲に関する検討会議」を設置し、論点整理を行ったところです。

 そして、その論点整理の結果は、「地方分権推進の大きな流れの中で、地方の自主性・自立性を高め、かつ、地域の実情に即した特色ある教育施策を展開し、未来を切り拓き、心豊かでたくましい子どもを育成していくことが時代の要請である。

 しかし、広大な中山間地域や離島を抱える本県の状況を勘案すると、県内全域における教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るためには、今直ちに教員の人事権を移譲することについては課題が多い。

 島根県の全ての子どもたちの教育にとって何が一番大切かを念頭において、教員の生活の本拠地の偏在に伴う課題や人事権を行使する際の市町村の体制整備等の課題をどう解決していったらいいのか、慎重に検討していく必要がある。」とされたところです。

 県教育委員会といたしましては、この論点整理の結果をもとに、今後、県・市町村の人事担当職員等で構成する「ワーキング会議」を新たに組織し、論点整理の中で明らかになった課題を解決するための具体的な手法等について検討を行ってまいります。

5.次に、教員の採用についてであります。

 地方分権が進む中にあっても、また、どの様な進み方をしましても、教員の採用につきましては、県内の教育水準の維持向上を確保し、地域間の格差が生じないようにすることが必要であります。

 そのためには、児童生徒に対する教育的愛情や教職に対する使命感、職務にかかわる専門的知識など、本県教員として必要な資質能力を有する人材を確保することが大前提であります。

 県教育委員会といたしましては、これまで、採用方法の改善を重ね、特に人物重視の観点から、面接時間の確保や面接員の増員、面接方法の工夫を行ってまいりました。

 昨年度からは、全国的に例のない第三次試験を導入し、児童生徒からの質問等に応じた臨機の対応を求める模擬授業や総合的な観点からの個人面接を行い、教員として必要な判断力・実践力など、学校現場での指導力をより重視した選考を行っております。

 また、今年度からは、優れた人材・多様な人材を広く求める観点から、スポーツ、芸術等の分野で特に秀でた実績、資格等を有する者を考慮する選考も行っております。

 さらに、地域に根ざした教育を充実し、教員の生活の本拠地の偏在化を是正するため、小学校においては、勤務場所を石見、隠岐地域に限定した特別選考枠を設け、石見、隠岐地域の教員の確保を行っております。

 今後ともこれらの成果を検証しつつ、本県の実情や地方分権の流れに適応できる選考となるよう、改善に努めてまいりたいと考えております。


お問い合わせ先

島根県教育委員会

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