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平成22年度再評価委員会からの意見具申

平成22年11月11日

島根県知事溝口善兵衛様

島根県公共事業再評価委員会

会長藤原眞砂

公共事業の再評価について(意見具申)

 本委員会は、島根県の公共事業の再評価について慎重審議を重ねた結果、下記のとおり意見を取りまとめましたので、これについて意見具申いたします。

 なお、県におかれましては、本委員会の意見を尊重し、公共事業の推進にあたられるよう要望いたします。

(記)

1平成22年度島根県公共事業再評価の結果の総括

 島根県では公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため平成10年度から再評価制度を実施している。事業の再評価の重責を担っているのが第三者機関である「島根県公共事業再評価委員会」である。島根県は県財政の再建のために、平成20年度から23年度までの4年間を集中期間に充てており、公共事業費の縮減は、人件費の圧縮とともに歳出抑制のための大きな柱である。委員会もそのような県の大きな方針を念頭に置いて、公共事業の再評価作業を展開した。

 本年度、委員会に付託された事業再評価の対象事業は、土木部事業9件、この他、吉賀町長から提出された1箇所の補助事業について審議依頼1件、計10件である。これらの個別事業に対する委員会としての意見は別記されているので、ここでは委員会メンバーが共有した問題意識を基盤に「総括的意見」を述べる。

(総括的意見)

 今年度の県が所管の土木部事業は9件である。その内訳は道路建設課事業が4件、河川課事業が2件、港湾空港課事業が2件、砂防課事業が1件である。

再評価委員会は現地視察、会議での議論において、事業者の費用対効果に着目し、コスト削減努力がどのようになされているかという事柄に大きな関心を払ったことは言うまでもない。しかし、他方で、進捗率、公共性の再確認、副次効果、島根総合発展計画の中での位置づけ等にも着目し、議論を重ねた。島根総合発展計画との関係で言えば、隠岐の島町の西郷港本港地区の港湾整備事業は「活力ある島根」を実現するための産業基盤整備の一翼を担うものであることを確認した。他方、河川課、砂防課の諸事業はいずれも「安心して暮らせる島根」の一環である「災害に強い県土づくり」に寄与するものであると認識した。また、道路建設課の事業は生活基盤の維持・確保に関係することも確認した。

 離島の産業基盤の整備は怠る訳に行かない。また、今年は長く厳しい冬のあと、100年に一度といわれる酷暑を県民は経験した。また、突発的な局地的集中豪雨もめずらしいことではなくなった。県民の災害に対する不安は高まっていると言わざるを得ない。治水、治山事業に対する県民の期待は高い。

 委員会は自然災害に関する県民の不安を緩和、解消するために、事業者が当該の事業を速やかに展開し、早期に完成することが肝要と考えた。

 総括すれば、公共事業再評価委員会は県事業9件、町事業1件のすべてを「継続」とした。

 今後の事業の展開に関して、さまざまの希望、要望、きびしい条件がついたものがある。事業担当者はそれらに十分な留意を払われたい。コスト削減を引き続き努力することは言うまでもない。

 さらに、公共事業の再評価の手法に関わる事柄に関係して、委員会として意見を加えたい。

今回、評価対象となった道路建設課の諸事業を見ると、国が定めた「費用便益マニュアル」に基づく費用対効果(B/C)は、河川や砂防事業の数値に比べ相対的に低い。いずれも1点台の数値が並ぶ。柿木津和野停車場線(詳細審議箇所)は1.05にすぎない。工事全体で橋梁の工事が多く費用が高額であることとは別に、これは「費用対効果の算出方法が原因の1つとなっている」(詳細審議箇所の再評価結果参照)と指摘した。

 このバイパス整備は観光面での効果が非常に高いと考えられる。しかし、国が定めた道路の評価項目(走行時間短縮便益、走行経費減少便益、交通事故減少便益)には、観光の効果が入っていない。国の算出手法に従えば、それは人口数、車両数が多い地域ほど高い数値が出る。今回の事案の中でも松江の通勤、通学路である松江鹿島美保関線佐陀本郷工区事業の費用対効果は1.96と比較的高い。

 人口が減少している島根県では、国のマニュアルに従えば、道路事業に関して、費用対効果の数値が低下傾向を辿ることが予想される。当該の数値に依拠する限り、本委員会が、たとえそれが県民の生活基盤の維持・確保、観光等に不可欠である事業と認識するものであっても、事業の存続に関係して、苦渋の判断を強いられる場合も出てくるのではないかと考える。

 本県においては、多くの道路は観光に対する効果以外にも、中山間地域と地域の中心都市との間の救急医療アクセス効果など、県民の生活・生命線となっている。

 以上のような島根県の特性を考えた場合、島根県は道路事業の観光効果、生活・生命線の確保、向上の便益を積極的に評価する県独自の費用対効果の算出方法を考えて、それに対する公衆の認識を得るための努力をする時期に来ていると考えられる。これはかつての再評価委員会の意見具申でも共有されて来た問題意識でもある。

 以上のような考えに基づき、本委員会は、県が早期に独自の新たな評価手法を検討されることを望むものである。

 末尾で恐縮でありますが、会議場での説明資料の作成、現地視察における説明、さまざまな場面での質疑応答に関して、労を惜しまれなかった島根県土木部の事業担当部課の皆様、吉賀町役場建設課の皆様、それに県再評価委員会の運営に関して周到な準備をして頂いた県土木部技術管理課の皆様に深く感謝します。

2審議対象事業

 島根県が、再評価の対象として提出してきた事業は下記のとおりである。

 ○土木部9箇所

・社会資本整備総合交付金事業(主)松江鹿島美保関線佐陀本郷工区

・社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線有福温泉工区

・社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線大金工区

・社会資本整備総合交付金事業(一)柿木津和野停車場線中座工区

・社会資本整備総合交付金広域河川改修事業高津川

・社会資本整備総合交付金河川緊急整備事業高津川(畑詰)

・社会資本整備総合交付金海岸高潮対策事業別府港大山地区

・社会資本整備総合交付金港湾整備事業西郷港本港地区

・社会資本整備総合交付金通常砂防事業湯屋谷川

 この他、吉賀町長から1箇所の補助事業について審議依頼が提出された。

3現地調査及び詳細審議案件

 ○土木部7箇所

(1)社会資本整備総合交付金事業(主)松江鹿島美保関線佐陀本郷工区

(2)社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線有福温泉工区

(3)社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線大金工区

(4)社会資本整備総合交付金事業(一)柿木津和野停車場線中座工区

(5)社会資本整備総合交付金広域河川改修事業高津川

(6)社会資本整備総合交付金河川緊急整備事業高津川(畑詰)

(7)社会資本整備総合交付金通常砂防事業湯屋谷川

 ○市町村事業1箇所

(1)特定環境保全公共下水道事業吉賀町七日市処理区

 

4審議日程及び経過

 第1回平成22年7月1日(木)

 出席委員大西孝、来海公子、高田龍一、藤山晶子、藤原眞砂、正岡さち、馬庭毅、森也寸志、和田登志子(50音順)

 再評価対象事業10箇所について、事業者から説明

 現地調査及び詳細審議箇所の抽出

 

 第2回平成22年7月29日(木)

 出席委員来海公子、藤山晶子、藤原眞砂、正岡さち、馬庭毅、森也寸志、和田登志子(50音順)

 現地調査

 ・社会資本整備総合交付金事業(一)柿木津和野停車場線中座工区(津和野町)

 ・社会資本整備総合交付金広域河川改修事業高津川(吉賀町)

 ・社会資本整備総合交付金河川緊急整備事業高津川(畑詰)(吉賀町)

 ・特定環境保全公共下水道事業吉賀町七日市処理区(吉賀町)

 第3回平成22年8月24日(火)

 出席委員大西孝、来海公子、高田龍一、藤山晶子、藤原眞砂、正岡さち、馬庭毅、森也寸志、和田登志子(50音順)

 現地調査

 ・社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線有福温泉工区(浜田市、江津市)

 ・社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線大金工区(浜田市、江津市)

 ・社会資本整備総合交付金通常砂防事業湯屋谷川(出雲市)

 ・社会資本整備総合交付金事業(主)松江鹿島美保関線佐陀本郷工区(松江市)

 第4回平成22年9月10日(金)

 出席委員大西孝、来海公子、高田龍一、藤山晶子、藤原眞砂、正岡さち、馬庭毅、和田登志子(50音順)

 抽出事業の詳細審議及び、それ以外の対象事業の審議

 第5回平成22年10月12日(火)

 出席委員大西孝、来海公子、高田龍一、藤山晶子、藤原眞砂、正岡さち、馬庭毅、森也寸志(50音順)

 意見具申案の審議

5詳細審議箇所の再評価結果

【社会資本整備総合交付金事業(主)松江鹿島美保関線佐陀本郷工区】→継続

 本事業は、主要地方道松江鹿島美保関線の松江市鹿島町名分から佐陀本郷にいたる2.6Km区間の現道拡幅および歩道を整備する事業である。この工区は隣接して島根原子力発電所があると同時に松江市鹿島町と松江市街地を結ぶ主要な通勤、通学などの産業・生活道路としての役割を果たしている。しかしながら、恵曇港に近く日本海の高潮の影響を受けやすく、頻繁に冠水するなど高潮被害に悩まされ、さらに道路幅員も狭く歩道も未整備な状況で安全対策の面からも不十分な状況となっていた。

 本事業はこうした状況を解消するために計画されたものであり、安全対策の観点から早急な対策整備が求められるが、事業採択後10年間を経過している。この主たる理由として、40戸あまりの家屋の移転の調整に時間を要したこと、工法的に当地域が軟弱地盤であったため、時間を要するあらかじめ盛土を行い地盤を安定させるプレロード工法を採用したことなどが挙げられる。幸い、地域住民の理解もあり既に家屋の移転交渉は完了し、現在95%の進捗状況であり来年度には完了予定となっている。

 当事業の重要性と効果の大きさを考慮すると、当工区の中止を求める理由は皆無であり継続は妥当であると判断され、早急な完成を期待する。

 なお、蛇足であるが公共事業にはスピードが肝要であり、計画時点からの時間が経過するほど社会経済状況の変化が生じ、事業の持つ効果、地域の期待といったものが薄れることが懸念される。事業執行者にはこうした視点があることを配慮され事業実施されることを希望する。

【社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線有福温泉工区】→継続

 この工区は、国道9号から続く田所国府線の一部で、下有福までの大金工区から有福温泉までの1.2kmの区間である。有福温泉町の幅員の狭い、従来の生活道路の部分を避けたルートとして計画され既に橋脚部が完成し、現在は県道への取り付け道路を整備中である。

大金工区は既に一部供用開始され、続くこの工区でも一部供用開始され、進捗率は88%となっている。

 田所国府線は、生活二次幹線としての機能と有福温泉、美又温泉、旭温泉へのアクセス道路としての機能を併せ持ち、この取り付け道路が完成することにより生活二次幹線としてのアクセス改善はもとより、温泉街の長年の問題点の改善にも期待がされる。

 有福温泉町の生活バス等の従来の道路機能は確保され、住民生活に支障が生じない様に配慮がなされている。

 また、県道の取り付け道路部分の一部に駐車スペースを確保し、温泉街の交差もままならない道路、駐車場不足のため起こる渋滞や路上駐車の解消が工事内容に計画されている。

 有福温泉は年間10万人を集めるこの地方における観光の中心、今年に入ってからも来場者は対前年比で増加している。有福温泉からの他の二湯までのアクセスとしては、当面は浜田自動車道や国道9号を軸に近隣の道路を有効活用しながらの利用となると思われるが、生活道路としての田所国府線は、道路の現況を見ると機能充実が望まれる。

【社会資本整備総合交付金事業(主)田所国府線大金工区】→継続

 本件は邑智郡邑南町上田所の国道261号と浜田市下府町の国道9号の間42kmを結ぶ地域アクセスを改良する工事である。

 今回の再評価事業はその一部「大金工区2.8km」であり、また別途再評価対象の「有福温泉工区」とは同体の工事である。

 島根県民が日常の生活に利用する道路は、曲がりが多くて狭い不安全な道路が多い。特に山間地から主要市内へのアクセスは悪い。住民生活の安心安全のために、消防車や救急車の到着までの時間を短縮しなければならないし、山間地の便利さの為にも、改良を進めていかねばならない事業と考える。しかもこの道路は県の‘生活2次幹線'として位置づけられており、平成13年度着手され、既に50%進捗している工事なので、継続することが妥当である。

 近年道路事業はB/Cの算定で判断し、ややもすると便益の少ない事業は切り捨てられる状況にあるが、島根県で定住するために必要である"車"を利用する住民のためにも、地方の幹線道は改良するという大方針のもとに、整備を進めて行って欲しい。

【社会資本整備総合交付金事業(一)柿木津和野停車場線中座工区】→継続

 

 本事業は、国道9号から萩津和野線に至る2160mのバイパス(車道2車線)を整備する事業であり、鹿足郡津和野町における当該地区の交通渋滞の解消と通過交通の排除及びそれによる歩行者等の安全確保を目的として行われるものである。採択は平成13年度、総事業費51億500万円、完了予定年度は平成27年度、現在の進捗率は55%である。

 津和野町は、年間100万人を超える観光客を抱える島根県内の重要な観光地の1つである。津和野町は、これまで、JR津和野駅から道の駅津和野温泉なごみの里まで続く市街地通りについて観光地としての整備を進めて来た。この通りには安野光雅美術館、森鴎外旧居・記念館等が散在しており、自転車や徒歩による観光客も多い。現在、津和野町では、観光客が観光しやすいよう、また歩行者がより安全に歩行できるよう、パークアンドライドのための、道の駅や駐車場を整備するなどの対策も進めている。

 一方で、この津和野町市街地は、車両が国道9号から萩へ抜ける萩津和野線へ抜けるためのルートとして使用されている。このルートは、国道9号から萩へ抜ける主要ルートである。その結果、津和野町内に関係のない通過車両が数多く通ることとなり、居住者や観光客の安全を脅かす原因となっている。また、特に、観光シーズンや帰省シーズンには渋滞が起こることにもつながっている。

 以上のようなことから、津和野町市街地の居住者・観光客の安全を図るため、通過交通を排除するとともに、パークアンドライドを推進することは非常に重要であり、本事業は必要なことであり、急務であると考えられる。

 問題点は、費用対効果が1.05と低いことであろう。これは、工事全体で橋梁の工事が5箇所入っていることで総事業費が非常に高額になってしまったこととともに、費用対効果の算出方法が原因の1つとなっている。つまり効果の中に、観光振興による効果等の副次的な要素が組み込まれていないためである。本事業においては、バイパス整備によって、観光面の効果が非常に高いと考えられる。この点について、副次的効果を組み込んだ県独自の算出方法を考える等により、事業の必要性を訴える方法を考える必要があるだろう。

 

【社会資本整備総合交付金広域河川改修事業高津川】→継続

 

 本事業は,島根県西部を流れる高津川において、昭和期に度重なる洪水による浸水被害を受けたために行う治水対策で、計画延長6800mの河川改修である。基本的には河床を掘削し、河道拡幅を実現することで通水断面積を確保し、洪水対策を行うものである。

 まず、平成期にあっても浸水被害があり、治水に対する社会的ニーズは高いと考える。改修によって30年確率の洪水に対応する流下能力を持つようになり、現在は同確率で38%しかない流下能力を100%(610m3/s)に引き上げる効果がある。この際、拡幅ばかりになると土地面積の確保上、コストが高くなるが、ポンプによるくみ上げを実現することで河床掘削を可能にし、拡幅を最小限に抑える工夫がされている。また、掘削によって発生した土砂は築堤に利用し、築堤できない場合に於いても、例えば道路工事等に活用するなど工事間で流用し有効利用を図っている。

 なお、高津川は清流日本一やヒメバイカモ等貴重野生植物が確認されるなど自然環境の豊かさでも知られる河川であり、急務である洪水対策とはまた別に、改修によって自然環境が激変しない工夫も肝要である。この点において、瀬や淵、河床形態や水際の入り組みなど現況地形を活かしたり、緩傾斜護岸や階段工を整備し人々に対する親水性を高めたり、また、護岸法面への植生の早期回復を図るなど工夫が見られる。あわせて、アユをはじめとした水生生物の移動に配慮して河道の連続性を確保するなどの配慮が見られる。

 本事業は、広域河川改修であるため工事が長期にわたるが現在の進捗率は78%である。治水という地域のニーズを満たしており、あわせて近年要求されることの多い環境保全という課題にも取り組みつつ、b/c=3.41という事業を展開することを期待したい。

【社会資本整備総合交付金河川緊急整備事業高津川(畑詰)】→継続

 

 本事業は吉賀町九郎原畑詰地区において、高津川災害復旧助成事業による上流側の流量増に伴い、河積狭小であるこの区間の氾濫頻度が高まることから河積拡大の整備をするもので、平成11年度に事業着手してから11年を経た今年度末における進捗状況は進捗率69%と見込まれている。

 この地区は高津川左岸側に主要地方道六日市錦線が併走しており、通勤路として欠かせない道路であり、道路浸水による通行不能は地域生活者に多大な影響を及ぼすことから、洪水被害を解消して沿川住民の民生の安定を図るとともに、高津川全体での安全性を確保するうえからも本事業の必要性は高く、社会的ニーズを満たしていると言える。

 本委員会の現地視察及び詳細審議において、想定洪水確率20年確率に見直された経緯と河川改修による流下能力の向上度合、河川の屈折部の洪水危険性、洗掘による道路の空洞化・崩落の可能性の有無等の疑問点に対する説明があった。本事業の必要性については異論の声はないものの、原因に応じた工法の妥当性、実施効果や即効性に地域的な差異があるなど、事業の特殊性について今後も委員や県民に判りやすく説明責任を果たしていくよう努められることを期待したい。

 本事業の確実な遂行は災害助成事業の採択条件であるうえに、この間実施に当たっては、固定堰を可動堰にすることで過度な築堤や河道拡幅を回避しており、コストを削減するなどの努力が伺われ、その整備は意義が認められるので、本委員会としては継続が妥当であると判断した。

 

【社会資本整備総合交付金通常砂防事業湯屋谷川】→継続

 

 本事業は、出雲市東林木町湯屋谷川流域が土石流危険渓流であり、集中豪雨等により土石流が発生した場合、大きな被害をもたらす可能性があることから、対策を講じる必要性が生じたものである。

 過去、梅雨前線豪雨において土砂が流出し、下流の道路が埋塞する被害も発生している。特に本流域は山腹の崩壊や渓流の浸食が著しく、荒廃がかなり進んでおり、先般の現地視察においても土石流の危険性が高いことを実感した。

 また、保全対象に民家や国道431号、公共施設が存在し、民政安定の視点からも必要不可欠な事業と思われる。

 さらに、本川には既設の堰堤が2基あり、これを活用(嵩上げ)することによりコスト縮減を図ることが可能となること、また、支川に堰堤がないため現在の優先度の高い3号堰堤の整備を進めており、3号堰堤の整備完了後に順次2基の整備を行うとした計画は合理的、かつ妥当性があると考えられる。

 当事業は、厳しい財政の中ではあるが、地域住民の安全で安心できる生活基盤を確保するという、優先課題を遂行する上で極めて重要であると思われる。事業が継続できない状態に至るならば、土石流の捕捉効果が低下し、人命、家屋、道路等への土石流被害が防止できなくなり、地域社会、経済に与える影響は甚大である。

 加えて、土石流の危険性が依然として高いことから、周辺の土地利用等に大きな変化がなく、農業や産業の振興、引いては地域経済の発展に支障をきたすことは深刻な問題である。

 土石流に対する不安は、地元では他の地区に比べ格段の違いがある。地区の前方には斐伊川が流れ、後方は北山山系を背負うという地理的条件の制約を受け、恒常的に災害の不安がつきまとうと住民たちは話している。防災訓練は毎年、最低1回は実施している。伝達訓練も回を重ねるたびに上達し、本年は昨年より時間短縮することができたとのことである。地元をあげての早期完了を熱望している。

 事業が計画通りに進み、地域における人口減少の歯止めになれば、島根県が抱える重要課題のひとつである定住化の促進に連動することとなる。

 以上のことから本事業は継続が妥当と判断する。

 なお、砂防事業は内容的に長期にわたることが多い、しかしながら、気候変動により想定外の現象、たとえばゲリラ豪雨に見舞われる事例が増えてきた昨今、優先順位の的確な判断を期待したい。

 また、ハード面を強力に推進する一方、地域住民とのコミュニケーションを図ることに一層の努力を払い、ソフト面とのバランスのとれた事業推進を期待するものである。

 

 

6その他の審議箇所の再評価結果

 

 下記2箇所の事業については、詳細審議は行わなかったが委員会の異論はなく、事業者からの対応方針案のとおり「継続」が適当であるとの結論に達した。

 

 ・社会資本整備総合交付金海岸高潮対策事業別府港大山地区

 ・社会資本整備総合交付金港湾整備事業西郷港本港地区


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