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平成16年度再評価委員会からの意見具申

平成16年11月4日


島根県知事澄田信義様

島根県公共事業再評価委員会

会長杉元邦太郎

公共事業の再評価について(意見具申)


本委員会は、島根県の公共事業の再評価について慎重審議を重ねた結果、別紙のとおり意見を取りまとめましたので、これについて意見具申をいたします。
なお、県におかれては、本委員会の意見を尊重し、公共事業の推進にあたられるよう要望いたします。

 

 

1.平成16年度島根県公共事業再評価の結果の総括

本年度、委員会に付託された事業再評価の対象事業は、農林水産部事業14件、土木部事業3件、健康福祉部事業1件と、例年に比してかなり減少した。これは、再評価の期限5年の対象事業がすでに一巡し、継続事業が少なくなったためと考えられる。再評価制度が開始されて以来、国・県・市町村の財政が逼迫する中で、事業の採択が抑制されてきていることの現れでもあるといえよう。これら18件のうち、抽出して詳細審議を行った事業は、農林水産部事業3件、土木部事業1件、健康福祉部事業1件に止まった。
個別事業に対する委員会としての意見は別記されているので、ここではそれらと重複しない範囲で「総括的意見」を述べる。

農林水産部事業においては、従来、個別(たとえば、ほ場整備、農道建設など)に、いわば点と線の事業毎に再評価を行ってきたが、飯石南地区では「中山間地の総合整備」という中山間地をどのように整備していくのかといった、地域のあるべき姿を面的にとらえる手法が導入されており、委員全員がこのような整備手法を支持できるという意見で一致した。今後とも、中山間地を面的にとらえ、積極的に事業に取り組むべきであると考える。なお、本年度においても、「林道開設事業」など、線的事業に当たるものも再評価対象として提示されたが、これらについても林業を通じて中山間地の産業振興につなげる「地域問題」として整理していくことが必要であろう。

土木部から再評価を求められた馬潟地区の「松江港改修事業」は、昭和30年代から建設が進められている。その後の社会・経済情勢の変化の中で、再評価の対象となる道路の延伸は、単体事業であるとはいえ、どこまで県民が納得できるかについて多くの疑義が出された。さらに、港湾整備で不可欠となる泊地の浚渫については、地元漁業者から同意が得られているとは言えず、この点から個別事業の積み重ねで事業を進めていこうとしている思惑を感じざるを得ない。さらに工業地区と漁業者、一般住民全体を巻き込んだ事業の必要性については、十分な「説明責任」が果されているとは言えず、「事業を中止すべきである」という強硬な意見や、資料の提示と説明に対して疑念を指摘する意見もあった。
これらを解決するためには、港湾利用者、工業事業者、漁業関係者、地域住民及び県・市の関係部局のすべてを主役とする「馬潟地区の開発マスタープラン」づくりに早急に取り組み、現在の情勢に見合った計画に練り直す必要がある。

今回、「道路の延伸」については「事業の継続」を認めることとしたが、今後の地域整備については、地域のマスタープランを策定し、それに基づいて各事業を進めることの重要性をあらためて認識させられた。

また、健康福祉部から提示された「斐伊川水道建設事業」については、斐伊川神戸川治水事業「尾原ダム」の完成によってはじめて効果(利用)が発揮されるものであり、関係市町村の将来の姿が見えないままでの事業継続については疑義があるとの意見が出された。特に将来人口(水道受益者)の算定について、関係資料の不十分さも指摘された。
しかし、水道事業は地域住民の最大のライフラインであり、特にこれについては「安全、安心、安定的な給水」を期待しなければならない。そのためには、確保すべき水道容量に「ゆとり」を求めることが必要であるという観点と、事業の進捗が進んでいることから、「事業の継続」を認めることとした。
なお、再評価するにあたり、今回の説明内容だけでは「地域の全体像」を委員の共通認識とすることができなかった。今後は、再評価案件に対しては十分に準備された資料に基づく「説明責任」を果たされるよう強く要望しておく。

また、松江港改修事業及び斐伊川水道建設事業の案件については、事業の中止を求める立場から、具申案の執筆には参加できないという委員があったことを付記しておく。
今後、公共事業に対しては、さらに県民の鋭い目が注がれ指摘がなされる中で、10年を超える事業の必要がどこにあるのか、さらに精査し、地域問題、地域整備の必要性、地域の将来像などのマスタープランを踏まえながら、事業の中止や見直しを大胆に求めていかなければならない。

2.審議対象事業

島根県が再評価の対象として提出してきた事業は、下記のとおりである。

●農林水産部14カ所
・経営体育成基盤整備事業
3カ所
・中山間地域総合整備事業(広域連携型)
3カ所
・広域営農団地農道整備事業
1カ所
・一般農道整備事業
1カ所
・一般農道整備事業・農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業
1カ所
・林道開設事業
2カ所
・地すべり防止事業
2カ所
・海岸環境整備事業
1カ所

 ●土木部3カ所

・統合河川整備事業
1カ所
・海岸環境整備事業
1カ所
・港湾改修事業
1カ所

 ●健康福祉部1カ所

・水道建設事業
(水道水源開発施設整備事業・水道広域化施設整備事業)
1カ所

3.詳細審議案件の審議と現地視察

●農林水産部3カ所

(1)飯石南地区中山間地域総合整備事業(吉田村、頓原町、赤来町)
《現地視察及び審議》

(2)林道開設事業足尾線(旭町)
《審議》

(3)林道開設事業上ヶ床線(西郷町)
《審議》


●土木部1カ所

(1)松江港港湾改修事業(松江市)
《審議》


●健康福祉部1カ所

(1)斐伊川水道建設事業(松江市外9市町村)
《現地視察及び審議》
4.審議日程及び経過

第1回平成16年6月21日(月)
再評価対象23事業(市町村再評価依頼の5事業を含む)について説明
審議事業、現地視察箇所の抽出

第2回平成16年7月21日(水)
現地視察
飯石南地区中山間地域総合整備事業〈吉田村、頓原町〉
斐伊川水道建設事業〈加茂町〉

第3回平成16年8月17日(火)
抽出事業の審議
飯石南地区中山間地域総合整備事業
林道開設事業足尾線
林道開設事業上ヶ床線
松江港港湾改修事業
斐伊川水道建設事業

第4回平成16年9月9日(木)
抽出事業の審議
松江港港湾改修事業
斐伊川水道建設事業

第5回平成16年10月19日(火)
意見具申(案)の審議
5.詳細審議事業の再評価結果
(1)【飯石南地区中山間地域総合整備事業】
→《継続》
 本事業は、従来個別に行われてきていた小規模な事業を総合的に整備するものである。
本県は農業県を標榜し、生活用水の確保、歴史的文化を保存し観光に活かし地域活性化を図る「鉄と夢の町」や自然環境に配慮した農業者の健康増進と憩いの場としての「農村公園」、地域活性化ボランティア活動や女性グループの起業化につながる基点としての「施設整備事業」など、いずれも人口流出や農業離れの歯止めとなるべく、農業農村を広く一体的にとらえ、中山間地域の整備という観点から、基盤作りと地域の魅力づくりの核となる事業内容と考えられる。
高齢者や女性及び若者の定住を考慮した産業の活力となるよう、そして交流人口の増加につながるよう更なる効率化を図り早期完了を期待する。

(2)【林道開設事業足尾線】
→《継続》
 本事業は、森林施業を円滑に進める上での利便性を考慮して計画されたものであり、計画路線区域内には、間伐などの施業を早急におこなう必要のある4〜8齢級の人工林が広く分布し、計画区域面積の55%を占めている。森林の木材生産機能と県土の保全という重要な役割を発揮させるためには本事業は必要なものである。また、本事業の完成により県道の迂回路としての役割も期待され、地元から強く要望されている。これにより地区の林業を活性化するとともに、地域の振興を図ることが出来ると考えられる。

(3)【林道開設事業上ヶ床線】
→《継続》
 本事業は、効果的な森林施業及び適切な森林管理のため、森林基幹道を補完するものとして進められてきた。現在、利用区域内には、間伐期にある林分が63%(94ha)存在し、早期開設が求められる。
しかし、当初の想定よりも硬質な岩盤がみられ、工事単価が高くなるなどして、5年間の進捗率は16%に止まっており、事業の長期化、事業費の増嵩をまねいた。その中で、間伐材チップの利用、舗装の簡易化、岩盤部分素掘側溝の選択など、環境への配慮や工法の検討が積極的に行われ、コスト縮減対策等の取り組みが図られてきた。
今後の事業展開については、事業費の削減を考慮しつつ、工事の進捗を図り早期完成が望まれる。

(4)【松江港港湾改修事業】
→《継続》
 本事業は、平成13年度の再評価委員会において継続と認められた施設(−5m岸壁延長80m、臨港道路延長680m)から既設岸壁までの間の臨港道路230mを延伸するものである。
道路延伸は、新・旧岸壁を接続することで、港湾機能の充実と港湾作業の効率化や港湾貨物輸送の円滑化が図られるとともに、出入りする道路が既存道路と2路線になることから、隣接する馬潟工業団地の災害時避難道路としての副次効果もある。
しかし、新岸壁の施工位置については、未だ地元漁業者の理解が得られておらず、県は、速やかに漁業者との調整を図り、充分な理解と同意を得る必要がある。またコスト縮減や適正な港湾規模の整備については、引き続き努力をされたい。
なお、本事業については、一部委員から延伸事業に止まらず広い視点からの事業展開を求めて、本事業は中止すべきであるという強い意見が出された。

(5)【斐伊川水道建設事業】
→《継続》
 本事業は、斐伊川神戸川治水事業の一環として、国土交通省により建設される尾原ダムに水源を求め、松江市を始めとする島根県東部10市町村の水道用水の需要増加に対し、安定供給を図るものである。
社会資本整備は、安全、快適な地域社会を維持する上で必要不可欠な事業であり、ことに水道用水供給施設が、我々の社会生活にとって不可欠なライフラインの一つとなっていることは言うまでもない。水道用水供給事業者にとって水の安定供給は、その安全性とともに最大の責務であり、加えて当地域においては渇水に対する安全性確保の面から適正な給水量の確保が急務であると考えられる。さらに危機管理の面から、流域の異なる複数水源の確保や管路の複線化が重要な課題と考えられる。
また、多元的な水資源の活用を図るために、中水道の活用、地下水・天水の利用について、行政の長期的な努力も必要であると言える。
本事業に関しては、基盤施設としての将来のあるべき姿を見据え、過大な事業費にならないよう需要の推移に見合った段階的な施設整備に努めること、また、水道料金についても関係市町村との調整を図り、可能な限り低く抑えるように努力することという意見を付して継続とする。
なお、将来人口の動向を見極めて、さらに詳細な検討を行うべきであり、本年は中止すべきであるという強い意見も一部委員から出された。

 その他の事業については抽出・審議は行わなかったが、委員会では大きな異論はなく「事業継続」が適当であるとの結論に達した。

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