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カンピロバクター

■カンピロバクター(Campylobacter)とはギリシャ語でらせん状の桿菌という意味があります。顕微鏡で観察すると特徴のあるS字状や湾曲したらせん状の形態をしています。ただし3日以上の培養で球状に変化する種類もあります。

 

発生状況 ◎カンピロバクター腸炎は5−6月に多発します。7−8月にやや減少、10月前後に再度上昇、11−4月はやや減少します。本菌は自然界のあまり気温が高い環境では死滅しやすいようです。
カンピロバクターについて
病原体 Campylobacter属の菌は1.5−5×0.2−0.5μmのグラム陰性、S字状、湾曲したらせん状細菌です。
食中毒をおこす主な菌種はC.jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)C.coli(カンピロバクター・コリ)ですが、この菌種は3日以上の培養では球状に変化します。
◎好気的(酸素が充分にある状態)には発育しません。また、嫌気的(無酸素の状態)にもほとんど発育しません。酸素が3−15%の微好気的条件で発育します。酸素に曝露されると急速に死滅します。
感染経路 ◎ニワトリ、ウシ、ブタなどに分布します。特に鶏肉による食中毒事例が多いです。イヌやネコなどのペットも感染源となり、感受性の高い小児は注意が必要です。また、井戸水や河川からの検出もたくさんあります。
潜伏期 ◎一般的に2〜7日(平均2〜3日)です。
臨床症状 ◎下痢(85%程度)、腹痛、発熱(38℃台が多い)、頭痛、はき気が主な症状です。下痢は通常2〜6回で、10回以上に及ぶこともあります。下痢は一般に水様便で、血便や粘血便となることもあります。◎多くの患者は一週間で治癒し、死亡例はまれです。また、まれに敗血症や髄膜炎を併発することがあります。◎C.jejuni腸炎の経過後1〜4週間後に関節炎やギラン・バレー症候群が続発することがあります。C.fetus(および亜種fetus)は下痢症以外に髄膜炎、敗血症あるいは流産をひきおこすことがあります。
検査室診断 ◎原因食品、便、血液、髄液、飲料水、調理器具の拭き取りなどが検査材料となります。◎室温では急激に死滅するため、便は輸送培地でなるべく10℃以下の低温で輸送します。その他の材料も低温で輸送します。◎食中毒の患者便を培地に塗抹するときは、輸送培地の空気に触れていない、なるべく奥の部分をやや多めに塗ります。分離培地(Skirrou培地、CCD寒天等)で42℃2日間、微好気条件下で培養します。食品などは増菌した後分離培地で培養します。◎グラム染色、オキシダーゼテストなどによりスクリーニングします。さらに純培養し同定します。
治療と予防 ◎食肉や内臓(特ににわとり)は充分加熱することです。また、生食肉を取り扱った調理器材からの二次汚染防止対策も大切です。井戸水などの飲料水は塩素消毒を励行しましょう。◎カンピロバクター腸炎は一般的に予後が良好で、抗生剤の投与によらなくても対処療法のみで治癒します。激しい症状や敗血症などを併発した患者は適切な抗生剤治療が必要です。カンピロバクター腸炎の一次選択治療薬としてはエリスロマイシン、敗血症などにはゲンタマイシン、髄膜炎にはクロラムフェニコールが用いられます。
行政対応 ◎食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ます。また、感染症法では定点把握の5類感染症(定点把握)感染性胃腸炎として、発生情報が収集されています。

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保健環境科学研究所

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